(P51より一部抜粋)
従来は公の施設にかんして住民の利用権を保障するという行政の規範と、施設の管理を通じて一私人が利益率の最大化をはかるという民間事業者の規範とは相いれないものとされ、公の施設の管理は設置者自ら行うことを原則とし、委託する場合でも公共的団体または出資法人等に限定され、民間事業者は退けられていたのである。この両者の関係は、指定管理者制度という「魔法の杖」によって、両立しうる関係になったのであろうか。それとも元来、住民の施設利用権と民間事業者の営利性とは二律背反の関係にはなく、「民間主体においても十分なサービス提供能力が認められる主体が増加」したためにかのうになっただけのことであろうか。あるいはまた住民の施設利用権が実体上、人権としての権利性を縮小もしくは解体させられていくのであろうか。
管理委託制度から指定管理者制度へ
(P56-57 より一部抜粋)
第1に公の施設を地方公共団体に代わって管理できる団体が、管理委託制度のもとでは公共団体、町内会・自治会や農協、日本赤十字社などの公共的団体、地方公共団体が2分の1以上出資するなど実体上地方公共団体の支配下にある営利法人(以下「出資法人等」)に制限されていたが、指定管理者制度のもとでは制限が降り払われ民間事業者に解放された。ただし個人は引き続き対象外である。
第2に管理委託制度のもとでは地方公共団体から受託した団体は地方公共団体が定める仕様書にしたがって忠実に管理し、施設の利用許可など行政処分に属する業務は独自の判断で行うことができなかったが、指定管理者のもとでは管理代行を行う団体は自らの責任において利用許可など行政処分を行うことになる。設置者である地方公共団体と管理団体との関係は、契約に基づく管理委託から行政処分に基づく権限委任に代わり、管理団体の権限が極めて大きくなった。
最終更新:2006年07月13日 20:18