(投稿者:エルス)
刺激があるからこそ人間は『世界』を知覚できる。
ならば、人間が刺激を求めるのは当然の事である。
華麗なガンスピンを決め、腰の両側に吊るされている皮製のホルスターに『アース&ミッド』を収めた
ジャックは得意げにヘヘッと笑い、鼻の下を右手の人差し指で擦った。
小規模な戦闘だったが、ジャック率いる(と勝手に思っている)チームの戦果は
カルナック率いるチームよりも活躍した。
それはそうだろう。カルナックの立てた作戦ぶち壊しで一点突破を図り、曲がりなりにも成功してしまったのだから。
この後のカルナックの長々とした説教を聞かされるのかと思った
アシェナは手に持っている『
クロス』でジャックを一突きしてしまおうかと本気で考え、何とか自分を抑えようとGの死骸をその『クロス』をブスリブスリと結構本気で突き刺していた。
無表情でその動作を繰り返すアシェナを片目に今回DAのポジションを担当していた
ジェシカは自分そっちのけでスコアを上げまくっていたジャックの頭目掛けて『エルフ』を突き刺そうかと此方もまた本気で考えていたが、ここは抑えようと握り拳を作り、震わせていた。
そんな事など知らんジャックは黒いコートを大袈裟に振って振り返り、満面の笑顔+それが当然と言う顔をして堂々と言った。
「んじゃ、虫野郎倒した数が一番多い俺に、お前らは俺の好きなもんを奢ると」
「・・・・・・」
「ハぁ?」
無言で強烈な睨みを利かせるアシェナと怒りでジャックをバストンの向こうまでぶっ飛ばしそうなジェシカ。
どう見ても、どう考えても黙る場面である。いやそれ以外の選択肢は何か攻略本的なモノを見なくともバットエンドに繋がると言うことは分かる筈だ。
・・・・・・いや、『極普通の平凡一般人』になら分かるだろう。
つまりは、刺激が無い人生は音の出ないラジオと同じと言うジャックにそれが分かる筈も無い。
「何だったら、俺とベットの上で楽しくやろうか?お二人とも大歓迎だぜ?」
ギャラリー皆一同「やっちまった」である。呆れる前にアシェナとジェシカ両名の頭の中でプツンと何かが切れた事が恐ろしい。
猛スピードでジャックの右についたジェシカは脛を思い切り蹴り、アシェナも左脛を蹴った。バキリと嫌な音がする。
更に四つん這いになったジャックは涙を眼に浮かべながら、顔だけ後ろに向けた。「何すんだよ」と喉まで出かかった言葉を唾と一緒に飲み下さなければいけない状況をジャックは理解した。
それぞれ『エルフ』と『クロス』を構えて、ジェシカは不敵な笑みを浮かべ、アシェナはまるでそれこそ豚でも見るような差別に満ち満ちたに睨みをジャックに向けていた。
正直言って夜中2時の廃病院よりも七千倍は怖い。
「お、お二人ともキツイジョークは――」
「ジョークだと思ってんの?アンタ馬鹿でしょ?どうしようもなく馬鹿でしょ?」
「奴らみたいに死にたいんでしょ?そうなんでしょ?今、死なせてあげる」
「いや、待て待て待て待て。武器は止めろ!武器だけは止めてくれ!」
「「なら・・・」」
見事に被ったセリフと同じく、その動作までもが被っていた。
足を後ろにやり、そのまま力の限りに思い切り蹴る。
ボキリとまた嫌な音がして、ジャックは文字通り吹き飛んだ。
満足そうなジェシカとまだ不機嫌そうなアシェナはジャックを放置したまま帰路へとついた。
後で回収されたジャックが両脛と尾てい骨の骨折で一時戦線離脱する事になるのは、最早言わずとも分かりきったことである。
関連項目
最終更新:2009年11月16日 00:56