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  • vsメンダシウム(前編)

魔法少女を集めてバトロワするスレ@ ウィキ

vsメンダシウム(前編)

最終更新:2025年02月16日 19:21

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だれでも歓迎! 編集
 夢の中にいる、と浅悧は思った。
 四肢に力は入るし、頭も冴えている。意識も明瞭だし、頬を抓れば——ちゃんと痛い。
 ああ、しかし。
 浅悧には、前科があった。
 夢遊病状態となり、人を傷つけた。
 ならば、今の状態が夢ではないと、どうして言えよう。
 ——枕元に、透明人間が立っている。
 姿は見えない。されど、浅悧のベッドには不自然な凹みが発生している。まるで、人がそこに立っているかのように。

「あ、あなたは……もしかして」

 浅悧はおずおずと透明人間に問いかけた。

「幽霊……ですか?」

「…………思い当たる節でもあるの?」

 透明人間は、言葉を発した。
女性の声だ。呆れているような響きはあったが、怒りや嘆きは感じられない。
 けれど、それは浅悧がそう感じられないだけで、透明人間が本当に怒りや嘆きを感じてないと、断言できるものではない。
 それに、思い当たる節は、ありすぎた。
 浅悧には、夢遊病の症状がある、らしい。
 断言できないのは、夢遊病中の記憶が無いからで、周囲からの言葉だけで、浅悧は自己を夢遊病だと理解していた。
 ただの夢遊病なら、まだ良かった。
 浅悧は、夢遊病中に人を襲ったのだという。

『その場に居合わせた人の証言なんですけどね……』

 と、医者は言った。

『東チームと、西チームで抗争をしていたそうなんです。ええ、どちらも不良、いわゆるレディースですね。女同士といっても不良同士、カミソリとか鉄パイプとか持ち出して、まぁ殺しまではいかないまでも、相手を半殺しにしてやると、そういう覚悟で集まっていたと、その、居合わせた人は言うんですね』

 きっと、その居合わせた人、というのは、どちらかのチームメンバーだったのだろう。
 浅悧は何となく察したが、医者に問い質すことはしなかった。

『で、居合わせた人が言うには、西チームは繁華街で集まって作戦を立てていたと。といっても大した作戦じゃなくて、要は誰が先陣を切るのか、なんて程度の話だったみたいですけどね。まぁ先陣を切るということは一番殴るし一番殴られるしで、病院送りにも少年院送りにもなりやすい危険な立場なんですね。で、互いに推薦しあい、要は押し付け合いをしていた時に、仲間から連絡があったと。
 東チームが何者かに襲撃を受けていると言うんですね。
 メンバーの誰かが抜け駆けしたのかと即座に確認したけれど、ちゃんと揃っている。
 自分たちのチームにも入れないようなシャバイ奴が特攻したのか。あるいはあにまん市外部のグループ、それともヤクザでも出てきたのかと西チームは話し合って。
 この機を逃さず、東チームを徹底的に潰そうと、バイクに飛び乗って学生街を目指したと。東チームは学生街を縄張りにしていたそうですからね。
 彼女たちが駆け付けたときには、もう終わっていたそうですよ。
 全滅、だったそうです。
 東チームのメンバーが全員、毒ガスでも撒かれたみたいに倒れていて。
 ——寝間着姿の貴方が、鉄パイプを持って立っていたと。
 鉄パイプは血で真っ赤に汚れていたそうですよ。
 女だてらに喧嘩で慣らした西チームのメンバーが、全員沈黙してしまったんですってね。
 それでもリーダー格の一人が、度胸を示すためにか、貴女に近づいたそうです。
 なぁこれ、あんたがやったのかい? 気合入ってるじゃねぇか、アタシらのチームに。
 ヒャハ。
 と、奇妙な声が聞こえて、次の瞬間、リーダーは倒れていたと。
 恐らく鉄パイプで殴りつけたんでしょう。ただね、速すぎて見えなかったと、居合わせた人は証言してますね。
 まるで魔法みたいだったと。
 そこからはもう酷いものだったそうですよ。
 幼子のように逃げ回るレディースメンバーを貴女は一人一人追いかけまわして、一撃で昏倒させていったと。
 15人はいた西チームのメンバーは、1分も経たないうちに証言者を除いて、全滅してしまったそうです』

 浅悧は、診察室でその話を聞いていた。
 悪夢のような話だった。
 けれど、医者や証言者が言うには確かに現実で、確かに寝巻で彷徨う浅悧の姿は監視カメラに映っていて。鉄パイプには浅悧の指紋が検出された。
 本来なら傷害罪で少年院行きは確定だった。
 夢遊病という診断が下されるまでは。
 責任能力は無い、ということになった。
 数多くの人間を殴打しておいて、事件から一週間経った今でも意識が戻らない人が居るにも関わらず、無罪放免。
 それは、夢の中の出来事が、現実を害さないことによく似ていた。
 けれど、殴ったのは確かに浅悧で、そして他人を傷つけるために無意識で振るわれた技術は——きっと、剣道によるものだ。
 浅悧は、試合への出場資格を失った。
 剣道はあくまで武道であり、剣道部とは教育の場である。
 無意識とは言え他人に暴力を行使した浅悧が出場できるはずがなかった。
 そして浅悧は、家に閉じ籠るようになった。
 眠ることを恐れてカフェインを過剰に摂取し、それでも眠気は我慢出来て二日であり、三日の日には気絶に近い眠り方をする。
 そんな眠りを三回繰り返し、ある日恐怖と共に目を覚ましたとき、枕元に透明人間が立っていたのだ。

「わ、私が襲った人の、幽霊、ですか……?」

「……あの子たち、死んだの?」

 透明人間はやや戸惑っているようだった。

「い、いえ、亡くなったという話は、聞いてないです。で、でも、生霊とか、そういう類なのかな、と……」

「……私は、幽霊じゃないよ」

 と、透明人間は言った。

「私は魔法少女、トリックスター。山田浅悧、君は、魔法少女に選ばれた」

◇

魔法少女ティターニアは、学生街のとあるビルの屋上に立っていた。

「魔法王……」

 その声は、怒りで震えている。

「よくも私の教え子を……」

 殺し合いを宣告された最初の場所で、ティターニアは何人もの自分の教え子や顔見知りを発見していた。
 付き合った期間に濃淡はあれど、いずれも大切な者たちばかり。

(なのにどうして、私は動けなかった……!)

 ティターニアの魔法、『魔法の大剣からビームが撃てるよ』。あまりにもシンプルでされど強力な魔法。
 普段のティターニアなら相手が魔法王といえどもビームをぶちかましたはずだ。
 実際そうしようとはした。
 けれど、ビームどころか大剣さえ出現させることが出来なかった。
 結果、ティターニアは何も出来なかった。
 みすみす殺し合いを宣告され、あにまん市に飛ばされて、ようやく戦闘態勢だ。
 遅い。

(私は……臆した)

 魔法王に対して、素手で勝てないと理解し、戦おうとしなかった。
 結果、教え子たちは市内に散り散りとなり、今こうしている間も命を散らしているのかもしれない。
 ティターニアが恐怖に抗い、実力差を気合で埋めて魔法王を倒していれば……。
 否、気合で埋まらなかったにしてもティターニアの特攻に賛同する魔法少女が多く出たかもしれない。
 ティターニア一人では無理でも、他の魔法少女たちも協力してくれれば。
 あるいはティターニアに誰も賛同せず、無為に殺されたとしても。
 見せしめとして処刑されたとしても。
 教え子たちに勇気を与えることはできただろう。
 けれど、ティターニアは何もしなかった。

(まったく、みんなの師匠とか、あにまん市最強とか煽てられてもこの体たらく。私は、私がくだらない女だってこと、誰よりも理解してる)

 教え子がテンガイに殺されたときも、守ることも仇を取ることも出来ず。
 部活の顧問として面倒を見ていた山田浅悧が暴力事件を起こしたときも夢遊病の兆候に気が付けず。
 才能に溢れていたアレヰ・スタアにも逃げられ。
 他にも諸々、数えきれないくらいの失敗が、ティターニアを構成している。
 元々、ティターニアが魔法少女になったきっかけだって、いじめっ子に復讐するためだ。
 そのいじめも、いわゆる学園ドラマで展開されるような壮絶で悲惨ないじめではなく、近所の一歳年下の女の子にいつも揶揄われ、取っ組み合いになってボコボコにされたという何というか、当時9歳ということを考えても、情けないとしか言いようがないものだった。
 色んな魔法少女になったきっかけを聞いてきたが、年下の女の子にやり返すためという理由は未だ聞いていない。
 結局いざ魔法少女になってみればちょっとしゃれにならないくらい身体能力が向上していて、こんなパワーで人間殴ったら死ぬだろと理解できたので、いじめっ子への復讐は出来ていない。
 そのいじめっ子も今は魔法少女をやっているのでいつか決闘と称してボコボコにしてやると暗い欲望を抱いている。槍より剣の方が強いということを心に刻んでやるのだ。
 我ながら小物すぎて情けなくなるが、それがティターニアの本質だから仕方ないのだろう。

「さて、どうするべきかな……」

 教え子が心配だ、という想いがある。
 けれど、教え子にはティターニア流戦闘術を叩き込んでいるので、大丈夫だろうという考えもある。
 それより、最初の会場に居たハスキーロアのような幼い魔法少女を保護するべきか。
 あるいは、34人の魔法少女が一斉に殺し合えば、街がただで済むとは思えない。
 だから、街の人々を魔法少女の殺し合いから守るという選択もある。
 教え子には任せておけないような強くて凶悪な魔法少女……あのくそテンガイのような輩を始末して回る……という案もある。
 ティターニアはしばし悩み。

「よし、全部やるか」

 馬鹿を晒していた。
 戦術はともかく、戦略を考えることは苦手だ。教師としても毎回定期テストの前に慌ててテスト範囲まで進めることに定評がある。

「とにかく視界に入ったものを順番に片づけて行きましょう」

 まずは深夜の学生街のパトロールだとティターニアは両足に力を込め跳躍しようとしたところで

「先生!」

 背後から声をかけられた。

「山田さん」

 頭からうさみみを生やした魔法少女、【山田浅悧】が安堵した表情でこちらに近づいてくる。

「よかった……私、すごく不安で……」

「山田さん、無事で良かったわ……」

 師匠と弟子が即座に合流できる。それは何という幸運か。
 二人は固く抱きしめ合う。
 幸先が良い、とティターニアは思う。
 このペースで教え子を見つけていけば、きっと誰も死なずに帰れるに違いない。
 ヒャハ、という声が聞こえた——ような気がした。

◇

 学生街、とある廃ビル。
 魔法少女、メリア・スーザンは膝を抱え俯いていた。
 突如宣告された殺し合い。
 呪いをかけられ、自分より遥かに強い魔法少女たちと戦わされる。
 しかも首魁は、魔法の国の王様と来た。
 コンビニバイトが本社の社長と喧嘩をするようなもので、どう考えても勝てるはずがない。
 そういった絶望が、感謝や正義の行いを好むメリア・スーザンを俯かせる。

「けど……」

 と、メリア・スーザンは顔を上げた。

「ここでじっとしていても、しょうがないよね」

 矛盾や悪を憎む正義の魔法少女がメリア・スーザンだ。
 きっと他にも正義の魔法少女はたくさんいるはず。彼女たちと協力すればきっと魔法を倒せる……ことは無理だとしても、逃げることくらいなら出来るはず。

「私は魔法少女なんだから、立ち上がらないと……」

 あの日、魔法少女になった日から、メリア・スーザンは正義のために……。

「………………あれ?」

 私はいつ、魔法少女になったんだっけ?
 何故か、いつ、どんなきっかけで魔法少女になったのか、メリアは思い出せなかった。

(……まぁいいや! そんなの、今重要なことじゃないし、それより他の魔法少女と合流を……)

「ガハハハハハハハハハ! 俺様登場!」

 突如メリアの前方の壁が吹き飛んだ。
 ぎょっとしてメリアは座り込んだまま後ずさりする。
 現れたのは、背の高い大人だ。
 白い修道服を纏い、後ろに後光を浮かべている。
 それだけなら大人しそうな貞淑そうな印象を与えるが

「お! 第一村人発見! おいお前! 俺と戦え!」

 豪傑……いや、餓鬼大将。外見とはあまりに異なるギャップに、メリアは戸惑うしかなかった。

「え、え、え? な、何でですか?」

「あぁ? 俺様が敵を倒してスカッとしたいに決まってるからだろ? よくわからねー爺さんに命令されて苛々してんだよ! どうした? 早く襲って来いよ!」

「いや、襲わないですし……私、殺し合い、乗ってないですし……」

「え、それって選べるのか!?」

「ま、まぁ私は乗りたくないし、殺しも……なるべくしたくないです」

「そっかぁ……まじか、殺し合いだから全員襲ってくるもんだと思ってたぜ……。やる気ねぇやつをこっちから襲いかかって追い回すのもちょっと違うしなぁ……」

 明らかにテンションを下げ始める修道服の魔法少女。

(……正義の、じゃないけど、第一印象より危険な奴じゃないのかも……)

「なぁ、エネミーとかその辺にいなかった? 今夜はそれ破壊してすっきりするわ」

「え、エネミーですか……」

 勿論心当たりはない。が、エネミーは魔法少女共通の敵であり、それを破壊してくれるというなら、この修道服の魔法少女はメリアの味方だ。

「あの、私も一緒にエネミー退治を」

「あぁ!? 俺様の獲物獲ろうとしてるんじゃねぇぞ!」

(しまった、藪蛇だった……)

「俺様のエネミーは俺様のもの! お前のエネミーも俺様のもの!」

 修道服の魔法少女はそう言うと、さっと右腕を掲げる。
ギャギャギャギャギャ! と電流をスパークさせるような音が響き、修道服の魔法少女の手には、光の剣が出現していた。

(光を収束させて……違う、あの剣は……)

 ただの光っている剣、ではない。
 エネルギーを出せる魔法を持つがゆえに、メリアは眼前で展開された光の剣がどういう代物か理解してしまう。

(なんて高濃度な魔力……こんなの振り下ろされたら、私が……いやこのビルごと吹き飛ぶ……!)

「俺様の名は天城千郷! 全てをぶっ壊す、魔法少女だ!」

 かくして、破壊の剣が振り下ろされ——

「——はしゃぎ過ぎよ、お嬢さん」

 メリアを守るように立ったのは金髪碧眼、青いドレスの騎士だった。
 彼女は黄金の大剣で破壊の剣を受け止め、余裕の笑みを浮かべ

「ってうおおおおおおおおおおおおおっ!? 重い重い重い!? ちょ、やばい、あんた、どれだけ過剰に魔力込めてるのよ! こんなもん屋内で振り回すな馬鹿!」
余裕は一瞬で崩れ、額に汗を浮かべながら、必死の形相で破壊の剣を受け止め続けるティターニア。

「ぎゃははははは! やるじゃねぇか! 俺様の破壊の剣を正面から受け止めるとは! こんなに破壊しがいのある奴は久しぶりだ! 俺様の名は天城千郷! 魔法少女名なんか必要ねぇ! 全てを破壊する女、天城ちさ」

「マジカルアッパー!」

「ぐはぁーっ!?」

 隙を突いたティターニアのアッパーが千郷の顎にクリーンヒットし、脳をシェイクする!
 衝撃で垂直に打ち上げられた千郷に、ティターニアは駄目押しの追撃を行う!

「マジカルドロップキック!」

 修道服に包まれた腹部に、ティターニアの両足が突き刺さる。
 身体をくの字に曲げたまま天城千郷は砲弾のように吹き飛び、ビルの壁に叩きつけられる。
 壁を破壊しながら隣のフロアを跨いで倒れ込む千郷は、既に意識を失っていた。
 変身も解除され、制服を着た、小柄で大人しそうな女子中学生の姿に戻る。

「……ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」

 肩で息をしながらティターニアは何とか呼吸を整え

「……私の名前はティターニア。魔法王を倒すために戦っている、正義の魔法少女よ」

 大人の余裕に満ちた笑みを浮かべて、メリアに手を差し伸べたのだった。

◇

 魔法国の首都、霊都エメラルド。
 その構造は何故か、日本の地方都市に酷似している。ただ一つ違う点は、中央に聳えるはAタワーではなく、魔法王の城が聳え立つ。
 上空に暗雲が立ち込める様子は、まるで魔王の城のようだと人々は噂する。かつては暗雲などめったにかからず、快晴の中で白亜の城が照らし出されていたのだが。
 魔法王の城内部。
 北の塔、談話室。
 そこには、四人の魔法少女がテーブルを囲んでいた。
 漆黒の肌に黄金の魔法陣を刻み、黒山羊の角と蹄を持つ、正しく人外という容貌の魔法少女、名をパンデモニカ。その正体は——正真正銘の、悪魔である。
 青色の作業服と目元まで隠れるキャップ、ケモ耳と尻尾を生やした魔法少女、名をああああ、その正体は——温泉巡りが趣味の15歳、本名は不明であり、以前とある魔法少女に人間としての名前を聞かれた際には、「あ」とだけ答えている。その眼はデスマーチを超えたサラリーマンのように澱んでいた。
 クラシカルメイドスタイルを華麗に着こなす麗人、名をオートクチュール。その正体は——魔法少女衣装専門の仕立て屋、魔法の国生まれ魔法の国育ちの生粋の魔法少女、本名を若麻績裁華という。優雅に椅子に腰かけながらその手は超高速で裁縫をしていた。
 フリルが少な目なこと以外は正統派そのものといった外見の魔法少女、名を熾店長オシウリエル。その正体は——天才女詐欺師、鷺島鷽。その舌は、魔法王でさえ騙してのける。
 テーブルには一つの水晶が安置されている。
 そして、その水晶からはSFの立体ビジョンのように映像が浮かび上がり……遠く離れたあにまん市で行われている魔法少女のバトルロワイアルを映し出していた。
 パンデモニウムは殺し合いを楽し気に眺め、熾店長オシウリエルもポーカーフェイスの微笑を浮かべて参加者の饗宴を見守っている。
 オートクチュールも笑顔を絶やすことなく裁縫を続け、ああああはキャップの中からおどおどとした視線を他の三人に向けていた。

「あ、あの……サーセン」

「どうしたああああ?」

 パンデモニカがああああの言葉に反応する。それだけでああああはびくりと身体を震わせた。

「何か面白いことを思い付いたのか?」

「いや、えっと、そーじゃなくてですね、あの、あたし、ここにいていいんすか? 皆さんと違って、ただの雑用なんすけど」

「もちろん大歓迎だ。頭数が増えればそれだけ面白いことが増えるしな」

 刹那的享楽主義のパンデモニウムは、とにかく面白いことを優先する。
 雑用として運営で働きだして1週間になるが、ああああは既にパンデモニウムの性格は把握していた。
状況を的確に把握できない奴から死んでいく。それを、あの【マンション】でああああは痛いほど理解していた。

「あっ、駄目だ、思い出してきたっ、オオカワウソ、オオカワウソ、オオカワウソ!
 あいつのせいであたしがどんな目に遭わされたかっ、あああああ畜生畜生あいつ、あたしを盾にして命がけの偵察させておまけに非常食に……! 命からがら逃げだしたのに何であたしはこんな目に、何でまたあいつと関わる破目に!」

 籍を切ったように溢れ出す元雇い主への呪詛。それをパンデモニウムは楽しそうに眺め、オシウリエルは

「ククク……駄目だねぇ……」

 と、笑った。

「駄目っすか? 何が駄目なんすか? あいつマジであたおかだから本気で関わりたくねぇ、あいつと関わりたくないって理由でデスゲームで優勝目指せるくらいマジで関わりたくねぇんすよぉおおおおお! 何で分かってくれないんすか!」

「駄目駄目……ああああ君……欲望の解放のさせかたがへたっぴさ……!
 ああああ君が、求めてるのはオオカワウソから逃げることじゃない……」

 そう言って、オシウリエルは水晶に映し出された映像に指を向ける。

「ああああ君が、求めているのは……オオカワウソを始末すること……! 
 それでこそ、今後の人生の励みになるってものさ……!」

「それができたら苦労しねぇっすよあいつ際限なく増えるんすよ悪夢かっての」

「ククク……それは普段の話……。ここは、デスゲーム……! オオカワウソの増える量は一定さ……! 普段は無理でも……デスゲームなら……確実に始末できる……!」

「…………マジすか」

 ああああの澱んだ目に希望の光が戻る。

「今までの雪辱を、倍返しにできるんすか!」

「ああ……可能だとも、ああああ君……さぁ、オオカワウソがどうなっているか見物しようじゃないか……!」

 オシウリエルに促され、ああああは水晶を覗き込む。
 そこにはオオカワウソがあにまんマンションに入ろうとしているところであり、
 一気に嫌悪感が増大したああああは現在の状況を忘れて、思わず談話室の床に向けて唾を吐いた。
勢いよく吐き出された唾は——床に寝っ転がっていたメンダシウムの顔に命中する。

(な、なんだとぉおおおおおおおおおおおおおおお!? い、いつからそこにってかやべぇ、殺される殺される殺される)

 メンダシウムは、タキシードのポッケから優雅にナプキンを取り出し、顔面についた唾を拭った。

「雑用からの唾攻め……悪くない♡」

 満足したのか、メンダシウムは颯爽と立ち上がる。
 そして既に土下座を決めているああああの背中を踏みつける。

「ふーむ……雑用を踏みつけても、当たり前すぎて満足感は薄いな……♠」

 必要なのはギャップだよねぇと肩を竦めながら、メンダシウムはああああの背中から足を降ろす。

「さて、私の分身ちゃんはどうしているかな……♦」

 映像を見上げる、メンダシウムは、自身の分身、メリア・スーザンを見つけ——同行者を確認し、眉を顰めた。

「良くないなぁ……♧」

「何が良くないんだい?」

 パンデモニカの言葉に、メンダシウムは首を振る。

「よりにもよって合流者はティターニアか……♧ 彼女と一緒にいると絶望する姿は中々見られないかもしれないと思ってね……♧」

「そうかな? 頼りになる同行者が死んだりしたら、そのギャップで絶望はより深くなるんじゃないかい?」

「パンデモニカ……君、分かってるじゃないか♡ 後で私の部屋に来なさい♡ じっくりと私を調教させてやろう……♡」

「んー、面白そうだけど殺し合い観てたいからパスで」

 けらけらとパンデモニカは笑う。

「だが、メリア・スーザンは私の分身体。このままティターニアと同行し続ければ——きっと、彼女について行けずに死ぬことになる♧ それも、彼女の胸の中でね♧」

 面白くないなぁ、とメンダシウムは唸った。

「はっきりいって、メリア・スーザンのスペックでは生き残ることは不可能。だからこそハイペースで地獄を感じて欲しいのだけど……♦」

 顎に当てを当て考え込むメンダシウム。
そして、何かを決意したのか、よしと頷いた。

「ちょっと行ってくる♦」

「ど、どこへっすか」

 と土下座を解除したああああが訪ねる。
 メンダシウムは妖しく笑った。

「あにまん市……♡」

◇

 学生街、とある廃ビル、3階。
 気絶した千郷を三人で見張りながら、ティターニア、メリア、浅悧は情報交換を行っていた。

「つまり、天城千郷もゲームには乗ってないのね」

「……私もよく分からないんですけど、その、戦いたい、じゃなくて、破壊したい……? そういう欲求が強いみたいで。ただ、自分から襲う気は無い感じですか」

「でもスーザンさんに激ヤバの剣振り下ろしてたわよね? あれは?」

「あ、メリアでいいです。あれも、殺しにかかった、っていうより、その——エネミーを独り占めしたかったみたいで」

「……普通に意味わかんないんですけど、エネミーってチーム組んで狩る方が効率的ですよね」

「あー、山田さんにはまだ教えてないけど、そういう風には考えない魔法少女もたまにいてね。エネミー倒せば魔力の足しになるし、強いエネミーを倒せば、場合によっては一気に大量の魔力を獲得できるじゃない? だから、単独でエネミーを狩りたがったり、本当に酷いときは、自分以外がエネミーを狩るのを邪魔する厄介なのもいるのよ」

「天城千郷もそのタイプってことですか……?」

 未だ千郷は気絶から目覚めない。先ほど浅悧が調べたときは、奥歯が一本折れていた。
 こんな大人しそうな中学生が可哀そうにと浅悧は思うが、ティターニア曰くビルごと消し飛ばすほどの一撃を人に向けようとしていたらしいので、自業自得とも思う。

(分からないな。どうして人にそんな暴力を向けられるんだろう?)

 浅悧は剣道部だ。今は休部中だが、それでもエースと呼ばれる程度には研鑽してきた。
 いくら防具で固めていようと竹刀で叩かれれば痛い。自分が痛いということは、自分が叩いている相手も痛いはずだ。
 竹刀で人は死なない——と、言うつもりはない。
 死亡事故だって発生している。竹刀だって凶器に成り得る。
 だから、分からない。
 ビルごと消し飛ばすような一撃を、人に振り下ろされるようなメンタルを。

(こんな、大人しそうな子が……)

 偏見かもしれないが、教室の片隅で文庫本でも読んでいそうな、大人しそうな女の子だ。
 とても、ティターニアやメリアの言うような危険人物には見えない。

(あるいは、この子も私みたいに……)

 夢遊病。
 今眠っている(というか気絶している)少女にとっては、変身後の自分は全くの別人なのかもしれない。
 浅悧がそうであるように。
 ——鉄パイプを他人に振り下ろせる人物が、自分と地続きなはずがないのだから。

「……とりあえず、今後の方針なんだけど。私のマンションに行かない? 冷蔵庫に魔力草が幾つか残ってるし、私の教え子が何人か向かってて合流できるかもしれない」

 ゆくゆくはそこを拠点にしてゲームをひっくり返したい、とティターニアは拳を握った。

(不思議……魔法の国の王様に呪いをかけられて、殺し合いを強制されてるって、すごく絶望的な状況なはずなのに……先生と一緒だと安心できる)

 本当に、すぐに合流できたのは幸運だったと、浅悧は思う。
 ヒャハという声がどこかで聞こえた——ような気した。

(この人、凄い……)

 と、メリア・スーザンは思った。
 ティターニアと情報を交換しながら、メリアは自分を救った魔法少女が学校の先生で、魔法少女暦18年の大ベテランということが分かった。
 メリアも魔法少女になって、何年も経つが、自分より経験豊富な魔法少女というのは頼りがいがある。

(……あれ? 私、いつから魔法少女だったっけ?)

 ふと、疑問にかられて記憶を探ってみたが、まったく思い出せない。

(……さっきあんな危ない目に遭ったからかな。もう少し落ち着いたら思い出すかも)

 自分が思っている以上に動転しているようだ。やれやれ、これでは先が思いやられる。
 私、メリアは正義の行いが好きで、悪を憎む、趣味が人助けの正統派魔法少女なのだから。
 ティターニアのように、私も他の人を助けないと。
 だってそれが私だから。

「魔力草ですか……あれ、激マズですよね」

「文句言わないの山田さん。大丈夫よ、マヨネーズかけまくれば何とか食べれるんだから」

「マヨネーズかけまくったもの美容的にも健康的にも食べたくないんですけど……まぁ、そんなこと言っている場合じゃないのはわかりますけど」

(魔力草……知らないけど、そんなに不味いんだ? でも、人助けをするためなら、それくらいは我慢しないとね)

 どうせなら、私の好きな食べ物であるあれみたいに……。
 私、好きな食べ物って何だったっけ……?

(まぁ、そんなの考えても、今この状況で食べられないもんね。じゃあ思い出すのは後回しでいいよね)

 ——メリア・スーザンには好きな食べ物も、嫌いな食べ物も設定されていない。
 とある魔法少女の分身は、未だ自分の正体に気づかない。

「よーし、それじゃあ行きますか。二人とも私のマンション着いたら仮眠を勧めるわ。変身している間は一週間ぶっ通しで起きてても問題ないけど、何かのきっかけで変身が解除された時にその場で寝落ちすることもあるから。マジで意識飛ぶわよ」

 まぁそんなに長時間もこんなゲーム続けさせないけど。
 そう言って、ティターニアはフロアの出口へ向かって歩き出す。
 むにゅ。
 と、靴裏から柔らかい感触が伝わり、ぎゃっ! とティターニアは慌てて右足を上げた。
 ——いつからそこに居たのか、首輪を嵌めたタキシードの少女が寝そべっている。

「え、嘘!? ごめんなさい! あの、痛くなかった? 悪気があったわけじゃないから……」

「謝る必要はないよ、ティターニア……♦」

 むくりと少女は起き上がる。
 そして静かにナプキンを取り出すと、上品に顔を拭う。

「ふむ、参加者による顔踏みプレイ……悪くない♡ ただ、もっと強く踏んでくれて良かったのだよ? 私の顔が醜く歪むくらい強く……♡」

「……えっと、その、怒ってはいらっしゃらない?」

「まさか、悦んでいるのさ♡」

「……そうですかお怪我がないようでなによりですでは私はこれで失礼します私の醜態を冗談で流していただきありがとうございます以後こういったことのないように反省し善処していきますね」

 早口で定型文を呟くとティターニアは千郷を背負い、浅悧とメリアにアイコンタクトでさっさとここから出ようと合図する。
 突如現れた変態に思考を停止していた二人もようやく我に返り、三人の魔法少女はそくそくとフロアから出ようとする。

「待ちたまえよ、ティターニア♦」

 ティターニアは冷や汗をかきながら嫌そうに振り返った。
 変態に名を把握されている。
 殺し合いとはまた別種の、されど同レベルに危険な状況にティターニアは警戒を強める。

「あの、何か……?」

「私も魔法少女さ。名を、メンダシウム♦」

 聞いたことのない名だった。

(まぁ、魔力的に魔法少女なのはわかってたけどさ)
「魔法少女ティターニア。貴女もプレイヤーでしょ?」

「いや、違う……♧」

(あれ、非参加者にゲームのこと話すと死ぬんだっけ? あれ嘘? もしかして私ミスった?)

 もしかしてペナルティ触れちゃった? と顔を青白くさせるティターニアに

「私は運営側……魔法王の配下の者だ♦」

 メンダシウムは楽し気に言った。

「————」

 一瞬で、ティターニアの空気が切り替わる。
 どこかコミカルさを漂わせていた表情が、熟練の戦士の表情に切り替わる。

「——何の用?」

「何、ちょっとしたテコ入れさ♦ このままだと私の望まない展開になりそうなのでね♧ せっかく殺し合いを開いたんだ、最高の展開を観たいだろ?」

 それを聞いたティターニアは、抱えていた千郷を浅悧の方へ投げる。
 難なくキャッチした浅悧は先生? と問いかけた。

「——山田さん、メリアと天城千郷を連れて逃げなさい。できるだけ遠くに、できるだけ早く」

「先生、私も戦います!」

「ティターニアさん、私も……!」

「——駄目よ。こいつの相手は私が『全力で』やるわ」

「っ……!」

 全力。
 それは、遠回しに浅悧とメリアが居ると足手纏いになるという宣言だった。
 短くない時間を共に過ごした浅悧はそれを理解してしまう。そして、市内最強ティターニアの全力戦闘に自分は付いていけないことを。

「……先にマンションへ向かってます!」

「で、でも山田さん、ティターニアさんを一人残しては……!」

「いいの、メリアさん! 先生は最強だから、絶対負けないから……!」

 メリアの手を引き、浅悧はフロアを出ていく。
 振り返ることも、ティターニアに激励を送ることもない。
彼女の教え子である山田浅悧は知っているからだ。
 抜けているし誤魔化すことも多いし作るテストも誤字脱字が酷い、正直人としては色々残念だけど——実力は本物だ。
 ティターニアが負ける。そんなことは、天地がひっくり返ってもあり得ない。
 もはや信仰に似た思いを抱えて、浅悧は少しでも距離を取ろうとする。
 ティターニアが遠慮なく本気を出せるように。
 手を引かれながら、メリアもまた悩んでいた。
 正義の魔法少女として、あの場に留まって一緒に戦うべきだったのではないかと。
 足手纏いは百も承知。けれど、それでも、メリア・スーザンの『設定』なら、あの場で逃げずに戦う方が……。

(それに……)

 現れた変態タキシード運営魔法少女。
 何故か彼女には、強烈な既視感があるのだ。
 初対面のくせに、自分は彼女を知っている。
 何故か、知っている気がする。
 メリアは未だ、残酷な真実に気づかない。
残ったティターニアは大剣を床に突き刺し、両掌を柄頭に載せる。そして、メンダシウムが二人を追うのを防ぐように、逃げて行ったフロアの出口を通せんぼするように立ち塞がる。
 それを、メンダシウムは楽し気に眺める。

「……いやにあっさり逃がさせてくれるじゃない? 私と二人きりになりたかったのかしら?」

「君とのプレイは楽しそうだからね……♦」

「へぇ、ありがとうと返しておくわ。それで、具体的にメンダシウム、貴女は何を狙っているのかしら? 最高の展開……どうせろくでもないんだろうけど、一応聞いてあげるわ」

「ふふ……どんな風に責められるか事前に知らない方が愉し——!?」

 恍惚とした表情で語ろうとするメンダシウムの眼前でティターニアが拡大する。

(しまった、一瞬で距離を!?)

「マジカル・ストラッシュ!」

 大剣が光り輝き——超至近距離で極太のビームが放たれる。
 メンダシウムの視界が光で包まれ、圧倒的な破壊の奔流が全てを塗りつぶした。

◇

 魔法少女の魔法は、何でもアリだ。
 経験した事象を再現できたり、虚空から槍を撃ちだせたり、体液を飲ませた相手を強化・支配できたり……。
 何でもアリということは当然対策も難しい。
 解決策は二つある。
 一つは、相手の魔法をよく調べ上げ、対策を立てることだ。発動条件は何か。効果範囲はどこまでか。持続時間はどのくらいか。
 相手との頭脳戦を征し、勝利する。
 スマートで鮮やかな勝ち方。
 けれど、事はそう簡単ではない。
 魔法は千差万別。相手の魔法を詳細に知るなど、それこそ魔法でも使えなければ不可能だ。それに、強い魔法少女ほど、得意魔法の範囲を拡大させ、応用性を見せる。
 例に挙げたアレヰ・スタア、スピードランサー、アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッドに明確な弱点を挙げるとなると、中々難しい。特にスピードランサーは、ベテラン魔法少女ということもあって、明確な弱点は存在しないだろう。
 故に、ティターニアはもっぱら、二つ目の解決策を取る。
 脳筋的で泥臭く、見栄えも悪い……けれどより確実な方法。
 相手が、魔法を発動する前に潰す。
 零距離『マジカル・ストラッシュ』を撃ち終えたティターニアは、周囲に視線を送り……眉を顰めた。
 極太ビームを撃ち込まれたにも関わらず、フロアに大きな変化は起こっていない。
 壁も壊れておらず、窓も割れておらず、天井も床も抜けていない。
 ただ、ティターニアが加速のために踏み込んだ場所だけが、小規模なクレーターを形成している。
 メンダシウムはティターニアの必勝パターンに敗北した。
 隙を突いて一瞬で距離を縮め、零距離ビーム。
 これを耐えきれる魔法少女など、基本的に存在しない。
 何故なら、今ティターニアが撃ったマジカル・ストラッシュは、非殺傷設定だからだ。
 非殺傷設定は、ティターニアがマジカル・ストラッシュに設けている一種の制限である。物理的には一切干渉せず、相手の魔力だけを消し飛ばす。
 例えば一般人に向けて殺傷設定でマジカル・ストラッシュを撃てば骨すら残らず消滅するが、非殺傷設定で撃てば眩しい程度で済む。
 では、非殺傷設定が魔法少女にも無害かといえばそんなことはなく、これを撃たれた魔法少女は魔力を消し飛ばされる……すなわち、強制的な変身解除及び魔法の発動が不可能になるのだ。
 例え時間を止められようと、不老不死だろうと、全知全能だろうと、それを発動するには魔力が必要不可欠。
マジカル・ストラッシュの直撃を当てられてしまうと、どれだけチートな魔法も、ただのフレーバー・テキストに成り下がる。発動に必要な魔力が消し飛ばされてしまうのだから。
 メンタジウムもそうなっているはずである。不意を討たれた状態で零距離非殺傷設定マジカル・ストラッシュ。口ぶりや醸し出す雰囲気からして強豪魔法少女であり、チートレベルの魔法を持っていたのは間違いない。
 が、どれだけチートな魔法を持っていようと魔力を消し飛ばされてしまえば意味が無い。

(なのに、居ない。居ないのは、おかしい)

 ティターニアの読み通りなら、そこには千郷のように変身を解除され、人間状態で倒れているメンダシウムが居るはずなのだ。
 なのに、誰も居ない。
 避けられた、はずがない。
 確かに直撃の感触があった。
 魔力を消し飛ばし、消滅するということは……。
 ぱち、ぱち、ぱちと後方で拍手の音が聞こえる。

「堪能したよ、ティターニア……♡ 素晴らしい一撃だった……♡」

「——なるほど、分身ね」

「おっと、もう気づいたのかい……♦ さすがだね……♡」

 魔力で構成された存在ならば、魔力を全て吹き飛ばされれば消滅する。
 ティターニアは振り返る。逆側の壁に身体を預け、タキシードの少女は楽し気に笑う。
 その顔、その姿は傷一つ、汚れ一つない。

「さっきまでの貴女は分身だったのね。……そして、今目の前に現れている貴女も」

「さて、どうだろうね……♦ 今度こそ本物かもしれないよ。もう一度撃って確かめてみるかい……♦」

(それも手だけど……いえ、悪手だわ。一発撃っただけなのに、異常なくらい消耗している。魔法王の仕業かしら。メンダシウムがどれだけ分身を創り出せるか分からない以上、マジカル・ストラッシュの乱発は控えるべきね)

「おや……いいのかい? 魔法を発動する隙を与えて……♦」

 メンダシウムの手から伸びるリードのような紐が、床を撫でる。
 ——震動がティターニアを襲った。
それでバランスを崩すような真似はしないが、ティターニアは何が起きるのか見定めようと注意深く周囲を観察する。

(ただ分身を創り出す魔法……ではないようね)

 徐々に床が歪に隆起し、鉄で出来た怪物のような姿に変貌する。
 一体だけではない。フロア全体から雨後の筍のように次々と発生する。
 ティターニアは知る由もないが、これらのエネミーの名は、スラグソウルと呼ばれた。

「……で? こんな鈍重そうなのたくさん呼ぶのが貴女の魔法なわけ?」

(……分身を作る他に、使い魔を大量に創造した……どういう系統の魔法かしら? 無関係の魔法を二つ習得している魔法少女なんて、滅多にいないし)

 シンプルに、使い魔を創り出し、使役する魔法か?
 分身も、自分そっくりに作った使い魔と考えれば辻褄が合う。

(だったら……直接戦闘は苦手なはず)

 ティターニアは床を蹴った。
 スラグソウルは彼女に襲いかかり——一撃で両断される。
抵抗らしい抵抗もされぬまま、ティターニアは一瞬でメンダシウムに肉薄し、体験を振り下ろす。

「ふふ……♦」

 振り下ろされた大剣は、しかしメンダシウムの掌で……より正確には掌から放出されたエネルギーで止められる。

「まさか不意打ちが決まったから、私が近接戦闘の心得が無いと思ったかい? 
 ——むしろ、近づいてもらうために、最初の一撃を喰らったと、どうして考えなかったんだい♠」

 メンダシウムの手から伸びるリードが、蛇のように動き、ティターニアの手首に絡みつこうと迫る。

「ティターニア、君も私のモノになってもらうよ♡」

「っ!?」

 慌ててティターニアは距離を取ろうとするが、リードはそれより早く、ティターニアに到達し——瞬時に構築された鎧によって弾かれる。

「おっと、さすがに速い……♦」

 距離を取ろうとしたのは、フェイントであった。
ティターニアはそのまま床を蹴り、エネルギーごと大剣を押し込む。

「ぐっ……♡ いいぞ、もっと、もっとだ……♡」

「キモいわ!」

 心からの叫びと共に大剣はエネルギーごとメンダシウムを両断する。
 光の粒子となって消えていくメンダシウム。
 ティターニアは油断なく周囲に視線を配り

「……っ!」

 突如、『隣のフロア』から砲弾が飛来する。
 ぎゃりぎゃりと大剣の峰で受け止め、側面に逸らす。

「新手……!? いや、違う……!」

「此処と隣のフロアは既に私のプレイルームだ。逃げられないよ、ティターニア♡」

 背後で声がする。

「くっ……!」

 ティターニアは慌てて距離を取る。
 彼女の首を僅かにリードの紐がなぞる。
それだけで強烈な嫌悪感がティターニアを襲った。
 あれに絡めとられると、不味いことになる。
 本能が、そう告げている。

「いい反応だ、ティターニア♡」

 三体目のメンダシウム。以前顔にも体にも傷一つない。

「いい加減君はこう思っているんじゃないか? どうすればこいつは倒せるのだろう。倒しても倒しても終わりが無いんじゃないかと……♧」

「………………」

 リードをひらひらと揺らしながらメンダシウムは妖艶に微笑む。

「ネタバラシをしよう。私もまた、分身だ。私の本体は別の場所にある。……というか、私の本体は、私のことを知らない」

(それって……)

 ティターニアの脳裏に一人の魔法少女が想起される。
 山田浅悧。慈斬。

「私は、とある魔法少女の影。私を倒すには——本体を始末するしかない……♧」
「あっさり教えてくれるじゃない? どういうつもりなのかしら?」

「私の本体はメリア・スーザンだ」

 ティターニアが目を見開く。

「彼女に自覚はないがね。……さぁどうするティターニア? メリアを殺しに行くか? それとも永遠に私と殺し合いを続けるか? 私としては後者の方が望ましいがね♦ 君に殺してもらえるし♡ 君を私の愛玩奴隷にするチャンスも増えそうだ♠」

(さて、もちろんメリア・スーザンが本体などと嘘八百なわけだが。どう動く、ティターニア。大義のために一部を切り捨てるか、それとも……?)

 どちらでもいいのだ。
 メンダシウムが殺し合いに介入したのは、ティターニアの庇護のもと、メリアが熱血パーティの一員となり、正義の味方としてそれなりに充実した活躍をし、最終的にティターニアの胸の中で爽やかな死を迎えることを嫌がったからである。
 せっかく作ったのだからできるだけ曇って欲しいし、尊厳が破壊されるような死を迎えて欲しい。
 そのための布石を、メンダシウムは打つ。
 メリア・スーザンが運営に属する悪の魔法少女、メンダシウムの本体であり、彼女を殺さねばメンダシウムを倒せないと印象づける。
 恐らく対主催陣営はメリア犠牲にする派としない派で二つに分かれるだろう。同じ運営に反旗を翻した者同士での潰し合い、板挟みになるメリア、大勢犠牲者が出た末にメリアは殺され——そこでメンダシウムがその場に登場しネタバラシ。
 その時、大義のためにメリアを殺した魔法少女はどんな顔をするのか。
 そして、正義を為すどころか周囲を巻き込み殺し合いの中心となって、何も為せないまま死んでいくメリアは。
 彼女を守るために、あるいは犠牲にするために、命を散らす魔法少女はどんな風に死んでいくのか。
 それを考えるとメンダシウムのサディズムは昂る。

(そのためには、まず私の強さを示さないとね♦ 
メリアを始末しなくてもティターニアが居れば何とかなると、そう思わせては駄目だ……♧ 
 ティターニアでも、メンダシウムには敵わない。そう格付けしなければ……♦)

「さぁ、君はどうするティターニア♡」
「——当然、あんたをぶっ倒す一択よ!」

 ティターニアは再び床を強く蹴る。新たに出現したスラグソウル相手も、まるで相手にせず瞬時に両断し——隣から撃たれる砲弾も見ることすらなく、剣で弾く。
 そして、メンダシウムに接敵し

「ああ、済まない、嘘をついた♡」

 ——上下左右から飛来した砲弾がティターニアに迫る。

「此処と、隣だけじゃない。……既にこのビルは私のモノだ」

「ぐ、とりゃあああああああああああああああああああッ!」

 ティターニアはその場で回転する。上下左右から飛来した砲弾を大剣で全て弾き飛ばす。

「おっと、隙ありだよ……♡」

 その首に、リードの紐が伸び。
 がしり、とティターニアはその紐を掴んだ。

「へ……♡」

「マジカルストレート」
ティターニアの拳がメンダシウムの顔面を捉え、そのまま殴り飛ばす。
 血を吐きながらメンダシウムは放物線を描き、落下する前に光の粒子となって消滅する。

「それで、いつまで私と遊んでくれるのかな♡」

 間髪入れずに出現したメンダシウムに、ティターニアは表情を歪めて舌打ちする。

「私は別にいいのだけど……いい知らせだよ、ティターニア」

 メンダシウムは楽しそうに笑う。

「今、別の私が君が逃がした二人と遭遇したようだ。ふふふ、もうすぐ君の教え子と一緒に君を責め苛んであげよう……♦」

「浅悧さん……メリア……」

 ティターニアは剣の柄を強く握る。
 未だその意思は折れていない。
 だが、この世に永遠のものなど存在しない。掘った穴を埋めさせる拷問を続ければいつか発狂するように、ティターニアにも限界は来る。
 徒労。
 メンダシウムは妖しく笑った。

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