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同情するなら、価値をくれ。 (ベルセリオス)

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匿名ユーザー

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僕は、生れた時から死神だった。
死神というと、何だ……ほら、神話に出てくる鎌持った、強いて言えば
「悪魔」だ。ID23450。愛称は「斬首のモララー」という異名を
持っていた。斬首の対象は、もちろん、この世に巣食う「荒屍」である。
人は、日常に巣食う荒屍と必死に武器を取り戦っていた。
ヒトを斬首――殺せば、地獄行きである。折角、「生きる」チャンスを
与えられた「職業」。手放す様な馬鹿な真似は、決してしない。
価値を得る為。ただ、僕はその一心で、任務をこなして行った。


そして、今から下界に降りるのも、任務の為である訳で――。

僕の任務は、下界に降りて、二年目に唐突に起った。

第一話「ブルーの空の下の三人」

僕は、変哲のない、坂道を三人で下っていた。
青空を見上げると、飛行機がゆっくり、東へと飛んでいる。
まったく、平和の事この上ない。僕は、「死神」であるにも関らず、そんな
感情を持った。任務はもう無いのかも知れない。そういう期待も加算されているからかも知れない。そういう形で、僕はこの不思議な感情を処理した。

僕は、再び一人の少年の話し相手に移った。
二年前に「仮定」として友達になった「ギコ」が、快活に笑い、話を
続きを話している。僕は相槌だけ返していていた。
既に三十分が経過している。僕は、ギコを細めで遠い眼差しで見詰ていた。
この男の肺活量は尋常ではない。これは、僕がギコと接して最初に分った
事でもある。

へっぴり腰、おっちょこちょい、微妙に正義感。

この三つが、ギコの全てとも言って良いくらいである。
「ギコ君、その話もう止めようよ……」
ギコと僕に挟まれている少女が、溜息混じりにぼやいた。
「ああ、ごめんしぃ。で、しぃの話って何だっけ?」
「私、校門から出て何も喋ってないよ……」
少女――しぃは、呆れ顔、呆れ声でギコに指摘した。
ギコは素っ頓狂な声で「そうだっけ? まぁいいかハハ」と追求される前に
上手く流した。まったく、空気を読むのだけは、一流である。
すると、ギコが腕を曲げ、しぃに指を差しているのが分った。

早くフォロープリーズ!

そう僕は解釈し、慌てて声を張上げた。
「しぃって、杖を変えたんだな」
しぃの華奢な体の腰に下げている杖を指差し、ギコに向けている冷めた
視線を、杖に映した。ギコが親指を上げているのを横目で確認する。
しぃも、気付いた事が嬉しいのか、翡翠石の装飾が先端に施された杖を
引き抜き、自慢する様に見せつけ、笑った。カシの木で出来た杖は
渋い印象を受けた。しぃには少し似合わないな、と僕は内心苦笑した。
しぃのピンクに近い、赤色の長髪が風に靡く。
ギコは鑑定士の様に、ほう、と唸り、箇所を見て、宣言した。
「お主も悪よのう」
「何でよギコ君! おかしいでしょ!」
しぃが即座にギコの肩を小突く。僕は溜息を吐き、他愛もない雑談に
耳を傾ける必要もない。今は、そう思う事にした。

ここ下界に降りて、ここ2年。任務が「無かった」。
任務中止はよくある事だ。だが、連絡すら、ない。これは由々しき事態だと
僕は思った。上界――「天瘴界」での、通信伝達天使が、一年三ヶ月前に
来て、「自己判断で帰還してはならない」と言っただけ。
もしかして、まだ近くに巨大な「荒屍」がいるのか。
レーダーは感知しない。昨日も数匹の荒屍を斬首したが、これと言った
強さではなかった。僕は、やはりまだ下界から抜け出せそうになかった。


日常の崩壊は唐突に訪れた。

青い青い空から舞い降りた、巨大な黒い竜によって。

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