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第15話

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第15話

 その頃のシィル&プライン。
 どこをどういう風に走ったのか分からないが、気付けば大きな建物の前に居た。コロシアム、と書かれている。
「むむむ、とりあえずここに身を隠すですよぉ」
 本日貸切、関係者以外立ち入り禁止、と書かれた立て札をプラインが蹴り倒し、中に入る。
 中は石造りで、シンっと静まり返っていた。プラインの足音だけが響く。とりあえず、適当に歩いてみる。選手入り口、と書かれた通路を見つけ、なんとなく入ってみる。
 その通路を抜けた先は、ずいぶんと広い開けた場所。
「ここは何ですかぁ?」
 そこは円形の、闘技場。高い壁の向こうに客席。しかし観客は誰も居ない。
 一通り見渡すと、壁にもたれて座っている二人の人間が居た。金髪の女と黒髪の男。金髪の方は、見たことある。ような気がするが思い出せない。
「えっと、誰でしたっけぇ?」
 相手には、当然聞こえていない。プラインがクエー、っと鳴く。
「くえーじゃ分からないですよ!」
 どうやらシィルとプラインの会話は成立していないらしい。
 と。その時。後ろから。
「逃がさねぇぜ…リボンの騎士」
 弓を構えた青年…ディスレイファンが声をかけた。
「あー! あなたは確か、プラインジャンプローリングキックで倒したはずの秘密結社薔薇一文字団のボス! 名前は確かディスカウント!」
 事実が大いに捻じ曲がっている。捻じ曲がりすぎている。しかしシィルはそんな細かい事は気にしない。
「…おい。お前わざとか? わざとなんだな!? 人を馬鹿にしやがって」
「薔薇一文字団、ここに堕ちる! 正義の使者シィル&プラインが正義の剣で悪を討つ!」
 少し前に危険と判断し、逃走した事実は、シィルの中では無かった事になっているらしい。

「ソラ、あの連中は何だ?」
 コロシアムにてミラクルを待っていたシャナンとソラ。その二人の前に突然現れたリボンの騎士と弓を構えている男。
「リボンの方は痛い子なので捨て置きましょう。男の方ですが、あれは『流星矢』ですね」
「流星矢…冒険者ギルド月河のマスターか」
「はい。名前はディスレイファン。以前に我々闇商会討伐に失敗しています。たいしたことはないかと」
「ふむ…しかしなぜ流星矢がここに? 兄貴の命令か? あり得るな。兄貴の奴は昔からそうだ。くそ。誰かに時間を稼がせておいて何か策を進めているのか…。直接決着を着けるつもりなど無いということか」
 シャナンが、壁を殴る。
「落ち着いてくださいシャナン様。よろしければ私が軽くあの二人をひねり潰しましょう。その間にシャナン様はミラクルを探し、奇襲をかける。嫌でも直接対決に持っていくのはいかがでしょう?」
 ソラが立ち上がり、微笑む。
「ち、兄貴め。コロシアムを貸しきった金が無駄になった。ソラ、あの二人を適当にくびり殺しておけ」
「はい。あくまでも軽く、あくまでも適当に、ひねり潰し、くびり殺しておきます」
 その時のソラの笑顔は、まるで、まるで、無邪気な子供の様に、何の曇りも無い、そんな、笑顔。

 尚徳が宿を取り、意識の無い葉奏をベットに寝かせた。
 ミラクルはその葉奏を襲おうかと一瞬考えたが、やめた。尚徳に殺されそうだし、あの魔王にも殺されそうだ。そんなに何個も命を持っていない。
「あーあ、どうしようかな、姫起きないし。うち一人でコロシアム行くのは自殺行為だしねぇ」
 椅子にもたれ掛かり天井を仰ぐ。ボロボロだ。安宿だから仕方ないが。
「ギルドに依頼でもすれば良いでしょう」
 尚徳がなぜか敬語になっている。ミラクルに対しては、敬語など使っていなかった気がするが。あの災厄に出会ってから、か。
「シャナンがうちの弟だって事実が分かったから無理。闇商会ブラックナイツのボスが実は国王の弟でした、なんてバレたらまずいことくらい分かるでしょ」
「そうですね。龍殺しといい闇商会といい、秘密と機密と欺瞞と疑惑に満ちた国王ですね」
「…嫌味だねぇ。当然、龍殺しのことも闇商会のことも、黙っててもらうよ。もし喋ったら、男でも襲っちゃうかもよ(はぁと」
「私には関係ない。誰かに話すつもりもない。それと、あなたに襲われるくらいなら自殺します」
「自殺かぁ、してくれると、うちは助かるけどね♪」
 本音。秘密を知っている者は、少ない方が良い。
 尚徳は何も答えない。
「ま、姫が起きたらコロシアムに行こうかねぇ。それまでシャナンが待ってるか不安だけどさ。シャナンは昔から短気だったんだよね。うちはこんなにも平和主義なのにねぇ」
「平和主義? あなたが平和主義なら、この世界には超平和主義の人間しか居ないことになります」
「うちは、戦うのはあまり好きじゃないよ。勘違いしちゃダメだねぇ。うちは自分はなるべく安全な位置から他人を利用して操って言いくるめて策を弄して思い通りにするタイプだよ」
「人類の限界…人類最強の魔力を持ち、人類最高の知性を持つ、天下無敵の歩く破滅と謳われたあなたが戦うのが嫌いだとは知りませんでした」
 またずいぶん、古い通り名を持ってきてくれたものだ。『高位魔術師』、『策士』、『人類の限界』、他にも確か『宇宙最強のドスケベ変態』という通り名もあったような気がするが、なかった事にしておいた方が無難。
「ふぅ…尚君って実は性格悪いよね?」
「あなた程ではありますまい」
 譲り合う心は大切だが、こんな時には譲って欲しくないものだ。

to be continued

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