-第一章-
17世紀、世界各地で行方不明者が続出していると噂たっていた。
これは偶然だと言う者も居れば、何かの予兆だと怯える者、明日は我が身と思う者・・・・・。人々の間で噂となっているこの出来事・・・・・・・・・。しかし、この出来事はいずれ世界全体の運命を背負う「聖戦」の前兆であったと、誰も予想しなかっただろう・・・・・・・・・・・・・・・。
<ロンドンのとある山中>
「ホントにあったんだよ」一人の少年が言う。
「そんなモンある訳ないだろ、見間違いだよ」
その隣を走るもう一人の少年、彼等は時々この山に訪れている者で、名を「ギコ」もう一人を「モララー」と言う。そして彼等は、開戦のカギとなるのだった。
「ココだココ、この中で見たんだよ」
ギコが山中の小さく、暗い洞窟を指差す。
「うえ~ココってモロ洞窟じゃん。お前こんな所に入ったのかよ~」
モララーが言った。
「イイじゃんココら辺は慣れてるだろ?逝こうぜ」
「わかったよ逝くよいけばイイんだろ?」
モララーは気乗りしない様子だったが、ギコは特に気にしていない様子でさっさと洞窟の中に入っていきモララーもその後についていった。
「おいギコ、すげい暗いぞ、ロクに前も見えないじゃん」
モララーが言う。
「うるせェなじゃあついて来なけりゃ良かったコトだろ、逝くぞ」
(モララー)(誘ったのは誰だよ・・・・・。)
洞窟の中は薄暗く、狭く、前はほとんど視界が利かず足元を見るのが限界であった。二人とも腰を下げて狭い洞窟を進んで行った。
「ん?なんか明るくなってきた気が?」
モララーはそう言ったが、辺りに光が射し込むような隙間は無かった。
そこから少し進んだ所で急に洞窟は広くなっていた。
そして、その空洞に広くなった洞窟の中央に白く光る石と、黒く光る石が見えた。そしてその石は、綺麗に、まるで加工されたかのように六角形に削ってあり、石と言うより宝石かのようだった。
白い石は優しく美しい光を放っていて、黒い石は禍々しく不気味な光を放っていた。
「な、ホントだっただろ?コレだよ、昨日ココに来た時見つけたんだよ」
ギコが言うとモララーも、
「ホントだな、お前が言った通り光ってやがる」
(モララー)(さっき明るくなったのもコレの光か)
二人は黒い石と白い石に近ずいてみた。
「コレさ、襲ってきたりとかしないよなギコ?」
「イヤ、分かんねェ」
二人は少し歩くスピードを緩め、慎重に石に近ずいていった。
モララーとギコは石まであと一歩の所で足を止めて顔を見合わせた。
「じゃあオレ黒い方触ってみるな」
モララーがそう言うとギコも、
「分かったじゃあオレ白い方な・・・・」
ゴクッと唾を飲み込んで、二人は石に手を伸ばした。
そして二人共あと数センチの所で手を止めた。
怪しく、優しく光る見たことも無いモノに触るのは少し気が退ける。その時ギコが深呼吸して。
「5、4・・・・」
と、カウントダウンしたのでモララーも深呼吸して言った。
「3、2、1・・・・」
「0!」
ギコが言うと二人とも、同時に石に向かって手を伸ばした。
ピタッ・・・・・・・・
二人が同時に石に触れる。その間、静寂が続いた。
静寂を破って声を出したのはモララーだった。
「コレ、ただの宝石の類じゃないか?」
「多分・・・・・・」
ギコも答える。その時突然石が小さくなっていくのを二人は見た。そしてその石は小さくなっているのではなく、ギコとモララーの手に吸い込まれていくようだった。
「うわ!何コレ?」
モララーが言う。
「知らねェよ!!勝手にこうなってんだ!!」
ギコが叫ぶ。
石の光は一層大きくなり二人の手に入ってくる。
石が完全に消えようとした瞬間・・・・。
「!!」
突然ギコとモララーの足元に異変が起きた。暗く狭かった洞窟も今は外の光が射し込んだように明るく、隅々まで見渡せる位だった。
ギコの足元は白く光り、その中央には不思議な、何かの紋章みたいなモノが見えた。
そしてモララーの足元は黒い光が渦を成し、またその中央にはギコのと似たような紋章がある。その光は徐々に範囲を増していき二人を包み始めた。
「ギコ!!」
「モララー!!」
ギコとモララーは互いに名を呼び合い手を伸ばして相手を掴もうとした瞬間、
スッ・・・・
急に足元の紋章が無くなり、そこには黒い穴と白い穴が広がっていた。
「うわぁぁああ!!」
「ギコォオ!!」
二人はその穴に堕ちて行った・・・・・・・・・。
洞窟はまた暗くなり、中央にあった石も姿を消し、また静かな空間となり、そして、そこに居たハズのギコ、モララーの姿も消えていた。
・・・・・・何時間経ったろうか・・・・・・・。
ギコは目を覚ました。
「痛ってェ・・・・・」
そこは元居た山でも無く、さっき居た洞窟でも無い。
「ココはどこだ・・・・?」
見渡す限り、山だが自分達が居た山とは随分違うとギコは感じた。
「あ、モララーはどうなったんだ?」
ギコは辺りを見渡す。しかしモララーの姿は無かった。
「おーいモララー!何処だぁー?」
ギコは思いっきり叫んでみたが気配が無い。どうやらココにモララーは居ないらしい。
「・・・・・・・・・・。」
ギコはしばらく考えていた様子だったが、自分に異変が起きているコトに気が付いた。
「ん?なんだコレ?」
ギコの左腕の手の甲にさっき光に包まれた時に見えた紋章がある。
「うわ、コレってさっきのか?」
ギコは左手の甲を擦ってみたが、一行に消える気配は無い。
「うえ~」
ギコはその取れない紋章は諦め、立ち上がった。
「とりあえず、誰か見つけて道聞いて帰るか」
ギコは下山するコトにした。
知らない山とはいえ、山にはよく来ていたのでギコは軽々と山を下って行った。青空が続く空にはいつも通り太陽が輝いていてとても良い天気だったが、ギコは晴れない顔で山を降りて行った。
「ちくしょう、一体全体どうなってるんだかサッパリだ、向こうじゃお袋がオレが帰って来ねェとか言って山小屋でオロオロしてだんろな」
とギコは呟いた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
日は傾き夕方頃になってもなかなか人里を見つけられない、それどころか山の道はまだ続いていそうだった。
「ハァーカンベンしてくれよ、こっちが只でさえ道順も知らないし地理も弱ェしよー」
その時、横で、
ズゥウン!!
と言う地面に穴でも一気に開けたような鈍く重い音がギコの耳に届いた。
「?」
ギコは音のする方へ行ってみた。
すると前の林から
ガサッ
っと木の葉を揺らすような音がした。
「誰ッスか・・・・?モララーか?変な冗談は止めてくれ隠れてるんなら出てきてくれ。」
とギコが言うと。
ヴォ・・・ン・・・・・・・
と、いう音とともに、林の中に一点、怪しい光が見えた。
「!!?」
ギコは後ずさりした時、後ろにあった折れて落ちていた木の枝を踏んで、
パキン
と音がした。
その時、その光が正体を現した。
ギコの目の前から木を5、6位なぎ倒してギコの前に飛び出したその物体。
身長は4m弱位、機械のようなその体には配線が幾つも繋がっていて、さっき見えた光はそのモノの目辺りだろう。
一つの大きなアクリルのような目の中から出る紅い光。
夕闇に紛れそうな黒い体に光が当たり不気味に輝いていた。
その重い威圧、そして物言わぬ巨体からは絶えず殺気が感じられた。
その巨体を目にしその影に自分の姿が隠れた時、
「・・・・・・こ、コイツは?一体・・・・・」
ギギギギ・・・・・・・。
金属が歯軋りするような不気味な音、その威圧感は高まっていった。
恐怖と威圧感、そして殺気がギコにぶつかって来た。
折れかかった木が折れ、
ズン!!
と鈍い音を立て倒れた時、ついに全貌を明らかにしたその巨体。
無数に繋がれた配線が所々見えていて、それ以外の所は鋼で武装されていて、とても重そうに見えた。
黒いボディ、腕は長く、指は尖っていた。
足はその巨体を支えるには細すぎると言える位で腕とあまり変わらなかった。
その巨体はゆっくりとギコの方に頭を向けてきた。
キチキチ・・・とギコの方を向いた頭は音をたてていた。
夕闇の中に聳える巨体。緊迫した空気がその場を包んでいたが、物言わぬ巨体はギコの方を眺めるだけだった。
ギコもまた、その場から一歩たりとも動こうとしなかった、いや動けなかった。
今日は初めて見るモノばかりだと思いつつも、恐怖に駆られ動けずにいた。
(オレは今、果たして生きているのか?)(ギコ)
キチッ・・・・・・・・。
音が止んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
次の瞬間、
その巨体は腕を振り上げ、ギコ目掛けて振り下ろした。
「!!?」
ゴォッ!!
ズガァアアン!!!
「ッあ!!」
直撃は免れたが、ギコは吹き飛ばされた。
ズササササササ!!
吹き飛ばされ、地面を転がり、跳ねるギコ
ドンッ!!
「うっ・・・!」
木にぶつかり一旦止まるギコ。
しかし黒い巨体はその体つきからはありえない程ぬスピードでギコに近ずいて来る。
「えええ!?」
ギコは驚いている内に黒い巨体は既に第二撃目を構えている。
「げッ!!」
ズガァアアン!!!
ギコは身を屈め何とか避けた。
バキン!!
ギコの当たった木の上半分が吹き飛んだ。
「ひえええ!!カンベンしてくれェエ!!」
その場から立ち上がり、走り出すギコ。
黒い巨体も追ってくる。
自分が何処を目指しているか全く分からない。
しかし今はそんなコト関係無い。
今はとにかくこの巨体から逃れるコトが先決だ。
しかしどれだけ走っても黒い巨体は追いかけてくる。
隠れようにも黒い巨体は全て破壊してしまう。
「っ・・・・・逃げ切れんのかこんなのから・・・?」
もう5分は全力疾走したろうか、黒い巨体は一向に諦める様子を示さない。
ギコも流石に5分も全力で走っていたのだからもう体力的にも限界が近い。
「ハァハァ・・・・・こりゃ・・・ヤベェ・・・・」
黒い巨体は機械なだけに疲れるコト知らない、徐々に接近してくる巨体はギコに覆い被さってきた。
(あーくっそぉー神様でも仏様でもご先祖様でも貧乏神でもイイから慈悲だか何だかで助けてくれねェかなぁー?)(ギコ)
黒い巨体の影が完全にギコを覆った。
その影のなか、その紅い目はやはり無気味に光っていた。
「・・・・・・・・・・・・。」
17世紀、世界各地で行方不明者が続出していると噂たっていた。
これは偶然だと言う者も居れば、何かの予兆だと怯える者、明日は我が身と思う者・・・・・。人々の間で噂となっているこの出来事・・・・・・・・・。しかし、この出来事はいずれ世界全体の運命を背負う「聖戦」の前兆であったと、誰も予想しなかっただろう・・・・・・・・・・・・・・・。
<ロンドンのとある山中>
「ホントにあったんだよ」一人の少年が言う。
「そんなモンある訳ないだろ、見間違いだよ」
その隣を走るもう一人の少年、彼等は時々この山に訪れている者で、名を「ギコ」もう一人を「モララー」と言う。そして彼等は、開戦のカギとなるのだった。
「ココだココ、この中で見たんだよ」
ギコが山中の小さく、暗い洞窟を指差す。
「うえ~ココってモロ洞窟じゃん。お前こんな所に入ったのかよ~」
モララーが言った。
「イイじゃんココら辺は慣れてるだろ?逝こうぜ」
「わかったよ逝くよいけばイイんだろ?」
モララーは気乗りしない様子だったが、ギコは特に気にしていない様子でさっさと洞窟の中に入っていきモララーもその後についていった。
「おいギコ、すげい暗いぞ、ロクに前も見えないじゃん」
モララーが言う。
「うるせェなじゃあついて来なけりゃ良かったコトだろ、逝くぞ」
(モララー)(誘ったのは誰だよ・・・・・。)
洞窟の中は薄暗く、狭く、前はほとんど視界が利かず足元を見るのが限界であった。二人とも腰を下げて狭い洞窟を進んで行った。
「ん?なんか明るくなってきた気が?」
モララーはそう言ったが、辺りに光が射し込むような隙間は無かった。
そこから少し進んだ所で急に洞窟は広くなっていた。
そして、その空洞に広くなった洞窟の中央に白く光る石と、黒く光る石が見えた。そしてその石は、綺麗に、まるで加工されたかのように六角形に削ってあり、石と言うより宝石かのようだった。
白い石は優しく美しい光を放っていて、黒い石は禍々しく不気味な光を放っていた。
「な、ホントだっただろ?コレだよ、昨日ココに来た時見つけたんだよ」
ギコが言うとモララーも、
「ホントだな、お前が言った通り光ってやがる」
(モララー)(さっき明るくなったのもコレの光か)
二人は黒い石と白い石に近ずいてみた。
「コレさ、襲ってきたりとかしないよなギコ?」
「イヤ、分かんねェ」
二人は少し歩くスピードを緩め、慎重に石に近ずいていった。
モララーとギコは石まであと一歩の所で足を止めて顔を見合わせた。
「じゃあオレ黒い方触ってみるな」
モララーがそう言うとギコも、
「分かったじゃあオレ白い方な・・・・」
ゴクッと唾を飲み込んで、二人は石に手を伸ばした。
そして二人共あと数センチの所で手を止めた。
怪しく、優しく光る見たことも無いモノに触るのは少し気が退ける。その時ギコが深呼吸して。
「5、4・・・・」
と、カウントダウンしたのでモララーも深呼吸して言った。
「3、2、1・・・・」
「0!」
ギコが言うと二人とも、同時に石に向かって手を伸ばした。
ピタッ・・・・・・・・
二人が同時に石に触れる。その間、静寂が続いた。
静寂を破って声を出したのはモララーだった。
「コレ、ただの宝石の類じゃないか?」
「多分・・・・・・」
ギコも答える。その時突然石が小さくなっていくのを二人は見た。そしてその石は小さくなっているのではなく、ギコとモララーの手に吸い込まれていくようだった。
「うわ!何コレ?」
モララーが言う。
「知らねェよ!!勝手にこうなってんだ!!」
ギコが叫ぶ。
石の光は一層大きくなり二人の手に入ってくる。
石が完全に消えようとした瞬間・・・・。
「!!」
突然ギコとモララーの足元に異変が起きた。暗く狭かった洞窟も今は外の光が射し込んだように明るく、隅々まで見渡せる位だった。
ギコの足元は白く光り、その中央には不思議な、何かの紋章みたいなモノが見えた。
そしてモララーの足元は黒い光が渦を成し、またその中央にはギコのと似たような紋章がある。その光は徐々に範囲を増していき二人を包み始めた。
「ギコ!!」
「モララー!!」
ギコとモララーは互いに名を呼び合い手を伸ばして相手を掴もうとした瞬間、
スッ・・・・
急に足元の紋章が無くなり、そこには黒い穴と白い穴が広がっていた。
「うわぁぁああ!!」
「ギコォオ!!」
二人はその穴に堕ちて行った・・・・・・・・・。
洞窟はまた暗くなり、中央にあった石も姿を消し、また静かな空間となり、そして、そこに居たハズのギコ、モララーの姿も消えていた。
・・・・・・何時間経ったろうか・・・・・・・。
ギコは目を覚ました。
「痛ってェ・・・・・」
そこは元居た山でも無く、さっき居た洞窟でも無い。
「ココはどこだ・・・・?」
見渡す限り、山だが自分達が居た山とは随分違うとギコは感じた。
「あ、モララーはどうなったんだ?」
ギコは辺りを見渡す。しかしモララーの姿は無かった。
「おーいモララー!何処だぁー?」
ギコは思いっきり叫んでみたが気配が無い。どうやらココにモララーは居ないらしい。
「・・・・・・・・・・。」
ギコはしばらく考えていた様子だったが、自分に異変が起きているコトに気が付いた。
「ん?なんだコレ?」
ギコの左腕の手の甲にさっき光に包まれた時に見えた紋章がある。
「うわ、コレってさっきのか?」
ギコは左手の甲を擦ってみたが、一行に消える気配は無い。
「うえ~」
ギコはその取れない紋章は諦め、立ち上がった。
「とりあえず、誰か見つけて道聞いて帰るか」
ギコは下山するコトにした。
知らない山とはいえ、山にはよく来ていたのでギコは軽々と山を下って行った。青空が続く空にはいつも通り太陽が輝いていてとても良い天気だったが、ギコは晴れない顔で山を降りて行った。
「ちくしょう、一体全体どうなってるんだかサッパリだ、向こうじゃお袋がオレが帰って来ねェとか言って山小屋でオロオロしてだんろな」
とギコは呟いた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
日は傾き夕方頃になってもなかなか人里を見つけられない、それどころか山の道はまだ続いていそうだった。
「ハァーカンベンしてくれよ、こっちが只でさえ道順も知らないし地理も弱ェしよー」
その時、横で、
ズゥウン!!
と言う地面に穴でも一気に開けたような鈍く重い音がギコの耳に届いた。
「?」
ギコは音のする方へ行ってみた。
すると前の林から
ガサッ
っと木の葉を揺らすような音がした。
「誰ッスか・・・・?モララーか?変な冗談は止めてくれ隠れてるんなら出てきてくれ。」
とギコが言うと。
ヴォ・・・ン・・・・・・・
と、いう音とともに、林の中に一点、怪しい光が見えた。
「!!?」
ギコは後ずさりした時、後ろにあった折れて落ちていた木の枝を踏んで、
パキン
と音がした。
その時、その光が正体を現した。
ギコの目の前から木を5、6位なぎ倒してギコの前に飛び出したその物体。
身長は4m弱位、機械のようなその体には配線が幾つも繋がっていて、さっき見えた光はそのモノの目辺りだろう。
一つの大きなアクリルのような目の中から出る紅い光。
夕闇に紛れそうな黒い体に光が当たり不気味に輝いていた。
その重い威圧、そして物言わぬ巨体からは絶えず殺気が感じられた。
その巨体を目にしその影に自分の姿が隠れた時、
「・・・・・・こ、コイツは?一体・・・・・」
ギギギギ・・・・・・・。
金属が歯軋りするような不気味な音、その威圧感は高まっていった。
恐怖と威圧感、そして殺気がギコにぶつかって来た。
折れかかった木が折れ、
ズン!!
と鈍い音を立て倒れた時、ついに全貌を明らかにしたその巨体。
無数に繋がれた配線が所々見えていて、それ以外の所は鋼で武装されていて、とても重そうに見えた。
黒いボディ、腕は長く、指は尖っていた。
足はその巨体を支えるには細すぎると言える位で腕とあまり変わらなかった。
その巨体はゆっくりとギコの方に頭を向けてきた。
キチキチ・・・とギコの方を向いた頭は音をたてていた。
夕闇の中に聳える巨体。緊迫した空気がその場を包んでいたが、物言わぬ巨体はギコの方を眺めるだけだった。
ギコもまた、その場から一歩たりとも動こうとしなかった、いや動けなかった。
今日は初めて見るモノばかりだと思いつつも、恐怖に駆られ動けずにいた。
(オレは今、果たして生きているのか?)(ギコ)
キチッ・・・・・・・・。
音が止んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
次の瞬間、
その巨体は腕を振り上げ、ギコ目掛けて振り下ろした。
「!!?」
ゴォッ!!
ズガァアアン!!!
「ッあ!!」
直撃は免れたが、ギコは吹き飛ばされた。
ズササササササ!!
吹き飛ばされ、地面を転がり、跳ねるギコ
ドンッ!!
「うっ・・・!」
木にぶつかり一旦止まるギコ。
しかし黒い巨体はその体つきからはありえない程ぬスピードでギコに近ずいて来る。
「えええ!?」
ギコは驚いている内に黒い巨体は既に第二撃目を構えている。
「げッ!!」
ズガァアアン!!!
ギコは身を屈め何とか避けた。
バキン!!
ギコの当たった木の上半分が吹き飛んだ。
「ひえええ!!カンベンしてくれェエ!!」
その場から立ち上がり、走り出すギコ。
黒い巨体も追ってくる。
自分が何処を目指しているか全く分からない。
しかし今はそんなコト関係無い。
今はとにかくこの巨体から逃れるコトが先決だ。
しかしどれだけ走っても黒い巨体は追いかけてくる。
隠れようにも黒い巨体は全て破壊してしまう。
「っ・・・・・逃げ切れんのかこんなのから・・・?」
もう5分は全力疾走したろうか、黒い巨体は一向に諦める様子を示さない。
ギコも流石に5分も全力で走っていたのだからもう体力的にも限界が近い。
「ハァハァ・・・・・こりゃ・・・ヤベェ・・・・」
黒い巨体は機械なだけに疲れるコト知らない、徐々に接近してくる巨体はギコに覆い被さってきた。
(あーくっそぉー神様でも仏様でもご先祖様でも貧乏神でもイイから慈悲だか何だかで助けてくれねェかなぁー?)(ギコ)
黒い巨体の影が完全にギコを覆った。
その影のなか、その紅い目はやはり無気味に光っていた。
「・・・・・・・・・・・・。」