「げっげっげ、血に飢えた亡者共、聞こえているか?
第二試合の解説は俺っち、『戦争屋』グレンデルと——」
第二試合の解説は俺っち、『戦争屋』グレンデルと——」
「どーも……あーしは、パラサイトドール……よろしくね……」
「よろしくな!
さて、第二試合の組み合わせは【七海真美】と【テンガイ】。
実力が伯仲していた第一試合と違って、随分と実力差がある組み合わせじゃねぇか?
俺っちはどっちの魔法少女もデータでしか知らねぇが、今までの経歴やゲームでの活躍を見ても、七海真美がテンガイに勝てる可能性は見出せねぇぞ?
ただの公開処刑か?」
さて、第二試合の組み合わせは【七海真美】と【テンガイ】。
実力が伯仲していた第一試合と違って、随分と実力差がある組み合わせじゃねぇか?
俺っちはどっちの魔法少女もデータでしか知らねぇが、今までの経歴やゲームでの活躍を見ても、七海真美がテンガイに勝てる可能性は見出せねぇぞ?
ただの公開処刑か?」
「そうだね……」
「げっげっげ、まぁ俺っちは虐殺も嫌いじゃねぇ。
魔法少女を甚振るのもな!
まったく、俺っちに力をくれた魔法国には感謝しねぇとな!
魔法少女になってから人生バラ色だぜ!
魔法少女を甚振るのもな!
まったく、俺っちに力をくれた魔法国には感謝しねぇとな!
魔法少女になってから人生バラ色だぜ!
パラサイトドール、てめぇはどうなんだ?
何のために殺し合いに協力している?
目的は悦楽か?」
何のために殺し合いに協力している?
目的は悦楽か?」
「そうだね……」
「げっげっげ、これは趣味が合いそうだな。
おっと、モニターの前の亡者共の中には、データを持ってない奴もいるかもしれねぇからな。
ここで第二試合の魔法少女の基本データをおさらいするぜ。
七海真美。
年齢は12歳。げっげっげ、これくらいの年の魔法少女が、一番正義感が強くて、一番甚振りがいがあるんだよなぁ。
自分が物語の主人公じゃなくただの俺っちの犠牲者Aでしかないことに気づいたあの表情がたまんねぇのよ。
おっと、話が逸れたな。
得意の魔法は……愛の力で強くなる、だとぉ?
おっと、モニターの前の亡者共の中には、データを持ってない奴もいるかもしれねぇからな。
ここで第二試合の魔法少女の基本データをおさらいするぜ。
七海真美。
年齢は12歳。げっげっげ、これくらいの年の魔法少女が、一番正義感が強くて、一番甚振りがいがあるんだよなぁ。
自分が物語の主人公じゃなくただの俺っちの犠牲者Aでしかないことに気づいたあの表情がたまんねぇのよ。
おっと、話が逸れたな。
得意の魔法は……愛の力で強くなる、だとぉ?
げっげっげっげ、こいつは傑作だ! どれだけ頭にお花畑を詰め込んだから、こんな魔法が発現するんだ? 愛なんてのは、所詮他者を害する大義名分に過ぎないって言うのによぉ~!
経歴に関しては語ることはねぇなぁ。戦闘経験なんて、街に出る雑魚エネミーを狩ってたくらいだ。
実力は参加者でも下から数えた方が早いだろうぜ、げっげっげ、これはいよいよ、ただの公開処刑だな」
経歴に関しては語ることはねぇなぁ。戦闘経験なんて、街に出る雑魚エネミーを狩ってたくらいだ。
実力は参加者でも下から数えた方が早いだろうぜ、げっげっげ、これはいよいよ、ただの公開処刑だな」
「そうだね……」
「一方、テンガイ。
年齢は2888歳!?
げっげっげっげ、紀元前9世紀生まれとは恐れ入るぜ。確かこの頃は、西アジアでアッシリア王国が猛威を振るい、中国では周の時代だったか。
げっげっげ、カエサルだの始皇帝だのより遥か前に誕生したとは恐れ入ったぜ。どこまでふかしなのかは知らねぇがな。
そして魔法は、全知全能だぁ!?
年齢は2888歳!?
げっげっげっげ、紀元前9世紀生まれとは恐れ入るぜ。確かこの頃は、西アジアでアッシリア王国が猛威を振るい、中国では周の時代だったか。
げっげっげ、カエサルだの始皇帝だのより遥か前に誕生したとは恐れ入ったぜ。どこまでふかしなのかは知らねぇがな。
そして魔法は、全知全能だぁ!?
げっげっげ、クライオニクスが言っていた【天上】ってのは、こういう奴を言うのかねぇ」
「そうだね……」
「経歴もとんでもねぇなぁ、おい。
死後の世界を見に行った。
世界の時間を六年巻き戻した。
二度も転生した。
全部マジなら神に等しいだろ、こいつ。
だが、このゲームでも経歴を裏付ける活躍をしているな。
神速の抜刀術を防ぎきり、狙撃されても時間を戻して対処し、透明化も剥がして無効化か。
げっげっげ、こりゃあ一般魔法少女が勝てる相手じゃねぇぜ。
なぁ、パラサイトドール、七海真美の勝ち筋はあると思うか?」
死後の世界を見に行った。
世界の時間を六年巻き戻した。
二度も転生した。
全部マジなら神に等しいだろ、こいつ。
だが、このゲームでも経歴を裏付ける活躍をしているな。
神速の抜刀術を防ぎきり、狙撃されても時間を戻して対処し、透明化も剥がして無効化か。
げっげっげ、こりゃあ一般魔法少女が勝てる相手じゃねぇぜ。
なぁ、パラサイトドール、七海真美の勝ち筋はあると思うか?」
「そうだね」
「なぁ、お前さっきからめっちゃ楽しようとしてない?」
七海真美は、リングに上がった。
況席には褐色肌で異様に背の高いワイルドな美女と、大学生くらいのギャルが座っていた。
観客席には、三人の魔法少女が居た。。
ジェイルフィッシュ、桐ヶ谷裂華、そして一つ目の仮面をつけ、灰色のローブを纏った少女。
ジェイルフィッシュと裂華は観客席を覆う金網にしがみつき、七海に言葉を投げかけている。
その声は、聞こえない。
恐らく、運営の魔法によるものだろうと、真美は気づいた。
二人の心配そうな様子に、真美は心を痛める。
リングの中は、想像以上に孤独だった。怖い、と思う。
けれど、そんな場所に他の魔法少女を立たせたくなかった。
青コーナーを見る。
ゆっくりと、少女が歩いてくる。
況席には褐色肌で異様に背の高いワイルドな美女と、大学生くらいのギャルが座っていた。
観客席には、三人の魔法少女が居た。。
ジェイルフィッシュ、桐ヶ谷裂華、そして一つ目の仮面をつけ、灰色のローブを纏った少女。
ジェイルフィッシュと裂華は観客席を覆う金網にしがみつき、七海に言葉を投げかけている。
その声は、聞こえない。
恐らく、運営の魔法によるものだろうと、真美は気づいた。
二人の心配そうな様子に、真美は心を痛める。
リングの中は、想像以上に孤独だった。怖い、と思う。
けれど、そんな場所に他の魔法少女を立たせたくなかった。
青コーナーを見る。
ゆっくりと、少女が歩いてくる。
バカでかい剣を難なく持ち上げ、緑色の髪を靡かせ、十代前半の外見には不相応な威圧感を伴って、テンガイが、歩いてくる。
ひらり、とリングに飛び移ったテンガイは、真美を一瞥し、苦笑した。
ひらり、とリングに飛び移ったテンガイは、真美を一瞥し、苦笑した。
「——君が、僕様を呼びつけたわけ?
僕様、君に何かしたっけ」
僕様、君に何かしたっけ」
「——どうして、バーストハートの心臓を狙うの?
——それに、優勝のチャンスって、どういうこと?
あなたは、このゲームに乗ってるの?
人を、殺してるの?」
——それに、優勝のチャンスって、どういうこと?
あなたは、このゲームに乗ってるの?
人を、殺してるの?」
んん? とテンガイは首を捻った。
「君さ、何か勘違いしてない?
さっきから、何のことを言っているのかさっぱりわからない」
さっきから、何のことを言っているのかさっぱりわからない」
「とぼけないでよ、あなたが出した梟が届いたんだから!」
「……もしかして、君、それを鵜呑みにしたの?」
え、と真美は息を漏らした。
この悪党は、いったい何を言っているのか。
「誰かが僕様を陥れるために、梟を使って会場中に飛ばした可能性もあるよね。
え、まさか、梟の情報だけで僕様を悪者だと決めつけて殺そうとしているの、君?
倫理観やばいね」
え、まさか、梟の情報だけで僕様を悪者だと決めつけて殺そうとしているの、君?
倫理観やばいね」
「ま、まさか、違うの……?」
ぐらつく。
真美は冷静ではなかった。
本来の真美なら当然その可能性も考慮していただろう。
だが、指名したときの真美に、そんな余裕は無かった。
真美は冷静ではなかった。
本来の真美なら当然その可能性も考慮していただろう。
だが、指名したときの真美に、そんな余裕は無かった。
「わ、私、取り返しのつかないことを……」
無辜の少女を、殺し合いのリングに立たせた。
罪悪感が、真美を圧し潰す。
目に、涙が浮かぶ。
真美の心は、とっくに限界だった。
罪悪感が、真美を圧し潰す。
目に、涙が浮かぶ。
真美の心は、とっくに限界だった。
平和に生きていた12歳に、怒涛の如く押し寄せる悲劇と絶望は、少女の心を散々に痛めつけていた。
遂に、少女は膝を折った。
理不尽に抗うことなら、出来た。
だが、自分の浅慮で無辜の少女をデスマッチに陥れたことには、耐え切れなかった。
テンガイは頬を掻き、ちらりと実況席を見上げた。
遂に、少女は膝を折った。
理不尽に抗うことなら、出来た。
だが、自分の浅慮で無辜の少女をデスマッチに陥れたことには、耐え切れなかった。
テンガイは頬を掻き、ちらりと実況席を見上げた。
「げっげっげ、テンガイの奴、俺っちたちを見てるぜ」
「………………」
愉快そうに笑うグレンデルとは対照的に、パラサイトドールは表情一つ変えず。
——ただ、平然と『見下ろした』。
——ただ、平然と『見下ろした』。
「……ムカつくなぁ」
ぼそり、とテンガイは零す。
「これで勝っちゃうのも、僕様の沽券に関わるか……」
そして、大剣を担ぎ、崩れ落ちた真美に近づく。
「君、七海真美って言ったっけ」
「ご、ごめんなさい……私が、私がま、まけるから……」
「気にしなくていいよ。僕様、怒ってないから」
「で、でも……」
「悪人扱いされるのは心外だけどね。だって僕様——まだ一人しか殺してないし」
「…………え?」
真美が呆然とした表情を浮かべる。
「せっかくのデスゲームだし、皆殺しは視野に入れて行動してるけど、ゲームの進行状況的にはキルスコア1で優勝するなりゲームから出てくかもしれないし。
あ、でもあのキルスコアはミストアイにカウントされるかな。
それはちょっと嫌だな。
キルスコア0ってのもな、かっこ悪いしな」
あ、でもあのキルスコアはミストアイにカウントされるかな。
それはちょっと嫌だな。
キルスコア0ってのもな、かっこ悪いしな」
「な、何を言って……」
「だからさ、気にしなくていいんだって。
——僕様は全知全能だから、雑魚が何しても何とも思わないから」
——僕様は全知全能だから、雑魚が何しても何とも思わないから」
「——それが、あなたの本性……?」
「だったらどうする?
死ぬんだったらこの大剣貸してあげようか? それとも僕様に挑む?
たぶんどっちを選んでも君の余生の時間はそう変わんないぜ」
死ぬんだったらこの大剣貸してあげようか? それとも僕様に挑む?
たぶんどっちを選んでも君の余生の時間はそう変わんないぜ」
「私は——私は……!」
「ああ、もういいや。
じゃあね」
じゃあね」
テンガイは大剣を振り上げ、振り下ろす。
魔法少女の肉体は、並の刃物は通さない。
だが、テンガイが持つのは魔法の国製。
例えその真の力を解放できなくとも、魔法少女を斬殺する程度の威力は秘めている。
振り下ろされた大剣は
魔法少女の肉体は、並の刃物は通さない。
だが、テンガイが持つのは魔法の国製。
例えその真の力を解放できなくとも、魔法少女を斬殺する程度の威力は秘めている。
振り下ろされた大剣は
「——なら、やっぱりあなたは許せない」
真美の、左上腕に防がれる。
テンガイの表情が、僅かに変化する。
僅かな驚きと、微かな期待。
——その顔に、真美の右ストレートが突き刺さった。
テンガイの小柄な体躯がロープまで吹き飛ばされる。
魔力が弾ける音が、周囲に響く。
大剣を防いだ上腕はコスチュームが裂け、血が滴っていた——傷口が、瞬時に回復し、コスチュームが瞬く間に修復する。
テンガイの表情が、僅かに変化する。
僅かな驚きと、微かな期待。
——その顔に、真美の右ストレートが突き刺さった。
テンガイの小柄な体躯がロープまで吹き飛ばされる。
魔力が弾ける音が、周囲に響く。
大剣を防いだ上腕はコスチュームが裂け、血が滴っていた——傷口が、瞬時に回復し、コスチュームが瞬く間に修復する。
「——あなたは、ここで止める!」
「——やってみろよ、三下」
立ち上がったテンガイの顔にも、既に傷一つなかった。
「七海真美の勝ち筋だけど……」
「お、ようやく仕事する気になったか」
「若いよね、まだ、中一でしょ……」
「げっげっげ、それはむしろ弱点だろ?
基本的に魔法少女は年期を重ねれば強くなっていくからな……。
まぁ、だとしたらテンガイは全参加者が束になっても敵わないってことになるが……」
基本的に魔法少女は年期を重ねれば強くなっていくからな……。
まぁ、だとしたらテンガイは全参加者が束になっても敵わないってことになるが……」
「うん、基本的にベテランほど強い……。
けどね、そうとも言い切れないんだよ……」
けどね、そうとも言い切れないんだよ……」
「あん、そうなのか?」
「参加者に、ティターニアって居るじゃん。
テンガイとも引き分けてる……すごく強い魔法少女なんだけど……」
テンガイとも引き分けてる……すごく強い魔法少女なんだけど……」
「げっげっげ、そいつは知ってるぜ。そのティターニアがどうしたんだ?」
「……彼女が一番強い時期、知ってる?」
「そりゃあ、今だろ?
魔法少女に肉体の衰えなんて関係ねーだろうしなぁ」
魔法少女に肉体の衰えなんて関係ねーだろうしなぁ」
「違うよ……ティターニアが真に最強だった時代は」
「12歳の頃だよ……」
「……どういうことだ?」
「さぁね……でも、幼い魔法少女は——それだけ天上に近いのかもしれないね。
……まだ、自己の限界を自覚する前だから、なのかな……
くすっ、年期を重ねても、遠ざかるだけだよ……」
……まだ、自己の限界を自覚する前だから、なのかな……
くすっ、年期を重ねても、遠ざかるだけだよ……」
「お前……」
グレンデルは、まじまじとパラサイトドールの顔を眺める。
「そんなサディスティックな顔もするんだな」
「そうだね……」