(迅鯨)
我輩の預かるカルフは、特殊スキルこそもたないが、汎用戦力として高度にバランスの取れた能力を持つ平凡なメイド、メ
イルで編成された部隊である。
たしか、その筈である。
しかしこいつは一体全体どうしたわけか?こいつは何者だ?その特異な風貌を、我輩はただただ異様としか形容する言葉を
持ち得ない。
カルフスーツを多重に着込んだその風貌。開口部から下のスーツの顔が覗き、その開口部からさらに下のスーツ顔と、見え
てるだけできぐるみの顔が、四重五重に入れ子式に連なっている。
ヤツはいつとは無しに、カルフ四十面相と呼ばれるようになったが、ヤツ自身がそう名乗った訳ではないし、そもそも我輩は
四十面相が喋るところなど、ただの一度も見たことはない。おそらくはカルフ隊員の誰かがつけた呼び名であったのだろう。
いまやコレが正式名称として定着してる。
誰しもが光や空気の存在に気づいた瞬間を覚えていないように、我輩がヤツの存在を明確に意識した瞬間を思い出すことは
できない。それ故にその存在に対していつ頃から違和感を覚え始めたのかも、やはりわからない。部隊の編成完結式の時に
も紹介された記憶はないが、その場にはいたような気がするし、やはり居なかった気もする。
そのときの他の面子の様子は、ありありと思い出すことが出来るというのに、不思議なことに四十面相の記憶だけがうすら
ぼんやりとしている。
して思ってみれば、今更ながらに我輩が彼について知ってることの少なさに驚く。今、彼とは言ったが、もしかしたら彼女
なのかもしれない。
いや、それどころか性別などというものが、果たしてこいつに有るのだろうか?その謎に四十面相は一切の沈黙を守っている。
しかしそこまで不可思議な存在であるにもかかわらず、部下の皆は他となんら変わりなく四十面相に接している。何故皆は
不思議に思わないのだろうか?
ひょっとすると違和感を感じているのは、我輩だけなのか?だとしたら逆に、何故我輩はアレに違和感を覚えるのだろうか?
疑問符は沸いて止まないが誰も答えてはくれないし、それを解く糸口も見えてはこない。彼に関するあらゆる問いは、ただ
ただ不可解という虚無の中で空しく反響するばかりだ。
とは言っても、日々それだけに思い煩ってるわけにもいかない。我輩にはカルフ隊長としての責務があり、やらなきゃなら
んことは沢山ある。四十面相は謎といえば謎だが、しかしそれだけのことで、部隊の行動に差し障るわけではない。
それに四十面相は外見こそ面妖だが素行は悪くないし、戦闘でもそれなりに働く。戦技の成績は押しなべて平均値で、とり
たてて何が得意ということはないが、苦手なこともない。器用貧乏といえばそうに違いないが、どんな環境でも常に一定の
能力を発揮できるという意味では、彼はトリントと並んで非常に融通の利く人材であるとも言える。
均質化された戦力が売り文句のカルフとはいえ、やはり個性がある以上誰にも得て不得手があるが、四十面相にはそれがな
いし、何を命ぜられても不平も言わず黙々とそれをこなす。
軍隊的合理主義思考で考えれば大変結構!!の一言につきる資質だ。であれば外見の特異さなどは、今後も謎であり続けるに
しても瑣末ごとで済まされる範疇だ。
ふとみやればザハーラの太陽は、すでに中天に達し、空模様の晴天よろしきを得て、本日も重圧すら感じるほどの暑熱を地
に投げやって燦々と照っていた。
小人閑居して不全をなす。この気だるい昼下がりに、暇をもてあました我輩は栓もないことに少しばかり思い巡らしていた
だけである。
そうして時折もたげるこのような疑問は、いつものように瑣末ごとであると帰結する。然程のことはないのだ。
気温はすでに五十度を超えて、温度計を見るのも嫌気が差すほどの暑さだ。
これだけ暑いと一部の種を除けば、Gの活動も不活発で、夕方にならないと動き出さない。しかし夜になるとすぐに冷え込
んでしまうため、その活動も二、三時間ほどで収まってしまう。
それからは明け方になるまで中々動き出さない。そして夜が明けると昼近くまで動き続ける。これがGの行動サイクルだ。
それを心得た人間も、そのサイクルに合わせて戦う。具体的に言えば日中は守りに徹し、日が暮れてから活動の鈍ったGへ
の攻撃に移るといった具合だ。カルフに置いてもこれは同様で、特別な場合でない限り日中は酷暑を避けてテントの中で過ごす。
この時間は、不意の襲撃に備えて歩哨に立つ者を除けば、夜に備えて午睡をとるなり、趣味に興じるなりして、各人思い思
いに過ごす。
この日のカルフ四十面相はマッチを相手に碁を打っていた。
マッチはこの隊の中ではかなり頭が切れるヤツで、碁を打たせれば、この隊では二番目に強い。一番はもちろん我輩だ。
彼が碁をしだしたのは、ほんの一月ほど前で、四十面相が棋譜を見ながら
一人で打っていたところに、興味を示して打ち始め
たのである。
最初の内は、やりこんでる分だけあって四十面相が優位に立っていたが、程なくしてマッチが定石を覚え、要領を飲み込み始
めると、それからはみるみると上達していき、今や四十面相を相手に打てば、五回に三回は勝つほどの腕前となっている。
そして今回の対局も四十面相が追い込まれていた。
四十面相はもうかれこれ、十分ほどの間、腕組みをしたまま動かずに、じっと碁盤を凝視したまま長考していた。マッチはい
い加減、退屈し始めて、転がっていた雑誌を手元に引き寄せてページをパラパラとめくり、暇をやり過ごしていた。
それからしばらくして、ようやく腕を解いた四十面相が次の手を打った。だがしかし、マッチはすでに次の一手を予想してい
たと見え、その対応も検討済みであるらしく、四十面相が石を置くや、マッチはすぐさまに打ちかえしてきた。
これは勝負あったな。
四十面相はしばらく碁盤を見つめていたがややあって、これはもう打つ手がないと見取るや、一本取られたと言う様に四十面
相は叩頭して、投了した。
それを見てマッチは、へへっとしたり顔で笑い、石をより分けながら碁笥に戻し始めた。終局処理をして浜を勘定するまでも
無く、勝敗がハッキリするほどに彼は優位にゲームを進めていたのだ。
うむ、我輩から見てもマッチは腕を確実に上げてきている。これなら少しは楽しめそうである。我輩も一局マッチに付き合っ
てもらうとしよう。
「ふむ、では次は我輩と一局――」
「ケェェェ―――――ッッ!!!!」
我輩の言葉をさえぎって、突然怪鳥の叫びのごとき奇声が響いた。びくりとして、その方向を見やれば、今の今までテントの
片隅で人形作りに没頭していたるるるが、直立姿勢のまま両腕を左右に広げて立っていた。
るるるとはカルフの通信兵である。しかし通信兵でありながら、その必需品である無線機の類は一切使用せず、電波はもっぱ
ら頭で受信する。そのためか、はたまた生来のアレなのかは定かではないが、時折こうして毒電波を受信し奇声を上げることがある。
皆もそんなことには慣れっこで、そんな彼女のことなど気にも留めず平静に振舞っていた。
彼女はぐっ、と、胸をそびやかして、息を大きく吸い、「ケェェェェェ――――――――――――イッッ!!!!!」ともう一度奇
声を上げ、鳴り止むと、るるるは伸ばした両腕をだらりと下げて、虚ろな目で何事かをブツブツと言いながら、覚束ない足取り
で歩き出した。
我輩は初め、何を言っているのか聞き取れなかったが、彼女のつぶやきは、次第に近づくにつれ、徐々に我輩の耳朶を振るわせ始めた。
「こん、、にちは…お昼の……リクエストナンバーで 熱帯低気圧を お送りしま・・・GGHQ発表によると・・・刃物を持った
――家族連れが 今シーズン初となる/…・・大発生に……嬉しい悲鳴が・…・…まどろむ夕闇にショウショウと・・ロジャは言うと、、、
みgかひdりを差し 夕べの・・元型に・おののいて、食卓を彩る・コロナ状の…人類のために……出荷された・戦場は…驚きのシロ
さで 大衆娯楽の王様。 愚者の頭に飾るには…首をはねておしまい!!」
おぼろげに聞き取れる単語や口調からして、ようやくラジオ放送を受信しているらしい、ということが解ってきた。あの奇声はお
そらく空電であろう。
しかし、よくよく聞いてみると、さまざまな周波数が同時にるるるに届いてるらしく、混線して、内容は支離滅裂だ。
我輩が、そんな彼女の様子をぼうっと眺めてるうちに、るるるはいつの間にやら鼻先が触れ合うほどまで近づいていて、そして足
を止めて、じつと我輩の目を見つめた。
彼女の視線に我輩は、少しばかりのこそばゆさを覚えながらも、戸惑いはしなかった。だが少々周りの目線が気になる。普段なら
ここらで誰かが、冷やかしを入れるのではないかと思ったが、しかし意外なことにそうした反応は無い。
我輩はぐるりと周囲を見渡したが、先ほどと相も変わらず、各人各様の姿勢でくつろいでいるだけである。
先ほどと相も変わらず!?
我輩はそこで始めてある異常に気がついた。皆、先ほどから何も変わらないのだ。食事中のものは匙を持ち上げたまま、茶をすす
るものはカップを上げたまま、静止しているのだ。その中で、るるるだけが動いている。
そして、我輩もまた体が金縛りにあったように動かないことに気づき、そのことを意識したとき、今までなんともなかったのに、急
に圧迫感がこみ上げて息苦しくなってきた。
声を出そうにも声はでず、ただはぁはぁと闇雲に息が荒らぐだけである。
「隊長は気づいてしまった」
ふと我輩は、後ろに人の気配を感じた。
反射的に振り向こうとすると、金縛りはいともあっさりと解けた。そして振り向く先に立っていたのは、カルフ四十面相。
その口は大きく開かれ、幾重にも連なる顎の向こうには、深淵を覗き込む一つの影。やがてその影はこちらに向かって急速に近づい
てきた。その時、不意に体から重力が剥離し浮遊感が全身を包み込んだ。
*
暗い。果てしなく広がる闇。鼻先すらも見通すことが出来ず、五感で捕らえ得る感覚は何もない。そんな闇の中ではあっという間に距
離感が奪われる。また体は、とらえどころのない虚無を漂い、手足の感覚は遠くにも近くに感じられた。
時がたつうちに我輩は、次第にこの空間と体との境界すらも解らなくなり、体が闇に解けてしまって意識だけがそこにあるように思われてきた。
ふと何かが我輩に触れたような気がした。その感触は味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚のいずれにも分類できず、言語では言い表せない。
その名状しがたき感触は、肉体の輪郭を失って解けてしまった我輩を、その触れた一点へと、急速に収束させ、我輩を一個の個体へと
凝縮していくように感じられる。
収束は肉体はおろか意識すらも、凝縮されるようで、今や意識体とも言うべき我輩を、肉も空間も有象無象の区別無く混合していった。
お知らせ:オッツォ(FoM/???)さんが入室しました。(0000/00/00 00:00)
オッツォ:!?(0000/00/00 00:00)
オッツォ:なんだここは!?何も見えないぞ。我輩はどうなってしまったのだ?(0000/00/00 00:00)
オッツォ:それになんだこれは?我輩は声を出してしゃべっているのか?それとも心中で話しているのか?(0000/00/00 00:00)
お知らせ:jin-г(FoM/???)さんが入室しました。(0000/00/00 00:00)
jin-г:革命万歳!!(0000/00/00 00:00)
オッツォ:誰か!?(0000/00/00 00:00)
jin-г:初対面で誰かとはご挨拶。まぁ俺は同志のことを知っているがね(0000/00/00 00:00)
オッツォ:初対面の貴様に同志呼ばわりされる筋合いは無いぞ。何者だ?共産主義者か?(0000/00/00 00:00)
jin-г:ああ、同志っつうのは自分のキャラ付けで使ってる二人称だ。別に深い意味はないし、私は共産主義者でもない。左右どちらかと言えば、自分ではそのどちらでもないノンポリだと思っている。(0000/00/00 00:00)
オッツォ:わけが解らん(0000/00/00 00:00)
jin-г:まぁそんなことはどうだっていいや まぁ君を同志と呼ぶけど気にしないでくれッつうことで一つ(0000/00/00 00:00)
オッツォ:フム。まぁいい。で、貴様は何者だ(0000/00/00 00:00)
jin-г:悪いがリアルでの素性は教えられないね(0000/00/00 00:00)
オッツォ:リアル?ここは現実でははいと言うのか!?(0000/00/00 00:00)
jin-г:まぁそうだ。もっともモニターの向こうには生きた人間が居て、そうした人間がこのコミュニティーで、一つの社会を形成しているという意味では、ここはまた一つの現実と言えなくもない。まぁ通俗的に仮想現実といったりもするがね(0000/00/00 00:00)
jin-г:そういや最近じゃこの言葉もあまり聞かなくなったなん。(0000/00/00 00:00)
オッツォ:さっきから何を話しているのかさっぱり解らんぞ。(0000/00/00 00:00)
jin-г:まぁいいや。同志の質問に答えよう。この空間はネットと呼ばれるもので、そして俺はこの企画の参加者だ(0000/00/00 00:00)
jin-г:と、言ってもこれでは説明不足だな。しかしどこから説明すればよいのやら……(0000/00/00 00:00)
jin-г:まぁ同志が元居たたところもネットなんだけどね。(0000/00/00 00:00)
jin-г:いや、違うな。それはデータとして格納されていたところだからなぁ。同志は何処にいたというべきカナ。俺が書いた物語にいるとも言えるし、君を知っているほかの参加者がつくる世界にいるともいえる(0000/00/00 00:00)
jin-г:まぁそういうのをひっくるめて、ネット上という言葉でくくっちまうのだろうが。それはあくまで便宜上のもので真理とは言えないな(0000/00/00 00:00)
オッツォ:今、物語と言ったな(0000/00/00 00:00)
jin-г:いかにも。物語と申したが(0000/00/00 00:00)
オッツォ:よくわからないが。我輩は物語の登場人物ということか?(0000/00/00 00:00)
jin-г:そうだ。俺はさっき同志のことを知っているというのは、そういう意味だ(0000/00/00 00:00)
jin-г:あ、そうか。状況がメタなのに同志がメタを認識していないから状況が一向に飲み込めないんだな(0000/00/00 00:00)
jin-г:それなら筆先一つでどうとでもなるな(0000/00/00 00:00)
オッツォ:ああまったくだ。読者にしてみればわかりきってることを、作中人物のもつ世界観にあわせてくどくど狂言を回しても、まどろっこしいだけだ(0000/00/00 00:00)
jin-г:そのとおりだ。では念のために理解しているかを確認させてもらうが、同志オッツォは自分がFOMの企画の中の登場人物であることを理解したか?(0000/00/00 00:00)
オッツォ:理解したも何も作者の認識と我輩の認識は、我輩をメタレベルに引き上げたことによって、完全に同一のものとなった。(0000/00/00 00:00)
オッツォ:で、あれば我輩に理解したか?などと聞くまでも無いことだ。むしろ今の発言は読者に対する説明であろう(0000/00/00 00:00)
jin-г:革命万歳!!まさにそのとおりだ。まったく持って完全な一致だ(0000/00/00 00:00)
オッツォ:当たり前だ。今や我輩の認識はもはや完全に筆者と同一となったんだ。そうなったらもうこれは会話なんかじゃない(0000/00/00 00:00)
オッツォ:自問自答だ。(0000/00/00 00:00)
jin-г:俺は君で(0000/00/00 00:00)
オッツォ:我輩は貴様だ。>筆先一つで の発言の後に改稿したところからね(0000/00/00 00:00)
オッツォ:これじゃまるで我輩は今まで知らないフリをして発言しているみたいだ。(0000/00/00 00:00)
jin-г:物語という枠内でなら、同志は何も知らなかったからフリじゃなくて本当に知らなかったんだよ(0000/00/00 00:00)
jin-г:さて勢いはじめてみたものの、この禅問答をどう切り上げたいいから我輩はちょっと困ってしまったよ(0000/00/00 00:00)
オッツォ:人称が混乱してるぞ。一人称が我輩なのは我輩だ。(0000/00/00 00:00)
jin-г:まぁ今となってはどちらでも同じだろう(0000/00/00 00:00)
オッツォ:それじゃあ読者が混乱する。誰の発言かわからないからなぁ。まぁチャットを模した今の文章なら名前が表示されるからいいんだろうが(0000/00/00 00:00)
jin-г:君も今のしゃべり口調は俺そっくりだ(0000/00/00 00:00)
オッツォ:そりゃ我輩は貴様だもの(0000/00/00 00:00)
jin-г:ま、それはいいとして、同志は元居たフィクションの世界に戻りたいかね(0000/00/00 00:00)
オッツォ:それは貴様自身への問いかけだね。ま、我輩が答えても同じことだが(0000/00/00 00:00)
jin-г:革命万歳!!では物語を続けよう(0000/00/00 00:00)
jin-г:あ、そうそう。君はこの文節以降は認識も元居た世界の価値観にもどるんだ(0000/00/00 00:00)
オッツォ:つまり、俺はあんたじゃなくなって元の俺になるんだろう?もういまとなっては業とらしく見えるだろうがね(0000/00/00 00:00)
jin-г:人称が混乱しているぞ(0000/00/00 00:00)
オッツォ:貴様のせいだ(0000/00/00 00:00)
お知らせ:るるる(FoM/???)さんが入室しました。(0000/00/00 00:00)
jin-г:革命万歳!!(0000/00/00 00:00)
オッツォ:!?(0000/00/00 00:00)
るるる:たいちょ。かえろ(0000/00/00 00:00)
jin-г:彼女は私の思念を受信したのだ。そういうことにしておけ。これでつじつまが合う(0000/00/00 00:00)
オッツォ:どういう意味だ?(0000/00/00 00:00)
jin-г:あー…説明すると話がループするや。とりあえずもう帰れ(0000/00/00 00:00)
オッツォ:ちょっwwwおまwww(0000/00/00 00:00)
るるる:UNDO ヲ ドウゾ (0000/00/00 00:00)
オッツォ:え?(0000/00/00 00:00)
お知らせ:オッツォ(FoM/???)さんは行方不明となりました。(0000/00/00 00:00)
お知らせ:るるる(FoM/???)さんは行方不明となりました。(0000/00/00 00:00)
jin-г:革命万歳!!では物語を続けよう。我々のために(0000/00/00 00:00)
jin-г:我々かつ君たちのために(カッコいいこといってやった(0000/00/00 00:00)
お知らせ:jin-г(FoM/???)さんが退室しました。(0000/00/00 00:00)
*
我輩の預かるカルフは、特殊スキルこそもたないが、汎用戦力として高度にバランスの取れた能力を持つ平凡なメイド、メ
イルで編成された部隊である。
たしか、その筈である。
しかしこいつは一体全体どうしたわけか?こいつは何者だ?その特異な風貌を、我輩はただただ異様としか形容す
る言葉を持ち得ない。
縦二〇サンチ、横二〇サンチ、高さ二〇サンチ。八つの頂と十二の辺。その風貌、まごう事なき完全なる正六面体。
まったくもって不可思議なる、表面積S = 辺6aの二乗、体積V = aの三乗の悪魔。
ヤツはいつとは無しに、The BOXと呼ばれるようになったが、ヤツ自身がそう名乗った訳ではないし、そもそ我輩は
BOXが喋るところなど、ただの一度も見たことはない。おそらくはカルフ隊員の誰かがつけた呼び名であったのだろう。
いまやコレが正式名称として定着してる。
誰しもが光や空気の存在に気づいた瞬間を覚えていないように、我輩がヤツの存在を明確に意識した瞬間を思い出すことは
できない。それ故にその存在に対していつ頃から違和感を覚え始めたのかも、やはりわからない。部隊の編成完結式の時に
も紹介された記憶はないが、その場にはいたような気がするし、やはり居なかった気もする。
そのときの他の面子の様子は、ありありと思い出すことが出来るというのに、不思議なことにThe BOXの記憶だけがうすら
ぼんやりとしている。
して思ってみれば、今更ながらに我輩が彼について知ってることの少なさに驚く。今、彼とは言ったが、もしかしたら彼女
なのかもしれない。
いや、それどころか性別などというものが、果たしてこいつに有るのだろうか?その謎にThe BOXは一切の沈黙を守っている。
最終更新:2010年05月05日 05:21