「取り逃がした……」
ハニーハントは苛立たし気に唸った。
街行く人に『魔法少女の殺し合い』を話して回っていたオオカワウソに攻撃を仕掛けたのが、およそ10分前。
突如出現したホッケーマスクにチェーンソーの『集団』に人々はパニックになり、逆にオオカワウソは興味を惹かれたのか近づいてきた。
街行く人に『魔法少女の殺し合い』を話して回っていたオオカワウソに攻撃を仕掛けたのが、およそ10分前。
突如出現したホッケーマスクにチェーンソーの『集団』に人々はパニックになり、逆にオオカワウソは興味を惹かれたのか近づいてきた。
戦いは、一方的な虐殺となった。
魔力の許す限り分身を創り出せるハニーハントと、増えることが出来ないオオカワウソ。碌に武装もしておらず、瞬く間にオオカワウソはチェーンソーに斬り刻まれていった。
魔力の許す限り分身を創り出せるハニーハントと、増えることが出来ないオオカワウソ。碌に武装もしておらず、瞬く間にオオカワウソはチェーンソーに斬り刻まれていった。
残り3匹となった段階で、オオカワウソは逃げ始め、その背中に刃を振り下ろす。
後2匹。
だが、ハニーハントはその足を止めざるを得なかった。
分身したハニーハントたち。
その一人が——座り込んでいる。
分身したハニーハントたち。
その一人が——座り込んでいる。
(疲れたのかな……なんて、まさかそんなはずがない)
そこまで複雑な思考はできない。
所詮はオオカワウソの劣化版だ。出現する分身は知能も身体能力も、本体より大幅に劣化している。
所詮はオオカワウソの劣化版だ。出現する分身は知能も身体能力も、本体より大幅に劣化している。
座り込んだ分身ハニーハントの首は——90度に曲がっている。
粒子化を始めた分身と、その傍らに立つ濡羽色の長髪を靡かせる少女。
粒子化を始めた分身と、その傍らに立つ濡羽色の長髪を靡かせる少女。
「……何者ですか?」
分身ハニーハントは、この少女に負けたのだ。
いくら劣化しているとはいえ、チェーンソーを振り回す成人男性程度の強さはある。
ただの少女が殺せる相手ではない。
いくら劣化しているとはいえ、チェーンソーを振り回す成人男性程度の強さはある。
ただの少女が殺せる相手ではない。
「まさか、魔法少女ですか……?」
だが、強い魔力は感じない。
生身だ。
生身だ。
「私は桐生ヨシネ。
私には嫌いなものが二つある」
私には嫌いなものが二つある」
(桐生ヨシネ……確か名簿に載っていた。
魔法少女名は、バーストハート……)
魔法少女名は、バーストハート……)
「一つは、誰かに指図されること。
そしてもう一つは——」
そしてもう一つは——」
ヨシネは地を蹴った。
コンクリートが爆ぜる。
コンクリートが爆ぜる。
(速い……!?)
「朝っぱらから騒音をばら撒く奴だっ!」
ヨシネの拳がハニーハントの腹を撃ち抜いた。
桐生ヨシネは一子相伝の特殊な武術を習得している。
武術は鍛錬により呼吸や心拍を自由自在に操り人間離れした身体能力を発揮して戦うもので、天才児であった彼女は若干15歳にして奥義も含めた全技術をマスターした。
全参加者が『生身』で戦えば——トップ3には確実に入る実力者だ。
その実力は、変身せずとも、魔法少女との戦闘を可能にする程である。
武術は鍛錬により呼吸や心拍を自由自在に操り人間離れした身体能力を発揮して戦うもので、天才児であった彼女は若干15歳にして奥義も含めた全技術をマスターした。
全参加者が『生身』で戦えば——トップ3には確実に入る実力者だ。
その実力は、変身せずとも、魔法少女との戦闘を可能にする程である。
『ヨシネちゃんはめちゃくちゃ強い。人間の三倍の力が出せるんだから話にならないよ』
『ヨシネと戦うの、ゴリラと戦う同じネ。私なら麻酔銃使うヨ』
『ヨシネと戦うの、ゴリラと戦う同じネ。私なら麻酔銃使うヨ』
幼馴染である二人の少女は、かつてヨシネをそう評した。
対して、ハニーハントは武術を修めていなければ、戦闘経験も薄い。
生身と思っていた少女の常人離れした動きに対応できず、まともに攻撃を喰らってしまう。
生身と思っていた少女の常人離れした動きに対応できず、まともに攻撃を喰らってしまう。
——だが、ハニーハントには覚悟があった。
一度、オオカワウソによって瀕死に追い込まれた彼女は、痛みに対する覚悟が出来ている。
一度、オオカワウソによって瀕死に追い込まれた彼女は、痛みに対する覚悟が出来ている。
魔法少女の身体能力は十倍。
三倍程度の一撃では、致命傷にはならない。
三倍程度の一撃では、致命傷にはならない。
痛い。
痛いが、意識が飛ぶわけでも、これで死んでしまうわけではない。
だったら。
痛いが、意識が飛ぶわけでも、これで死んでしまうわけではない。
だったら。
チェーンソーを振り下ろす。
林業などで使われるチェーンソーの倍はある巨大チェーンソーは、拳を当てたバーストハートに当然ながら届く。
そして生身の人間がチェーンソーで斬られれば、死ぬ。
林業などで使われるチェーンソーの倍はある巨大チェーンソーは、拳を当てたバーストハートに当然ながら届く。
そして生身の人間がチェーンソーで斬られれば、死ぬ。
恨みは無いが、優勝するために、ハニーハントは凶器を少女にぶつけ。
——少女の姿は、無い。
(どこへ……?)
頭の中で火花が散った。
後頭部に、ハニーハントの回し蹴りが炸裂している。
後頭部に、ハニーハントの回し蹴りが炸裂している。
やはり、致命傷にはなりえない。
だが、姿勢を崩してしまう。衝撃に、頭を下げてしまう。
——脳天に、踵が振り下ろされる。
だが、姿勢を崩してしまう。衝撃に、頭を下げてしまう。
——脳天に、踵が振り下ろされる。
更に、頭が下がる。下げられる。
——アッパーで顎をかちあげられる。
——手の甲に手刀が叩き込まれる。
——駄目押しのように、腹部にもう一度蹴りが放たれる。
——アッパーで顎をかちあげられる。
——手の甲に手刀が叩き込まれる。
——駄目押しのように、腹部にもう一度蹴りが放たれる。
ハニーハントの足が、アスファルトを離れた。
吹き飛ばされた身体が、電柱に当たり、ハニーハントは苦悶の声をあげた。
吹き飛ばされた身体が、電柱に当たり、ハニーハントは苦悶の声をあげた。
何故こうも、ハニーハントは圧倒されるのか。
偏に、相性によるものであった。
ハニーハントの魔法、『えっちなのは許さないよ』は、えっちであれば神様だって殺してみせる魔法だが、裏を返せば、えっちでなければ効果は適用されない。
ハニーハント本人は少し初心な程度で、万物がえっちに見える思春期男子でもなければ、マニアックな性癖を拗らせているわけでもない。
ヨシネが服を脱ぐか淫語でも言い出さない限りは、ハニーハントの魔法は効力を発揮しないのだ。
偏に、相性によるものであった。
ハニーハントの魔法、『えっちなのは許さないよ』は、えっちであれば神様だって殺してみせる魔法だが、裏を返せば、えっちでなければ効果は適用されない。
ハニーハント本人は少し初心な程度で、万物がえっちに見える思春期男子でもなければ、マニアックな性癖を拗らせているわけでもない。
ヨシネが服を脱ぐか淫語でも言い出さない限りは、ハニーハントの魔法は効力を発揮しないのだ。
得意な魔法を抜きにしてみれば、ハニーハントの武器は魔法少女の基礎スペックに、巨大チェーンソーしかない。
魔法少女でも容易く斬り刻めるチェーンソーは驚異的だが、ハニーハント本人が戦闘に熟達しているわけではない以上、素人の振り回すナイフと練度は同じだ。
魔法少女でも容易く斬り刻めるチェーンソーは驚異的だが、ハニーハント本人が戦闘に熟達しているわけではない以上、素人の振り回すナイフと練度は同じだ。
武術をマスターしたヨシネから見れば、動きを見切ることは容易いことだった。
それでも、分身体で囲めばヨシネを追い詰めることは出来ただろう。
それでも、分身体で囲めばヨシネを追い詰めることは出来ただろう。
最初に本体が声をかけたことで、本体に集中的に攻撃され、分身に指示を出すことが出来なかったことも、圧倒された要員である。
——それでも、人間は魔法少女に勝てない。
ハニーハントはゆっくりと立ち上がった。
連撃を喰らってもなお、ハニーハントを戦闘不能に追い込むほどのダメージには至っていない。
例え身体能力が三倍になったところで、十倍を倒すには力不足。
連撃を喰らってもなお、ハニーハントを戦闘不能に追い込むほどのダメージには至っていない。
例え身体能力が三倍になったところで、十倍を倒すには力不足。
魔法少女とは、おしなべて怪物である。
コーホーと、ホッケーマスクから呼吸音が零れる。
どうしてバーストハートが変身していないのか、今は考えない。
ただ、命を奪う。
クィーンのために、斬り刻む。
ハニーハントは顔を上げた。
どうしてバーストハートが変身していないのか、今は考えない。
ただ、命を奪う。
クィーンのために、斬り刻む。
ハニーハントは顔を上げた。
桐生ヨシネは居なかった。
「え……!?」
きょろきょろと周囲を見回す。
影も形も無い。
隠れて隙を伺っているのか。
一方的に殴って満足したので帰ってしまったのか。
影も形も無い。
隠れて隙を伺っているのか。
一方的に殴って満足したので帰ってしまったのか。
「り、理不尽すぎる……」
もはや不条理文学だ。
苛立ちと困惑に苦しみながら、ハニーハントは分身を一度引っ込めるべきか考える。
何なら変身を解除して再び潜伏するべきか。
苛立ちと困惑に苦しみながら、ハニーハントは分身を一度引っ込めるべきか考える。
何なら変身を解除して再び潜伏するべきか。
しばし思案し——それは、致命的なミスとなった。
「——カカカ」
独特な笑い声が、ハニーハントに届いた。
ハニーハントは、戦闘の素人である。
故に、その脅威度は、フィクションの尺度で測られることになる。
ハニーハントは、戦闘の素人である。
故に、その脅威度は、フィクションの尺度で測られることになる。
(……人?)
ホラー映画でも、スラッシャームービーや、スプラッターではない。
ジャンルとしては——モンスターパニック。
あるいは——怪獣映画。
ジャンルとしては——モンスターパニック。
あるいは——怪獣映画。
人型である。
炎の装飾が入った首から下を覆う白いボディスーツに、毛先が炎のようなメッシュになったポニーテール。
派手な格好をした長身女性。
恐らく、魔法少女。
炎の装飾が入った首から下を覆う白いボディスーツに、毛先が炎のようなメッシュになったポニーテール。
派手な格好をした長身女性。
恐らく、魔法少女。
だが、発する威圧感が、圧倒的な『気』が、本当に人なのかと疑わせる。
女の後ろからもう二人魔法少女が着いてきていることに、すぐには気づかなかったほどだ。
女の後ろからもう二人魔法少女が着いてきていることに、すぐには気づかなかったほどだ。
「——儂の名は、ブレイズドラゴン」
間近で怪物の鼻息を浴びた気分だった。
それでもえっちならば殺せる。
だが、ブレイズドラゴンは、えっちではない。
——勝てない。
それでもえっちならば殺せる。
だが、ブレイズドラゴンは、えっちではない。
——勝てない。
(逃げないと……)
分身で足止めをしつつ、逃げる。
まだ死ぬわけにはいかない。クィーンのために、まだ死ぬわけには。
ブレイズドラゴンが来た方向とは別の道に、ハニーハントは顔を向けた。
まだ死ぬわけにはいかない。クィーンのために、まだ死ぬわけには。
ブレイズドラゴンが来た方向とは別の道に、ハニーハントは顔を向けた。
ヨシネと共に、三人の魔法少女が歩いてきた。
サンバイザーにレザーコートの魔法少女。
VRゴーグルにゴスロリの魔法少女。
つぎはぎドレスの魔法少女。
VRゴーグルにゴスロリの魔法少女。
つぎはぎドレスの魔法少女。
(嘘でしょ……仲間呼んできた……)
桐生ヨシネ自由過ぎないか? とツッコミたくなるのをぐっとこらえる。
事実としてハニーハントを取り囲むように、七人の魔法少女が集結しているのだ。
事実としてハニーハントを取り囲むように、七人の魔法少女が集結しているのだ。
ホラー映画ならば終盤の様相を見せている。
ハニーハントが真に怪物であるならば、この状況からでも皆殺しにできるかもしれないが、残酷なことに、集まった魔法少女の中にはハニーハントより強い者も混じっている。
ハニーハントが真に怪物であるならば、この状況からでも皆殺しにできるかもしれないが、残酷なことに、集まった魔法少女の中にはハニーハントより強い者も混じっている。
「あーっ!? クリックベイト先輩ニャ! 無事だったニャ?」
「……君こそ無事で良かった。分かってたこととはいえ、こんな状況、1時間経てばどうなるかまるで予測できないからね」
おまけに集まった仲には、知り合いまで混じっている。
ハニーハントは、詰んだ。
オオカワウソ狩りに手を出した結果、狩られる側に回ってしまった。
ハニーハントは、詰んだ。
オオカワウソ狩りに手を出した結果、狩られる側に回ってしまった。
「カカカ、桐生の娘か、息災かのう」
「……え、誰?」
「儂はブレイズドラゴンじゃ」
「いや、知らないんだけど」
(どうする……どう切り抜ける……?)
ハニーハントは必死に頭を回す。
分身で七人の足止めをしつつ逃げるか——可能か?
ゲームに乗っていないと弁明する——信じてもらえるか?
全員チェーンソーで斬り刻む——ヨシネ一人に勝てなかったのに?
分身で七人の足止めをしつつ逃げるか——可能か?
ゲームに乗っていないと弁明する——信じてもらえるか?
全員チェーンソーで斬り刻む——ヨシネ一人に勝てなかったのに?
荒い息を吐きながら、ハニーハントは逆転の一手を探る。
だが——思いつかない。
哀れな蜂は、ここで潰えるしかない。
だが——思いつかない。
哀れな蜂は、ここで潰えるしかない。
「——そろそろリールを引くとしようか」
「クリックベイト、どうしたのだ……?」
不安そうに、メリィはクリックベイトに顔を向けた。
「——ふむ、収穫時じゃのう」
「ブレイズドラゴンさん、どうしたのニャ?」
ネコサンダーはブレイズドラゴンに声をかける。
ウェンディゴは、溜息をついた。
クリックベイトの糸が伸びていると、プアは気づいた。
あのホッケーマスクに攻撃を仕掛けたのだろうかと、何の気なしに糸の行方を追う。
あのホッケーマスクに攻撃を仕掛けたのだろうかと、何の気なしに糸の行方を追う。
「え——」
炎の塊が、突っ込んでくる。
違う、あれは、トラックだ。
炎上する大型トラックが、八人の魔法少女を轢殺せんと、迫って来ていた。
違う、あれは、トラックだ。
炎上する大型トラックが、八人の魔法少女を轢殺せんと、迫って来ていた。
(逃げないと……それとも、溶かす……? 中にはガソリンが……)
プアは、戸惑う。
薬の後遺症で鈍くなった思考力は、咄嗟に行動できない。
薬の後遺症で鈍くなった思考力は、咄嗟に行動できない。
ずい、と一人の魔法少女が前に出た。
ポニーテールの、長身の魔法少女。
ポニーテールの、長身の魔法少女。
「カカカ」
100キロを超える速度で暴走する炎上トラック——轢かれれば魔法少女といえどもただでは済まない。
にも関わらず、ブレイズドラゴンは轢殺兵器を前に笑みを浮かべ
にも関わらず、ブレイズドラゴンは轢殺兵器を前に笑みを浮かべ
「気が重いのう」
言葉とは裏腹に、その声色は楽しげであった。
そして、ブレイズドラゴンはそっと右手を前に出す。
そして、ブレイズドラゴンはそっと右手を前に出す。
トラックは一切減速することなく、ブレイズドラゴンを轢き潰し——。
「——発頸」
大型トラックの、車両総重量は、25トンであるという。
それが——宙を舞う。
子どもがおもちゃの車を放り投げるように、トラックは繁華街の空を舞った。
魔法少女の常識から鑑みても、非現実的な光景だった。
100mは吹き飛ばされたトラックは、パチンコ店に落下する。
壁を、そして装飾を破壊し——爆発が起きた。
それが——宙を舞う。
子どもがおもちゃの車を放り投げるように、トラックは繁華街の空を舞った。
魔法少女の常識から鑑みても、非現実的な光景だった。
100mは吹き飛ばされたトラックは、パチンコ店に落下する。
壁を、そして装飾を破壊し——爆発が起きた。
「……え、今のは、え、でも……」
プアは、戸惑った。
ポニーテールの魔法少女が命を助けてくれたことは分かる。
だが、まだ開店時間の前とはいえ、さっきの爆発で人が何人死んだか分からない。
ポニーテールの魔法少女が命を助けてくれたことは分かる。
だが、まだ開店時間の前とはいえ、さっきの爆発で人が何人死んだか分からない。
それに、あのトラックを引き摺っていた糸は——クリックベイトの釣り竿から伸びていた。
いったい何が起きてるのか、理解できない。
いったい何が起きてるのか、理解できない。
だからプアは、お礼を言うことにした。
「……助けてくれて、ありがとうございます」
それだけは、間違いではないはずだと思ったからだ。
「カカカ、気にするでない」
ブレイズドラゴンは気さくに笑い
その手刀が、プアの胸を貫いていた。
その手刀が、プアの胸を貫いていた。
「……ぇ」
背中まで貫通した腕を、無造作に引き抜く。
プアは、崩れ落ちた。
口から血が溢れる。
プアは、崩れ落ちた。
口から血が溢れる。
「プアーっ!?」
メリィが叫ぶが、プアは返事が出来なかった。
ただ、自らを襲ったブレイズドラゴンを、見上げることしか出来ない。
ただ、自らを襲ったブレイズドラゴンを、見上げることしか出来ない。
(どうして……?)
助けたと思ってたら殺して。
意味が分からない。
意味が分からない。
「——勝手に潰し合うでないわ、たわけ者め」
ブレイズドラゴンが窘めるように言った。
そして彼女は両腕を広げ、その場に居る七人の魔法少女に、宣言する。
そして彼女は両腕を広げ、その場に居る七人の魔法少女に、宣言する。
「全員でかかってこい。
見事、この儂を倒してみせよ」
見事、この儂を倒してみせよ」
「ぶ、ブレイズドラゴンさん、何を言っているのニャ……?
冗談にしては、キツイニャ……」
冗談にしては、キツイニャ……」
「カカカ……」
ブレイズドラゴンは楽し気に笑う。
そして、ネコサンダーに顔を向けた。
そして、ネコサンダーに顔を向けた。
「儂は冗談を好かんよネコサンダー。
ぬし一匹では足りなかったのでな、今まで見逃していたのじゃが。
ここまで揃えば、前菜としては十分じゃろうて」
ぬし一匹では足りなかったのでな、今まで見逃していたのじゃが。
ここまで揃えば、前菜としては十分じゃろうて」
(何だよ、こいつ……)
どうやらクリックベイトが裏切った。
そこまでは理解できる。どうしてこのタイミングで、と疑問は多いが、ひとまず呑み込めた。
だが、このブレイズドラゴンと名乗る魔法少女は——人と話している気がしない。
もっと理解不能で、もっと理不尽な……まるで、龍。
そこまでは理解できる。どうしてこのタイミングで、と疑問は多いが、ひとまず呑み込めた。
だが、このブレイズドラゴンと名乗る魔法少女は——人と話している気がしない。
もっと理解不能で、もっと理不尽な……まるで、龍。
(ゲームに乗っていたのなら、さっきのトラックは自分だけ逃げれば良かったはずだ。
なのにこいつは、僕たちを助けた上で、殺し合いを挑んできた……)
なのにこいつは、僕たちを助けた上で、殺し合いを挑んできた……)
全員でかかってこい、とブレイズドラゴンは言っている。
ゲームに乗っているであろうクリックベイトも、謎のホッケーマスクの少女も、メリィ側の戦力に勝手に数えられている。
ゲームに乗っているであろうクリックベイトも、謎のホッケーマスクの少女も、メリィ側の戦力に勝手に数えられている。
(こいつ、バトルロワイアルを、勝手にレイド戦に変えやがった……!?)
「誰かに助けを求めても良い。
卑怯な手を使っても良い。
配られたアイテムも存分に使え。
じゃが、他の者の足を引っ張ったり、儂の手助けをしてはならんぞ?
皆で心を一つにして、一生懸命頑張るのじゃ」
卑怯な手を使っても良い。
配られたアイテムも存分に使え。
じゃが、他の者の足を引っ張ったり、儂の手助けをしてはならんぞ?
皆で心を一つにして、一生懸命頑張るのじゃ」
そうすれば、とブレイズドラゴンは構えを取る。
「——少しは楽しめるからのう」
戦場の伝説が、魔法少女に牙を剝く。