【僕様は全知全能・テンガイ
このメッセージを見てる君は選ばれし者
生き残るチャンスを与えられた強き者
単刀直入に言おう 会場内にいるある少女を探し出して、第二あにまん市営団地に連れて来て欲しい
名は桐生ヨシネ 魔法少女名はバーストハートだ
もちろんめちゃくちゃ強い
しかもこのミッションには絶対守らなければならない条件がある
桐生ヨシネを倒すには徒手空拳でなければならない
銃や刃物などの武器は使用禁止
なぜなら万が一にも"心臓"を傷つけてはならないからだ
何よりも"心臓"が大事なんだ
ぶっちゃけこのガキの命なんてどうでもいいんだ
"心臓"さえ生きていればなぁ
さぁ腕に自信のある者は今すぐ桐生ヨシネを探し出せ
バーストハートを失神KOさせろ
急げっ 乗り遅れるな 優勝を掴むんだ
"テンガイ・ラッシュ"だ】
このメッセージを見てる君は選ばれし者
生き残るチャンスを与えられた強き者
単刀直入に言おう 会場内にいるある少女を探し出して、第二あにまん市営団地に連れて来て欲しい
名は桐生ヨシネ 魔法少女名はバーストハートだ
もちろんめちゃくちゃ強い
しかもこのミッションには絶対守らなければならない条件がある
桐生ヨシネを倒すには徒手空拳でなければならない
銃や刃物などの武器は使用禁止
なぜなら万が一にも"心臓"を傷つけてはならないからだ
何よりも"心臓"が大事なんだ
ぶっちゃけこのガキの命なんてどうでもいいんだ
"心臓"さえ生きていればなぁ
さぁ腕に自信のある者は今すぐ桐生ヨシネを探し出せ
バーストハートを失神KOさせろ
急げっ 乗り遅れるな 優勝を掴むんだ
"テンガイ・ラッシュ"だ】
「さぁ、行って来い」
テンガイの言葉に応じて、無数の梟が団地から飛び立っていく。
超越者からのメッセージを情報として刻まれた梟は、上手くいけば各参加者の元に辿り着くだろう。
超越者からのメッセージを情報として刻まれた梟は、上手くいけば各参加者の元に辿り着くだろう。
(僕様にとって殺し合いは遊びに過ぎない。バーストハートの心臓さえ手に入ったら、持ってきた奴を優勝させてやるよ)
このゲームを自由に離脱できると自負しているテンガイにとって、全知全能たるテンガイにとって、優勝など興味はなく、お使いを果たした魔法少女にくれてやってよいものだった。
超越者は団地の屋上に陣取り、他の魔法少女が来るのを待つことにした。
超越者は団地の屋上に陣取り、他の魔法少女が来るのを待つことにした。
◇
(……これは嫌がらせかな、魔法王)
第二あにまん市営団地、通称あにまん団地。
その一号棟の屋上に、和妻颯葵、魔法少女名、トリックスターは立っていた。
既にその身を魔法、『触ったものが見えなくなるよ』で透明化させている彼女は、屋上に居るもう一人の魔法少女に視線を送る。
今しがた魔法で無数の梟を生み出し、飛び去っていくのを見送っていた緑髪に碧眼、スレンダーな十代前半の美少女。
【全知全能】、魔法少女名、テンガイ。
その一号棟の屋上に、和妻颯葵、魔法少女名、トリックスターは立っていた。
既にその身を魔法、『触ったものが見えなくなるよ』で透明化させている彼女は、屋上に居るもう一人の魔法少女に視線を送る。
今しがた魔法で無数の梟を生み出し、飛び去っていくのを見送っていた緑髪に碧眼、スレンダーな十代前半の美少女。
【全知全能】、魔法少女名、テンガイ。
(紛れもなく参加者でもトップクラスの実力者。その才は魔法の国でも響き渡ってるよ)
曰く、二度の転生を果たしている。
曰く、死後の世界を旅したことがある。
曰く、世界の時間を数年単位で巻き戻したことがある。
果たしてどこまでが真実で、どこからが誇張なのか。
殺し合い開催前から密かに参加者候補をピックアップし、情報を集めていたトリックスターであっても、その真相は分からない。
ただ、一つ理解しているのは
曰く、死後の世界を旅したことがある。
曰く、世界の時間を数年単位で巻き戻したことがある。
果たしてどこまでが真実で、どこからが誇張なのか。
殺し合い開催前から密かに参加者候補をピックアップし、情報を集めていたトリックスターであっても、その真相は分からない。
ただ、一つ理解しているのは
(テンガイは天才、いや、天災だ。私なんかが勝てる相手じゃない)
トリックスターもまた、優秀な魔法少女である。魔法の国から直々にスカウトされ、若くして魔法省の役人を務めている。
彼女が説明係として赴いた相手も、山田浅悧/慈斬や、柩枢/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッドなど、激ヤバ魔法少女ばかりである。
それはつまり、彼女たちが逆上して襲いかかっても撃退ないし撤退が出来る能力を、トリックスターが持っているからに他ならない。
現に、彼女は今、全知全能のテンガイに気づかれることなく、屋上に存在していた。
会場の魔法少女に向けて放たれたテンガイの梟も、トリックスターを察知することなくいずこへと飛び去ってしまった。
彼女が説明係として赴いた相手も、山田浅悧/慈斬や、柩枢/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッドなど、激ヤバ魔法少女ばかりである。
それはつまり、彼女たちが逆上して襲いかかっても撃退ないし撤退が出来る能力を、トリックスターが持っているからに他ならない。
現に、彼女は今、全知全能のテンガイに気づかれることなく、屋上に存在していた。
会場の魔法少女に向けて放たれたテンガイの梟も、トリックスターを察知することなくいずこへと飛び去ってしまった。
(……何故気づかれない? 全知全能じゃ無いのか?)
自身の魔法が通用していることに安堵しつつも、トリックスターは理由を探る。
(……あくまで全知全能はふかし? しかし、複数の強力な魔法を使うことは調査済みだ。……制限か? いや、これはむしろ……)
(透明化している存在が近くにいる、という発想が無いのか)
恐らく、透視魔法や感知魔法の類いは備えているのだろう。
だが、使っていない。
例え殺虫剤を保持していたとしても、家に虫の気配が無ければ噴射はしない。
だが、使っていない。
例え殺虫剤を保持していたとしても、家に虫の気配が無ければ噴射はしない。
(と、なると厄介だな。テンガイが『なんか近くに透明化してる奴いるかも』と思った瞬間、詰みか……)
勿論、透視魔法や感知魔法を持っていない可能性もある。
だが、相手は全知全能。過大評価をしてし過ぎることはない。
だが、相手は全知全能。過大評価をしてし過ぎることはない。
(……動き出せば、認識阻害のランクは大幅に低下する。並の魔法少女が相手なら唇が触れ合える距離まで接近できる自信があるが、相手はテンガイ。下手に動くとバレるか……)
疑惑を持たれただけでアウトなのだ。
(……かといって、ずっとここに留まるのも生きた心地がしないな。さて、どうするか……)
その時、屋上へ続く階段を昇ってくる音が聞こえた。
「お、いきなり一人目か」
期待に満ちた顔でテンガイは屋内へと続くドアへ視線を送る。
トリックスターもまた、息を呑んで来訪者を待った。
扉が勢いよく開かれる。
現れたのは、侍風の袴姿の魔法少女。
トリックスターもまた、息を呑んで来訪者を待った。
扉が勢いよく開かれる。
現れたのは、侍風の袴姿の魔法少女。
「お主がテンガイだな」
「そうだ、僕様がテンガイだぜ」
「桐生ヨシネなる少女を探せば優勝を掴めるとはどういうことだ? お主は魔法王の配下なのか?」
「は? ちげーよばーか。僕様があんな凡愚の配下なわけないだろ。
桐生ヨシネを見つけて連れてきてくれれば、僕様はさっさとここかた出てくから、報酬に優勝させてやるって言ってるんだよ」
桐生ヨシネを見つけて連れてきてくれれば、僕様はさっさとここかた出てくから、報酬に優勝させてやるって言ってるんだよ」
「……まさかお主、優勝させてやるというのは」
「その通りの意味。連れてきてくれた子以外は皆殺し。本来ならこんなゲーム、僕様のブッチギリ優勝確定なのに、生き残るチャンス与えてあげてるんだから、僕様ちょー優しいだろ?」
「……外道が」
サムライ少女は居合の構えをとる。
(……へぇ)
トリックスターはサムライ少女の刀が名刀だと瞬時に理解した。
古き名刀には魔力が宿ることがある。サムライ少女の刀も、その類いだ。
そして、サムライ少女も、外見に違わず、堂に入った構えをしている。
外見は十代後半だが、剣術の熟練度は達人レベルだろう。
恐らく変身しなくても雑魚エネミー一体なら倒してしまえるレベルの。
少なくとも、正面からの戦闘はトリックスターでは相手にならない。
古き名刀には魔力が宿ることがある。サムライ少女の刀も、その類いだ。
そして、サムライ少女も、外見に違わず、堂に入った構えをしている。
外見は十代後半だが、剣術の熟練度は達人レベルだろう。
恐らく変身しなくても雑魚エネミー一体なら倒してしまえるレベルの。
少なくとも、正面からの戦闘はトリックスターでは相手にならない。
「拙者の名は、抜刀金。未だ魔法少女名は決めておらぬが、お主を斬ることは今決めた」
「僕様はテンガイ。全知全能のテンガイだ」
(……どう動くべきか)
二人の魔法少女が団地屋上で激突しようとする中、未だ存在に気づかれていないトリックスターは身の振り方を案じるのだった。
◇
時は僅かに遡る。
魔法少女、抜刀金はあにまん団地第二号棟二階の通路に立っていた。
魔法少女、抜刀金はあにまん団地第二号棟二階の通路に立っていた。
「殺し合い……」
金の家は、居合術道場を経営している。
といっても、経営は火の車だ。今のご時世、わざわざ居合術を金を払って習おうとする奇特な人種は少ない。
それでも、ひと昔前なら武術マニアなどからの需要はあったかもしれないが、昨今はYouTubeの動画などで簡単に武術を学ぶことが出来る。
一度、道場は潰れかけた。お金さえあれば祖先から受け継いだ道場を潰さずに済む、両親の嘆きを聞き、金はお金が欲しいと願った。
欲しいと願ったところで金は生まれない。現実は非情である。だがここに現実を塗り潰す幻想があった。
金は、魔法少女になった。
魔法は、『金の延べ棒を創り出せるよ』。
道場は潰れずに済み、しかし金の心には蟠りが残った。
といっても、経営は火の車だ。今のご時世、わざわざ居合術を金を払って習おうとする奇特な人種は少ない。
それでも、ひと昔前なら武術マニアなどからの需要はあったかもしれないが、昨今はYouTubeの動画などで簡単に武術を学ぶことが出来る。
一度、道場は潰れかけた。お金さえあれば祖先から受け継いだ道場を潰さずに済む、両親の嘆きを聞き、金はお金が欲しいと願った。
欲しいと願ったところで金は生まれない。現実は非情である。だがここに現実を塗り潰す幻想があった。
金は、魔法少女になった。
魔法は、『金の延べ棒を創り出せるよ』。
道場は潰れずに済み、しかし金の心には蟠りが残った。
(ズル、だったのでは御座らんか……)
お金に困っているのは皆同じだ。
確かに江戸時代から続く道場が潰れてしまうのは、悲しい。けれど、家族が路頭に迷うわけではない。
もっと困窮している人がいる。
もっと努力している人がいる。
なのに、どうして抜刀家だけが、魔法の力で救われるのか。
確かに江戸時代から続く道場が潰れてしまうのは、悲しい。けれど、家族が路頭に迷うわけではない。
もっと困窮している人がいる。
もっと努力している人がいる。
なのに、どうして抜刀家だけが、魔法の力で救われるのか。
(だが、誰もかれもを救えばいいという話でもないので御座ろうな)
自由に資産を生み出せる金は、資本主義社会において最強の存在だ。
彼女が考えなしに魔法を奮えば、世界は大混乱に陥るだろう。
故に、金は、自らの魔法を使うことを禁じた。
ただ、今まで以上に居合術に没頭した。
魔法少女の身体能力に居合術が組み合わされば、天下無双の存在になれる。
そうなって、その鍛え抜かれた力で、大勢の人を救おう。
そうすれば、ズルをして道場を立て直したことに、きっと意味が産まれる。
九歳で覚醒してより九年。鍛錬の果てに、金は達人クラスの腕前となった。
既にその技量は師範である父をも超え。数少ない門下生からも「若先生」と慕われている。
そして、金はバトルロワイアルへと召還されたのだ。
彼女が考えなしに魔法を奮えば、世界は大混乱に陥るだろう。
故に、金は、自らの魔法を使うことを禁じた。
ただ、今まで以上に居合術に没頭した。
魔法少女の身体能力に居合術が組み合わされば、天下無双の存在になれる。
そうなって、その鍛え抜かれた力で、大勢の人を救おう。
そうすれば、ズルをして道場を立て直したことに、きっと意味が産まれる。
九歳で覚醒してより九年。鍛錬の果てに、金は達人クラスの腕前となった。
既にその技量は師範である父をも超え。数少ない門下生からも「若先生」と慕われている。
そして、金はバトルロワイアルへと召還されたのだ。
「……実戦は初めてで御座るな」
ずっと鍛錬の日々だった。
魔法少女の責務として雑魚エネミーを退治したことはあるが、命がけの戦いをしたり、あるいは他の魔法少女と死闘を繰り広げたことはない。
いくら達人だ天才だと持て囃されそうと、天下無双には程遠い。
魔法少女の責務として雑魚エネミーを退治したことはあるが、命がけの戦いをしたり、あるいは他の魔法少女と死闘を繰り広げたことはない。
いくら達人だ天才だと持て囃されそうと、天下無双には程遠い。
「それでも、拙者は正義を為さねば」
そうでなければ、ズルをした大義が無い。
ほう、と音がした。
ほう、と音がした。
「梟……」
手すりに、梟が留まっている。
「近くでみるのは初めてで御座るが……」
梟はばさばさと翼を広げ、手すりから金の肩まで移動する。特に敵意を感じなかったため、金はされるがままになっていた。
梟はぐるぐると周囲を窺うが
梟はぐるぐると周囲を窺うが
「伝言、伝言、テンガイ様より伝言」
「何……?」
金は僅かに驚く。魔法少女であっても、喋る梟を見たのは初めてだった。
梟はテンガイと名乗る魔法少女からのメッセージを語り出す。
それを聞くうちに、金は眉を顰め、梟に案内されるままに第一号棟の屋上を目指すのだった。
梟はテンガイと名乗る魔法少女からのメッセージを語り出す。
それを聞くうちに、金は眉を顰め、梟に案内されるままに第一号棟の屋上を目指すのだった。
「διάστημα」
テンガイが何かを唱えたことを、トリックスターは確認した。
(日本語じゃない……何らかの呪文か?)
本来、魔法少女が魔法を行使するのに詠唱は必要ない。が、ごく一部の魔法少女は詠唱したり、必殺技を大声で叫ぶ。その方が気合が入って魔法が強化されるから、というケースもあれば、詠唱というハンデを背負うことで魔法を強化するという意図がある。
魔法の本家本元、魔法の国でも未だに魔法は体系化されていない。
一人一人世界観が違う、【法則】が違う、としか言い表せない。
故に、テンガイが何を、何のために唱えたのか、魔法省の役人であるトリックスタ―でも把握できない。
居合の構えをとったまま、金はじりじりと距離を詰める。
魔法の本家本元、魔法の国でも未だに魔法は体系化されていない。
一人一人世界観が違う、【法則】が違う、としか言い表せない。
故に、テンガイが何を、何のために唱えたのか、魔法省の役人であるトリックスタ―でも把握できない。
居合の構えをとったまま、金はじりじりと距離を詰める。
(それは、悪手じゃないか?)
と、トリックスターは思った。
武術に精通しているわけではないが、居合とはつまることろ不意打ちの技術なのではないだろうか。
金の堂に入った構えは、素人のトリックスターが見ても、「あ、この子居合の達人だな」と理解できてしまう。
ならば、居合の利点は半減するのではないだろうか。
武術に精通しているわけではないが、居合とはつまることろ不意打ちの技術なのではないだろうか。
金の堂に入った構えは、素人のトリックスターが見ても、「あ、この子居合の達人だな」と理解できてしまう。
ならば、居合の利点は半減するのではないだろうか。
「君もゴリラタイプか。魔法少女なら魔法を駆使して戦うべきじゃないかな」
金とは対照的に、無造作に突っ立ちながら、テンガイは金に言葉を投げかける。
「魔法少女を魔法少女たらしめてるのは、魔法を持っているからだよ。剣で戦うとか頭蛮族かよ」
「魔法、で御座るか」
金が、口を開いた。
「……生憎、拙者の魔法は戦闘向けでは御座らんのよ」
「ふぅん、生活を豊かにするタイプの魔法か、素敵じゃん」
僅かに、金の顔に動揺が走った。
だが、それはすぐに掻き消える。
恐らく彼女も何かしら抱えつつ、戦闘時は抑え込めるタイプなのだろう。
だが、それはすぐに掻き消える。
恐らく彼女も何かしら抱えつつ、戦闘時は抑え込めるタイプなのだろう。
「拙者はただ、刀を振るしか能の無い、未熟な魔法少女だが、正義、為させてもらう」
「好きに為せば?」
瞬、と金の姿が掻き消えた。
「「え」」
テンガイとトリックスターの声が重なる。
鍔鳴りの音が響く。
金は——既に、納刀を終えていた。
鍔鳴りの音が響く。
金は——既に、納刀を終えていた。
「はっや……」
(嘘だろ、全然見えなかった……)
いつ抜いたのか、いつ斬ったのか、いつ鞘に納めたのか。
傍から見ているトリックスターでも、白刃を拝むことが出来なかった。
そして、居合を受けたテンガイも、口をあんぐりと開けていた。
その姿は、傷一つない。
傍から見ているトリックスターでも、白刃を拝むことが出来なかった。
そして、居合を受けたテンガイも、口をあんぐりと開けていた。
その姿は、傷一つない。
「…………お主、何をした」
驚愕していたのは、テンガイとトリックスターだけではない。
神業を披露した金もまた、焦燥に駆られた表情でテンガイを睨んでいる。
神業を披露した金もまた、焦燥に駆られた表情でテンガイを睨んでいる。
「確かに、胴を刻もうとしたはずだが——届かなかった」
刀のリーチを測りかねた、否、そんなミスをこの少女がするはずがない。
「え、あ、うん、はははははははははは、無駄だよ、抜刀金! 君の剣術では、僕様に傷をつけることは不可能さ!」
抜刀術の速さに呆然としていたテンガイだったが、
「どんな魔法だ……」
「それを探るのが魔法少女の戦いの醍醐味だよ。でもまぁ、僕様は寛大だから教えてあげる」
——空間を操る魔法(ディアスティマ)と、テンガイは言った。
「僕様は空間を自在に操作できる。前世の僕様が身に着けた魔法さ。今、僕の周囲は無限の空間がガードしている。
君がどれだけ刀を振るっても、絶対に僕様に攻撃が当たることは無い」
君がどれだけ刀を振るっても、絶対に僕様に攻撃が当たることは無い」
(何て理不尽な……そうか、あのとき唱えていたのはこれか……)
「さぁ、どう攻略する? 言っとくけど、まだ一つ目だぜ? 僕様の本領はこの程度じゃまったくない……」
「くっ……」
金は悔し気に呻く。
恐らく、彼女に空間を操る魔法を突破する術が無いのだろう。
トリックスターも同様だ。どれだけ自分や武器を透明化したところで、攻撃が届かなければ意味が無い。
恐らく、彼女に空間を操る魔法を突破する術が無いのだろう。
トリックスターも同様だ。どれだけ自分や武器を透明化したところで、攻撃が届かなければ意味が無い。
(テンガイ……つくづく規格外……。だからこそ、ここが潮時か……)
来訪者である抜刀金は、強い。
あのテンガイを一度は驚かせたのだから、十分上澄みに入る部類だろう。
もし、テンガイが空間を操る魔法などという理不尽を備えていなければ、首を落とせていたかもしれないと思わせる程に。
あのテンガイを一度は驚かせたのだから、十分上澄みに入る部類だろう。
もし、テンガイが空間を操る魔法などという理不尽を備えていなければ、首を落とせていたかもしれないと思わせる程に。
(だから、陽動としてはちょうどいい)
少なくともテンガイの注意は、金だけに注がれているだろう。
その隙に、ここから逃亡する。
その隙に、ここから逃亡する。
(テンガイの魔法が一つ……梟を使った魔法と合わせて二つ把握できた。この情報は大きい……)
脱出を狙うのか、優勝を狙うのか。トリックスターは決めかねている。
大切なのは、どちらが生き残れるのか。
大切なのは、どちらが生き残れるのか。
(そしてどちらの道でも、テンガイは大きな障害になる。徒党を組んで潰さなければ……)
殺し合いに呼ばれている以上、絶対に殺せない存在ではないはずだ。何らかの制限がかかっているだろうし、ティターニアを始めとする強豪魔法少女で対テンガイ同盟を結成できれば、始末できる可能性がある。
(よし、そうと決まればこの場を……)
——瞬間、屋上が爆散した。
光と、爆風。
一瞬で足場にしていたコンクリートが崩壊し、トリックスターは浮遊感を味わう。
光と、爆風。
一瞬で足場にしていたコンクリートが崩壊し、トリックスターは浮遊感を味わう。
(誰の攻撃だ!? まさか、テンガイか!?)
自身の存在に気づき、逃げる前に先手を打ったのか。
絶望的な気分に浸りながら、恐怖を振り払ってトリックスターはテンガイを睨み。
絶望的な気分に浸りながら、恐怖を振り払ってトリックスターはテンガイを睨み。
「——は?」
首から上が吹き飛んだテンガイの死体が、下界へと落下するのを目撃するのだった。