紅蓮の蜻蛉 第一話

(投稿者:天竜)


「ねぇ、これ何?」

「これはロウソクと言ってな、夜に使う明かりの一種だ」

「けど、上で光ってるのって、私のアレと同じよね…これ、燃え尽きちゃわないの?」

「それがロウソクって道具の役割だからな」

「え?燃え尽きるのが役割?…何か、可哀想…」

「うーん、どう説明したらいいものか…。
 一つだけ言えるのは、君が、優しい子だって事、かな」

 これは、爆炎を操る少女が、何故その力を抑えずに振るうようになったか、
彼女の、そう遠くない過去の話…。


紅蓮の蜻蛉



グレートウォール戦線の最前線からやや後方のある基地には、
一部の間では有名な部隊が駐留していた。

職業軍人、というよりもは、Gへの私怨を持った者達の集まりであり、
その部隊のメンバー全員が、Gに自らの肉親を奪われた結果、軍に志願した者達だった。

無論、隊の士気は非常に高く、また、同時に、
自らの犠牲を全く恐れない、半ば無謀にも見える戦いぶりによって、凄まじい戦果を挙げた。
そして、Gと戦う事以上の事を考えていないが為に、人間的にも非常に潔白なメンバーが集まっていた。

軍規以上に人間性と大義を重視するその傾向から、
軍内部での評価も、真っ二つに分かれていた。

そして、それ故に、その部隊は『紳士部隊』と呼ばれていた。
その気風から、メードの教育に非常に有用な部隊、とも言われており、
いずれメードが派遣されるであろう、とも言われていた。

 そして、『彼女』は、そこに、教育を受けるために配備された、最初のメードだった…。
「失礼します!」
 基地司令室に、紅髪の少女が、歳相応ではない大きさの胸を揺らしながら、幾人かの軍人と共に入ってくる。
「これより貴公に教育を担当してもらうのは、このメードだ。
 陸軍に教育を任せる例は非常に希少だ、光栄に思うといい。」
「…それはどうも。」
 銀髪の、顔に大きな傷を持つ基地指令が、苦笑しながら頷く。
 少女とともに来た軍人達は、実質の階級的には基地指令のほうが上だったが、
 配備されているのが帝都だというだけで、自分たちが既に格上として振舞っていた。
「ほら、挨拶しろ。」
 軍人達にせかされる前に、既に少女は動いていた。
「…プロミナです!精一杯、頑張ります!!」
 紅髪の少女が、一歩前に出て、ドレスの裾をあげてお辞儀する。
 基地指令が立ち上がり、敬礼する。
「…うむ、先程この部屋に入ってくる時の挨拶の元気の良さもそうだが、君は礼儀正しくてよろしい!
 私がここの基地指令のアルベリッヒ=ファゾルトだ。」
 アルベリッヒは、そう言ってニカッと笑った。
 そして、表情をすぐに戻し、軍人達へと向き直る。
「…ご苦労!彼女を置いて下がって良い!
 何だったら下の兵舎の方から酒でも二、三本持って行くといい。
 どうせ、貴公らもこの基地の居心地は悪かろう?」
「…はっ」
 軍人達はそのまま基地司令室を後にした。
 去り際に軍人達の舌打ちが聞こえたが、
アルベリッヒは聞こえぬ振りをして、プロミナに向き直る。
「…私の事はアルで良い。
 外ではどうかは分からんが、この基地内に階級はあって無いような物だ。
 皆が、共にGと戦う同胞、生死を共にする仲間だ。
 上下関係ではなく信頼によって我々は結束できているのだからな。」
「…うーん、まだ私には良く分からないようです。」
 プロミナのその言葉に、アルベリッヒは笑う。
「まぁ、そうだろうなぁ…フフッ。
 一言で言うなら・・・この部隊の皆は私の友人だって事だ。」
「ああ、成る程!」
「まぁ、って事で私の友人達は後で紹介するとして…。
 プロミナ、君は特殊な能力が使えると聞いた。少しだけ、見せてくれないか。」
 その言葉に、プロミナが笑顔で頷く。
「了解!」
 そして、ボッ、という音と共に一瞬、彼女のドレスの裾から炎が閃く。
「…と、こんな感じですよ!」
「成る程、良い能力だ。」
 良い能力であると同時に、アルベリッヒはこの能力の危うさにも気付く。
 自分や、自分の部下にはそのような事を気にする輩はいないが、
扱い手の人間性を一切無視した上でその力に対して恐怖心を抱き、
抹消しようとする輩が出る、そんな類の能力だ。
 力の出所も、力そのものも、その扱い手の心次第である事を、
すっかり忘れる愚か者達を、今までアルベリッヒは幾人も見てきた。
 事実、この部隊は何ら非とされる事を行っていないにもかかわらず、一部の者達から嫌われている。
 人間とは、全くもって救えない生き物だ、彼女達メードの方が余程良い意味で『人間』らしい。
 アルベリッヒは、そう思いながら、再び言葉を紡ぐ。
「よーし、んじゃ、戦いを教えるのはまた後でだ。
 先に基地内を案内しようか…ついて来い、プロミナ。」
 アルベリッヒが歩き出す。
「はい!」
 その後ろに、プロミナがとことこと続いた…。

続く

あとがき

お久しぶりです、ぷろみーが皆に愛されているようなので、
俺も久しぶりに頑張ってみましたw
ちょっと個人でかなり長編の小説を書いているので、不定期、
かつ、一話一話は短くなると思いますが、
少しずつこっちの方も進めていきたいと思います!

関連キャラ
プロミナ



最終更新:2011年06月09日 23:05
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