Free Bird(前編) ◆YhwgnUsKHs



「ぐああああああああ」
「ご、ごめんなさいヴァッシュさん!!」


 ――何なのよ、こいつら。


 ローゼンメイデンが1人水銀燈は目の前の光景にただ呆れるしかなかった。
 女子高生くらいの少女が黒髪の男を殴り悶絶させる。これ自体は別にいい。この殺し合いの場だ。男の方が襲い掛かったとかなら納得できる。
 ていうかよく見れば少し前に遭遇した男と女だ。もう1人いないが、そいつはどうでもいい。


 ただ、その空気はあまりに軽い。
 緊迫感も何もなく、男はへらへらと笑い女は戸惑いながらもどこか安心しきっている。
 あまりに緩い。


「あはは、大丈夫大丈夫」


 ――何よ……この緊張感の無さは。


 少し前までの暗い顔やゼロにメスを投げられた時の恐怖はどこへ行ったのか、あまりにヘラヘラと笑っている2人に水銀燈は呆れ




 苛立った。




 ――何よ……私が、私がこんな目に遭っているのに。


 それも無理は無かった。
 彼女は腕を失った。人形の彼女にとってそれは致命傷にはならない。


 だが、彼女の精神にとっては致命傷に近い。
 それは不完全な存在になってしまった事。
 片腕しかない無様で不恰好な壊れた人形になってしまったということ。
 そんな人形を人はきっとこう言う。


 『ジャンク』と。



 ――っ!!


 それは彼女にとって何よりも耐え難い言葉。何よりも自分の心に突き刺さる刃。
 そんな最悪の事態に見舞われた自分に対して、目の前の奴らのなんて幸せな事か。
 自分が苦しんでいる間にこいつらは笑っていた。そう考えたらだんだんと暗い感情が滾ってくる。


 それは見苦しい嫉妬だった。そして八つ当たり。


 目の前の幸せそうな2人が、なぜか凄く羨ましく、憎らしい。


 それはある少女と自分に似るのか、あるいは父親と自分の理想の光景に見えたのか。
 どちらにせよ――2人の姿は――水銀燈にとって、羨望と嫉妬と憎悪の対象になっていく。


「ともかく、大丈夫。僕たちは君に危害は――」


 ヴァッシュが起き上がって伊波の前へと立とうとする。
 水銀燈の錯乱がまだ収まっていないと思っての行動。だが――


 それはまずかった。



 水銀燈の目は近づいてくる伊波の首。
 ふと目をやったそれに水銀燈は何か引っ掛かりを覚えた。
 円形の首輪。



 そこで水銀燈は気が付いた。
 この城にある○の窪み。
 あれは首輪を嵌めるのではないかと。戦いの証とはつまり、殺した証なのではと。
 そして忌まわしいゼロが言っていた事を思い出す。


『何らかの『力』……武器か何かが出て来るのだろう』


 もし武器があるとしたら、それは他の支給品とは比べ物にならないはずだ。わざわざ隠すのだから。
 それさえあれば、たとえ隻腕の自分でも真紅を破壊するチャンスがある。
 真紅をアリスにさせないチャンスが。



 その結論が、彼女を後押しする。




 水銀燈は決めた。
 それはさっきの衝動的な拒絶とは心持が全く違う。
 それは――彼女の身勝手な嫉妬と八つ当たり。



 まずはこの2人の幸せを壊してやる。
 首輪とか優勝とか真紅のこととか全てはその後だ。





 水銀燈が即座に掴んだ自分のデイパックから何かを抜き出したと思った瞬間


「なぁっ!?」


 ヴァッシュの体は、突然吹き飛んだ。
 その身に突風を受けて、床から足が離れる。




 ガシャァァァァン!!!



 けたたましい音と共に、背中がガラスの窓を突き破ったことを理解しながらヴァッシュの体は城の外へと投げ出され、下へと落下していく。
 ヴァッシュがなんとか壁にしがみつこうと手を伸ばした瞬間――



 自分が突き破った窓から水銀燈とその手に捕まれた伊波と





 目の前に落ちてきた卵のようなものを認識した。





 *****



 ドオオオオオオオオン!!



「うわっ!?」
「うおっ!?」


 仮面の男を捜して主塔を駆け下りていた新庄とゾロの2人は突然の爆音と衝撃に姿勢を崩した。


「大砲でもぶっ放したのか?」
「そんなの僕たち知らないよ!」


 新庄が近場にあった窓枠もないただ穴があるだけの廊下窓から下を見下ろした。
 さっきの音は明らかに外からのものだ。


「っ!?」


 目に飛び込んできたのは、黒煙。
 眼下に立ち込める煙。そして鼻につくその匂いに新庄は顔を顰めた。
 これは――火薬の匂いだ。爆発した火薬の匂い。
 そして爆発が起きたであろうあたりは2階あたり……そこにあるのは、病室。


(!? 伊波さんがいるはずの場所って確か!)


 そもそもこの城の中にいるのは、自分とゾロの他にはヴァッシュと伊波、そして仮面の男しかいないはずだ。
 爆発が何かトラブルで起こったものとすれば、それに巻き込まれたのは他に侵入者がいなければその3人ということになる。


(まさか仮面の男が2人を……)


 実際の主犯はヴァッシュが抱えてきた水銀燈なのだが、病室からではヴァッシュが抱えていたのが前に見た人形だとは新庄も判別が出来なかった。


「おい。おい!」


 背中を揺さぶられたのに気がついて新庄は後ろを向いた。
 そこにいたゾロがある方向を指差す。
 そこにあるのは、西に構える居館(パレス)。新庄も一度足を踏み入れた場所だ。


「あそこの2階。羽が生えたガキが入ってったぞ。腕にあのイナミって女ぶら下げてな」
「伊波さん!?」


 新庄も慌てて居館を見る。
 すると、その2階に派手に割れている窓が1つあった。
 おそらく『羽の生えたガキ』とやらはそこから入って行ったのだろう。


「それってさっきの仮面の男じゃないの?」
「体格が全然違うからそれはねえな。それに銀色の長い髪だった」
「銀色の長い髪に……羽?」


 新庄が思考をめぐらせる。
 銀色の長髪に黒い羽。たしか少し前にそんな人物を見たような――



『――――ァァァァァァ!!』



「!?ね、ねえ……今の」
「聞き間違いじゃあねえか……」


 遠くから、か細く聞こえたその悲鳴。
 遠いから小さく聞こえるが、わずかに聞こえた声から伝わるもの。
 紛れもない、苦痛。


 そしてなにより、その声は――あまりに聞き覚えがありすぎた。


「伊波さん……!」


 新庄はいてもたってもいられずすぐに廊下から階段へ向かおうとした。
 階段を1段2段3段飛ばしてでも向かわなければ。
 そもそも爆弾を使うような相手と伊波が一緒に行ったという時点で危機感をもっと持つべきだった。
 あの居館の中で今何が行われているのか――想像もしたくない。


「待て」
「待てるわけないだろこんな時に!」


 ゾロの何を言っているかわからない言葉など聞かず新庄は走り出す。
 そんな新庄にゾロは――『刀を抜きながら』言った。


「わざわざ行く手間も――暇もないらしいぜ」
「え……?」



 そして新庄はすぐ傍の窓口から見た。
 居館から飛び出し、こちらに向かって飛んでくる黒翼の人影を。そしてそれはまっすぐに新庄たちのほうへと飛翔し、翼を広げた後




 新庄目がけ、いくつもの羽が飛来した。



 *****



 キン!キン!キン!キン!


「ったく――手間かけさすな」
「あ……」


 思わず目を瞑った新庄が連続した金属音に目を開けると――そこにはゾロの背中があった。
 刀を両手に構え、足元に散った羽から彼が防いでくれたんだと理解する。


「あらぁ? まさか2人もいるとは思わなかったわぁ。これは好都合ねぇ」


 そのゾロが見つめる先、窓の外で滞空しているのは、やはり少し前に見かけた黒翼の少女だった。
 新庄はゾロの背中から顔を出してその姿をよく確認する。


(………!!)


 その瞬間、新庄の顔が凍りついた。まるで見てはいけないものを見てしまったかのような。


 だが、人形、水銀燈は何かを持っているわけではない。
 ただ羽を広げて無手で空に滞空しているだけ。
 前と違って左腕が無くなっているがそこに気が付いたのでもない。


 ただ


「……おい。こいつは少し無理みてえだから、俺が代わりに聞いてやる」
「あら、なあにぃ?」




「その血は何だ」



 最初は水銀燈自身のものかと思った。なにしろ相手は見るからに隻腕だ。だから血があるほうが自然だとも言える。
 だが血が付着しているのは欠損した左ではなく無事な右腕や右足。
 それに血の付きかたが不自然だし、何より水銀燈の顔色がとても腕を失った人間のものとは思えない。
 更に言えば、その血は未だに滞空する水銀燈の足から流れ落ちているほどに新鮮だ。


 水銀燈の血ではない。ならば……



「あら。避けたはずだったのに付いちゃったのねぇ。後で洗わなくちゃ。
 汚いもの、あんな女の血は」



(あんな……女……!!!)



 居館に連れ込まれた伊波。
 その後1人だけ出てきた水銀燈。
 そして彼女に付着した伊波の血。
 付いている分だけでも、鼻血やかすり傷程度の出血ではない。腕にいたっては肘あたりまでが血まみれだ。



 つまり、あの居館の中には――



「お前、伊波さんに何を――!!」
「教えるわけないでしょぉ? お馬鹿さん!」



 彼女が黒翼を羽ばたかせ、そこからいくつもの羽根が放たれる。
 狙いは城にある窓と言う名の石壁にある穴。その先にいる、ゾロと新庄。



「チィッ!」


 ゾロが二本の刀を奮い、迫り来る羽根を迎撃する。
 彼もまたルフィ海賊団の猛者。羽根を見極め、素早く刀で落とし続けて別の羽根を落とす。
 新庄もこんな状況でなければ見惚れたいほどの剣技。
 彼ならいくら羽が来ても大丈夫じゃないだろうかと新庄は思った。



「グゥッ!!」
「ゾロさん!?」



 だが、その予想を裏切りゾロの肩を羽が浅く切り裂いた。
 血が飛び、新庄の顔に付着する。
 なぜ……と新庄は思い、周りを見て気づいた。


(ここは狭すぎる!)


 今いる廊下の横幅は新庄とゾロが並べばギュウギュウになるほど狭い。
 そこにゾロは新庄を背に窓側を向いて立っているのだ。
 横には動かせるが、前には動かしにくい。それで前から来る複数の羽根の迎撃はあまりに難しい。
 更に言えば、廊下に限ると天井も低く刀を上に伸ばしきることが出来ない。


 今のこの場所は剣士のゾロにとって最悪の相性だ。



「おい。お前、先に行け」
「えっ!?」
「あのイナミって女がアイツに何かされたのはわかりきってる。そうだろ?」
「っ……」


 新庄は歯を軋ませる。
 あの爆発がヴァッシュを倒す為のものだったなら、彼の救援は望めない。正体不明の仮面の男は論外。
 伊波が水銀燈によって少なくないほどの出血が起こる何かをされたなら、新庄かゾロが助けに行かなければ命が危ない。
 となれば


「だが居場所もわかってる。なら、お前が早く行け。手遅れになる前にな」
「でもそしたらゾロ――」



「逃がすわけないでしょぉ?」


 妖艶な声に2人が振り向くと、そこには新庄にとって最悪の光景があった。


 いつの間にか進入していた水銀燈が、階段へと続く通路の真ん前に立っている。
 横幅の条件は水銀燈も同じ――ただし、水銀燈はゾロよりかなり小柄だ。その分、羽根が自由に動ける範囲が広い。
 だから廊下内に上手く羽根を広げることができる。つまり相手は一方的に攻撃が可能。しかも刀の射程距離外から。


 これで水銀燈をなんとかしなければ下に降りることも出来なくなった。
 あまりに歯がゆくなった新庄は我慢できなかった。


「なんで、なんでこんなこと! あの時は見逃したくせに!」
「状況が変わったのよぉ。あいつは裏切って……で、私はあんた達の首輪が必要なの」


 あいつ、というのは伊波にメスを投げつけた仮面の男だろう。そいつが裏切った?
 ヴァッシュをなんだかんだで立ち直らせて、そして今自分たちの敵である水銀燈を裏切ったとなると、味方と考えたいが……どうも妙に思えた。


 更に気になるのは、『首輪が必要』と言う言葉。優勝狙いならば参加者が死ねばそれでいいはず。
 なのになぜ首輪を?


「なんで首輪なんて」
「ふふふ。さっき言ったばかりじゃない」


 そう言って水銀燈は翼を動かす。
 まずい、と新庄が思った瞬間――シャツの襟首が誰かに捕まれた。



「教えるわけないって。だって――死ぬ相手に教えても意味がないでしょぉ?」



 次の瞬間、新庄の視界にこちらへ放たれた羽が見えた。



 だがそれは新庄には当たらない。
 突然新庄の視界が空転し――



 青い空が見えた。



(へ……?)



 *****


「はぁ?」


 水銀燈は口をポカンと開けた。
 思わずそうしてしまうほど目の前の光景に呆れたというか何とも言えなかったからだ。





 簡単に説明するとこうなる。
 マリモ頭と長髪男が窓から飛び降りた。




 羽を放った直後、マリモ頭が長髪男の服を掴み窓枠に飛び乗った。
 そしてそのまま枠を蹴り下へと落ちて行った。
 以上。


 水銀燈はしばらく何も言えなかったが、あることに気づき我に返る。


(ちょっと待って……アイツは刀を持っていた。
 もし自棄になって落ちたんじゃなかったとしたら!)


 その予想に辿り着いた直後、外から『ガキッ!』という音が聞こえてきた。
 それは――壁に刀が突き刺さったような音。いや、おそらく『ような』ではない。


(あはははは!所詮浅知恵ねぇ!
 刀を刺してぶら下がってたらいい的じゃない。しかも相手は男2人分の体重がかかってる。
 そんなんじゃ落ちるのも時間の問題。結局は後先考えてないお馬鹿さんだったってことねぇ)


 この城にベランダは無い。
 つまりこの城壁の外は真っ平。窓枠も穴が開いているだけなので、飛び出している部分はない。
 ここで止まるには刀を突き刺し宙ぶらりになるしか手は無い。


 水銀燈は2人を嘲りながら自分も窓から外に飛び出す。
 ただし自分には翼がある。当然落ちるわけがない。
 出たらすぐに羽根を放つ。下階の窓に入る隙は与えない。無様にぶら下がっているであろう2人は蜂の巣。そんな光景が水銀燈の脳裏に浮かんでいた。


(じゃあねぇ、お馬鹿さんたち!)


 そして飛び出した水銀燈は、眼下を見下ろし愚かな2人の顔を見てやろうとする。





 その瞬間、彼女の顔が凍りついた。



(は……ぁ?)




 確かに刀は壁に突き刺さっていた。黒光りした刀が1本。



 だが――――そこには誰もぶら下がってはいなかった。



「悪いな」



 だが――――マリモ頭の剣士はそこにいた。



 ・・・・・・
「足蹴にされるのは癪だろうが…………許せ」



 刀二つを上段に構え、こちらを下から見上げている。
 その眼光は鋭い。
 その、城の外に滞空している水銀燈を『真下』から見上げる眼光が。
 足場などない『はず』の場所から見上げる眼光が。



(なによ…………なによあれぇ!!)



 おかしい。
 常軌を逸している。
 それが水銀燈の困惑。
 なぜなら――



 ・・・・・・・・・・・
(突き刺した刀の上に立つ、ですってぇ!?)



 *****



 狭い場所で刀を振るえないなら、広い場所に出ればいい。
 それがゾロの単純な答え。


 広い場所が外にしかないなら、外に出ればいい。
 それがゾロの単純な発想。


 外に足場がないなら――作ればいい。
 それがゾロの単純な方法。


 もっとも普通ならこうはいかない。
 日本刀とは西洋剣と比べれば繊細なものであり、強度は弱い。これは西洋剣が自身の重さで『叩き切る』性質なのに対し、日本刀が『切り裂く』性質なことに起因する。
 よって、刀の先を片方に固定して乗ったりすればたちまち折れてしまうだろう。


 普通の刀ならば。


 黒刀・秋水。
 象が乗っても折れないと言われるその強度。それがこのとんでもない策を実現させた。やや幅広な刀身も役に立っている。


 とはいえ流石に全体重はかけていない。刀は下の階、3階の窓枠のすぐ下に突き刺した。
 それにより、足を大きく開き片足だけは窓枠に乗せている。
 それでも体と足の80%は刀の上。しかも綱ほどではないが細いそこで少しバランスを崩せば真っ逆さまだ。



 ちなみにこんなシュールな絵面に激しく突っ込みたかった新庄は、3階の窓に乱暴に投げ込まれた後、ツッコミを抑えて伊波の下へ向かうべく階下へと向かっていた。



「俺はてめえのことなんざしらねえが……ダマってやられるつもりもねえし、何より――アイツの邪魔はさせねえ」



 なんか男が言っているのを聞いて水銀燈は再度我に返る。


(そうよぉ。少し戸惑ったけど、結局はお馬鹿な浅知恵じゃない。
 だって私は遠くから攻撃できるけど、あっちは刀。攻撃の相性の問題でしょぉ?
 刀を投げつけようがこっちは上にいるんだからそんな勢いたかが知れてるしねぇ)


「てめえの羽根は厄介だが――1個1個の威力は大したことねえ。
 海兵たちの鉄砲1発分より少し速いってところか?それが一気に撃たれた程度って考えりゃ――てめえは俺に勝てねえ」


 自信満々に何か言っているが、実際相手がやってるのは上段に構えているだけ。あそこから斬っても水銀燈に届きはしない。


「ふふふふ! 本当お馬鹿さん」


 水銀等は翼を広げ羽を放とうとする。
 嘲り笑いながら、哀れな愚者を蜂の巣にせんと。


「馬鹿はてめえだ――――大砲に鉄砲じゃ勝てねえよ」
「大砲ぉ? 出せるなら出してみなさいよぉ!!」


 ハッタリの絵空事。
 両手に刀を持っていてはデイパックから大砲とやらを取り出すことも出来ない。
 水銀燈はそう判断し――


「二刀流」


 羽を



「”七十二、」


 放った――と同時に



「煩悩凰!!”」



 大砲が――放たれた。




「っ!?」


 激突は一瞬だった。
 自らの羽根の嵐と、剣士が振りかぶって放った『何か』。
 それが正面から激突し




 呆気なく、自身の羽が舞い散った。勢いが殺された。つまり、押し負けた。
 羽が無様にも撒き散らされる。


(何よ、何なのよぉ!!)


 水銀等は混乱する。
 一体何が起こったのか。
 刀以外には何も持っていなかった。
 刀は空を斬った。
 なのに、何かが飛んでくる。



 ――飛ぶ斬撃――



(っ!!!)


 混乱しながらも水銀燈は『何か』を避けようとする。
 だが――あまりに全ては遅すぎた。




 反射的に前にかざした翼が―――『切り裂かれた』。
 そして斬撃は、水銀燈本人を切り裂く。


「―――――っ!!!」





 声にならない断末魔と共に――――黒羽根が、激しく舞い散った。





「悪いが…………そう簡単にやれる首じゃあねえんだ」



 *****



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最終更新:2012年12月05日 02:33