仮面ハイド(かめんハイド)とは、
「繋がりし世界」出身のマスクドハンターである。
変身者はひかり氏。
概要
敵国の戦士であり恋人であった男の仮面と剣を、己の剣と共に携え戦う。
元々は一本ずつの片手剣だった二振りの剣をまとめて双剣として使用している。
己の犯した罪を懺悔するため、戦い続ける仮面の戦士。
装備
基本となる装備は以下の通り。
武器:氷炎剣ヴィルマフレア
頭:忍の面・地
胴:忍の装束・天
腕:忍の篭手・天
腰:忍の帯・天
足:忍の足袋・天
プロローグ
天と地、相反する国で愛し合った2人の男女。彼らはモンスターを狩るハンターだった。
それぞれの背には対の煌めきを放つ片手剣が背負われており、
お互いの国のにらみ合いをかいくぐり、何度か共に狩りに赴いた事もあった。
そう、彼らは愛し合っていた。ずっとこのまま時間が過ぎてゆけば、と。
しかし、幸せも束の間、天と地の国の亀裂は、すでににらみ合いをも超えるものとなって。
各々の国の民はその手に武器を持ち、お互いの国を襲った。
彼らは愛し合っていた。
しかし彼らは天と地、決して相容れない関係の存在。
彼女は泣いた。彼は静かに笑った。
お互いの手に、剣を携えながら。
クシャルダオラの嵐の激しさと氷の冷たさを宿す剣と、
テオ・テスカトルの炎の熱と粉塵の爆風を纏う剣。
それは、お互いのい胸を刺し貫いて。
崩れ去る2人。命の灯の残り香は、そう長くはなかった。
ふと彼は目を覚ます。隣には愛しい女性の姿。
そして目の前には、風翔龍と炎王龍の姿があった。
2頭の古龍は、ずっと彼らを見守っていたのだ。
彼らが共に戦っていた時を、彼らが相容れない関係の存在だという事を、
そして、彼らが幸せそうに過ごしていた時間を。
古龍達は何も出来なかった事を嘆いた。しかし、彼は笑って答えた。
「誰も悪くはない。全ては仕方のない事だ」と。
「その代わり、と言ってはなんだけれど」
今度は、少しだけ罰の悪い表情を浮かべながら彼はほくそ笑んだ。
「わたしは彼女を殺しきれなかった。わたしの相棒であるこの剣で愛する者を殺す事。
そのふたつを天秤にかけるなんて、最初からわたしには出来やしなかったんだ」
頬を涙が伝った。
彼は、自らの血で赤く染まった彼女の片手剣と、己が相棒を手に取った。
「彼女は強かった。わたしを殺す覚悟があった。わたしにも覚悟はあった。
どちらかが生き残るなら、互いを殺す事が愛の証明になると」
お互いを助け、お互いを殺し合った武器を見つめ、彼は続ける。
「しかし、わたしは弱かった。生きて欲しいと、思ったんだ」
彼は相棒を撫でた。その手に、血はつかない。
「もうじき目を覚ますだろう。どうか、彼女を導いてやって欲しい」
再び優しい笑顔を浮かべたその瞳からは、たえず涙がこぼれ落ちていて。
「この世で最も愛した者を愛し護りきれなかった、弱い男の最初で最後の願いだ」
どれほど意識を失っていたのか。
彼女が目を覚ました時には、あちこちで上がっていた戦火もすっかり無くなっていた。
ああ、そうだ。わたしは死んだのだ。
思考回路はそう判断し、彼女はゆっくりと体を起こした。
その時だ、彼女が異変に気付いたのは。
「…どうして、痛みがあるの?」
わたしは死んだのだ、なのになぜ痛みを感じる事が出来ているのか。
それに、痛みとはいえ少し下腹部に鈍痛が残っているだけで、剣で貫かれたにしては痛みが柔らかすぎる。
防具はおびただしい量の血で真っ赤に染まっているにも関わらず、その血を流す傷が見つからない。
「…な、んで」
彼女の視線の先には、彼の血を浴びた自分の剣と、綺麗なままの彼の剣。
そして、真っ赤に血濡れた己の手。
紅に染まった手は、次第にカタカタと震え出す。
恐ろしくなった。
自分の考えを、浮かんだひとつの事案を、信じたくなかった。
起き上がろうと試みたが、身体が思うように動いてくれない。
「…、?」
その時地につくはずの手が、土でもない、草でもない、何か違うものに触れた感触。
まさか。そんな思考が頭をよぎった。向いてはいけない、自分の心がそう叫んでいる気さえした。
しかし彼女の瞳は、本能的にその方へと視線を動かしていた。
そう、まるで、そこに横たわる"者"が何かを悟ったかのように。
ゆっくりと、ゆっくりと。
「………あぁ、」
小さく、声が漏れた。
彼の剣と己の剣を交互に見やった。
血を纏い赤黒く煌めく自分の剣と、炎の力で燃えるように輝く、彼の剣。
同じ赤なのに、まったくの別物のように見えてならなかった。
そして、己の両の手を染める、彼の血液。
めまいがする。
吐き気を感じる。
彼女の思考回路をショートさせるには十分すぎる光景。
一瞬にし光を失った瞳は、彼の煌めく短剣に向けられた。
力なく立ち上がった彼女は、ふらりふらりとその場所へと近づく。
地に落ちた剣を拾うために手を伸ばし手に取ったと同時に、バランスを崩して崩れ落ちた。
「…わたしの剣は…」
まるでうわ言のように。
呟いた彼女は、手に持った剣の切っ先を自らの左胸へ。
「…この切っ先で…彼の……」
構えた手は、震えない。
両ひざをついた脚は、震えない。
「ああああああああああああああああああ!!!!!!」
空気をつんざく叫び声。
彼女は思い切り剣を持つ手を振りかざし、自分の胸に振り下ろした。
刹那。
「――――っ!?」
彼女の手から、剣が弾き飛んだ。
手に残る痺れを感じながら、宙を舞う剣をただ凝視する。
彼女の手を離れた剣は、紅い粉塵を刀身から放ちながら地面に突き刺さった。
「…紅い……粉、塵……」
次々と浮かんでくる疑問符。
自分の心と行動と裏腹に、彼女の手を離れた彼の剣。
「……片手剣が…自らの意思で、わたしを拒んだ…?」
≪その通りだ≫
彼女の独り言に応えるかのように、どこからともなく声が聞こえ、両の剣が輝きを放ち始める。
あまりの眩しさに一瞬だけ目を閉じた彼女の前に現れたのは、2頭の古龍。
目の前にそびえ立つように鎮座する古龍達を見つめ、彼女は静かにその名を口にした。
「……風翔龍…、………炎王龍……」
2頭の古龍は静かに、彼とのやり取りを彼女に話した。
彼の想い、彼の願い、彼の決意、そして…彼が死してなお抱いた偽りのない愛を。
彼女もまた、静かにその話を聞いていた。
先ほどまでのように瞳は黒くにごってはおらず、しかし、光を取り戻す事もなく。
何も言わず、ただ耳を傾けていた。
≪彼との約束のためにも、そなたを死なせる訳にはいかなかった…許してくれ≫
炎王龍はその首を彼女に向かって下げた。
それを見た彼女は、ゆっくりと首を横に振る。
「…いいえ……。……あなた達が話してくれた事が真実かどうかはわからない…。
でも、すべてに合点がいくという事は、きっと真実なのね」
≪…何も出来なくて、すまない≫
風翔龍の呟きに、またしても彼女は首を横に振った。
「…仕方がないわ。誰のせいでもない…誰も、悪くなんてない」
半ば自分に言い聞かせるように、強い言い放つ。
「むしろ…わたしは、あなたの相棒を……」
炎王龍を見やり、彼女の瞳に悲しみの色が浮かぶ。
チクリ、と、心が痛んだ気がした。
その思いを振り払うかのように、彼女は彼の剣を見やった。
「そう…あなたはわたしの命と愛を天秤にかけてしまったのね。
…愚かだわ」
その手に彼の愛用した剣を握りしめた。銀色の光る刃は、彼女の顔を映し出す。
「わたしを裏切ったのね。お互いを殺す事が、わたし達の愛の証だと信じたのに」
吐き捨てるように口にしたその言葉は、ひどく震えていた。
「…弱かったのはわたしの方」
しばらくの沈黙を破ったのは、やはり彼女の声で。
その声は消えそうなほどに細く震える。
「本当は殺し合いなんてしたくなかった。
ずっとずっと、これからもあなたの隣で、一緒に生きていたかった。
それだけで、それだけでわたしは本当に幸せだったのに」
「その幸せが誰かに壊されるくらいならわたしが壊したかった。
わたしの醜いエゴが、わたしに剣を握らせた。
あなたを失った世界に光なんて無い。
ならば共に死ぬ事が幸せな道なのだと。
そう信じた。そう信じたかった。すがりたかった」
彼女は彼の相棒を抱きしめた。
刃は彼女を傷つける事なく、その胸に収まる。
一筋の涙。
古龍達は、何も言わず、何もせず。
咽び泣く彼女を、静かに見守っていた。
信じたかった。
お互いの死が、永遠を誓うたったひとつの道だと。
すがりたかった。
殺す覚悟が彼と重なる事こそ、愛の証なのだと。
相棒である、蒼と紅の対なる剣は。
悲しき輝きを放っていたというのに。
彼女は空を仰いだ。
陽が傾きかけた空は、薄くオレンジ色に輝いている。
「…そう、わたしは…愛する者を殺した」
自ら彼を殺した事も。
自らを彼が生かした事も。
自らに彼が想いを託した事も。
自らへの彼の愛のかけがえのなさも。
まるで、夢を見ているような感覚で。
ただ、涙が流れ落ちた。
「……贖罪、ね」
震える声で呟いて、彼女はそばに落ちていた仮面を手に取った。
そう、"地の忍"たる彼が身につけていた、地の仮面。
「…わたしは、生きていく」
彼が与えてくれたこの命と。
彼が残してくれたこの愛と。
彼を愛したが故の我が過ちと。
わたしの犯してしまった罪を懺悔するために。
≪我らも共にゆこう。そなた"達"の生きる道に、そなた"達"の相棒として≫
そう言い残し、古龍達は各々の魂を宿す剣へと戻った。
風翔龍によって浄化され元の輝きを取り戻した彼女の剣と。
彼女の手の中で、愛と炎王龍の紅蓮に煌めく彼の剣。
「…ありがとう」
ふっと、涙の中に笑みが浮かんだ。
その表情を隠すかのように。
彼女は、手に取った地の仮面を身に着けた。
今見える景色は、彼が見ていた景色。
また少し、心が痛む。
「…あなた達は、懺悔と愛の証。わたしは聞きるために、贖罪のために、あなた達を振るう」
双剣になった、"2人"の相棒を背に。
彼女は、一歩を踏み出す―――――。
そう、"わたし"は一度死んだ。
今の"わたし"は、生かされている。
懺悔と、贖罪と、断罪の中で。
永遠に、彼と、彼への愛を抱きながら。
戦い続けるのだろう。
愛する者を殺してしまった罪の重さと
生きて欲しいと願ってくれた彼の命と
永遠に消えぬ愛を背負って生きていく
"地"の民である彼と
"天"の民である彼女
相容れぬ存在であるからこそ
狂おしく惹かれ合い
狂うほどに愛し合い
そして、殺し合った
愛する者を殺した剣と
愛する者を生かした剣
相反する国のために引き裂かれた恋人と
相反する役目を担ってなお結ばれた双剣
愛し合いながら殺し合う運命
そばで見守るは、相殺の氷炎
愛を貫くために死を選んだ氷
愛を守るために生を託した炎
仮面ハイドの誕生と
氷炎剣ヴィルマフレア誕生の物語。
最終更新:2015年01月28日 03:39