アルトリア戦線にてあるコマンド部隊の戦闘

『またどこかで足音がする。
あの忌々しい羽音も。
あのクソ蟲との戦闘はもう嫌だ。
ジャンセンもあいつにバラバラにされちまった。
昨日は俺が危うく味方にミンチにされかけちまった。
もうこんな生活は嫌だ。』

9月3日第102特殊戦闘大隊所属スタンニス・フォート一等兵によって残された日記から抜粋。
この数日後、スタンニス・フォート一等兵は戦死。生前保持していた物は受け取るべき親族が全て行方不明であるため、司令部が保管している。

―1940年。アルトリア連邦領内西部のある廃墟郡。

夜明けと共に戦闘は開始された。
郊外と呼ぶべきポイントから数基の105mm榴弾砲が轟く。
既に廃墟となっている都市に対して瀑布のような砲撃が加えられた。
容赦なく其処にあったものやかつて住んでいた者の名残も全てが105mm榴弾の雨によって消え去っていく。
その常人ならば直ぐに車にでも乗って早急に立ち去るか、震えて頼りに成らない石壁にすがり付いているしかできない状況で、屈強な男達は進軍していた。
その男達は一人の例外も無くコメディアン手製のラッパに似た筒や、身の丈はあろうかと言うほどの巨大な銃を保持した上で榴弾の雨の合間を縫って、
町の広場へと駆けて行った。
彼らの腕章には髑髏と輪を作ったロープ。そして彼らが保持していた銃を模したものが描かれていた。

「ったく、いつもながらうるせえ花火だ。そう思うだろ?お前らもよ」

通信機を持って居る男が悪態をつく、しかし彼の呟きなど仲間に通じるはずも無い。
何故なら彼らが居る位置の周囲に砲弾の雨が降り注いでおり、爆音に重なる爆音によって言葉によるコミュニケーションなど不可能であるからだ。
返事が来ない事を確認し、広場へとたどり着くと彼は通信機にがなり立てる。

「こちらブラボー小隊!ポイントアルファに到達した!指示をくれ!」

そうがなって数分後、他のポイントへの砲撃を開始する為なのか、それともポイントを確保したからなのか砲撃が止んだ。
そうして何も言わずに彼らは散開する。広場の中心に一分隊。それを囲むかのように、巧妙に建物の内部へと3分隊が散らばる。
一つは広場の北側の塔。一つはかろうじて残ったバルコニー。一つは2階建ての民家。
これは彼らブラボー小隊が得意とする戦法の一つだ。
囮になる分隊を目立つってかつ見晴らしの良いポイントに配置し、それを数分隊で巧妙に囲んで即席ながら罠を作る。
彼らはキルゾーンと呼んでいる。
数少ない市街戦における対蟲戦法である。

一発だけ銃声が鳴った。
そう、敵が来たのだ。
囮分隊が各々が持つ火器を撃ちながら後退する。
囮分隊は高速で移動する事を要求される為、彼らが持つ得物は対戦車ライフルが主である。
対して、迎撃に当たる分隊は重機関銃やロケットランチャーのような重火器が主である。
相手は敵としては何度も戦ってきたワモンタイプ。それが3匹だ。
普通の兵士であればそれだけでも逃げ出そうとするだろう。
しかし、彼らは逃げなかった。

「撃て!撃ちまくれ!」

そして彼らは臆せずに引き金を引いた。
嘗て戦車を一撃の下に破壊したロケットや、秒間10発以上もの装甲車すら貫通させる弾の嵐がワモンに降り注ぐ。
人間が辛うじて持ちえる火力を最大限併せて使用したこの戦法の前には、幾ら強固な装甲を誇るGとは言え通用しないはずもなかった。
いや、今の時点のG相手には通用するだけの話であって、通用するのは今年で最後かもしれない。
何故なら敵は直ぐに銃弾への体制をつける。
まだ辛うじて対戦車ライフルが通用するが、そうもいかなくなるだろう。
隊長格の男がまた銃声の中で叫ぶ。

「まだだ!まだ撃ちまくれ!」
「Sir!,Yes,Sir!」

3方向から念入りに、行動不能になるまで弾を打ち続ける。
その顎や足、体を分断し、不出来なダンスを躍らせる。
リズムを刻むは銃声。踊り手は蟲ども。
触覚や足がとび、体液がそこ等じゅうに撒かれた。
そうして、ダンスが終わる頃には液体タンクを背負った3人の男がノズルのようなものから炎を出し、
死骸を燃やし尽くしていた。
そうして彼らは3体のGをメードの支援も無く、車両も使用せずに殲滅したのだった。
そう、彼らは通常の兵士ではない。
彼らは第102特殊戦闘大隊。通称「インセクトハンター」である。
また遠くで砲声が響く。
この砲声は止まる事を知らない。
人間かG、どちらかが滅びるまで響くだろう。


―アルトリア戦線異状なし。
最終更新:2008年09月05日 18:39
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