皇と人と ◆UcWYlNNFZY





呼ばれた名前。

君の名前。

大切な人。

護りたかった人。

どんな時でも傍にいてくれた人。

常に微笑をくれた人。


優しい。
優しい人。


信じられなかった。
信じたくもなかった。

私は……

私は彼女を護れなかったのか……

傍にいてくれるといった少女を……



まも……れなかったのか。


大切な部下も二人を失って。


何が……

何が……

皇だ……


護れなかったじゃないか……


彼女を。
彼女を。

あぁ……


もう……いないのか。


いないんだな……




―――エルルゥ



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「よかった……皆無事だ……よかったよ」

ふぅと私は長い息をする。
皆、無事だった。
私――園崎魅音――を含め6名、皆生き延びた。

よかった……
本当によかったよ……

張っていた肩の力が抜けた。
私がハクオロさんの下に戻ろうとした時に流れ始めた放送。
流れてきた放送に私は唯仲間の無事を祈り続けていた。
この殺し合いでは誰が死ぬか分からないから。

皆……頑張ったんだね。
よかった……嬉しいよ。

うん、嬉しい……


「……いや、喜んじゃ駄目だっ! 園崎魅音!」

ブンブンと頭を振る。
何を私は馬鹿なことを……
仲間が生き残った?

……他に15人死んでるじゃないか。
15の命が犠牲に。

私は生かされてるんだよ。
トウカさんを含める15人を引き換えにして。

だから、手放しに喜んじゃいけない。
喜んじゃいけないんだ。
私は……私達は。

「その人達の分まで……希望を捨てずに生きるっ!」

その人達分まで生きなければならない。
きっと。
それが残された者の義務。
そう、思うから。

「さあ、私も頑張らないといけないね!」

パチンと頬を両手で叩き気合を入れる。
頑張って生き抜くために。

そう思ってハクオロさんが居る家の扉をそっと開ける。

だけどそこには……

「……え?」


酷く酷く哀しそうな彼の背中が。


……あぁ。


トウカさん以外にも亡くなったんだ。

仲間が。


そしてあれは……まさか?

あれは……泣いて……いる?




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






聖上……そう自分を呼ぶ声が聞こえてくるようだ。


お前までいったのか。
武士として誰よりも誇りを持ったお前が。

どうだ?

誇りを貫き通したか?
もしくは……忠義を貫き通したか?

きっとそうに違いない。
お前は愚直すぎるからな。
……きっとここでもそうだったのだろう?

できる事ならここでお前がやった事を酒を飲みながら聞いてみたかった。
だがそれも叶わないのだ。

哀しいのだろうか。
悔しいのだろうか。

だが一つ思う事は……

もう……お前みたいな忠臣……二度と持つことは無い。

今までの中でも。
これから先でも。

もう、二度と。


……ベナウィ。


有難う。



有難う。


……それだけだった。


それしか思いつかなかった。





――ハクオロさん。


そんな声が聞こえる。

エルルゥの声が。

優しい声が。


どうして。
どうして。


エルルゥ……お前が逝った。


護れなかった。


私のせい……だ。



エルルゥ……済まない。

ずっと傍にいてくれて。
ずっと支えてくれて。

感謝してもそれをもう返さない。

あの日常の中で。
幸せを感じていたのはエルルゥのお陰だというのに。


大切な人だというのに。


私は……

「私は……何もしてやれなかったっ! 何も出来なかった!」


何も出来ない。

大切な人を守りきることすらできないのだ。
大切な家族すら護りきれないのだ。
大切な家臣すらもだ。


私は……

何が……


「何が皇だ……護りたいもの……護れてはいないではないか」


ガッと鈍い音が響く。
膝を屈してしまった。


余りにも失うものが多すぎて。

エルルゥ。
トウカ。
ベナウィ。

大切だったもの。

それが余りにも大きすぎて。


それを

護れなかった。


「……すまない……すまない」


謝ることしかできなかった。
余りにも非力だった。


私は何なのであろう。


大切なものすら護れず。


すまない……

すま……



――自分を責めないでください。ハクオロさん。



エル……ルゥ?

どうして?


――私は充分ですから。


何故だ?


――ハクオロさんが生きているから。それだけで充分です。


私が生きている……?

それだけ……で?


――はい、その通りです。私はそれで幸せですから。


そして、満面の笑顔が見えた気がして。


――頑張ってくださいね! ハクオロさん



そんな声が聞こえて。


あぁ……


私はこの子と共に過ごせて。

ずっと傍にいてもらえて。

好きで居てもらえて。



私は


私は



――幸せだった。




あぁ……


すまない……皆。


今。

今、この時だけは



皇ではなく……ハクオロという人に、個人に。


戻らせてくれ



「……あぁ……あああああああああああ!!!!」



雫が零れる。


涙が溢れた。




共にずっと居てくれた家族の為に。
ずっと支えて家臣の為に。

そして


キミガタメ。




泣いた。



そしてみんなの為に。





――ありがとう。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「ハクオロさん……」

私は開きかけた扉を閉じた。
今はそっとしてあげたい。

……そうだよね。
ハクオロさんだって「人」だ。
「皇」でもあるけどなにより「人」なんだ。

哀しい時は誰だって哀しいんだ。
その時、泣ける事、哀しむ事……それはきっと必要なんだ。
一人で想う事。
それがきっと必要なんだと……そう想う。

皆を引っ張っていく人間の。
感情を余り表に出せないリーダーの、皇の。

必要な事……そう想う。

私は……

私も。
そうしなきゃならないのかな。

そうだね。

私も……
私も……

哀しい時、目一杯哀しもう。
泣きたい時、目一杯泣こう。

そして、また頑張ろう。

そうすれば……きっと進めると思うから……ね。

哀しみの先にはきっと幸せが絶対にある。
何だか何故だか知らないけど。

……そう思ったから。
……そう思えたから。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「魅音……準備はいいか、トウカは今はここで休ませよう……そして全てが終わった後に埋葬しよう」
「わかったよ」

ハクオロさんの意見に私は同意し、出発の準備を固めた。
あの後、ハクオロさんは何事も無かったことに現れ出発するといった。
哀しんだことも告げずに淡々と。
もう、休んでいる猶予は無いと告げトウカさんのしっかりした埋葬は後にすると。
トウカさんは今はベットで静かに眠っている。
ハクオロさんのその声はしっかりして微塵の哀しみも感じられず強い意志のみ。
私はそれに同意し今に至る。

「……ハクオロさん」
「……何だ?」
「……御免、やっぱ何でもないよ」
「?……そうか」

うーん……なんだろ?
何か何時ものハクオロさんと違う気が一瞬だけして。
わかんないや。
まぁいいか。

でも、私はハクオロさんのように強くいられるのかな。
どうなんだろう。
解らない。
でも、私はそうでありたい。

強く。
強く。

希望を捨てないでいたい。

ねぇ……ハクオロさん。

きっとそうなんだよね?





―――だけど、それはハクオロが皇であった場合の事―――

アルルゥ
今何処にいる?
お前は助けなければ。

エルルゥの為にも。
大切な家族なのだから。

今はまだ私は皇だ。

ここで挫けるわけにはいかない。
負けるわけにはいかないのだ。


だが……もしも。


アルルゥを失い家族を全てを失った時。


私は「皇」としていられるのだろうか?

失って思う。

私がどれだけあの優しい空間を大切にしていたかを。

できるのなら……取り戻したい。

失ったからこそ。
もう一度欲しいと思ってしまう。

愚かだと思う。

優勝の権利に頼り家族を取り戻すなど。
エルルゥ達が喜ぶ訳が無い。

だが……

それでも。

『人』『ハクオロ個人』として。


どうしても……どうしても。

あの空間を取り戻したいのだ。

愚かだろうか。
笑うだろうか。

それでも……。

もう一度。

もう一度だけ


―――あの笑顔が見たい。

――もし、すべてを失ったら……ハクオロは『皇』をやめるのだろうか?……それはまだ誰も解らない事。そう、解らない事――



【B-5 平屋前/一日目 朝】



【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備】:ガイルの剣@ポケットモンスターSPECIAL スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
【所持品】:大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、基本支給品一式、クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL
【状態】:健康 体に僅かに痛み 哀しみ
【思考・行動】
 1:ギラーミンを倒す
 2:仲間(魅音の仲間含む)を探し、殺し合いを止める。全てを護り抜く。
 3:ミュウツーに対して怒りの念。
 4:アルルゥを失ったら……失った家族を取り戻す為に……?


【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
【装備】:空気ピストル@ドラえもん メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム
【所持品】:排撃貝@ONE PIECE、デリンジャーの残弾20、基本支給品一式
【状態】:健康 体にやや痛み 悲しみ
【思考・行動】
 0:ハクオロさん?
 1:仲間(ハクオロの仲間含む)を探し、殺し合いを止める
 2:詩音と沙都子にはやや不安。
 3:トウカを弔う
 4:線路を辿って駅に向かう?
 5:ミュウツーに対して恐怖。
 6:死者に対しては誠意を以って対応する
※本編終了後の参戦です。雛見沢症候群の事を知っています。



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非情な覚悟と揺れるココロと 園崎魅音 limitations
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最終更新:2012年12月02日 06:19