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  • 炎と氷(前編)の編集履歴ソース
「炎と氷(前編)」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

炎と氷(前編) - (2024/04/19 (金) 22:30:34) のソース

◇

「それで、こんな時間に呼び出して、話とは何だ?」

 夜の公園のベンチに、スーツを着た白人男性が座っている。
 地味な顔つきをしており、たとえすれ違ってもすぐにその顔を忘れてしまうような、そんな雰囲気を纏っていた。
 男の名は、ジョン・ゲイリー。FBIである。
 彼の任務は共にあにまん市に潜伏している同僚・ジャスティスファイアとの連絡係。
 それとは別に、この日本での任務が終わればジャスティスファイアに告白しようと考えているが、それはあくまでジョンの個人的なミッションである。
 ジョンの周囲に人影は無い。
 それくらいの調査は既に済ませている。

「ジョン・ゲイリー」

 と、どこからともなく声が聞こえた。

「ケータイやメールでは駄目でした。直接会って伝えなければ」

 人影が無く、声だけが聞こえるという状況でも、ジョンは取り乱さなかった。
 ジャスティスファイアの変身態なら、公園の様々な場所に隠れられると知っているからだ。

(まぁ、変身していなくても、柿子なら気配を消して潜伏できるだろうけど)

 外見こそローティーンにしか見えないが、栗田柿子はFBI所属の優秀な隊員だ。
 潜伏能力や擬態能力ならあの伝説の傭兵・ナサリーブラウンを凌駕するのでは、とジョンは密かに思っている。

「直接伝えたいこと……やはり、例の儀式か?」

 ジョンも柿子も、それを調べるためにアメリカからやって来たのだ。
 わざわざ柿子を疑似的な魔法少女に仕立て上げてまで。

「はい。
 驚かないで聞いてください。
 既に私は、儀式に参加しています」

 ジョンは思わずベンチから立ち上がった。きょろきょろと夜の公園を見回すが、ジャスティスファイアの姿は見えない。

「……無事なのか」

「はい、今のところは」

 今のところは。それはつまり、儀式が危険なものであることを示していた。

「……それで、どんな儀式なんだ」

「その前に、言っておかなければいけないことがあります」

 ジャスティスファイアの言葉は、どこまでも冷静だった。

「恐らく、私はもうすぐ死亡します」

「何だと!?」

 ジャスティスファイアとは対照的に、ジョンは容易く冷静さを失った。

「どういうことだ!? それも儀式に関係しているのか?」

「落ち着いてください、ジョン。確実に死ぬと決まったわけではありません。
 ただ、何らかのペナルティを負う可能性が高いです……そして、ゲームの目的を考えれば、死ぬ、と考えるのが妥当かと」

「……それを聞いて、俺が受け入れると思ってるのか? 仲間を殺してまで情報を得ようとは思わない。ペナルティに接触せずに情報を獲得する術があるはずだ」

「ええ、私もそう思います。けれど、時間が無い。……早急に儀式を終わらせなば、犠牲者が増え続ける」

「だが、そのために君が死のリスクを負う必要があるのか?
 今の君の証言だけでも貴重な情報だ。長官に直ちに伝えよう。そうすれば人員を増やして大規模な捜査が……」

「それでは、遅い」

 ジャスティスファイアの言葉は、どこまでも落ち着いている。
 もうすぐ死ぬと宣言したにも関わらず、まるで取り乱す様子も無い。
 時折ジョンは、彼女のそういう面が怖くも感じる。
 米国育ちにも関わらず、柿子には、確かに日本人の神風精神が根付いている。

「遅い、だって? 今すぐ連絡すれば正午には数十人のFBIがあにまん市に派遣される。米国と提携している魔法少女も何人か派遣されるはずだ」

「——儀式の裏に居るのは、魔法の国です」

 なっ……とジョンの思考が驚愕で停止する。

「もっとはっきり告げましょう。……儀式の主催者は、魔法王です」

「そ、それはつまり……」

「ええ、儀式を中段させるためには魔法王を取り押さえる必要があります。
 つまり、米国と魔法の国は——全面戦争に突入します」

「嘘だろ……!」

 それは、ジョンの想像を超える規模の話だった。
 ジョンの想定では、精々数人規模の魔法少女の集団。
 それが、魔法の国の王が、黒幕。

「相手は魔法の国。恐らく米国だけでは足りない。……人間界の魔法少女を総動員することになるでしょう」

「何が始まるんだ!?」

「第三次大戦……魔法戦争です」

 ジョンの脳裏に拡がったのは、箒に乗った魔女と、戦闘機がドッグファイトえお展開する光景だった。
 馬鹿げている。
 だが、堅物のジャスティスファイアが冗談を言うわけがない。

「……まさか、ジャスティスファイア、君の狙いは」

「私は、直ちに軍隊の出動を要請します。そして、諜報員の追加ならともかく、即座の軍隊出動を動かすには、私の証言だけでは足りない」

 故に、私は死ななければなりません、とジャスティスファイアは言った。

「諜報員がペナルティで死亡すれば、緊急性への説得力が産まれる。……敵討ちの大義名分が立つ」

「早まるな、ジャスティスファイア。君は……冷静さを欠いている。
 君が死ぬ必要はない。物的証拠を集めるんだ」

「……私の変死体が、何よりの物的証拠になるはずです。
 それに、ペナルティは死とは限りません。
 事実、私は既に黒幕の名さえ明かしています。しかし、未だペナルティが訪れる様子はない」

 確かに、とジョンは思う。
 事件の黒幕さえ、部外者のジョンは掴んでしまった。
 しかし、ジャスティスファイアに何かが起こった様子は見られない。

「……私の決意は変わりません。今こうしている間にも、儀式の犠牲者が出続けているはずです」

「……分かった。その代わり、姿を見せてほしい。もしもの場合、直ちに蘇生処置を行う必要がある」

「ペナルティがどういったものか分かりません。巻き込む可能性があります」

「だが、ペナルティがどういったものなのかも把握しないといけないだろう。……死体すら残らないものだった場合、私は記録として残さなければならない」

 片思いをする女性の死を、映像として残す。
 悪夢のような想像だったが、ジョンはそれを受け入れた。
 彼もまた、FBIに所属するエージェント。修羅場は潜っている。
 近くの茂みから、少女が姿を表す。
 日焼けをした、黒髪ショートのローティーンの少女。鍛えられ引き締まった体格は健康的な美を形作っていた。

「ジョン、辛い役割をおしつけて申し訳ありません」

「気にするな柿子」

 ジョンはスマホの録画機能を起動した。
 愛を伝えるべきか、とジョンは惑った。
 だが、それは余分だと、切り捨てる。
 何年も共に任務をこなしてきた、二人の男女の視線が交わった。
 すっ、と柿子は小さく息を吸った。

◇

「あにまん市では、魔法少女が集められ、殺し合いを強要されている」

◇

 変化は、劇的だった。

「ガッ……ガアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 苦悶の声を上げ、のたうち回る。
 全身に広がる、黒い紋様。
 呪いは、発動した。

「そんな馬鹿な……」

 無事だった方は、呆然と立ち尽くす。

「どうなってる……!?」

 柿子からは、冷静さが霧散していた。

「どうしてジョンの方なんだ!?」

【「一つ、殺し合いが行われていることを非参加者に伝えること」】

 魔法王の言葉を思い出す。

「まさか、伝えた方ではなく……」

 一切の不調が発生していないキリコ。
 苦悶の叫びをあげるジョン。

「伝えられた方が死ぬのか!?」

「ぐうううううううううううう、があああああああああああああああッ!」

 口内から血の泡を吹きながら、ジョンはスマホを手に取った。
 最期の力を振り絞り、とある場所に電話をかけようとする。

(不味い……! もし、ジョンがFBIに今の情報を伝えれば……!)

 最悪の場合、FBIは全滅する。
 それを防ぐには。

「くそっ、くそっ、畜生……! 済まない、済まないジョン!」

 ジョンの額に風穴が空いた。
 苦悶の表情のまま絶命したジョンに駆け寄ると、柿子はそっと瞼を降ろす。

『どうした、何があった?』

 液晶の向こうから聞こえてくるのは、FBI副長官の声だ。

『ゲイリー捜査官、直ちに応答しろ』

「ゲイリー捜査官は殉職しました」

『その声は……ジャスティスファイアか。何があった? 儀式が始まったのか?』

(どう答える……?)

 正直に話せば、ジョンの二の舞だ。

(伝えられたら死ぬ……では、自発的に知った場合は、その対象ではないのか? それとも、「知った」段階でアウトなのか?)
 
 もし知っただけでアウトなら……これ以上FBIが介入することは自殺行為だ。

(駄目だ、情報が足りない……)

「今はまだ……何も話せません」

『何だと?』

「私を信じてください。今は何も話せないんです。……そして、あにまん市を調べることを、一時的に中止してください」

『君は、何を言っているのか分かっているのかね』

「とにかく今は、私の言葉を信じてください……これ以上、犠牲者が出る前に」

『…………なるほど、そういうからくりか』

 副長官は優秀な男だ。
 柿子の言葉だけで、ジョンが死んだ理由を察したのだろう。

『分かった。君から新たな連絡があるまで、この件に介入することは控えよう。ただ、ゲイリー捜査官の遺体だけはこちらで処理する』

「ありがとうございます。新たな情報を獲得次第、追って連絡します」

 柿子は、自らのミスで死なせた同僚の遺体を茂みに隠すと、その場を後にした。

(……想像以上に、恐ろしい事態だ)

 伝えられたら死ぬ。
 仮に、参加者の一人がネットに真実を書き込みでもしたら。
 待っているのは大量死だ。

(この事実を、他の魔法少女に共有しなければ)

 柿子はジャスティスファイア……赤いシェパードに変身すると、夜の街を駆け始めた。
 異性として好意を抱いていた同僚の死を無駄にしないため、正義の炎を燃やしながら。

◇

「まったく、どこまでも人を馬鹿にして……」

 ずんずんと音を立てながら木張りの通路を歩く、少女が一人。
 露出度の高いベリーダンサーのような恰好をしているが、その顔に余裕は無く、型は怒りで震えている。

「私は、魔法の国から魔法少女の犯罪を取り締まるよう命じられている……!」

 怒りを吐き出しながら少女は進む。

「よりにもよって、魔法の国のトップが犯罪に手を染めて……無辜の魔法少女に殺し合いを命じるなんて……許せないっ!」

 [[オープニング]]ではハスキーロアを庇うために、魔法王に阿った態度を取ったが、正義感の強い千秋の心は怒りで煮えくり返っていた。

「しかも、最初の場所が旅館ですって……! 私を、殺し合いの最中に
のんびり温泉に浸かるような馬鹿だと侮辱しているのかしら……!」

 彼女の怒りに呼応するように、周囲に砂が展開される。
 激怒しているが、かといって冷静さを失わったわけではない。
 自分と同じように、ここが初期位置の参加者も居ると推測し、臨戦態勢は撮っている。
 ……本来なら、一般人が目撃されうる場では、魔法は使わない。
だが。

(この旅館に、一般人は居ない………)

 [[オープニング]]が終わり、客室で目を覚ましたとき、魔法の国の役人を名乗る男が、そう説明したのだ。
 此処は、魔法少女と運営関係者しか入れない場所。本来なら入場時に説明するが、千秋は初期位置が旅館の中なので、わざわざ説明に参ったと。
 即座に千秋は男を拷問にかけたが、有益な情報は持っていなかった。魔法国に仕える一役人でしかなく、魔法王の狙い、このゲームの攻略法などは知らないという。
 文字通り砂を嚙まされた男に謝罪し、千秋は旅館を後にすると決めた。
 だが、その前に一通り散策し、情報を入手する。
 水は苦手だ。
 だが、温泉に浸からなければ問題は無いだろう。
 エステルーム、美容室などを順に回るが(もちろん利用はしない)、目ぼしい物は無く、無駄骨に終わった。
 温泉内も調べるかと考えたが、リスクを考慮し辞める。

(それにしてもわざわざ温泉旅館を作るなんて。魔法王は何を考えて……)

「はー、さっぱりしたザンス」

 女湯ののれんがはためき、幼い外見の少女が姿を見せた。

(……嘘!? 本当に温泉使ってる魔法少女が居た!? しかも調査じゃなくて、がっつりレジャー目的で使ってる……!?)

「んん?」

 女湯から出てきた少女は、呆然と立つ千秋を前にして目を細める。

「チミは誰ザンスか?」

「……私は冨島千秋。……ゲームには、乗ってないわ」

「はぁ?」

 少女はわけがわからないといった風に首を捻る。
 そして。

「ああ、もうゲームは始まったんでザンスね。ご苦労なことでザンス」

 じゃ、精々頑張って、と手を挙げ、少女は千秋を無視して、売店へ向かおうとし。
 ——その行き先を、砂の壁が遮った。

「なんの真似ザンス?」

「——今、おかしくなかったかしら?」

「何もおかしくないザンスよ。おかしいのはお前の頭ザンス」

「——貴女の口ぶり、まるで参加者ではなく、運営側な気がするんだけど。
 気のせいかしら。気のせいよね。
 貴女もきっと、魔法王に命じられて殺し合いを強制されている『奴隷』よね。
 さぁ、奴隷同士、手を取り合って頑張りましょう」

「——ミーが、魔法王に命じられて、奴隷?」

 砂が、崩れた。
 砲弾でも撃ち込まれたかのように、大穴が空いている。
 分かっていて挑発した。
 この幼い少女は「運営側」だと理解したうえで、煽った。
 少しでも情報を得るために。
 だが。

(藪蛇だったかしら……)

 少女の、拳による一撃で破壊された砂の壁を見て、千秋は戦慄する。
 何らかの固有魔法によるものではない。
 ——純粋な、身体能力による破壊。

「ミーが、人間の、奴隷だと……?」

 額に青筋を浮かべながら少女は千秋の方へ振り返った。

「許さん、絶対に許さんぞ……」

 怒。
 全身に怒気を漲らせながら、幼い少女——妖精貴族・アロンダイトは宣言した。

「殺してやるぞ、魔法王」

◇

(あれ?)

 思わぬ方向に怒りが向けられたことに、千秋は呆気に取られた。
 てっきり殺意は自分に向くと思ったが。

(ああ、違う。こいつ、自分が魔法王の奴隷ではないことを証明したいのね。……なんて短慮で、負けず嫌い)

 幼いのは外見だけではないということか。

「奇遇ね。私も魔法王には激怒していたの。協力しましょう」

「はぁ? 何言ってんのクソ人間? 魔法王の前にまずはてめえらから血祭にあげてやんよ」

「魔法王は後回しでいいのかしら?」

「ばーか、殺し合いを優勝者無しでぶっ壊してやったら、あいつ悔しがるだろ。処刑はその後だよ」

「そっか。残念」

(へぇ、悔しがるんだ)

 それは、企画した余興が失敗した程度の怒り?
 それとも、重大な儀式が完遂できなかった焦り?

(もう少し情報を得たいけど、そういうわけにもいかないか)

「ミーの名前は、アロンダイト」

 魔力が集合し、少女の矮躯を遥かに超える大剣が姿を表す。

「貴族妖精、アロンダイトだ。覚えてくたばれクソ人間!」

 大剣が、振り下ろされる。
 砂の盾は間に合わなかった。
 千秋は、頭部から一直線に両断される。
 破壊は、それだけでは済まなかった。
 剣によって生じた衝撃波が床と天井を切り裂き、断絶を引き起こす。
 雑多に商品が置かれた売店も、木張りの長い通路も、化物が描かれた悪趣味な絵画も、皆一様に切断され、微塵と化す。
 ブラックブレイドのように万物を切断する魔法——ではない。
 純粋な膂力。
 妖精貴族・アロンダイト。その身体スペックは、生身で魔法少女を優に超える。人類をブッチギリで凌駕した、種族差。
 一撃で大破壊を展開したアロンダイトは、大剣を担ぎ——不快そうに顔を歪めた。

「クソ人間が。——こざかしい魔法、覚えやがって」

 両断された千秋は、左右非対称の笑みを浮かべる。

「生憎、これしか能が無くてね」

 切断面から零れるのは、血や臓腑ではなく——砂。
 砂場の城を壊したかのように、彼女の身体は砂の粒子と化し、やがて一つの人型へと集合する。
 顕れるのは冨島千秋。露出する肌には傷一つ無い。

「『体を砂に変えられるよ』。それが、私の魔法。アロンダイト、貴女じゃ私を殺せない」

「——不愉快ザンスねぇ……」

 額に青筋を浮かべながら、アロンダイトは吐き捨てる。

「その、『○○できるよ』みたいな魔法名。ここ数世紀は流行ってるザンスが、ミーは昔の『○○をする魔法』の方が好きだったザンス。魔女を魔法少女と呼ぶようになってからでしょ、呼び方が変わったのは」

「あら、意外とお年寄りだったのかしら。なら良かったわ」

 千秋の手に砂が集まる。現れるのは、砂の剣。

「遠慮なく拷問できる」

 千秋に剣の経験は無い。
 しかし、彼女もまた魔法少女。アロンダイトと比較すれば劣っているが超人的な身体能力は有している。
 人間に振るえば骨ごと一刀両断できる程の一撃。それを、アロンダイトは無造作に大剣で受けとめる。
 体格は、遥かに千秋の方が有利だ。
 だが、そんな人間界の常識は意味が無いと言わんばかりに、アロンダイトの剣は微塵も動かず、振り下ろした千秋の剣が衝撃に耐え切れず崩壊する。

「ふん、所詮は砂遊びしか出来ない幼稚な魔法ザンス」

「くっ……」

 千秋の顔が悔し気に歪み。

「——砂、舐めんな」

「がっ………………!」

 アロンダイトの顔が、驚愕で歪んだ。
 剣を象っていた砂は飛び散った。
 強固さは失われ、滑らかな流砂へと戻り——それは、アロンダイトの鼻と口を覆った。

「……っ! ……っ!?」

 生理的不快感(果たして妖精が人類と同じ生理なのかは置いておくとして)から、アロンダイトは顔に纏わりついた砂を指で強引に引きちぎる。
 砂は、鉄に限りなく近い強度を持っていた。
 が、指でコンクリートを引き裂けるアロンダイトの膂力にかかれば、大した強度ではない。
 顔を覆っていた砂を引き剝がし、怒りの声を上げようとして。

「おのれ、クソに……っ!」

 ——再び砂が集まり、アロンダイトの顔面を覆う。

「言ったでしょ、砂舐めるなって」

 冨島千秋に、物理攻撃は通用しない。必然、千秋が操る砂もまた物理攻撃は通用せず、アロンダイトの抵抗も無為に終わる。
 鼻と口を塞がれ呼吸を、目を塞がれ視界を奪われる。

「じゃあ、拷問始めよっか♡」

◇

 冨島千秋は、アロンダイトを完封した。
 起こった事象だけを抜き出せば、そう表現できる。
 しかし、これは薄氷の上の勝利だった。
 体を砂に変えられる千秋だが、一定の限界がある。
 全身を完全に砂に変えてしまった場合、元には戻れない。事実上の死を意味する。
 つまり、アロンダイトがその身体スペックを生かし、千秋を刻み続ければ、千秋は敗北していたのだ。
 また、そもそもアロンダイトは本領を発揮していなかった。死亡した魔法少女のステッキから武器を錬成できる魔法。それが、アロンダイトの固有魔法であり、日が昇れば彼女は死亡した参加者から好みの者を見繕い、武器化する予定であった。が、未だ序盤であり、アロンダイトは死者をステッキ化していない。
 貴族妖精のスペックを鑑みれば、ステッキなど無くとも参加者如きごり押しで潰せるという慢心。
 現れた千秋をただ砂に変わるだけ、天蓋に到達すらしていない雑魚と判断したこと。
 それが彼女に敗北を突き付けた。
 確かに、千秋の魔法は他の魔法少女と比較し、お世辞にも極上とは言えない。
 物理攻撃の無効化ならヒートハウンドの方がより殺傷力があり、武器の錬成ならアレヰ・スタアの方がより多岐に渡る。
 だが、冨島千秋の強みは、そこにはない。
 彼女の最大の長所は、「魔法の国で魔法少女の犯罪を取り締まっている」というその経歴にある。
 魔法の本家本元、魔法の国。そこで行われる魔法少女犯罪は、当然ながら人間界のそれとはレベルが違う。
 弱冠十七歳にしてそれらの凶悪犯を捕縛する任務をこなす千秋は、対魔法少女戦闘の経験ならば、参加者でも10指に入る。
 故に、アロンダイトという格上の存在に対しても、勝利を収めることが出来た。
 一つ、問題があるとすれば。
 アロンダイトは、魔法少女ではなく、貴族妖精であるという部分だが。

◇

 顔を完全に砂に覆われ、アロンダイトは動きを止めた。
 耳だけは残している。千秋の言葉を届けるためだ。

「さて、窒息したくなかったら魔法王のことについて吐いてもらおうかしら」

「……………………」

 アロンダイトは黙している。

(戦意喪失した……?)

 果たして魔法少女は窒息するのか。身体能力十倍の魔法少女が、呼吸を封じられた程度で死ぬのか。
 千秋の経験上、場合による、というのが最も正解に近い。
 千秋はこれまで様々な悪しき魔法少女にこの「拷問」を仕掛けてきたが、窒息した例は無い。
 呼吸を封じられるという恐怖に、パニックになるか、戦意を喪失するかのどちらかだ。
 どちらにせよ、後は脅しながら情報を奪うだけで済む。
 アロンダイトは、後者だった。
 千秋はそう判断した。
 ——事実は、異なっている。
 アロンダイトは、戦意を喪失したわけではない。
 むしろ怒りがボルテージを超え、一時的に冷静さを取り戻させていた。
 更に付け加えるなら、彼女は人間ではなく、妖精。
 上級妖精は、窒息という概念が存在しない。
 世界に魔力がある限り、彼らの生態は保たれる。
 今、アロンダイトの内心を占めているのは、窒息の恐怖や、視界を封じられた絶望ではなく——温泉から出たばかりなのに顔を砂で汚された怒りであった。
 大剣が、千秋の首を絶つ。
 当然、それは意味を為さない。
 アロンダイトに窒息の概念が無いように、冨島千秋に斬首の概念は無い。
 返す刀で袈裟切りに斬られる。ただ、砂だけが飛び散る。
 すかさず三撃目。大人でも容易には持ち上げられない大剣を、人間では発揮できない速度で振るう。戦闘慣れしていても、千秋はハイエンドや抜刀金程の近接戦闘能力は持ち合わせていない。
 砂が飛び散る。

「くっ……」

 千秋は、退いた。
 剣が届かない範囲へと、逃げた。
 このまま斬り刻まれ続ければ、完全に砂にされてしまう。
 そうなれば終わりだ。

(大丈夫、視界は封じ……嘘っ!)

 足音は発していない。その程度の芸当は出来る。
 だが、視界を封じられているはずのアロンダイトが、千秋が逃げた方向に追撃を加える。

(聴覚……いや、何か別の感覚器官を持っているの?)

 胴を両断されながら、千秋はアロンダイトの超感覚の正体を探る。

(まずは、耳を……)

 アロンダイトの耳めがけて、砂をけしかける。
 斬っても払っても無駄だ。砂に物理攻撃は効かないのだから。
 頭部を全て砂で覆ってやる、という千秋の目論見は

「っ!?」

 視界で捉えているかのように、砂を屈んで回避したアロンダイトに崩される。

「————」

 アロンダイトが全身に魔力を滾らせた。
 剣が、円を描く。
 敵対する千秋にさえ、美しさを感じさせる動き。
 アロンダイトが剣術を習得していないことは、今までの戦いから察している。
 にも関わらず、その無造作な動きには美が宿った。
 純粋暴力。圧倒的膂力。膨大魔力。
 繰り出されるのは、斬撃であり、大破壊。
 破砕音すらしなかった。旅館が真横に両断される。
 かくして阿仁満温泉旅館は、利用者一人という結果を残し倒壊したのだった。
 
◇

 大質量によって粉砕する。それは、冨島千秋の無敵性を攻略する上で、有効な戦術である。
 勿論アロンダイトにそこまでの考えは無く、また百戦錬磨の千秋もまた、建物の倒壊如きで全身砂化に追い込まれることはない。
 瓦礫を踏みしめながら千秋は未だ顔面を砂で覆われたアロンダイトを睨む。

(さて、どうしようかしら)

 アロンダイトが砂を意に介さず戦闘を行えることは理解した。
 だが、その攻撃は物理に特化している。魔法少女基準から見ても異常な身体能力なのは事実だが、それだけ。
 冨島千秋がアロンダイトに敗北することはあり得ない。

(問題は、どう勝つか)

 アロンダイトを殺そうとまでは思っていない……今はまだ。
 あくまで運営側の一人であり、挑発したのは情報を得るためだ。
 だが、砂責めに対してアロンダイトは苦に思っていない。
 そして、アロンダイトを拘束できる程の力は、千秋の砂には無い。

(砂漠で戦えばそういうことも出来たんだけど……むしろこの場所はアウェーね)

 旅館自体は破壊されたが、温泉そのものは無事である。
 温泉……温まっているとはいえ、主成分は水であり、水は千秋の天敵だ。
 アロンダイトが温泉を戦闘に活用すれば、形勢は逆転する。水をかけられたからとって物理攻撃無効が破られるわけではないが、砂の動きが遅くなり、先ほどやってのけた顔に張り付かせたり、壁を作ったり、剣を作ったりといった芸当に時間がかかるようになるのだ。

(アロンダイトがそれに気づく前に戦闘を終わらせたいけど……そう簡単にはいかわないよね)

 千秋は白い息を吐いた。
 正面からやり合えばアロンダイトが圧倒する。

(斬られながら、少しずつ砂で削るか)

 あれだけ身体能力に優れていると、恐らく防御力も相当なものだろう。
 千秋の砂で作った剣では有効打にならないかもしれない。

(——膠着してるわね。何か状況を動かすきっかけがあれば……。
 それにしても旅館を吹き飛ばしちゃって。おかげで寒いじゃない……)

 …………は?
 千秋はアロンダイトから目を逸らした。
 作戦によるものではなく、純粋な驚愕によるものだった。
 右手が震えている。
 恐怖でもなければ、武者震いでもない。
 ——寒くて震えている。

(な、何この冷気は……!?)

 今は、屋外に出たからといって震える程の季節ではない。
 そもそも、魔法少女にはある程度の防寒性能がある。
 千秋もベリーダンサー風の恰好をしているが、今まで活動の中で寒さを感じたことがない。
 それが今は、寒い。
 否、もはや寒さは痛みへと変わり始めていた。
 周囲を見渡す。
 切断された柱が、崩れ落ちた屋根が、申し訳程度に残った床が
 ——一様に凍りついている。

(ヤバい、これはマジでヤバい……!)

 千秋に物理攻撃は通用しない。例え水をかけられたところで修復が遅れるだけで、無敵性は失われない。
 だが、駄目だ。
 凍るのは駄目だ。
 凍ってしまえば、砂の流体は、ただの固体となる。
 罅割れの音が響く。
 アロンダイトの顔面を覆っていた砂が凍っている。
 そうなってしまえば、後は早い。アロンダイトが指の力で強引に砂を引き剥がす。凍った砂に、元に戻ろうとする力は無い。
 幻想的な美しさで構成された顔を大気に晒し、アロンダイトは——後方を睨んだ。
 ゆっくりと、まるで散歩のように優雅な足取りで、一人の美女だった。
 白のケープコートにウシャンカを被り、デニールが濃い黒ストッキングを履いた、金髪碧眼の美女。
 現在のあにまん市ではいささか季節外れの恰好。
 にも関わらず、彼女の周囲は道も周辺の草木も、空気までもが凍りつく程の冷気に覆われていた。

(嘘でしょ……よりにもよって、彼女と鉢合わせするなんて……)

 千秋は、自分の悪運を呪った。
 彼女のことは——知っている。
 大手魔法少女事務所に属し、様々な伝説を築いた少女。
 曰く、凶暴なウェアウルフの群れを、生息している森を凍結させることで解決したという。
 曰く、『政府』に逆らった武装組織を、協力した魔法少女共々皆殺しにしたという。
 曰く、彼女の祖国では、政争に負けた者は、真夏のビーチに凍死体で発見されるという。
 冬将軍、氷の女王、白い死神——とある北の大国で、最強と謳われる魔法少女。
 ナターリヤ・ミシェンコフ、魔法少女名、クライオニクス。
 遍く生物が死に絶える『絶対』が、千秋とアロンダイトの前に顕現した。
 
◇

(さて、どうするか……)

 クライオニクスは、冨島千秋の天敵だ。
 砂を操る千秋にとって、万物を凍らせるクライオニクスは相性が悪すぎる。
 だが——相性差を覆す手段を持てないのならば、魔法国で犯罪の取り締まりなど出来るはずがない。

(どこまで食い下がれるかしら……)

 既に攻撃は開始されている。
 が、未だクライオニクスの真意は不明だ。闘争している二人の危険人物を倒しに着た正義の味方、という可能性もあるし、単純に温泉入りに来たらぶっ壊されて激おこなだけかもしれない。

(私としても、クライオニクスと戦闘はなるべく避けたいところ……)

 脳をフル回転させ瞬時に様々な策を模索する千秋と比較して、アロンダイトの感情はシンプルだった。
 クライオニクスが場を凍らせたことにより、アロンダイトは鬱陶しい砂のマスクから解放された。
 助けられた、とも解釈できる。
 それに対してアロンダイトは

「おい、誰がミーを冷やしていいって言った?」

 ——激怒していた。

「クソ人間が。弁えろ」

「ごめんなさい」

 クライオニクスの口から出たのは、謝辞だった。
 しかし、その眼はどこまでも冷徹であり、罠に嵌った獲物を見る猟師のそれであった。

「私は、寒いのが好きなの」

「クソ人間の好みとか知らねぇザンス」

「…………ふふ」

 クライオニクスは口元に手をやり、おかしそうに笑った。

「……ザンス……ふふ、ザンス……ぶふっ、ザンス……」

(あ、ツボに入ってる)

 氷の女王の意外な一面に、千秋は驚かされる。

(いや、年齢的には私と変わらないし……イメージと実像が乖離しているのって、よくあることだし)

 それこそ、名君と謳われた魔法王が殺し合いを開催するように。
 クライオニクスとの和解の可能性に希望を見出し始めた千秋とは裏腹に、アロンダイトは濃密な殺意をクライオニクスにぶつけていた。

「——おい、クソ人間。チミは今、高貴なる妖精語を冒涜したザンスか?」

「ぼ……冒涜してないザンスよ……ふふ、ミーは全然、チミのこと冒涜してないザンスよ……」

「——もういい」

 場の主導権は、クライオニクスが握っている。既に世界は冷え切っており、千秋もアロンダイトも魔法少女・妖精貴族の耐寒性能を上回られて冷却されている。
 容易には動けない。人間が極寒状態でパフォーマンスを発揮できないように、千秋もアロンダイトも、重いデバフを背負わされている。
 ——という千秋の想定は、外れていた。
 アロンダイトは、地を蹴った。

(なっ、あいつ、まだこんなに動けて……!)

 もはや魔法の国にも、貴族妖精は数える程しか居ない。そして彼女たちは人前に姿を見せることは少なく、魔法の国で働く千秋にも、そのスペックは把握できていない。
 貴族妖精とは、元来魔法の国における貴族階級であり、同時に戦士階級でもあった。
 今でこそ魔法の国の軍事力は魔法少女が担っているが、かつては貴族妖精が他種族との戦争や魔物との戦いに駆り出され、戦果を挙げてきた。
 人間界を超える異常環境が多く存在する魔法世界において、悠久の時を戦い続けた貴族妖精は、あらゆる環境への適応性を備えている。
 魔法少女さえ凍てつく環境においても、アロンダイトは人知を超越した身体性能を発揮する。
 クライオニクスは目を見開いた。
 柔術や剣術を習得しておらず、千秋のように物理攻撃を無効化する術を持たないクライオニクスにとって、身体能力が優れた存在と素手での肉弾戦は専門外だ。
 冷却状態での高速移動を、彼女は想定していなかった。
 アロンダイトは一瞬で距離を詰め、貴族妖精の誇りを侮辱した不埒者に粛清の一撃を放つ。
 ——放とうとした。

「貴様っ……!」

 氷の翼が、それを阻んでいる。
 アロンダイトの動きよりなお速く、クライオニクスの背から生えた翼は、本体の身を護るべく、殻の役割を果たした。
 轟音と共に羽が舞う。
 アロンダイトの一撃は、クライオニクスの翼の一部を破損させた。
 ショットガンの一撃ですら傷一つつかない翼に、確かな損害を与えたのだ。

 「思ったよりやるのね」

 本気で関心したように、クライオニクスは呟く。

「けど、——触れたわ」

 クライオニクスの言葉は、既にアロンダイトに届いていなかった。
 其処に在ったのは、氷像。
 限りなく絶対零度に近い超低温で凍らされた貴族妖精の姿だった。
 クライオニクスの魔法、『触れたものを凍らせるよ』。
 触れずとも、冷気により万物を冷却させ、フィールドを強制的に作り替える。
 それでもなお抵抗する者は、直に触れることで超低温で凍らせる。
 そして、「触れる」の対象は自身の肉体だけでなく、一瞬で伸縮する、背から生える氷の翼も該当する。
 遠ければ冷気で凍死し、近づけば翼で即死する。
 徹底した理不尽を、クライオニクスは敵対者に強要する。
 興味失ったようにクライオニクスは視線を千秋に向けた。

「クライオニクス……」

「何かしら、冨島千秋」

(っ……、向こうもこっちのことは知ってるのね、じゃあブラフは使えない……)

「クライオニクス、私はゲームに乗ってない。今あなたが倒したのは、運営側の魔法少女よ。……情報交換をしようじゃない」

「いえ、情報交換はしないわ」

 クライオニクスはコートに手を突っ込んだまま、白い息を吐いた。

「冨島千秋。あなたの持っている情報を全て渡しなさい」

「……そうしたら見逃してくれるのかしら」

「…………? 何故私があなたを見逃さなくちゃいけないの?」

 首を傾げるクライオニクスに、千秋はおいおいと内心で肩を竦める。

(本当に女王様ってわけ……アロンダイトといい、このゲームには人格破綻者しか居ないわけ)

 ただ、これでクライオニクスのスタンスは把握できた。
 彼女はゲームに乗っている。

(……どこまで足掻けるか分からないけど、万策尽きたわけじゃない。……私が今、出せる手は)

 少しでも場を引き延ばすべく、千秋は口を開こうとし。
 ——世界に、炎が灯った。
 其れは、流星の落下に似ていた。
 空から堕ちてきた火の玉は千秋とクライオニクスの間に落ち、周囲を炎で染め上げた。
 冷え切った空気が、暖められる。

(っ、動く……)

 第三者の乱入、そして炎で周囲を焼き尽くそうとはしない配慮から、千秋は瞬時に炎の主を味方と判断した。
 千秋の行動は素早かった。
 自身の足元に疑似的な砂嵐を出現させ、全力でクライオニクスから距離を取る。
 同時に、彼女の死角から砂による一撃を浴びせる。
 前者は上手く行った。
 籠める魔力は一瞬だったため、距離は十メートル程度しか開けられなかったが、それでもクライオニクスから距離を取ることには成功した。
 後者は失敗した。
 確かに死角から攻撃したにも関わらず、そして弾丸並の速度による一撃であったにも関わらず、翼は瞬時に対応した。
 砂が氷へと変わる。

(クライオニクスの視線すら動いていない……自動防御ってわけね)

 炎の中から現れたのは——犬である。
 機械仕掛けのシェパート犬。

(誰かの使い魔かしら)

「ふふ、可愛いワンちゃん……でも、いいのかしら」

 自身の天敵とすら言える、炎系の敵を前にしも、クライオニクスは余裕を崩さない。

「——熱量、足りないわよ」

 炎が、一斉に消滅する。
 一度は暖められた空気が再び冷却される。

「それに、冨島千秋。まだそこは、私の領域よ」

「くそっ……」

 再び、四肢の自由を奪われる。
 底が知れない。
 千秋が今まで相対した凶悪犯でもここまで強力な魔法少女は片手の指で数える程しかいない。
 犬が、千秋の周囲に炎を向けようとする。

「いい! 私に構うな! それより、翼に気をつけて!」

 千秋の言葉に、弾かれたように犬はその場を飛び退く。
 犬が居た場所を、伸びた翼が掠める。
 触れた場所は、一瞬で凍りつく。
 千秋の逃走を阻止し、彼女を助けようとする犬を奇襲するクライオニクスの作戦だった。

「あら、速いわ」

「私の名は、ジャスティスファイア」

「喋れるのね、私の名前はクライオニクス。魔法少女名にジャスティスをつける自信過剰ぶり……もしかしてアメリカ人かしら」

「ご明察です……じきにこのゲームは米軍の介入によって幕を下ろします。優勝を狙っても無益です」

「そう、米軍が……」

(え、マジで……そんなの出来るの?)

 思いがけない言葉に千秋は驚愕する。米軍介入。
 もし本当なら心強いが……。

「軍隊は、嫌いだわ……」

 クライオニクスの声色は、微かに沈んだ。

「それに、ゲームが壊されてしまうと、困る……」

 だから、その前に全てを凍らせましょう。

「このゲームは絶対に破壊します。私の正義にかけて」

 だから、邪魔する一切は燃やし尽くします。
 氷の魔法少女クライオニクス、炎の魔法少女ジャスティスファイア。
 相反する概念を体現する二人の強者が激突する。
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