思ひ出の糸車が見せた、神龍の過去とムウ大陸の滅亡の記憶。
ムウ大陸から人が居なくなっていく様が、目の前で展開されていく。
それは幻と言うにはあまりに生々しく、現実と言うにはあまりに儚い物語。
あまりに現実的な幻だったためか、ターロンでさえ呆然としているようだ。
水を操って身を守ることさえも忘れた、無防備な姿のままで。
ミル「今のは…夢…?」
ターロンどころか、あたしたちまで隙ありまくりです。 。
リリ「あ、あれっ?!あれってオルビア先生と・・・・・・・」
ナナ「お父様ぁ!お父様…お父様…お父様……うわぁぁぁぁぁ…!!」
幻の中に自分の制作者を見たナナナが、アナスタシアにしがみついて泣き崩れる。
いつの間にか、水が滝のように流れる音が聞こえていた。
ヴァンエレンが開けた天井の穴から、ついに水が流れ込み出したのだ。
今はまだ小さな流れだが、大量の水が流れ込んでくるのは、もはや時間の問題だ。
長々と遥かな過去を見せられたすぐに後に、図書館の壁の一部が崩れ落ちた。
それだけならばまだしも水も漏れてきたのだからなお困る。
ミシェルお馴染み、指をヒョイヒョイっと動かして魔法を使う。
つまり、辺りに散乱する砕けた本棚の欠片で間に合わせの補強をしたがそれもいつまで保つだろうか?
こうなるとさっさと逃げた方がいいのだが………
アナ 「あー!泣きやめよもう!泣く子は苦手なんだぞー!」
すがりつかれて困惑顔のアホ姉はさておき、ターロンが唖然としてる今は攻撃のチャンス!
リリ「皆、今よ!今のうちにターロンをやっつけ・・・・・」
レヘ「やめだ!やめだ!」
ミル「え!?」
リリ「えっ?レベッカさん?」
自暴自棄気味に叫ぶレベッカの声に、ターロンの意識がこちらに向く。
……。こ、攻撃の絶好のチャンスがぁぁぁぁぁ!?
レヘ「俺達の認識が甘かったんだ。さっきのを見てよくわかった。
俺達じゃ逆立ちしたって神龍には勝てねぇ。
聞こえてんだろ、ターロン!降参だって言ってんだよ! 」
桜「なにを言って・・る?」
ター「降参とは……」
ターロンはレベッカの方を値踏みするように眺めている。
リリ「やめてよレベッカさん、せっかく作ったチャンスなのに!!
そんなのやってみないと分からないってば!
第一、どのみちターロンは私達全員を消すつもりなのよ!!」
フリ「妖怪とか人間とか関係なく最低ですわ!!」
多分レベッカには何か作戦があるのだろうが折角なのでレベッカを罵倒しておくフリージア
ミル「だいたいお前だろうがターロンの言うことなんか聞けるかなんて言ってたのは!
言ってることと行動が全然違うのは仕様か?仕様なのか!?」
リリアーナと声を合わせてレベッカを非難してると、アホ姉にちょいちょいと袖を引かれる。
ミル「なにこの忙しい時に!」
振り向けば、アホ姉が手にしたぬいぐるみと目があった。
ぬいぐるみのお腹には、光でできた『適当にあわせとけ』の文字が。
あわせる?何を?誰と?………あ。もしかして、そうなのか?
レヘ「けどよ…頼む!俺はまだ死にたくねぇんだ!
俺だけは生かしてくれよな!ターロン様ぁ!同じ中つ国の妖怪じゃありませんか!
そして奇しくも、妖怪の身でありながら魔法を志す同志!何と私の愚かなことでしょう!
先ほどの非礼はお詫びします!このレベッカ・ウォン!きっとあなた様の役に立ちますよ~!」
その言葉を聞き、リリアーナは能面のような顔になった。
何たる外道。レベッカはターロンに勝手に降参するどころか、自分だけは生かしてくれと命乞いをした。
それは裏を返せば、レベッカ以外のメンバーは死んでもかまわないという意味である。
レヘ「私が役に立つことを、さっそくターロン様に見ていただきたいと思います!
あなた様がお見通しの通り!クリムゾンヘッドを隠したのは私でございます!
あなた様のような偉大なお方にとっては、あのような者は道に転がる小石も同然、ですが!
このレベッカ、やはりあの男には怪しいところがあると見え、油断はできません!
憂いは今のうちに刈り取るのがよろしいでしょう!案内させてください!」
レベッカの話が終わる頃には、リリアーナは顔を伏せていた。
長い髪が邪魔して表情は読めない。
こういう時、真っ先に怒るのが常の彼女なのだが、非常に珍しいことだった。
レベッカは他のメンバーに言った。
レヘ「あーん?なんだぁ、その反抗的な態度は?おめぇらも馬鹿だなぁ(笑)
俺みたいにお利口ちゃんだったら、ターロン様の下僕として命が保障されるってのによぉ(笑)
まぁ、いいさ。くたばっちまえよ。馬鹿なおめぇらの分まで、俺がライフをエンジョイしてやるからよぉ!(笑)」
桜「貴様・・・!」
ナイフを取り出そうとする桜花の手を誰かが制した。
僅かに顔を上げた一瞬だけ桜花と目が合う。
リリアーナは何もいわなかった。目は笑っていた。
桜(信じろというのか・・?彼女を・・)
やれやれと手を下ろし溜息を吐く。
レベッカはリリアーナに言った。
レヘ「へ、へへっ、悪いなリー。俺は友情は大切だと思うが、友情よりも俺の命の方が重いんだぜ。
黙って地下墓地まで俺を持っていけ、リー。クリムゾンヘッドはそこに隠してある。 」
リリ「そして私に、あの杖を使えというのね。
・・・・・・・ひどいわレベッカさん。私、あなたの事信じてたのに。
この裏切り者!やっぱり妖怪なんて信じなきゃ良かった。大嫌い!し・・・・・・しんじゃえ!」
ミル「そうだぞレベッカ!この変態変態ド変態!!」
ギ「うわ最低だ・・・・」
レベッカを軽蔑した目で見るギズモ
リリアーナは、槍を両手で掴んで力を入れ始めた。
レヘ「俺を折ろうなんて馬鹿なことを考えるなよ?
そんなそぶりをすれば、ターロン様がお前を殺すだけだからな。」
地下墓地。そこはメイレンとオウカ、ムムムが死闘を繰り広げた場所。
今はバラバラになったメイレンと、石像になったムムムと三つの玉が残っているだけだ。
レベッカが到着するまでは、誰もクリムゾンヘッドの居場所はわからない。
リリ「ひ、卑怯者!もう死んでるのにまだ命が惜しいの?!」
リリアーナはしばらく黙り込んでいたが、やがてだらりと腕を下ろした。
リリ「・・・・・・み、みんなの命を助けてくれるなら、それなら・・・・・・・杖を使ってもいい。
あっ、いえ!使わせていただきます!」
リリアーナはおどおどとターロンの顔色を伺った。
ターロンは、リリアーナを何も言わずに見つめている。
ここは追加でそれっぽい言葉を……いやいやでもどう言えば…
ミシェルは賭けに出ることにした。
どのみち、あまりここに留まれそうにないとの判断である。
ゆっくりと左掌をターロンの首にかざすと、そこに複雑な魔法陣が描かれる。
大量の魔力がグングン圧縮され、神聖系の力に変換されていく。
天使以外は使えないハズの最上級神聖系魔法。今ミシェルが発動しようとしているのは紛れもなく、それだ。
天使の百科全書は天使や天使の使用物をそっくり複製する。それは天使の使う術とて例外ではない。
ただ、人は天使ほど神聖系魔法を扱うのに適した体ではないため多用は難しいのだが。
ミシ「それ程の力を持ちながらお前は何故私たちを襲う?
力を持ちながら周りすべてに牙をむくお前は、力を持つのに相応しくない」
ミシェルは言いながら趣味の狩りそのままに狙いを定める。
その最中に槍がけっこうなブラフをかましているが気にしていられない。
ミシ「人じゃ通用しないが、神の御使いならどうかな!?」
と言うと同時に魔法陣から赤い槍の様な鋭い光がかなりの速さで飛ぶ。神聖と炎の2つの属性を持つ光の槍だ。
致命的とまでは望まないがこれが有効でないならミシェルはかなり苦しくなる。
せめて生徒は逃がしてやりたいが………
ミシェル先生が、炎と光を混ぜ合わせたような槍をターロンに向かって放ったからだ。
ターロンはこの攻撃をやっぱり水の壁で防いだから、届いたかどうか!
水蒸気と一緒に、ターロンの呻きが聞こえ、神龍の血で水の壁が染まる。
でも、すぐに水の壁に穴が開き、お返しとばかりに今度はミシェル先生をサンダーブレスが襲った。
ちっ!水の壁で炎の威力が削がれたか!
ターロンは一声吼えると、ミシェル先生が補修した穴をぶち壊し、さらに広げながら上…墓場に逃げる。
アナ 「よしミルク、レモンパイもってターロン追いかけろ。
泣き虫メイドも置いていけないし、お姉ちゃんはもうちょっと図書館にいるからな」
アホ姉があたしの手の中に押しつけてくるマジックレンジの中には、レモンパイに似ても似つかぬ物体が。
違う…これは絶対レモンパイじゃない、もっと恐ろしい何かだ…
でもそう言ったら怒り出すだろうから言えない…
…とにかく、ターロンを追いかける必要があるのは間違いない。
ミル「わかった。これは預かって先に行ってるから。
リリ「アナスタシア先生、ミシェル先生のこと、よろしくお願いします!
ベルジン先生、ベルジン先生はどちらに?」
リリアーナはベルジンの姿を探した。
ミル「よし、行こうみんな!!」
声をかけ、ミルクはナナナが造り出した道を通って、墓場に戻った。
ヴ「む?了解であります」
やっと目を覚ましたヴァンエレンは、状況は皆についていけばわかるだろうと判断したようだ。
時間を食べる柱時計は胸の谷間に収納しそれを追いかけるフリージア
フリージングドールを放棄しフリージアについて行くギズモ
リリ「アナスタシア先生、ベルジン先生にニャンコ先生の封印解除、お願いしてみてください。
難しいとは思いますが、先生ならきっと・・・・・・・!」
リリアーナはそう言って、お札を貼られた招き猫姿になったニャンコ先生を言付け、ミルク達に続いた。
(105で〆)
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最終更新:2009年12月01日 23:50