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細胞の成長極性の制御
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多細胞生物の発生過程では、各々の細胞が位置を認識し、方向性をもって成長し、機能に適した形をとることが不可欠である。また、生物(特に植物)は光や重力などの環境刺激に応答して成長方向を柔軟に変化させる仕組みを備えている。このような発生や生存に不可欠な成長方向制御プロセスについて、シロイヌナズナの変異体を題材として研究を進めている。
シロイヌナズナのibo1変異体では、表皮細胞の伸長方向が異常になり、外側に伸長突出して異所的な突起を形成する。このibo1変異体を研究ツールとして用いることにより、IBO1遺伝子そのもののはたらきだけでなく、細胞の伸長極性を制御する機構について新たな知見を得ることが出来た(Motose et al. 2008)。
シロイヌナズナのibo1変異体では、表皮細胞の伸長方向が異常になり、外側に伸長突出して異所的な突起を形成する。このibo1変異体を研究ツールとして用いることにより、IBO1遺伝子そのもののはたらきだけでなく、細胞の伸長極性を制御する機構について新たな知見を得ることが出来た(Motose et al. 2008)。

変異体の表現型解析から、IBO1は異常な伸長突出を抑制し、細胞を一定の方向に伸長させる機能があることが示された。2重変異体の解析から、IBO1は分化パターン形成の下流で働き、エチレンや光環境に応答した伸長制御機構と関連して伸長方向を調節することがわかった。ポジショナルクローニングの結果、ibo1はNIMA-related protein kinase 6 (NEK6)の機能欠損変異体であることを見出した。NEK6タンパク質は微小管上に局在し、タンパク質のリン酸化を行って、微小管動態を制御することにより伸長極性を調節することが示唆された(Motose et al. 2008)。また、理研の酒井博士らの研究により、NEK6がアルマジロリピートを持つキネシン様タンパク質(ARK1からARK3)と相互作用してはたらくことが明らかになった(Sakai et al. 2008)。現在、NEKキナーゼとARKキネシンの機能について共同研究を進めている。
以上の結果をまとめると、細胞が一定方向に伸長するとき、常に別な方向に伸長する可能性があり、これを抑制することで、方向性のある成長が達成されていると考えられる。細胞の極性を持った成長は、別な方向へ成長するのを常に抑制することで成り立っていて、この抑制効果はNEK6とARKキネシンによるものではないだろうか。
NIMA-related kinase (NEK)は真核生物に広く保存されたタンパク質キナーゼで、動物や菌類においてはM期の開始と進行、中心体の分離、染色体の凝縮、紡錘体形成に関与することが示されている。また、クラミドモナスやテトラヒメナでは、べん毛・せん毛の調節にかかわるNEKが知られている。これらの機能は主に微小管機能と関連している。植物のNEKファミリーの機能を調べることにより、環境応答と関連した成長極性の調節機構や、細胞分裂と細胞周期の関連が明らかになると考えて研究を進めている。
以上の結果をまとめると、細胞が一定方向に伸長するとき、常に別な方向に伸長する可能性があり、これを抑制することで、方向性のある成長が達成されていると考えられる。細胞の極性を持った成長は、別な方向へ成長するのを常に抑制することで成り立っていて、この抑制効果はNEK6とARKキネシンによるものではないだろうか。
NIMA-related kinase (NEK)は真核生物に広く保存されたタンパク質キナーゼで、動物や菌類においてはM期の開始と進行、中心体の分離、染色体の凝縮、紡錘体形成に関与することが示されている。また、クラミドモナスやテトラヒメナでは、べん毛・せん毛の調節にかかわるNEKが知られている。これらの機能は主に微小管機能と関連している。植物のNEKファミリーの機能を調べることにより、環境応答と関連した成長極性の調節機構や、細胞分裂と細胞周期の関連が明らかになると考えて研究を進めている。
論文
- Motose, H. , Tominaga, R., Wada, T., Sugiyama, M., and Watanabe, Y. (2008) A NIMA-related protein kinase suppresses ectopic outgrowth of epidermal cells through its kinase activity and the association with microtubules. Plant Journal 58, 829-844.
- Sakai, T., van der Honing, H., Nishioka, M., Uehara, Y., Takahashi, M., Fujisawa, N., Saji, K., Seki, M., Shinozaki, K., Jones, M. A., Smirnoff, N., Okada, K. and Wasteneys, G. O. (2008) Armadillo repeat-containing kinesins and a NIMA-related kinase are required for epidermal-cell morphogenesis in Arabidopsis. Plant Journal 53, 157-171.
