ミル「待ってください!ヨハネカイン博士!」
なんとか先行しているグレイブ達に追いついて。
あたしは自分の影と、博士の影の位置に十分気をつけながら話しかける。
ミルクに呼びかけられ振り向くヨハネカイン。
ミル「あの。実は、博士にお聞きしたいことがあったのを忘れていました。
……秘密結社ケルビムをご存知ですか?
あたしは、ケルビムの一員だと名乗る男から、ヨハネカイン博士から力を授かったと聞きました。
博士は魔法使いに対抗できる力を与えることが出来るお方だと、そうも言っていました。
これは本当なんでしょうか?」
グレイブはヨハネカインの影の危険性を知らない。
でもグレイブは頭がいいし、グレイズやグレイルもいる。
さっきの忠告とあたしの位置取りから、大体の事情はわかってくれるだろう。
リリ「隠れて!」
ようやくヨハネカインを見つけたギズモ、女装ロック、
ヴァンエレン、
リリアーナは近くの茂みに飛び込む。
そして、仲間達とヨハネカインと呼ばれた男の話に聞き耳を立てた。
Yo「私はただの医者だ。そして、それ以前にただの人間だ。
誰からそんな突飛な話をきいたか知らんが、でたらめだよ。
それとも、何か証拠でもあるのかね?このヨハネカインが魔法使いを超える力をもつことを。」
フリ「あら?お医者様ってみんな強いんじゃありませんの?
私の知っているお医者様は格闘技だけで病魔を倒したり
薬の材料を手に入れるためにモンスターと素手で戦ったりしてましたわよ
体を直す方法を知っているのなら逆に壊す方法も知っているんじゃなくて?」
Yo「そんな医者が常識的に考えているわけがないではないか。」
リリ「あんにゃろ~~~!!今に見てなさい!!」
ミシ「お客様がいらっしゃてるらしいですね」
ゆっくりとした足取りで、ミシェル先生も来てくれた。
ミシェルの顔はトップ・オブ・ザ・ワールドを介してすでに知っていたが、
ヨハネカインは始めて会ったかのように会釈した。
Yo「あまり気にしないでくれ。もうすぐ帰るところだ。」
ヨハネカインはミシェルにそう言った.
追いついてきたミシェルに会釈し、帰ろうとするヨハネカイン。
それを見て顔をしかめていたグレイブが再三溜息をつく。
B「その通りだな。魔法使いに対抗できる力だ?
無いとは言わない。……だが、この目の前の医者がそんな大それた力を与えられると思うか?」
Yo「そう言うお前は、またしてもグレイブか。」
あからさまに見下した態度でフン、と鼻を鳴らす。
さっきの話が嘘だと思っているらしい。
B「答えはNOだ。もし魔法使いに危害を加えようとしても、彼が取れる手段といえば銃や毒程度のものだろう。
ムーで何を聞いたかは知らんが、一般的に言えばそんなものはほぼありえない。違うか?
そういうわけで……そうだ、思い出した。一つ聞き忘れたが、Dr.ヨハネカイン」
Yo「次の発言は慎重に選ぶべきだぞグレイブ。私の堪忍袋の尾が緩まないように。」
ミル(もー。だから、ヨハネカイン博士は本当に危険人物なんだってばさー。
敵どころか味方にまで信用されないじゃ、シャレになんないよもう… )
B「――さっき、なんで『影』を見た?」
Yo「なんだと?」
ミル「え?」
話の流れの変化を感じて、あたしは博士の顔に視線を移す。
魔法使いを警戒する意図が、意識しないまま行動にでたんだろうか。
B「ミルクが話の中でケルビムだとか力だとかいうフレーズが出たとき、アンタの視線は少し揺らいだ。
そうだ、確かにこっちの影の方に向いていたな。俺以外は何処か他の方を見ていたから気付いてないかもしれないが。
ただのお医者サマが、何故影なんぞを気にする必要があるんだ?
こいつらの話を鵜呑みにはしないが、それだけは気になるな……」
挑発するように、グレイブはすっと前に出る。
S【もし、本当に博士がそんな力持ってたら……大丈夫かな?】
ちなみに、ヨハネカインが影を見た、なんていうことはグレイブの嘘八百でしかない。
フリ「もしそんな能力が本当にあってそれを私たちに向けるというのなら
私、全力を持って正当防衛をさせていただきますわよ」
S【あくまであったときの話だけどね……】
リリ『よろしい。それでは我々の友情の証として、君にヘブンスマイルを授けよう。』
その場にいた者の脳裏に、何の前触れもなく少女の声が聞こえてきた。
ミル「な。何この声…?」
姿なき声は。いや、正確には声じゃなくてテレパシーは。
ムウ大陸で聞いたヨハネカイン博士の言葉を繰り返す。
R【んあ!?貧乳リリアーナじゃねーか!?】
S【ああ、本当だ!でもこれって……?】
そうやってSとRが話しているうちにも、リリアーナが送る誰かの台詞は続く。
リリ『非魔法使いが、魔法使いに対抗しうる数少ない手段の一つだ。
君なら使いこなせる。私がそう見込んだように。 』
声の主は姿を隠しているようで、ヨハネカインには誰がどこから送ってきているのか分からないだろう。
もっとも学園関係者なら、これがリリアーナのテレパシーだとすぐにわかるだろうが。
リリ『君は降りかかる火の粉を振り払うだけだ。
一体その行為を誰が許さないだろうか?さぁ、試してみてごらん。
ヘブンスマイルの能力を』
リリ『・・・・・・普通のお医者さんが、ヘブンスマイルなんて物騒な守護霊、必要なんでしょうか?
永遠の絆を部下が使えるようにするために、死を与えたりするものでしょうか?』
リリアーナは重々しい口調を真似つつ続ける。
リリ『もしも本当に、ヨハネカイン先生がケルビムと無関係だとしたら、よかった。
実はムウ大陸で、生徒の1人が不老不死になれる方法を調べてくれたんです。
ケルビムなんかに知られたら、絶対に妨害されるに決まってますからね。
さあ、お引止めしてごめんなさい。私の話はおしまいです。どうぞどうぞお帰りくださいませ』
そう、ヨハネカイン以外に説明の余地なく、これはリリアーナからのテレパシーだ。
ヨハネカインには、リリアーナが自分から姿を現す“未来”が無い限り彼女を見つけられない。
グレイブの問いかけに答えられないでいたヨハネカインの、顔がふっと緩んだ。
Yo「なるほど。やはり、全てを知った上で私をこの島に誘いこんだというわけか。
ならばこれを見せても、言葉は不要か…トップ・オブ・ザ・ワールド!」
ヨハネカインがそう叫ぶと、彼の影が膨らみ、彼に寄り添うように立ち上がった。けたたましい笑い声と共に。
Yo「これがヘブンスマイル。非魔法使いが魔法使いに対抗しうる数少ない手段の一つだ。
私はこいつに、トップ・オブ・ザ・ワールドと名前を付けている。トップ・オブ・ザ・ワールドの力は未来への力だ。」
B「ご丁寧に手の内をバラすものだな……大層な余裕だことで」
フリ「未来?そういえば昔聞いたことがありますわ
太陽の王子と未来を見ることの出来る魔女のお話を
魔女が自分は未来を知ることが出来るから無敵だと王子を挑発し
王子はならば自分の未来を見てみろとそれを返した
魔女は自分の未来を見たとたんその場を逃げ出したという」
つまる所、自分が負けるという未来を見てしまったのである
フリ「未来が見える能力者は自分では未来を変えられませんのよ!!」
ヨハネカインが両手を広げた。戦う意志を放棄しているかのように。
Yo「君達はまだ若い。なにも関係の無い私とわざわざ争うようなことをする必要はないだろう?
もしもその気があるのなら、我々の組織ケルビムに君達を迎え入れよう。
ケルビムは、君達が考えているような危険な組織ではなく、生命に対する秩序ある未来をつくるために存在している。
悪いようにはしない。ヘブンスマイルを君達にも授けようじゃないか。
そうすれば、今まで以上の力を発揮できるだろう。君達自身の未来のためにも。」
フリ「冗談じゃありませんわ!誰がケルビムなんかの仲間になりますか!
生命の秩序とか神様にでもなったつもりですの!!」
ミル「お断りします。沈むのがわかってる船に乗り込むほど、バカじゃないつもりですから」
美味しいキノコに毒があり、美味しい話に裏がある。
ロクーを使い捨てたのを知ってる以上、あたしは博士に同意するつもりは無い。
グレイブは変わらない敵意の沈黙で拒否の意思を表す。
当然ながら、誰もヨハネカインに賛同しなかった。
Yo「そうか、それは残念だ。では、死ぬがいい。」
To『まずは貴様から血祭りにあげてやるぞッ!グレイブッッ!!』
B「やってみろッ!この俺に対してなぁッ!」
トップ・オブ・ザ・ワールドの腕が振り下ろされるのを見切って、思い切りバックステップ。
軽く回避、と感じたグレイブだが。
しかし、それはトップ・オブ・ザ・ワールドにとって既に予想済みだった。
To『かかったなッ!死ねいッッ!!」
影に振り下ろしつつあった右腕がぴたりと止まり、左腕がアッパーカットぎみに振り上げられる。
狙いはグレイズとグレイルの霊だ。そう、ヘブンスマイルは守護霊。
霊であるグレイズとグレイルなら直接殴れるのだ。当たれば大ダメージを受けるだろう。
B「は?……まさか!?」
右腕の攻撃をキャンセルし、突然左腕で力強いアッパーカットを繰り出す。
その目標は、まだ自身に追いついていない二人の分身。
幽体でしかない彼らに仕掛けられる攻撃の意味を、緩やかに感じる時の間にグレイブは悟る。
B「クソッ!?グレイズ!グレイル!」
目の前の事態にグレイズは認識が遅れたが、赤髪のグレイルの方は考えないうちに黒髪の分身の前に立ちはだかる。
幽体でもその行動力と運動神経は遺憾無く発揮された。
R【バカヤロッ、S!】S【えっ!?】
背中でグレイズを押し退けつつ、腕をクロスさせて防御。後ろに下がりながら行うことによって、ダメージの軽減を図った。
果たして、トップ・オブ・ザ・ワールドの攻撃は丁度重ねられた部分にあたり、二人の霊をその体の元へ吹き飛ばす。
R【うおおおおおおおおあああああああああああ!!】【わああああああっ!?】
そしてこの瞬間、グレイルが受けた部分と同じ位置にグレイブとグレイズは痛みを感じた。
見れば赤く赤く腫れ上がり、内側で出血を起こしているのがわかるだろう。
グレイルが直接に攻撃を受けた部分など、裂けてすらいる。
博士への攻撃で少しは緩んだ筈の攻撃を、軽減できるように防御してこうなのだ。
まともに当たればひとたまりもないことが一目瞭然である。
B「――ってぇな……!“降り注げ幾多の氷槍よ、眼前の敵へ”ぇッ!」
苦し紛れに唱えた魔法で十数本の氷の槍がヨハネカインとトップ・オブ・ザ・ワールドに襲い掛かるが、その構成は余りにも甘い。
氷の密度は薄く、簡単に砕けそうなほど。更には照準までもが甘く、避けるのもたやすいだろう。
Yo「いいぞグレイブ!君はなぶり殺すつもりだったッ!そう簡単に死んでしまってはつまらん!
(あれで殺せなかったのか。未来を見る力を使った事でヘブンスマイルの力が減っていたせいか?
それを差し引いてもあのスピードとパワーは侮れんな。)」
ヨハネカインとトップ・オブ・ザ・ワールドに向ってグレイブの氷の槍が降り注ぐ。
Yo「(おかしい、攻撃が甘すぎる。さてはこの攻撃で油断させ、何か策を仕掛けるつもりかッ?
無論何かを仕掛けられる前に未来を見て回避できるはずだが、
トップ・オブ・ザ・ワールドの攻撃を受け止められる
あのパワーとスピードでトップ・オブ・ザ・ワールドを殴られれば、
この俺本体が無事ではすまない。ここは一旦引かせるか…)」
ヨハネカインは一旦トップ・オブ・ザ・ワールドを自分の影に引っ込めた。
そのまま前進し、降り注ぐ氷の槍を避ける。前方に迫るのはフリージアだ。
Yo「貴様らはこのヨハネカインが直々に相手をしてやる!」
ヨハネカインがグレイブ以外のメンバーにそう叫んだ。
ヴ「ぎゃあぁぁー!超こえぇ!」
フリ「ヴァンエレンさん!あなたスペックだけなら私よりも上のはずなんだからがんばりなさいな!!」
スペック高けりゃ勝てるというものでもないが吸血鬼の身体能力は人間より上のはずである
ヴ「いやだあああああぁぁぁ。
感情操作もなしで立ち向かうなんて臆病な私には無理だ!」
ふりーj・・・クーラ様がGOサインを送るがついには泣き出してしまって死にたくないと抵抗する吸血ニート。
男をみせろ!いまは男じゃないけど。
Yo「キラッ☆キラキラ吉良キラキラキラキラキラキラキラキラキラ!!」
ミル「うわっ!?」
博士が銀色に光る何かを大量に投げつけてきたので、あたしは慌ててさらに距離を取る。
これは先ほどルズに渡したものと全く同じもので、殺傷力など無い。
岩子「やばいぞリリアーナ!ヨハネカインが本性をあらわしやがった!
俺に逆らう馬鹿者につける薬は無いとでも言いたいのかあいつは!
全力でさじを投げまくってるぜ!」
リリアーナと一緒に近くの茂みに隠れているロックが小声で(しかし全力で)そう言った。
リリアーナのおっぱいについて激しく問い詰めたい衝動もあったが、今はそれどころではない。
リリ「ああ、やっぱり・・・やっぱりヨハネカインは悪い人だったんだ!」
ロクーがアレだけ慕っていたのだ、もしかしたらいい人かも、という幻想は潰えた。
しかも、自分の軽率な行動のせいで、仲間達が大ピンチである。
岩子「もう我慢できない!皆を助けに行こうぜリリアーナ!(一応小声だぜ!)」
リリ「だめよロック!あなたは出て行ったらダメ!
そもそも、ヨハネカインがどうやってロクーを見出したと思ってるの。
もしかしたらあなたとロクーが、「ヨハネカインの知るマリアベル」に瓜二つだった可能性だってあるのよ?!
下手をするとロック、あなたにマリアベルの不始末の責任を押し付けられることだって」
だが、そんな制止もロックを長くとどめる事は出来ないだろう。
ロックは、仲間を助けるためなら、自分に降りかかる災難など苦にしないからだ。
リリ「わかった。無理には止めない。
それとロック、あなたの名前は今からロゼッタになったから!
ロゼッタ、気づいてる?ヨハネカインは永遠の絆について故意に無視してるわ。
多分、彼にとって永遠の絆は、あまり触れられたくないものに違いないわ!そこを上手く突けば・・・」
ギ「ねえねえリリアーナお姉ちゃん奴のいった言葉ちゃんと録音した?」
リリ「え?録音?」
ギ「この音声を世界中にばら撒けばヨハネカインを社会的に抹殺できるね」
どうやらギズモは恐ろしいことを考えているようである
リリ「そ れ だ わ !ギズモったら冴えてる~!!」
おおー!とリリアーナは感激したが、直後激しく落ち込んだ。
リリ「・・・・・・・・ごめん、今日に限って幻灯機持ってないの・・・・・・あれ一応、ルームメイトの私物だし。
ヴァンエレン、使い魔に頼んで私の部屋から幻灯機取ってきてくれない?」
だが当のヴァンエレンは、既にヨハネカインとエンカウント済だった。
リリ「じゃあギズモ、私の部屋にルームメイトの幻灯機があるの、取って来て!責任は私が取るから!
ばっちり証拠を残したら、ヨハネカインだって当分はおとなしくなるはず!・・・・・・ああ、だめだわ。
だって彼女の作った幻灯機の映像は、記憶に残りにくい特徴があるんだもの!
ミニアルったら、こういう時にはぜーんぜん使えないんだから~っ!!」
キーっとリリアーナは髪をかきむしった。
リリ「となると、他のマジックアイテム・・・・・・そうだ!
ギズモ、アナスタシア先生よ!先生が使ってた機械ならだいじょうぶかもしれないわ!
お願い!アナスタシア先生を探して!」
だが、幻灯機は魔法がらみのマジックアイテムだ。
となると、ヨハネカインは映像を取ったとしても難癖をつけるかもしれない。
リリ「あーもうっ!!ケルビムが難癖つけられない程の大物が目撃者になってくれれば話は早いのにぃ!!
とにかくギズモ、私達が何とか時間を稼ぐから、証拠をばっちり残すのよー!!」
ミル「ヨハネカイン博士!その立ち位置を狙って攻撃します!メギド!」
あたしは警告した後、その警告通りの場所を核熱魔法で攻撃する。
Yo「単純、単純ッッ!」
ヨハネカインはひょいとメギドを避けた。
フリ「せいっの!クリスタルウェイヴ!!」
ミルクの攻撃と打ち消し合わない様に場所をとり
下から上にアッパーのように腕を振り上げるフ・・クーラ様
まるで波のようにどんどん大きくなりつつヨハネカインめがけ地面を這う霜柱
動きが遅いのでジャンプすれば避けられるだろう
フリ「ダブゥクリスタルウェイブ!!」
今度は二本連続で地面を這う霜柱
やはり動きが遅い地を這う飛び道具
クリスタル系の技はフリージアさんがの考えた格好いい以下略の
クーラというキャラクターの技であり本来のフリージアさんの技ではない
つまりかめは○はのまねをしてみたら本当に出来ちゃったレベルの技なのである
ゆえに当たっても全身の表面が凍りつく程度のダメージしか期待できないだろう
Yo「無駄無駄無駄ッッ!!」
フリージアの魔法攻撃を避けながらさらに前に走るヨハネカイン。
言うまでも無いが、魔法を使えないヨハネカインにとって、どんな魔法攻撃も致命傷になる。
それでも魔法使いに対抗する力を彼が持つのは、この未来を見る目を使った回避能力をもつからだ。
いいかげん変装を解いていつもの戦い方で戦えばいいのにとそれを見たギズモは思った
フリ「さすがに当たりませんわねぇ・・・・・!?クリスタルストーム!!」
Yo「邪魔だッッ!トップ・オブ・ザ・ワールド!!」
けたたましい笑い声と共に再び実体化するトップ・オブ・ザ・ワールド。
彼の回し蹴りは、フリージアの影より一瞬早く立った霜柱の影を砕いた。
自分を中心にまるで牙のように尖った霜柱を立てるフリージアさん
本来は敵に突っ込んでぶちかます技であるが今回は防御に使ったようである
フリ「あ、危なかったですわ・・・・・」
B「一人相手に、随分と苦戦するものだ……!“放て、氷槍と氷の魔力”ッ!」
フリージアと次から次へ魔法を打ち出すが、如何せんグレイブは痛みに気を取られて中々集中できない。
結果、放たれる魔法は悠々とかわされてしまう。
Yo「教えてやろうッ!トップ・オブ・ザ・ワールドこそ!
未来を予見し、未来を変えられる、唯一にして無上の存在であることをッ!
そして、お前達の未来は死あるのみだッッ!!」
B「知ったことかッ!お前が決めた下らない未来なんて……」
そこでふと、ヨハネカインの影が無いことに気付く。
勿論トップ・オブ・ザ・ワールドもいない。
ヨハネカインは前進をして攻撃を回避したので、今は皆に取り囲まれる立ち位置である。
故にその場にいる全員が確認できただろう。ヨハネカインの影が未だに消えたままであることを。
Yo「これがどういうことかわかるか?
つまり、影というものは自分を投影した姿であるということだ。鏡にうつる姿も含めてなぁッッ!!」
ミル「ご丁寧に囲まれる位置に自分から飛び込んできて何をうぐっ!?」
B「何……ッ、鏡!?」
そのとき、ミルクの首に指の跡が浮かんでいく。
ミル「あ…う……!」
足元の散らばったスプーンの中、つまり鏡の中からトップ・オブ・ザ・ワールドが攻撃しているのだ。
B「下種め!」
現実世界のミルクの首に、トップ・オブ・ザ・ワールドの指の跡が浮かぶ。
トップ・オブ・ザ・ワールドの握力なら、すぐに首の骨を折る事が可能だろう。一人ずつ、確実に。
Yo「この俺には魔法は通用しないッ!例え光の速さで攻撃しても、俺には当たらないッ!」
フリ「ミルクさん!?」
色彩の魔法でスプーンすべてに光が反射しない色をつければ回避できるかもしれないが
それよりもミルクの首がポキリといくほうが早いだろう
ヴ「や、やめてくれよ!」
恐ろしい魔の手が友達の首を折ろうとしている。
それに対してヴァンエレンは震えながら見ていることしかできず過剰なまでに臆病になっている。
リリ「そこまでよ!ヨハネカイン!」
R【真打とぉ―――じょぉ―――っ!?】
S【ああうるさいよR!】
怪我をしていようと、グレイルはそのテンションを下げるということを知らない。
その腕は妙な方向に曲がっているが、どうやら幽体から肉体へのフィードバックは多少軽減されるらしい。
とうとうリリアーナが姿を現した・・・・・・のだが。
リリ「・・・・・・フリージアのドリルがバームクーヘンに」
Yo「バームクーヘンだと?」
気を取り直したリリアーナは、びしっとヨハネカインを指差した。
リリ「生徒達を問答無用で殺そうとするなんて、何て極悪非道な奴なの!
そんなあなたが仕切ってる組織が、生命に対する秩序ある未来をつくるために存在している?
馬鹿にしないで頂戴!
そんなの、都合の悪い人間を消すための口実に使ってるだけじゃないの!
詭弁だわ、独裁者の論理だわ。
案外、生命の秩序なんかどうでも良くて、自分の野望のために魔法使いじゃない人を扇動してるだけじゃないの?!」
ほんの少し首を絞める力が緩んで、酸素を少しでも多く肺に送ろうとあたしは喘いだ。
Yo「ほう、君からはそんな風に見えているのかこの私が。
なるほど、なかなかいい線をついた意見のように聞こえる。
だが、私は言ってみればミルクを人質にしているんだ。次の言葉を慎重に…」
慎重に選べとヨハネカインは言うつもりだった。リリアーナの登場でミルクの首はまだ繋がっているが、
力さえ入れたらその首は破壊されるのだ。だが、
リリアーナは更に続けた。ここからはもう完全に妄想の世界である。
リリ「残念だったわね、実の息子なのに、ギルハートから選ばれなくて。
結局あなたは、魔法ではマリアベルに勝てないから、人を癒すことで人を集めて組織を作る事を選んだんだわ。
父親が自分でなく、最後に自分以外の魔法使いと永遠に生きる事を望んだから。
上手いことを言ってロクーを仲間に引き入れたのだって、どうせマリアベルへの復讐なんでしょう!
ロクーが、魔法でなく自分の分け与えた力を使って、必死に働くさまを見るのはさぞ面白かったでしょうよ!」
リリアーナは次から次へと口からでまかせを言っている。
とにかくまともに戦ったら即死亡確定である。何とか会話で時間を稼ぎたい彼女は必死だ。
Yo「き…貴様……ッッ!!」
リリアーナとヨハネカインの会話は、あたしのよく知らない事だった。
マリアベルは前に学園に攻めてきた魔法使いだ。
その父親はギルハートって名前で、ヨハネカインはマリアベルの兄弟?
リリアーナとヨハネカイン(またはマリアベル一家)は知り合いなのか?
ブルブルと震えるヨハネカインと、あたしの首を絞めるトップ・オブ・ザ・ワールドの手。
それはヨハネカインの心の動揺を表すもので。
同時にリリアーナの言葉が事実である事を裏付けるもので。
フリ「今のうちにミルクさんが映っているスプーンの色をマットブラックに・・・・
色彩の精霊よ!あの銀に光るものの色を変えなさいな!!」
本当なら全部のスプーンの色を変えたいがそれをやるには時間が掛かりすぎる
何よりもスプーンの量が多すぎる
フリ「私の色彩魔法は鎧を水玉模様にしたり氷に色をつけたりするだけではなくってよ
今ですわヴァンエレンさん!!」
必殺の一撃、放つのはいまだ!
ゆけゆけ僕らのヴァンエレン。
ヴ「ああもうわかった!
やぁってやるってぇ!」
勢いよく拳を振り上げて駆け出すヴァンエレン。
リリ「何とか言いなさいよ、ヨハネカイン博士。
命の禁忌を犯すなんて言ってたら、吸血鬼や妖怪やゾンビはどーなるのよ!!
全部殺して回るつもり?ご高説を賜ろうじゃないの!」
Yo「お…おぉぉぉお…」
ロゼ「あれは…まさか!」
珍しく空気を読んだロック改めロゼッタ。隠れたままヨハネカインの様子を観察していた。
Yo「おおおおおおおおおん!!おおおおおおおおおぉぉぉぉおおおん!!」
ロゼ「なんてことだ!ヨハネカインの奴、泣き始めたぞ!」
S【な……泣き出したぁ!?……ってて】
R【なーんだそりゃあ!?】
ヨハネカインは号泣しはじめた。そう、リリアーナは核心をついたのだ。
まるで子供時代に意識が逆行したように、悶え、呻き、喚きながら眼球から涙という水分を排出し続ける。
リリ「エエェェェェェエエエエ!!」
まさか自分の妄想が的中したとは予想だにしていなかったリリアーナは、ひたすら驚いている。
人目も。場所も。戦闘中だって事も忘れて、ヨハネカイン博士は泣き叫ぶ。
まるで子供の頃に戻ったように。
襲い掛かろうとしたヴァンエレンだったが、泣き出したヨハネカインをみて勢いが途中で止まる。
ヴ「え?え?
これは攻撃しちゃって大丈夫なんでしょうか?」
ミシ(言葉の暴力か。醜悪だな)
そう、生徒の前では努めて丁寧語で話そうとする彼が素に近い口調で心中にて吐き捨てた。
いっそ純粋な力比べ(若しくはそれに準ずる殺し合い)の方が後腐れなくて良いのではなかろうか。
この現状を見ると、これだから女は無粋なのだ。という謗りはミシェルにとっては非常に真実味のある言葉だ。
ミシ(まだ高笑いしながら攻撃してくれた方がやりやすい………)
今このオッサンの首を切り落とす事自体には何の抵抗もないが、それを生徒の前でやってしまうのは倫理的に気が退ける。
一旦白けてしまうと今まで意識の片隅に追いやっていた眠気や倦怠感がドッと押し寄せてきた。
ミシ「疲れたので私は戻りますね。事の顛末はいずれ機会があれば誰か面白おかしく話してくださいな」
リリ「えーっ!!そんな、人質は?!待ってミシェル先生私達を置いて行かないでー!!」
リリアーナが半べそでミシェルを引きとめようとしたが、完全にスルーされてしまった。
教師としてそれはどうなのだろう?
リリ「ミルク、首はだいじょうぶ?距離とって、距離」
もっとも、距離を取ってどうこうなる問題でないかもしれないが。
ミル「だ、大丈夫。フリージアとリリアーナのおかげでまだ生きてる。
それより、今のうちに博士をなんとかしないと」
見た感じ茫然自失の博士だけど、いつまた気を取り直さないとも限らない。
スプーンに写る姿まで攻撃されるんだから、なにかこう…気絶?でもさせられりゃいいんだけど…
桜「リリアーナさん…これはどうしたんだ?……それにメイレンさん…メイレンさんは……!うっ…
……すまない、で、メイレンさんはどうなったんだ?」
リリ「メイレン様はもう復活なさったわ。
この男性を泣かせたのは、実は、わたしなのよね」
桜「大の男が泣き出すなんてただごとではないぞ…」
リリアーナさんから状況の説明を受ける桜花。
どうやら泣いている男はケルビムのトップでロクーの上司、ヨハネカイン博士のようだ
リリ「この男性は、ロクーの所属していたケルビムの長、ヨハネカインなの。
レベッカさんの治療のために2,3日後になるはずだったのに、なぜか今日来られたのよ。
そして私達はムウ大陸で、若返りの薬に関する知識を仕入れたってことで殺されかけてるところ」
リリアーナはあはは、と困ったように笑った。
リリ「それとメイレン様は復活なさってるわ。身体も元通りだから心配要らないわ。
ところで桜花さん、まだ龍の玉、もってるんだよね?
直に触ってないとは思うけれど、だいじょうぶ?変な影響とかは出てない?」
そう言って、心配そうに桜花の顔を見上げている。
桜「そうか…メイレンさんは回復したか…それはよかった。」
メイレン復活の報を聞くと柔らかく微笑む
桜「あぁ…大切な物らしいからな。一応持ち歩いている。
体調不良は魔力の使いすぎのせいだとは思うが…」
大きめの巾着袋には三つの龍玉がいれられている
グレイブは状況確認にあたりを見渡す。
リリアーナは灰色の髪のポニーテール少女に説明中。
フリージアは『世界の頂点』の映るスプーンを黒く染めてミルクを救出。
吸血鬼は指示を受けて殴りかかろうとするが、何を思ったかあたふたしてる。
リリ「じゃあ、動きを止めるためにはこれしかないよね!うん!」
リリアーナはするすると思ひ出の糸車の糸先を召喚しようとして――――
リリ「しまった、レベッカさんの槍にくくりつけておいたんだっけ!・・・・・・・あれ?」
リリ「レベッカさん!どうしてここに?!もう保健室で寝て無くていいの?
あ、いや・・・・・・^、べ、別に変な意味じゃないよ? 」
リリ「・・・・・・・・・・・わー!レベッカさんが変な色したイモリの黒焼き食べてる――――!!」
ターロンはレベッカが使い魔契約のために口に咥えこんでいる。
ター「…私を両生類呼ばわりするのは止めていただきたい」
ぐったりはしていたが、リリアーナにイモリと言われて黙っているわけにもいかない。
爬虫類呼ばわりよりはましだが、龍族は基本的に誇り高い種族なのだ。
ターロンはもぞもぞと動くと、レベッカの口から外に這いだした。
使い魔契約は正しくなされたようで、ターロンにも魔力が戻っている。
ター「あれがヨハネカイン博士とやらですか。
泣いてるように見えますが、私は危険人物相手に丸腰では少々不安です」
ミル「そーだ!さっきヨハネカインの攻撃が当たってたけどグレイブ大丈夫!?
具体的に体が爆発しそうとか、そんな感じはない!?」
B「……爆発?いや、確かにかなり強い一撃だったが、そんな感じはしないな」
ミル「良かった…あーでも早く何とかしないと、またヨハネカインが暴れ出すよ。
あいつが泣いてるうちに動きを封じたいんだけど、なにかいい方法ないかな?」
B「それなら、氷漬けに……」
リリ「もう、この糸ほどいて良いよね?」
リリアーナは手早くレベッカの槍から思ひ出の糸の先端を外すと、号泣したままのヨハネカインに向けて飛ばし始めた。
糸先が触れれば、回想中ヨハネカインは行動不能になる。
過去の知りたい情報も得られるわけで、リリアーナにとっては一石二鳥だろう。
B「何がなんだかわからないが、アシストするぞ!“凍らせよ、眼前敵の脚を”!」
かつてリリアーナその他数名に向けてかけやがった、あまり良い思い出の無い魔法をヨハネカインに飛ばす。
果たしてその氷は、ピンポイントでヨハネカインの脚を地面に縫い付ける。
リリ「ぐ・・・GJ」
ミル「ナイスアシストグレイブ!」
見事にグレイブの魔法はヨハネカインの足を凍らせ、そこにリリアーナの糸が命中する。
ロクーの時と違って過去は見えなかったけど、ヨハネカインは動きを止めた。
最終更新:2010年02月28日 18:48