2mほどの距離を取りながら、浅悧とメンタジウムは相対していた。
(既に攻撃範囲だ……)
と、浅悧は思う。
魔法少女の脚力を持ってすれば2mなど一瞬で詰められる。
魔法少女の脚力を持ってすれば2mなど一瞬で詰められる。
(問題は……)
先ほど、メンダシウムの脳天にマジカル竹光を振り下ろした。
結果、ダメージこそ与えたようだが、メンダシウムは健在である。
結果、ダメージこそ与えたようだが、メンダシウムは健在である。
(攻撃力が低すぎる……)
果たして、倒すまでにどれだけ殴ればいいのか。
(でも、脇差は使いたくない……)
(でも、脇差は使いたくない……)
魔法少女・山田浅悧は刀を二本差している。
マジカル竹光と、脇差。脇差の方はガチ刃物だ。
抜きたくない。
例え相手が魔法少女を殺し合わせる悪い奴でも、殺傷はしたくない。
それはきっと、正義感によるものではなく——殺人の重さから逃げたいからだ。
ヒャハ、という声が聞こえる——ような気がする。
マジカル竹光と、脇差。脇差の方はガチ刃物だ。
抜きたくない。
例え相手が魔法少女を殺し合わせる悪い奴でも、殺傷はしたくない。
それはきっと、正義感によるものではなく——殺人の重さから逃げたいからだ。
ヒャハ、という声が聞こえる——ような気がする。
(……流されるな。殺さなくてもいいんだ。私が負けなければ、先生が絶対に勝つ)
時間稼ぎに徹してもいい。
ただ、剣道には時間空費という反則があり、簡単に言うと、先に一本取ったからといって消極的な試合をしてはいけないというルールだ。
つまり、浅悧には時間稼ぎをする技術は持ち合わせていない。
だから
ただ、剣道には時間空費という反則があり、簡単に言うと、先に一本取ったからといって消極的な試合をしてはいけないというルールだ。
つまり、浅悧には時間稼ぎをする技術は持ち合わせていない。
だから
(積極的に攻める!)
踏み込む。
合わせるようにメンダシウムはスラグソウルを創り出し、壁にしようとするが
合わせるようにメンダシウムはスラグソウルを創り出し、壁にしようとするが
(遅い!)
それが完成する前に、マジカル竹光がメンダシウムの脳天を叩いている。
額が割れたのか、竹光が血で濡れる。
メンダシウムはニヤリと笑った。
額が割れたのか、竹光が血で濡れる。
メンダシウムはニヤリと笑った。
(まさか、最初からダメージ覚悟で……)
「いい一撃だよ♡」
メンダシウムは手から伸びるリードを浅悧に伸ばす。
その行動が何を意味しているのか浅悧は知らないが、強烈に嫌な予感を覚え
その行動が何を意味しているのか浅悧は知らないが、強烈に嫌な予感を覚え
「小手!」
即座にメンダシウムの手を竹光で叩く。
メンダシウムの手は紐ごと弾かれる。既にその手首は歪な方向で曲がっていた。
メンダシウムの手は紐ごと弾かれる。既にその手首は歪な方向で曲がっていた。
「突き!」
駄目押しとばかりに、竹光がメンダシウムの首に刺さった。
殺しはしないが、一時的な呼吸困難状態に陥らせるための一撃。
メンダシウムはまともに喰らい、たたらを踏んで仰向けに倒れる。
殺しはしないが、一時的な呼吸困難状態に陥らせるための一撃。
メンダシウムはまともに喰らい、たたらを踏んで仰向けに倒れる。
(今のでどこまでダメージを与えたかしら……)
残心を取り、油断なくメンダシウムに刃先を向ける浅悧。
——突如、その首に紐が纏わりついた。
——突如、その首に紐が纏わりついた。
「なっ!?」
倒れたメンダシウムは以前起き上がってこない。
ならば、今自分の首を絞めているこの紐は……。
ならば、今自分の首を絞めているこの紐は……。
「ふふふ……♡」
何時の間に、そこに立っていたのか。
タキシードの魔法少女、メンダシウムが浅悧の後方に居る。
何時の間に、そこに立っていたのか。
タキシードの魔法少女、メンダシウムが浅悧の後方に居る。
「言っただろう? 分身を創り出せると……♦」
(しまった……!)
倒れていたメンダシウムは粒子となって消えていく。
「君やティターニアがどれだけ私を倒そうと、私が消えることはない……♡
私を倒したければ」
「山田さん!」
私を倒したければ」
「山田さん!」
と、急いでこちらに駆け寄ろうとするメリア・スーザンを、メンダシウムは指差す。
「彼女を始末することだ。何故なら私の本体は——メリア・スーザンなのだから」
(何ですって……!)
浅悧は目を見開く。
「それでは、しばらく君は私の玩具になって貰うよ♠」
(不味い……!)
竹光で紐を叩くが、揺れるばかりで斬れることはない。
(くっ……)
脇差に手を伸ばす。その手は躊躇いで震え。
柄に触れる前に、浅悧の世界は暗転した。
「山田さん!」
柄に触れる前に、浅悧の世界は暗転した。
「山田さん!」
千郷を安全な場所に隠している間も、浅悧とメンダシウムは戦闘を続けており、そしてメリアが戦線に復帰したときには、浅悧は窮地に追い込まれていた。
(首を絞められてる! 早く助けないと!)
メリアが取れる手段は少ない。ただエネルギーを出せるだけ。それがメリアの魔法。
エネルギーをボーリング玉ほどのサイズに濃縮し、メリアはメンダシウムに撃ち込もうとした。
少しでもメンダシウムの注意を引くためだ。
走りながら掌にエネルギーを集め、それを発射しようとして。
首に、熱が走った。
エネルギーをボーリング玉ほどのサイズに濃縮し、メリアはメンダシウムに撃ち込もうとした。
少しでもメンダシウムの注意を引くためだ。
走りながら掌にエネルギーを集め、それを発射しようとして。
首に、熱が走った。
「え……?」
思わず立ち止まり、首を抑えてしまう。
血が、流れている。
血が、流れている。
(攻撃された……? メンダシウムに……?)
違う、と本能が告げている。
ヒャハハハハハハという哄笑が背後から聞こえた。
ヒャハハハハハハという哄笑が背後から聞こえた。
「山田さん……どうして?」
血塗れの脇差を手で弄びながら、浅悧は残忍な笑みをこちらに向けている。
慈斬(ジキル)。浅悧の第二人格。
かつて生身で二つの族を一方的に壊滅させた怪物。
殺し合いが始まってからずっと浅悧の精神の奥底で封印されていた慈斬は、メンダイスムによってとうとう引きずり出される。
メリアにはその辺りの事情がさっぱり分からない。
ただ、先ほど浅悧がメンダシウムに首を絞められていたことから推察し、一つの仮説を導き出す。
慈斬(ジキル)。浅悧の第二人格。
かつて生身で二つの族を一方的に壊滅させた怪物。
殺し合いが始まってからずっと浅悧の精神の奥底で封印されていた慈斬は、メンダイスムによってとうとう引きずり出される。
メリアにはその辺りの事情がさっぱり分からない。
ただ、先ほど浅悧がメンダシウムに首を絞められていたことから推察し、一つの仮説を導き出す。
「まさか、メンダシウムに操られて……!」
なんて非道な……!
メリアの、悪を許せない心が怒りで燃え上がる。
メリアの、悪を許せない心が怒りで燃え上がる。
「メンダシウム、許さないわ……!」
「まぁ君はそういう反応になるよねー♧」
分かり切っていたという表情で頷くメンダシウム。それに僅かに違和感を覚えながらも、メリアは首を抑えながら、メンダシウム、慈斬の双方に視線を巡らせる。
分かり切っていたという表情で頷くメンダシウム。それに僅かに違和感を覚えながらも、メリアは首を抑えながら、メンダシウム、慈斬の双方に視線を巡らせる。
(幸い、首の傷は浅い……! ちょっと出血してるだけだし、戦闘は全然問題ない!)
自分の軽傷の心配より、どうやって山田浅悧を解放するか。
メリアは思案する。操られた味方と戦った経験なんて、無い。
メリアは思案する。操られた味方と戦った経験なんて、無い。
「ヒャハハハハハハハハハハ!」
慈斬が床を蹴る。
「くっ……!」
メリアもまた慈斬と向き合おうとして
「ヒャハハハハハハ」
「あ、あれ?」
慈斬は跳躍しメリアを跳び越す。
そして
そして
「ヒャハハハハハハハ」
メンダシウムへと斬りつける。
メンダシウムへと斬りつける。
「おっと」
メンダシウムも虚をつかれたのか、些か慌てた様子でその場を飛び退く。
「おいおい、話が違うじゃないか……♧」
「ヒャハハハハハハハハ」
慈斬は再度、脇差で斬りつけようとし
「『私を攻撃するな』」
その言葉で、動きを止める。
「ふぅ……念のために覚醒させるだけじゃなく、私を一部混ぜ込んでおいて良かったよ」
「…………ヒャハ」
「『メリアを痛めつけろ。ただし、殺すな』」
「なっ……!」
何て外道な……とメリアは怒りを募らせる。
慈斬はゆっくりとメリアの方へ振り返る。
そして、脇差の刃先をメリアに突きつける。
慈斬はゆっくりとメリアの方へ振り返る。
そして、脇差の刃先をメリアに突きつける。
「諦めない……絶対に、山田さんを正気に戻して見せる……!」
決意を顕わに相対するメリアを、メンダシウムはどこか冷めた目で見ていた。