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こころはタマゴ
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こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE
暗闇の中にいるエレオノール。
ふわふわと身体に感じる浮遊感。まるで水の中に浮かぶような感覚に、エレオノールは戸惑う。
自分は死んだはずだ。確かに、心の臓にケンシロウの拳をくらい、意識を手放したはずだ。
ケンシロウは一流の戦士。しとめそこなうなど、ありえない。
なら、ここは地獄だろうか?
それもありえない、とエレオノールは自嘲する。
地獄とは、人間が逝く道だ。人形が辿り着くのは無の極地。
おそらく、自分が意識あるのは神様の気まぐれ。鳴海の残滓。三千院ナギの優しさ。エンジェル御前の友情。
だから、自分の意識などあってはいけない。すぐに消えてなくならねばならない。
なのに……
(生きたい)
許されるはずがない。生きていていいはずがない。
エレオノールは人形だ。人形である自分は人形を破壊するために生き、今また人間になるために人間を殺してきた。
その両手は真っ赤な血に汚れている。
しかも、ただの血ではない。
自分が人間になるためには守らねばならないといわれた、才賀勝。
エレオノールが直接手を下したわけではない。
それでも、彼を死へと導いたのは、不要と判断したのは自分だ。
血を踏みにじり、想いを踏みにじり、死体すらも踏みにじった。
自分に信頼を寄せてくれた少女、キュルケ。
彼女に手をかけたことにより、エレオノールの手は本格的に血に汚れることになる。
エレオノールは選んだのだ。信頼を利用し、不意打ちで殺す、と。
人形に相応しい卑劣な殺害方法だ。人間にはできることではない。
自分を救おうとしてくれた少女、三千院ナギ。
鳴海の遺志を受け継ぎ、真っ直ぐ自分にぶつけてきた。
鳴海を理解し、鳴海を想い、辛くても、弱くても、よりにもよって倒すためでなく、救うために立ち向かってきた少女。
その彼女を、エレオノールは無慈悲にも殺した。
いったい、どれだけの罪を重ねたのだろう。
いったい、どれだけ許されないことをしたのだろう。
ギイが自分に呆れた言葉を投げかけてきたのも分かる。
いや、やっと理解できた、といったところだ。
なのに、遅すぎる。彼らは自分を人間にしようと現れてくれた。
『人間でありたい』からと拒否したのは、他ならぬ自分だ。
ギイは言った。
『“シェイクスピア曰く……この世は舞台なり――誰もがそこでは一役、演じなくてはならぬ”という言葉がある』
エレオノールは、『人間になる人形』の役目を演じきれるは、自分自身の力だと思っていた。
そのために鳴海に会いにいき、鳴海を笑顔にするために人を殺す決意をした。
なのに、エレオノールは理解する。いや、理解してしまったのだ。
『役目』とは、得るものではない。誰かがいて、お互いに与えあうものだと。
ずっと才賀勝はそのことを訴え続けていた。
自らが、才賀勝の偽者だと偽りの役目を受け入れても。
加藤鳴海は、そのことを信条としていた。
決して、弱者を見捨てない。悪を、刃牙を、DIOを許さないという信念の元。
まるで、人を救うことが、他人が存在することが、自分の役目の全てだと言わんばかりに。
ケンシロウも、鳴海と似たような信念を持つ。
キュルケを殺した自分を許さず、この殺し合いに怒りを示し続けた。
その瞳が、光を映さなくても。
キュルケは友を失い、それでも気丈に生きようとしていた。
親友であるタバサのことを自分に告げようとしていた。
彼女の『役目』を、今なら知って置けばよかったと後悔してしまう。
友への想い、今のエレオノールが持ち得ないものだから。
そして……
(三千院ナギ……)
自分を救うために、しろがねとなった少女。
彼女は素人でしかなかったのに、まだ十代前半の少女でしかなかったのに、小さな身体の持ち主だったのに、『鳴海の想いを無駄にしない』役目を立派に果たした。
エレオノールが知る加藤鳴海に迫るほど、三千院ナギは人間だった。
そんな三千院ナギが救いたいと決意するほど、自分に価値があるのか、エレオノールは苦悩する。
胸が熱を持ってナイフで抉られるように痛み、胃は鉛が放り込まれたように重くなる。
すっぱい臭いが口に広がり、思わず手で押さえた。胃液の味がエレオノールの舌に広がる。
(ああ、私は……)
壊れた人形。エレオノールは意識をあえて、闇へと沈ませていく。
世界の全てを拒否するように。
パアン、と甲高い音と共に、エレオノールの頬が熱くなる。
ぶたれた、と判断して目を見開いた先には、熊のきぐるみを着た鳴海が存在していた。
鳴海の背が高く感じる。なぜなら自分の視線がまるで見上げるような形だったからだ。
『あきらめるな!』
怒鳴り声と同時に、エレオノールの首を鳴海は抱きかかえる。
懐かしい感触に、エレオノールの胸がいっぱいになった。
『キツイ時には「助けて」とどなれ! ハラが立ったら悪態をついてやれ!!』
鳴海は、エレオノールの知る鳴海と寸分違わず、己の『役割』を果たしている。
もっとも、無自覚なのだろうが。
『おとなしくかっこつけてあきらめんな、あがいてあがいてダメだったらそん時ゃ……』
鳴海の敵に向ける獰猛な顔がだんだん穏やかになっていく。
まるで、誰かを安心させるように。
『にっこり、笑うしかねえけどよ』
強く、優しく、一歩も引かない鳴海。
ここで出会った彼そのものであった。
なぜ、自分はこの鳴海を知っているのだろう?
エレオノールは知らないことだが、公園の池に溶けた勝の血が、かつて、才賀正二が勝に血を飲ませて、己の記憶を見せたように、勝自身の記憶をエレオノールに見せていたのだ。
ゆえに、彼女が見ている鳴海は、勝がはじめて見た鳴海だ。
もっとも、そのことをエレオノールは知らない。だから単純に、このことを奇跡だと思った。
(ああ、神様。人形にも、あなたは慈悲を与えてくれるのですね。
私はこの奇跡を胸に抱き、あなたに感謝します。だから、私はもう、死にます)
エレオノールは春風のような穏やかさを胸に、死ぬ勇気をもらう。
目を瞑り、意識を闇へと落とした。
□
黄金の光を淡くまとう月が、公園を照らす。
佇む二メートルを越える男は、銀の髪と瞳を持つエレオノールをベンチに横たえらせている。
傍には桃色の自動人形、エンジェル御前が軽く飛びまわっていた。
公園の遊具を越え、ベンチの上に眠るエレオノールは穏やかな寝息を……
「おい! ケン!! エレノン息をしてねーぞ!!」
驚愕の表情を浮かべるエンゼル御前を前に、ケンシロウは動じず、その手先でエレオノールの身体を探る。
北斗神拳は人体を知り尽くした暗殺拳。人を殺すことも思いのままなら、逆にトキが行ったように人を救う術にもなる。
いまエレオノールの身体を探り、様子を見る。
「……仮死状態か」
「なんだよ! 仮死状態って! 心臓にダメージがいってないんだろ!!」
「ああ。しかし、一つ問題がある」
太く、濃い眉を微動だせず、エンゼル御前にケンシロウは告げる。
その瞳を、悲しみの色に染めながらも。
「エレオノールに生きる意志がない」
「なんだよ、それ!!」
「…………彼女の最後の願い、お前も覚えているだろう」
「『私を殺してください』かよ。けど、生きているじゃねえか!?」
「肉体は。しかし、生きる意志、なにより心が死を望めば、エレオノールは終わりだ。
その危うい境界線に、彼女は立っている」
「な! ケン、なんとかしろ! ナギリンだって、エレノンが死ぬのは望んじゃいねえ!!」
エンゼル御前の言葉に、ケンシロウは見えない瞳にキュルケの顔を思い浮かべる。
彼女も、ナギと同じくエレオノールの死を望まないであろう。
だが、自分ではどうすることも出来ない。
トキほどではないが、肉体の損傷ならある程度どうにかできる。しかし、心まで直す術などない。
ケンシロウは拳を握る。人を殺すことは得意でも、人を救うことの出来ない拳を恨んだ。
「彼女の手は血でぬれている……」
「ケン!!」
「だが見ろ。俺の手は、北斗神拳は彼女が生きている前よりも、屍を重ね続けてきた。
そのためだけの拳だ。奪うだけの、な」
「ケン……お前……」
「この俺が生きている。なのに彼女が生きるのに文句をつけるはずがない。
エレオノールが生きたいと願うのなら……」
ケンシロウの脳裏に浮かぶ、ナギのエレオノールの説得の言葉。彼女の願いは、エンゼル御前を、エレオノールを通して伝わった。
キュルケが生きていたら、どう思うかは分からない。
しかし、ケンシロウには、笑って後押しする彼女の姿しか思い浮かばない。
ゆえに、ケンシロウは拳に誓う。
「俺が全力で生かす。今度こそ……」
「ケン…………」
エンゼル御前の滝のような涙が、生え揃う緑の芝生を濡らしていく。
月光の下に、男と自動人形は少女を囲み、佇む。
生きる意思に賭けて。
□
(ここはどこだ……)
エレオノールの疑問に答えるものはいない。彼女は、またも地獄へと向かわなかった。
目の前にあるのは、雪が降る見知らぬ公園。
自動販売機を前に、エレオノールは立ち尽くしていた。
自動販売機の買い物の仕方を知らないのだろうか? 自分の行動なのに、不思議な疑問を持つ。
戸惑っているうちに、男が声をかけてくる。エレオノールも何度も経験した男の誘い。
またか、と頭は冷静なのに、身体は違う。戸惑いの声も、まるで初めての出来事が起きたような対応だ。
自由にならない身体に、エレオノールは悟る。これは、誰かの記憶だと。
休憩を取ったときに見た、フランシーヌの記憶。あの時と状況が似ていたのだ。
今度は、誰の記憶を見ているのだろうか?
そう思っているフランシーヌの前に、疾風が身体を駆け抜ける。
『人の獲物に手を出すなぁ!!』
内心、誰が獲物だ、誰が、などとツッコンでいるのにも構わず、声をかけてきた男たちがすごすごと引き下がっていく。
呆れるエレオノールの思考に構わず、声が聞こえてきた。
発しているのは自分。しかし、聞き覚えのあるその声は……
『あ……ありがとう……。なんか知らんが……助かったよ……』
(ナギ……)
最後まで、自分を救うことを諦めなかった少女の声だった。
(あの少女の記憶……)
エレオノールはナギの記憶だと知ると、興味を示す。
三千院ナギはエレオノールを前に、素人なのに戦うことをやめなかった。
いや、違う。
彼女が、三千院ナギがやめなかったのは、戦うことではない。
彼女がやめなかったのは……
(私を救うことだ……)
彼女は必死に訴えていた。鳴海の想いを。彼女の優しさを。
それを踏みにじる自分に、負けることなく。
(知りたい…………)
なにが、彼女を強くしたのか。なにが、彼女の想いを支えていたのか。
エレオノールは覗き見る、ということに罪悪感を抱きながら、目の前の出来事を見続ける。
相変わらず、コントのようなやり取りを続けていた。
『僕は……君が欲しいんだ(人質として)』
その言葉に、ナギが赤くなる。言葉だけを聞けば愛の告白に聞こえなくも無い。
しかし、目の前の少年の雰囲気には追い詰められたものが持つものだった。
決して、穏便な意味ではあるまい。もっとも、目の前の少年は絶対にことを成功させることはないだろう。
なんと言うか、善良な人間であるのが伺える。大それたことは出来まい。
待っているように告げる彼を待つナギを見つめて、エレオノールは羨ましく見つめていた。
エレオノールは人形としての生を送り続けた。
ナギや目の前の少年のような暖かい日々は遠い世界の出来事だ。
ただ、自動人形を潰す。それだけに、九十年の月日を費やしてきたのだ。
人形であり続け、人間に憧れ、ただ才賀勝を守ることが人間になる唯一の術だと思い続けた。
この殺し合いで手っ取り早く人間になれると、優勝する決意をした。
笑う赤子を見て、カトウナルミを笑わせれば、人間になれると思い続けた。
全ては、目の前のナギや少年のように、暖かい日々を得るために。
思い返しているエレオノールの目の前で、ナギが二人組みの男にさらわれていく。
マヌケな少年と違い、こちらは悪事を平気で働けそうだ。もっとも、こちらも抜けているが。
自分であれば容易に乗せられた車から脱出できるだろう。
しかし、ナギではどうすることも出来ない。
下手に刺激すれば、危険でしかない。
それを知ってか知らずか、ナギの挑発は止まらない。自分を説得したときのように。
(そうか。あなたはそういう人間なのか)
正しいことを正しいと主張する強さ。たとえ、どんな危険であっても。
後先を考えない、無謀な人間だと嘲笑するものが多いだろう。ナギのような無力な人間に、なにが出来るのかと。
だが、エレオノールは知っている。彼女の決意は、自分を止めるために戦い続けれるほど、強いものだと。
しかし、今のナギではその正しさは命取り。曲がらない彼女の強さに苛立った男二人が狭い車内で迫ってくる。
エレオノールが歯噛みしているが、相変わらずナギは折れない。
『命がけで私をさらうと誓った。だから呼べば来るさ!!』
ナギが叫んだその瞬間、月光を遮り、車を飛び越える自転車に乗った先ほどのマヌケな少年が現れた。
今までと比べ物にならないくらい、その瞬間は色鮮やかだった。
エレオノールはそれからも、さまざまなナギの記憶を覗き見る。
ところどころ飛んでいるのは、エレオノールの知らないことだが、池に混ざったナギの血が少量だったからだ。
ゆえに、ナギの記憶はナギが死の直前に強く思った出来事しか映さない。
彼女が最後に思ったことは……
「ナギ、あなたはハヤテという従者が本当に好きだったのですね……」
闇の中に消えるエレオノールの呟きは、静かに溶けていく。
エレオノールの胸に浮かぶものは、加藤鳴海の存在。この殺し合いの場で、自分に影響を与えた男。
「鳴海……私は……」
答えは、エレオノール自身にも分からない。
結論のでないエレオノールの漆黒の景色が、突如色を取り戻す。
「これは……」
エレオノールの知る景色。ナギの記憶は、エレオノールにこの殺し合いでの想いを伝えようとしていた。
ナギが体験した出来事が、断片的だが嵐のようにエレオノールの身体を、心を駆け巡る。
自分とは違う場所で、自分とは違う想いを掲げ、自分とは違う道を歩み続けたナギ。
やがて、鳴海の泣き顔をエレオノールは見ることになる。
『すまねぇな……オレのせいで空条のヤツも死なせちまって、
ハヤテとかいうヤツが何処かに行っちまったのも全部オレのせいだな……。
ほんとにすまねぇ……』
鳴海は、本当にすまなそうにナギに謝り続けた。
話が進んでいくうちに、自分が死ぬきっかけを作った勝の死に、自分を責めていることを理解する。
エレオノールの胸が痛む。
ハンマーで頭をおもっきり叩かれたような衝撃を抱えながら、後悔に襲われているのだ。
何より、鳴海を悲しませたのは、追い詰めたのは自分だ。
直接手にかけていなくても、勝の死の要因は自分だからだ。
鳴海に、恨まれてもしょうがない。そう目線を落としたときだった。
『オレはどういうわけかこの殺し合いに乗っちまったエレオノールを……しろがねを止めてみせるぜ!
きっと勝もオレにずっとその事をオレに伝えたかったにちがいねぇ!
それだけは譲るつもりなんざ……あるわけがねぇんだよッ!!』
エレオノールは目を再び見開く。あれだけ鳴海を裏切ったのに、鳴海を追い詰めたのに、彼は自分を救うと宣言してくれている。
再び、エレオノールの胸が痛む。
この間、自分がしてきたことを思えば当然だ。
(ナルミ……私はあなたに答える資格は無い。あってはいけない……)
己が顔を覆うエレオノール。両の手から涙が零れ落ち、木製の床に落ちて弾ける。
何故、自分は鳴海を裏切ったのだろう。彼を信じてやれなかったのだろう。
エレオノールはまたも、死を渇望し続けた。
□
またも、場面が変わる。今度は燃え落ちる城の中だ。
背中にいるのは、自分。奇妙な光景を見ながら、知らない誰かの記憶だと、エレオノールは気づいた。
『本当にお坊ちゃまはお強くなられたのですね……』
穏やかな表情で告げる自分の姿に、エレオノールは驚いた。
この言葉が本当なら、背負っているのは……
『そんな……ぼくなんてぜんぜんちがうよ……』
才賀勝。殺し合いで守ろうと決意し、やがては見捨てた存在。
なのに、この記憶……いや、エレオノールは薄々気づいていた。
この記憶は、才賀勝の記憶。今のエレオノールから見たら、未来の出来事だ。
未来の自分の顔は、人形とは思えないほど柔らかかった。
こんな表情も出来たのか……と、新たな発見に喜びつつも、エレオノールは消失感に襲われる。
もう、自分がこの表情を手に入れるのは無理だ。この手は、今喜んでいる勝、キュルケ、ナギの血で汚れている。
ここに、戻れる資格などない。だからこそ、
『ありがとうね、チャンスをくれて』
未来の自分に対して礼を言う勝の言葉が、刃となってエレオノールの心を抉るのだ。
私は罪人であると。
燃え落ちる城の階段を上り、青空に向かう勝に対してエレオノールは涙を流す。
「申し訳ありません。お坊ちゃま。申し訳ありません。申し訳ありません。申し訳……」
謝ったところで、許されるはずがない。許されていいはずがない。
己の犯した罪の重さがエレオノールにのしかかる。
それは、彼女が裏切ったものに対する、罰だった。
後悔と破壊に彩られた人生。これほど無駄なことはなかったとエレオノールは思う。
ナギの記憶も途絶えた。きっとナギは伝えたかったのだろう。
自分に、生きる価値はないのだと。エレオノールは深い闇に身体を委ねる。
そろそろ、死ぬ時間だ。
最後に後悔の余地を与えるため、罪を自覚させた神様は残酷だったのだろうか? それとも、慈悲深かったのだろうか?
分からないが、エレオノールはただ意識を闇へと落とす。
もう、生きるのに疲れたのだから……
「私に……生きる資格などない」
後編