(投稿者:Cet)
太陽が私の体を焼く
私の体は焼いて焦げ、どろどろに溶けて、やがて一つの小さな、欠片になった
いや、なってしまった
燃え尽きることなどできやしなかった
その欠片を、私は今も抱えている
そして、その欠片が、何かの折に触れて、震えだすことがある
外部からやってくる何らかの波調と、その欠片が共振を始めるのだ
そういう時に、欠片の震えが、声になって聞こえてくる
◇
夕焼けを眺めている。家路を辿る途中、川のほとりから眺める。
全てが赤色に染まっている。
一人で立ちすくみ、目を細める。
隣に誰かがいてくれれば、と思う。誰か?
いや、それは決まっているのだ。
いつか俺は戦場に行こう、と思う。戦場に行って、誰かの為に戦おう。
その誰かが振り向いてくれなくとも構わない。
自分の命が、その誰かの為に役立ちさえすれば、それでいいのだ。
俺の涙はその時、きっと乾くだろう。
そう確信する。
歩き出す。
再び家路を辿り始める。
◇
月の光が少女を照らしている。
寝室で一人、寝台の上に半身を起こす少女は、夜の空にぽっかりと浮かんだ光を、眺めている。
最終更新:2011年11月02日 09:58