どす黒い穴のその向こう側へ ◆EHGCl/.tFA




日の光に照らされた山道を五人組の奇妙な集団が歩いていた。
小振りのレンチをジャグリングのようにパシパシと宙に投げ、玩ぶ青一色の繋ぎを着た青年。
その直ぐ隣をトコトコと歩く狸のような外見をした珍獣。
ファッションに用いるには少し大きすぎ、装飾として用いるには小さすぎる十字架を両手に握り、珍獣と青年の後ろを歩く少女。
少女と同様の十字架を両手に持ち、周囲を警戒しつつ少女の隣を歩く少年。
何も装備せずまさに威風堂々と言った様子で四人の後方を、見守るように歩く男。
街を歩いていれば自然と人々が避けて通りそうな特異な集団だが、幸運なことに今現在彼等の周辺は無人。
……まぁ、彼等の目的からすれば幸運ではないのだが、平穏が続いているという意味では幸運であろう。

「―――という訳で俺は弟分の恋人を救う為、悪の本社に乗り込み、白服集団をブチのめし見事生還を果たした訳だ。……奴らは強大な敵だったが、俺は一歩も引かなかった!
迫る弾丸を避け、あっという間に傷を治す化け物どもを壊して壊して壊しまくった……。ああ、楽しい。あれは最高に楽しい日だった!」
「すげぇ~~~! カッコ良いな、お前!!」
「だろう、だろう? あれは俺の中でもベスト3に入る戦いだったな。…………いや、ちょっと待て。俺は本当に一歩も引かなかったのか? 無意識に、いや普通に何度か後退をしていた気がするぞ……。
……いやいやいやちょっと待て、俺はまさか命の恩人を相手
に嘘を付いていたのか? こんな異常事態にも関わらず俺を救ってくれた恩人に? こんな純粋な『うわ、グラハムさんすげぇ!!』とか言ってるような瞳を宿した恩人に?
あああ、俺は何をしているんだ! 謝れ、早く命の恩人Bに許しを請うんだグラハム・スペクター……。という訳で本当に済まない。命の恩人に嘘を付くなんて俺は、俺は……」
「え? ええ!? いや別に俺は怒ってないぞ!?」
「悲しい……悲しい話をしよう……命の恩人Bは怒っていないというのに俺は謝ってしまった……許しを求めてしまった! 何という傲慢な行動、エゴの塊だ!
悲しい……本当に悲しい話だ……すまない、命の恩人B。……ああ、また謝ってる! クソ、学べよ、学べよ俺!!」
「ハッハッハ、お前は本当に面白い小僧だな」
「黙れ、爺さん。俺は一遍たりともお前には話し掛けちゃいねぇぞ」
「お、落ち着いて、グラハムさん!」
「そ、そうだよ、こんな所でケンカしちゃ駄目なんだよ!」

グラハムの長々しく感情のブレが激しい話に、子供のように喜ぶチョッパー。
その光景に愉快そうに笑うイスカンダル。
それを見てチンピラのように突っかかるグラハム。
そんなグラハムを諫めるレッドとレナ。
五人が出会った民家を出発してから何度となく行われている奇妙な循環。
端から見れば危なっかしくて仕方がないが、殴り合いにまで発展する事は一度も無いので、平穏と言えない事もないだろう。
むしろ循環を一周する度に連携が強まっているように見えなくもない。

「あぁ、次は命の恩人Aと心優しき少年にまで迷惑を掛けてしまった……俺は、俺はどうすれば良いんだ……悲しい、兎にも角にも悲しい話だ……」
「いや、そんな深く考えなくても……」
「と、取り敢えず静かにしてもらえると嬉しいかな、かな!」

――こうして幾度かの衝突や騒動を起こしつつも『○』の元に集った五人はゆっくりと、だが着実に前へと進んでいく。
しかし数分後、彼等の足を止める出来事が発生する事となる。
無情に、唐突に、心の準備すら出来ていない内に。
この出来事の後、彼等はどんな道を選択するのか。
――悲しみと絶望を生み出す馬鹿騒ぎの第二幕があがる。






『君達がそれまで生き残っていれば―――の話だが』

何処までも尊大な一言を残しプツンと途切れる放送。放送に対する五人の反応は五者五様に分かれていた。


仲間の名が呼ばれない事に安堵し、だが余りに多い死者の数にショックを受けるレナ。
再確認する事となった仲間の死と自身を立ち直らせてくれた恩人の死に驚愕を隠せないレッド。
嬉しいような悲しいような表情を交互に浮かべながらレンチを玩ぶグラハム。
呼ばれた死者の名よりも禁止エリアに興味を持ち、また主催への対抗心を再燃させるイスカンダル。
そして――

「ウォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

――仲間の死という非情な現実を受け入れ切れず、悲しみに満ちた慟哭を吐き続けるチョッパー。
少なくとも正の感情を宿した者は一人たりとも居ない。
先程までの和やかな雰囲気をぶち壊し、悲しみだけを残して放送は終了した。
悲しみの雄叫びを上げるチョッパーを、レナは心配そうに、レッドは自分の境遇と重ねて、グラハムとイスカンダルは無表情に見詰める。
先程までの無邪気な笑顔は何処にも無く、チョッパーは涙で毛むくじゃらの顔を染め続ける。
聞くものさえも悲しみに引きずり込む咆哮に、仲間の誰もが声を掛ける事も近付く事も出来ないでいた。

ウソップ……ウソップゥゥゥウウウウウ!!」

その凍り付いた時間を最初に打ち破った者はチョッパー自身であった。
仲間の名を叫んだと思いきや、突然姿を人型へと変化させ、走り出す。
まるで亡きウソップの姿を追い求めるかのように、非情な現実から逃げ出すかのように―――。
レナもグラハムもレッドも、眼前で行われた突然の変身劇に驚愕していて、チョッパーの遁走に反応することができない。

「止まれ」

―――だが、狸がゴリラに変わるという異常事態の中、何事もなかったかのように行動する男が一人だけ居た。
その名は征服王・イスカンダル。何万もの仲間を御した過去を持つ太古の王は、誰よりも早く仲間の暴走を見破り、それを阻止する為に動いていた。
僅かな動揺も見せる事なく、丸太の如く両腕を広げ、チョッパーの前に立ち塞がるイスカンダル。
人型と化したチョッパーすらも越える規格外の身長、チョッパーが見てきた人間の中で誰よりも隆々とした筋肉、有無を言わさぬ命令形の言葉。
イスカンダルから放たれる余りの威圧感に、恐慌状態に陥り欠けていたチョッパーの心に一陣の臆病風が吹き抜け、足を止めさせる。

「ど……どけよ! 仲間が、ウソップが……!」

だが、それでもチョッパーは先に進もうとしていた。
征服王の威圧に言葉と身体を震わせ、しかし目は少しも逸らさずにイスカンダルを睨み返す。
対するイスカンダルは、焦燥に支配されたチョッパーの瞳を冷徹に見詰め、僅かな笑みと共に口を開く。

「そのウソップとやらの元に行きどうするのだ? そいつはもう死体と化したのだぞ?」

明確な断定。
チョッパーが必死に否定していた事実を、イスカンダルは冷酷なまでにアッサリと突き付ける。
チョッパーの表情から怯えの色が消える。

「違う! ウソップが死ぬ訳ねぇ! ウソップは偉大なる海の戦士だ! こんな訳の分かんねぇゲームで死ぬ訳ねぇんだ!!」

次の瞬間、チョッパーを包み込んだものは激昂。
希望を正面から否定され、仲間の死を決め付けられた事にチョッパーは感情を抑える事ができない。
根拠の欠片もない言葉を、駄々っ子のように喚き散らす。

「……確かに放送が事実と異なっているという可能性もゼロではないだろう。だがそんな直ぐにバレる嘘だを吐いてもギラーミンには何の利点もない。普通に考えれば嘘ではないと分かることではないか? 聡明なお前なら特に、だ」


返ってくるのは何処までも冷静な言葉。
その冷静さはチョッパーをも巻き込み、怒りに沸騰するチョッパーの脳内を急激に冷ましていく。

「分かるか医術師。お前の言うウソップとやらは死んだのだ。認めろ、認めなくては何も始まらん」

同情や憤怒などを微塵も感じさせず、ただ事実だけを淡々と述べるイスカンダル。
レナ達はその光景を無言で眺める事しか出来ないでいた。
レナは悲しげに、レッドは悔しげに、グラハムは無表情に、二人を囲み見詰める。
四人の仲間の視線を受ける中、チョッパーは力尽きたかのように膝を付き、地面を叩いた。

「違う! ウソップが……ウソップが……死ぬ訳……! ウソップ……ウソップゥゥゥウウウウウウウウウウウ……」

あの時――自分の恩師が爆散した時と同様の、行き場のない怒りと悲しみがチョッパーを包み込む。
あの時は仇の正体が分かっていたし、「人間を恨むな」との恩師の言葉があった。
でも今回は違う。
何処で、誰が、どのように殺したのか全く分からない。
誰に怒りをぶつければ良いのか、誰に悲しみをぶつければ良いのか――それすらも分からない。
―――朝焼けが差し込む森林に虚しい咆哮が響き渡った。






それから数分後の森の中、『○』同盟の面々は地面に置かれた二枚の紙を中心にして、円を描くように座っていた。
放送で手に入れた情報を踏まえ、これからの行動方針を考え直す事に決めたのだ。
因みに発案者は竜宮レナ
イスカンダルや他の面々も反論する事なく、速やかに場は落ち着いた。

「……さっきの放送で十五人の人が死者として発表されました」

五人が描く円の中、一番初めに発言をした者はレナであった。
お嬢様座りを崩し、身体を二枚の紙の片一方――参加者名簿に近付ける。
名簿には六十五の名前が記されており、その中の十五には黒色の線が走っていた。
勿論、チョッパーの仲間であるウソップにも、レッドの仲間であるイエローにもだ。

「私達はイスカンダルさんを中心に仲間を増やし、ギラーミンを打倒するつもりでした」


レナの言葉にイスカンダルは仰々しく頷き、レナもそれに頷き返す。

「……ですが、既に十五人もの人が亡くなっています。私達の作戦は明らかに後手に回っていると言わざるを得ません」

レッドは何かを思案しているか沈黙のままレナを見詰め、グラハムは興味なさげにレンチを弄くっている。
チョッパーは人獣型に戻ってはいるものの、俯むいたまま押し黙っており、レナの言葉にも反応を示していない。
三人へと順に視線を移していき、レナは再び口を開く。

「だから私はチームの分担を提案します」

レナの言葉にイスカンダルの表情に小さな笑みが浮かぶ。
それは喜びや嘲りを含んだ物とはまた別種の、挑戦的な笑みであった。
その笑みに気付いているのか、いないのか、レナは真剣な表情で先に続ける。

「為すべき行動は、仲間の……軍勢の拡大と殺し合いに乗った人の討伐です。それを二チーム、それぞれ別れて行っていく。
……人数が減る分危険度も上がりますが、現状ではこの策が一番効率良く、イスカンダルさんが言う勝利へと近付ける……と、私は思うんだけど皆はどうかな? かな?」

一息に全てを語り終え、レナは仲間の顔を見回す。
イスカンダルは変わらぬ笑みを浮かべ、レッドは何かを考え込み、グラハムはレンチを弄くり、チョッパーは俯いている。
少なくとも表面上には四人に変化は見受けられない。
賛成も反論も出ないまま数秒の時が過ぎる。

「……レナ、一つ質問いいかな?」

数秒の沈黙の後、最初に口を開いたのはレッドであった。
ヒョイと右手を挙げ、レナに問い掛ける。

「さっき俺達は、これからの動きを通して互いに互いの実力を見極め合うって話になってた筈だ。チームを分胆したら、それが出来なくなると思うんだけど……」

レッドの問いにイスカンダルの笑みが深くなる。
試されてるな、と直感的にレナは感じた。
レッドとイスカンダル二人分の視線が集中する中、レナは問いに対する答えを紡ぐ。

「確かにレッド君の言う通りだよ。私の案じゃ互いの実力を知る事は出来なくなっちゃう……だからせの代わりに『ノルマ』を設定するのはどうだろ?」
「『ノルマ』……?」
「例えば、殺し合いに乗った人を一定数以上倒したり、一定数以上の仲間を見つけたり、とかかな? こうすればある程度の見極めは可能だと思うよ」
「成る程……」

チームの分担により仲間集めや殺し合いに乗った者を討伐する効率を上げつつ、ノルマ達成の可否によってレナ達はイスカンダルの実力を、イスカンダルはレナ達の実力を見極める―――これがレナの提案した作戦であった。

「戦力」はこのゲームの参加者のみと限定されていて、且つ殺し合いに乗っている者もいる。
ギラーミンや殺し合いに乗った者に対抗するには、ある程度以上の「戦力」が必要不可欠。
だが「戦力」は、参加者の死亡や負傷により、時が経つにつれ減少していく。
このまま一塊で行動すればある程度の安全は保証されるが、効率は悪く「戦力」は減少する一方。
ならばチームを分担し、多少の危険を賭してでも「戦力」の増大、また敵戦力の減少に力を入れるべき……。
そう考えてのレナの発案だったのだが、この案を通すには余りに大きすぎる問題が一つあった。
それは――

「……どうでしょうか、イスカンダルさん?」

――同盟を持ち掛けた張本人・イスカンダルが納得してくれるかだ。
基本的には面倒見が良い気さくで破天荒な男だが、時折見せた敵意は凄まじい物があった。
その体躯や身に纏う雰囲気から相当な実力者だという事も見て取れ、自分を征服王と呼ぶだけの傲慢さや冷徹さを兼ね揃えている事も分かる。
だからこそレナは慎重に言葉を選んで意見を出し、またレッドもイスカンダルが指摘する前に疑問を呈した。

イスカンダルは笑みを張り付かせたまま、返答をしない。
ただサングラスの奥の双眸でレナを見詰め続けていた。
一秒、二秒と気まずい沈黙が場を支配し、レナとレッドの背中に冷や汗が吹き出す。
何か言葉を誤ったのか―――レナが自身の発した話を心の中で復唱し始める。
だが全ての復唱を終える寸前、ようやくイスカンダルは口を開いた。

「……『あなたの力を私に見せ付けろ』――自分からそう言っておいてなかなかに我が儘な意見を申したものだな、竜宮レナ」

冷や汗が額にまで浸食を始めた。
喉元にナイフを突き付けられたかのような圧迫感。
話を始めてから常に冷静を保っていたレナの表情が、目に見えて強張る。

「――だが、矛盾に対して解答を用意していた事は評価に値する。矛盾を言い当てた小僧もだ。良いだろう。その策を決行するぞ」

――しかし続く言葉に緊迫した空気が崩れる。
張り詰めた物が取れたのか、レナとレッドは顔を見合わせ微笑みを浮かべ、その反応にイスカンダルは豪快に笑い声を上げた。
放送が終わってから始めて流れる和やかな雰囲気。
そこでようやく今まで無言を貫いている内の一人が声を上げた。

「おれ……おれ、ルフィとゾロに会いてぇ……」

鼻をすする音と共に発せられる、震えた弱々しい声。
四人が―――レナが話す間ずっとレンチを弄び続けていたグラハムさえもが顔を声の主へと向ける。
四人の視線が集中したそこには、涙と鼻水で顔をグチャグチャに歪ませているチョッパーがいた。

「おれ……皆なら大丈夫だって思ってた……アラバスタも、空島も、エニエスロビーだって皆で越えられた……だから今回だって大丈夫だって、皆なら大丈夫だって……そう思ってた……でも、でも!
ウソップは……ウソップは……死んじまった! ……恐いんだ……ルフィやゾロにも会えなくなるじゃねぇかって……二人共、おれの知らない所で死んじまうんじゃねぇかって……」

聞くだけで人を悲しませるだろう悲痛な呟き。
同じようにこの殺し合いの場で仲間を失ったレッドにはその気持ちが分かってしまう。


―――何も考えられなくなり、絶望と後悔と喪失感が心を支配する。
今までの人生じゃ味わったことのない最悪な気持ちだった。
自分一人じゃ到底立ち直れなかった。
あの時、フィーロさんが喝を入れてくれなかったら―――自分は此処に立ってはいなかっただろう。

「だから会いてぇんだ、おれ……ルフィ達に、会いてぇ……! すげぇ勝手な言い分かもしれないけど、会いてぇんだよぉ……」
「チョッパー……」
「チョッパー君……」

だからチョッパーを励ますべきだと、励まさなくてはいけないと分かっていた。
でも言葉が見付からない。
自分もまた、動揺しているからだ。
イエローの死に、フィーロさんの死に。
それにチョッパーは進もうてしている。
全てを諦めかけた自分とは、死さえ望みかけた自分とは違い、迷いながらも泣きながらも未来へ進もうとしている。
強いな―――泣きじゃくるチョッパーの姿を見て、レッドは素直にそう思った。

「感動した……そう、感動した話をしよう……」

―――そして、レッドがチョッパーに感服の念を覚え始めたその時、もう一人沈黙を続けていた人物が久方振りに声を上げた。
先程から宙を舞い続けていたレンチを右手に収め、男は両腕を大きく広げ立ち上がる。
それはまるで観客の拍手を一心に受ける舞台役者のようにも見えた。
このタイミングで……、とレッドとレナの表情が露骨に引きつっている事にも全く気を止めず、男は雄弁に語り出す。

「あの放送が終わった後俺は単純に喜びを覚え、また悲しみも覚えていた。ラッドの兄貴は未だ生きていて、また十五人もの尊い命が犠牲になってしまったからだ……。
しかし、名も知らぬ十五人の死とラッドの兄貴が無事だという事、どちらが感情を突き動かしたかは言うまでもない。だから俺は盛大に語りを始めようと思った。
ラッドの兄貴への祝いの言葉とその武勇伝を赤裸々に数十分以上に渡りお前らに語るつもりだった……。しかし口を開いたその瞬間に聞こえたのは命の恩人Bの悲痛な叫び。
それを聞いて俺の感情は完全な躁状態から鬱状態へと真っ逆様に急降下を始めた……そりゃそうだろ、命の恩人Bの仲間をその他十五人に含め、あまつさえ喜びを言葉にしようとしたんだ……最悪も良いところ、空気を読めないにも程がある……。
そう最悪、全くもって最悪だ! もしかしたら命の恩人Aや心優しき少年の仲間も死んでいたのかもしれないのにただただ自分を優先していた!! 最悪だ、これを最悪と呼ばずなんと言う!!!」
「あのグラハムさん、ちょっと落ち着」
「俺は落ち着いてるぞ、命の恩人A! まぁとにかくこの時の俺は最悪だった。弟分にもラッドの兄貴にも合わせる顔がないほどに最悪……俺より下にはギラーミンしかいないんじゃないかって言う位に最悪だった!
そう、だからこそ、考えた! 何とか命の恩人Bに贖罪をする方法を! 弟分やラッドの兄貴に顔を合わせられるよう、自分の罪を償う方法を!
……とはいえ俺は壊すことしか能のない最悪野郎……どうすれば良いか必死に考えた……今までの人生でこんなに考えた事はないんじゃないかって位に頭を捻った。
壊すことしか出来ない俺……仲間の死に悲しむ命の恩人B……この二つが脳内を埋め尽くし、グルグル回っていた。そして数分前、ついに天恵が舞い降りた……『壊せば良いんだ』と。
命の恩人Bの仲間を殺した奴を、命の恩人Bの気がすむまで壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して
壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して
壊ッ……ゲホッゲハッ……壊して壊して壊して壊して壊して壊しまくってやれば良い! ってな。
仲間の仇の苦しむ顔を見れて命の恩人Bも元気百倍超ハッピー、俺も命の恩人Bの仲間の仇の苦しむ顔を見れて大満足超ハッピー、これで皆が超ハッピーって訳だ!」

今まで沈黙の分を取り戻すかのように長々しく、今までの中でもずば抜けた狂気が含まれている語りにレナとレッドの二人は既に引きに引いている。
しかしまだグラハムの口は止まらない。


「早速俺はこの考えを命の恩人Bに伝え、元気付けてやろうと思った。……だが、ここでまた俺にとって予想外で、そしてとても感動的な事態が発生した! 命の恩人Bが俺の言葉より先に立ち直ったのだ!
何という強き精神力! 何という高貴な心! 流石は俺の命の恩人だ! そして命の恩人Bが口にした『仲間と会いたい』と明確な願望! 俺の考えがドブ川に流れる泥水に思えるような高潔な願い!
……俺の心に電流が走った! そして俺は決意した! てな訳で命の恩人B、絶対に俺がお前とお前の仲間とを再開させてやる。ラッドの兄貴に誓うぜ」

数秒の静寂。
話を聞いていたレナとレッドは困惑げな浮かべ、イスカンダルは楽しげな笑顔を浮かべている。
話の中心であったチョッパーも困惑しているのか、長すぎる前振りに本題が理解できていないのか、首を捻っている。
それは、放送後初めて宿った悲しみ以外の感情なのだが本人は気付いていない。

「えと、つまり……どういう事だ?」
「お前とチームを組ませてくれってことだ、命の恩人B」
「え、ええと、俺は別に良いけど……レナ達は?」
「わ、私も良いと思うけど……」
「お、俺も……」

三人のコメントに満足そうに頷き、残る一人へと顔を向けるグラハム。

「よし、残るはオッサンだけだぜ」
「ふむ、別に良いだろう。だがその二人だけでは些か心配だな。レナ、お前も医術師と小僧について行け」
「わ、分かりました」

―――何というか、チーム分けは非常にスムーズな流れで決定した。
それからの流れもスムーズこの上ない物で、『ノルマ』や『集合場所』をレナとレッドとイスカンダルで取り決め、直ぐに作戦は決行される形となった。






「それでは分かっているな。六時間後――次の放送までにE-4の劇場に集合、『ノルマ』は捕虜、もしくは仲間を三人。『ノルマ』を達成できなかった場合はそれ相応の罰があるからのう」
「分かってますよ、イスカンダルさん達こそ『ノルマ』を達成できなかったら罰ゲームですからね」
「フッ、ほざけ」
「フフッ、頑張って下さいね」

B-4に位置する森林の中、『○』同盟の五人が二つのグループに別れ、向かい合うように立っていた。
右にはレナ、チョッパー、グラハムの三人組が、左にはイスカンダル、レッドの二人組が居る。

「レナ、クレアさんに会ったら励ましてやってくれ。多分恋人を亡くして凄いショックを受けてると思うから……」
「分かったよ、そっちも魅ぃちゃん達に会ったらよろしくね」
「ラッドの兄貴にもよろしく言っといてくれ。あ、あと兄貴の前で『俺は死なない』とか言ったり、そういう態度とらない方が良いぞ。殺されるから」

既に互いの知り合いに関しての情報は交換していた。
レナの仲間は園崎魅音、前原圭一、北条沙都子、古手梨花、園崎詩音
チョッパーの仲間はモンキー・D・ルフィ、ロロノア・ゾロ
グラハムの仲間はラッド・ルッソ
その容姿や性格、風貌などはそれぞれに伝わっている。


「危険人物はクロコダイルとサカキとアーチャー、あとサングラスいスーツの人……どちらか分からないのはミュウツーさんだね?」
「あぁ、カツラさんが参加してない以上ミュウツーがどんな状態か俺には判断できない。……念の為、警戒はしといた方が良いと思う」

殺し合いに乗っているとして上げられた者は三人。
取り敢えず保留扱いとなっているのは一人であった。

「このポケットが使えれば連絡や移動も楽になったんだけどなぁ……」

肩を落としてそう言うレッドの手には白色の布切れ―――スペアポケットが握られていた。
彼等は、スペアポケットを逃げ道や互いの無事の確認に使おうとしたのだが、レナ達のチームが使用したところ、出口の四次元ポケットに繋がる事なく強制的に排出された。
故障したのか、回数制限があったのか……首を捻るレッドであったが、結局原因は掴めずじまい。
スペアポケットを利用する事は諦めるしかなかった。


「使えない物は仕方ないよ。……それじゃあ、そろそろ行くよ。一旦お別れだね」
「気を付けてな。危険だと思ったら直ぐ逃げるんだぞ」
「『ノルマ』を忘れるでないぞ、レナ。それとこんな下らない事で死ぬなよ。……それとチョッパーに小僧、しっかりレナを守ってやれ」
「お前の言いなりになるつもりはないが、任せておけ。命の恩人A、Bはしっかり俺が守ってやるよ」
「俺もだ。もう一杯泣いたし、弱音も吐いた。絶対に二人を守ってみせるぞ!」

最後に言葉を交わし五人の集団は二つに分かれていった。
それぞれ変わらぬ目的を胸に――主催者の打倒を目指し、一つの○は二つになる。
六時間後―――彼等が再び出会う予定となっている時、その数は増えているのか、減っているのか……それはまだ誰にも分からない。


【B-4 森林 1日目 朝】
【チーム名:○同盟】
1:主催者の打倒。
2:二チームに分かれ、それぞれで『ノルマ』(仲間集め、殺し合いに乗った者の討伐を、計三人以上行う)を達成する。
3:出会い、信用した相手に印のこと(腕に○の印を描き、その上に包帯等を巻く)を教える。
4:次の放送時に劇場へ集合。
5:サングラスにスーツの男(無常)、クロコダイル、サカキ、アーチャー、ミュウツーを警戒。クレアという女性を信用(グラハム以外)



【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康  右腕に○印
[装備]: 包帯 二重牙@トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式 未確認支給品1~3 ドライヤー
[思考・状況]
1:とりあえずはグラハム・チョッパーと行動し、『ノルマ』を達成する。
2:部活メンバーと合流したい(ただし、積極的に探すかは保留)
3:次の放送までに劇場へ向かう。
4:何とかして首輪を外したい
5:イスカンダルの勧誘は保留。
※チョッパーから軽く自己紹介を受けました。またルフィたちやクロコダイルの情報もまだ知りました。
※幻聴はとりあえず消えましたがまた出てくる可能性があります。
※屋敷から見える街道に誰かが通るかもしれないと意識をしています。
※濡れた服はドライヤーで乾かしました。
※屋敷の洋服ダンスのなかからグラハム用のかぁいい服を見つけてきました。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。

トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】
[状態]:健康 人獣型 腕に○印 悲しみ
[装備]:なし 包帯
[道具]:支給品一式 確認済支給品0~2、 タオル、救急箱
[思考・状況]
1:グラハム・レナと行動し、『ノルマ』を達成する 。
2:仲間と会いたい
3:グラハムの様子を見る。
4:次の放送までに劇場へ向かう。
5:ギラーミンを倒し、脱出する。
6:イスカンダルの臣下になるかはとりあえず拒否。
※レナからはあまり情報を受けていません。圭一たちについての情報は知りません。
※参戦時期は不明。少なくともCP9編以降。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。

【グラハム・スペクター@BACCANO!】
[状態]:健康? 腕に○印
[装備]:包帯 小型レンチ
[道具]:支給品一式、(うち磁石は破損)、スペアポケット@ドラえもん
海楼石の網@ONEPIECE
[思考・状況]
1:レナ・チョッパーを助ける。
2:ウソップを殺した者を壊す。
3:イスカンダルに敵意。
4:殺し合い自体壊す
5:ラッドの兄貴と合流、兄貴がギラーミンを決定的に壊す!
6:イスカンダルの勧誘は断固拒否。
※後遺症等があるかどうかはわかりません。
※元の青つなぎを着ています。かぁいい服はデイパックに入れました。
※二重牙は枕元においてあったチョッパーのデイパックから借りたものです。
※4人の会話を途中から聞いたので、レッドたちがクレアを信用していることを知りません。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。


【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:健康  腕に○印
[装備]:張維新の衣装とサングラス@BLACK LAGOON 包帯
[道具]:基本支給品一式 きせかえカメラ@ドラえもん きせかえカメラ用服装イラスト集
     イリアス英語版 各作品世界の地図
[思考・状況]  
 1:バトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。聖杯で望みを叶えて受肉する。
 2:レッドを従え『ノルマ』を達成し、レナ達に自らの力を示す。
 3:四次元ポケットとバイクを回収しに図書館へ戻りたい。
 4:首輪を外すための手段を模索する。
 5:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
 6:次の放送までに劇場へ向かう。
 6:アーチャー(ギルガメッシュ)を警戒する。
【備考】
 ※ヤマハV-MAXセイバー仕様@Fate/Zeroは図書館入り口に停めてあります。
 ※四次元ポケット@ドラえもんは図書館の中に放置されています。
※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。
  本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
※レッド・レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。


【レッド@ポケットモンスターSPECIAL】
【状態】:疲労大 背中に擦り傷、左肩から出血(両方とも簡易治療済み) 腕に○印
【装備】:包帯 二重牙@トライガン・マキシマム
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0~2個(確認済み。モンスターボール・スコップなどの類はなし)
【思考・行動】
 1:殺し合いを止める。必ず生き残る。
 2:ライダーと慎重に仲間を捜し、『ノルマ』を達成する。
 3:ある程度はライダーを信用していますが…。
 4:次の放送までに劇場へ向かう。
 5:赤い髪の『クレア』に会ったら、フィーロの名前を出す。
 6:絶対に無常からフシギダネと取り戻す。
【備考】
※参戦時期はポケモンリーグ優勝後、シバの挑戦を受ける前です(原作三巻)
※野生のポケモンが出てこないことに疑問を持ってます。
※フシギダネが何故進化前か気になっています
※ライダーと情報交換を行いました。
※『クレア』をフィーロの彼女だと勘違いしています。
※後回しにしていますが図書館にあったパソコンに興味
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。






そして五人が分かれた場所から丁度2kmほど南にある図書館。
その内部に緑色のサングラスを掛けた男、つい数分前にこの場から立ち去った筈の――無常矜侍は立っていた。
被虐的な醜い笑みを顔に浮かべているが、無常はそれを隠そうともしない。
その笑みは普段の慇懃無礼な笑みではなく、心の底からの笑みであった。

「ふふ……ふふふふふ……良いですねぇ、最高ですねぇ! このカタツムリを通して様々な情報が手に入りましたし、何よりあの劉鳳が死亡! いやー何処の誰だが知りませんが、やるものです!」


最高な気分というのはこう言う物を指すのだろう、と無常は考える。
自分にはない地位も、金も、生まれつき持っていた劉鳳。
無常にとっては嫉妬の対象でしかなかった劉家の跡取り。
その男が死んだ。
こんな下らないゲームで、あっさりと、信念の正義を貫き通す事もできずに、親の仇をとる事もできずに死んだ。

「いやはや無念な最期だったでしょう。いやーその姿、この眼で見たかったですねぇ」

足元に散乱している何十もの白色の布切れを踏みにじりながら、無常は出口へと歩いていく。
無常が図書館に戻ってきた理由。それはこの布切れ――四次元ポケットの処分であった。
一度は図書館を離れた無常であったが、レナ達が再び利用する可能性を示唆し、再び足を運び自身のアルター能力で切り刻んだのだ。
その為、レナ達はスペアポケットを使用してもワープする事が出来なかったのだが、レナ達がそれに気付くことはない。

「さてさて、様々な情報を手に入れましたが、どう利用しましょうかねぇ……」

無常としては正面から待ち構え、撃退することも考えたのたが、敢えてその手段は選択しなかった。
包帯の下の○印やなど、『○』同盟が持つ情報は殆ど入手しており、煮るも焼くも自分の一存で決められる。
言うなれば格好の獲物――ただ殺すのは味気ない。
絶望に絶望に絶望を見せ付けてからゆっくりとトドメを刺してやれば良い。

「『○』の元に集る皆さん……精々頑張って私を楽しませて下さいねぇ。そう……向こう側の世界を見ても満たされなかったこの渇きを収める位にはねぇ」

――こうして欲に支配された毒蛇は出口へと辿り着く。
今この瞬間を持って、彼の殺戮遊戯もまた、第二幕へと突入した。


【D-4図書館/一日目 朝】
【無常矜持@スクライド(アニメ版)】
【装備】:ハンドガン@現実 予備段数×24
【所持品】:基本支給品一式×2、不明支給品0~3個(確認済み)フシギダネ(モンスターボール)@ポケットモンスターSPECIAL 、
      黒電伝虫と受話器なしの電伝虫のセット@ONE PIECE
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:殺し合いで優勝する
 2:○印の情報を利用する。
 3:カズマ、クーガー、あすかの始末
 4:レッドや同行者たちとはまた会いたい
【備考】
※ポケモンは一度モンスターボールから出し、10分が経過すると強制的にボールへ戻ります。再び使用するには2時間の経過が必要です。
また、基本的にはボールの持ち主の指示に従います
※何処へ向かうかは次の書き手さんにお任せします。
※○印と包帯の情報を知りました。
※レナ・チョッパー・グラハム・ライダー(イスカンダルのみ)の名前は知りましたが顔は知りません。
※図書館にバラバラに千切られた四次元ポケットが放置されています。




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最終更新:2012年12月02日 06:21