スナッチャー

(投稿者:Cet)



戦って、戦って、戦って
見下して、見下して
殺して
端から孤独なのに
許されるのは自分だけ

壊して
どこかに行ったつもりで





 ■■■■■に■■■■■。とその■■■■■は言っていた。■だった。■■がちな■顔は中々に映えていた。

「全力でいけ、殺してもいいぞ」
「あい」
 俺は頷く。
 殺すっていうのはどういうことかっていうと、相手の目を閉じさせるみたいなものだ、と俺は認識していた。
 深い眠りに就かせるだけだ。逆もそうで、殺されるというのは、深い眠りに就くことだった。ただ普段しているように、目覚まし時計を鳴らせば目覚めるなんてことはないというだけだ。
 人里離れた山林で、同じ場所に並んで立った。緊張している様子だった。それをジャックを含んだ十人ほどの科学者が囲んでいる。
「始め」
 ジャックの合図と共に、俺は前方へと走り出す。俺と違って■のあるそいつは、その場で■■■くと、いわゆる滑走状態の俺を追跡し始めた。
 五十メートルほど森の中を駆けたところで、正面に断崖絶壁の淵が垣間見え、俺は大きく跳躍する。大気を掴んだ翼が青い光を放出して、更なる加速を得た。直進を続け、失速しないだけのスピードを得たところで左方向へと旋回していく。
 ガガガ、と■■■の唸る音がした。先程まで存在していた空間を銃弾が通り過ぎていく。俺は銃声の響いてきた方角から距離を取り、更に旋回を続ける。眼下には先程の絶壁が見え、二百メートルほど下の谷底には川が流れている。その他は、広い範囲に渡って森林が広がっていた。
 ブルーハンドを構え、俺よりも十メートルほど高度を持って滞空するそいつの影を捉えた。先程自分から空けた距離を急速に埋める。■■の顔が近づいてくる。
 その表情を確認するにつけ、違和感を覚えた。■えている、明らかに■■っている。しかしそれは初めて会った時のような■■いとは違い、どこか■■に苛まれているようでもあった。
 なるほど、と納得する。恐らく■■は■られたのだ。というのも、そもそも演習の上で実弾を使用するはずがないではないか。だから、きっとそのことを知らされていなかったに違いない。
 事情を認識していない状態のオブジェクト、つまり、戦闘能力をほとんど発揮できない状態の目標を相手に、いかなるパフォーマンスを発揮できるか、というのが今回のテストの主旨なのだろう。
 それならそれでいいや、と俺はブルーハンドを発砲する。腕をがくがくと揺さぶる振動も、そこそこに制御して、そいつの光る■が散って、そして何やら■■そうな顔で■んでいるのが見えた。というか多分■いているのだろう。
 仕方ない、と俺は思う。だって、■■は蟻のようなものなのだから、そして俺はその蟻を潰すのが心の慰めである、一人の餓鬼なのだ。そういう関係なのだから、仕方ない。
 ただ、蟻はあんな■■しきった表情で■を浮かべたりはしないんだろうな、などと思いつつ、降下しながら逃げ道を覗うそいつを追った。
 そいつの移動方向と射線が重なり合ったところで撃った。そいつの身体が弾け、一瞬遅れて、俺の顔に張り付いてきた。
 目は見えている、大丈夫だ。
 二百メートルの深さの谷底まで、そいつは墜落していく。追うかどうかかなり迷って、俺はジャックに連絡を入れた。
「撃墜完了、演習終了」
『了解、戦闘開始から十五秒だ、上々だな』
「そいつはどうも、で、目標は谷底に落ちた」
『戦闘能力の有無を確認した後で、報告しろ、抵抗が不可能なようなら、後は我々の仕事だ』
「了解」

 俺は谷底まで降りていった。
 川の落下地点から少し下流にいったところで、■を失ったそいつの身体はなお流れていこうとしていた。胸のあたりから、赤い血が流れ出ている。
 俺は一つ溜息を吐いた。
 実験対象であり、また俺にとってはただの蟻でしかなかった■■に、少しだけ同情したのであった。


最終更新:2010年02月14日 03:27
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