招かれたもの ◆mk2mfhdVi2



H-8エリア。
鬱蒼と生い茂る森の中に、一人の少女がいた。
自分の理解可能な範囲を軽く越えた衝撃的な出来事の連続に、少女はなすすべも無く呆然と立ち尽くすのみ―――ではなかった。

「やぁぁぁあぁぁってられるかあぁぁぁああぁぁあっ!!!」

少女―――園崎魅音は、独り天に向かって叫ぶ。
主催者、ギラーミンへの怒りを隠そうともせず。

「いきなりこんな変な場所に連れてこられて殺し合いをしろだあ!?何言ってんのさ!?出来るかンなこと馬ッ鹿らしい!!」

辺りに響きわたる程の大声で、園崎魅音は叫び続ける。

「子供に負けた腹いせにこんな事してどうすんのさ!常識ってもんが無いのかアンタには!?」

人一倍勝負事にはこだわる自分の事は棚に置いて、そんな事を叫ぶ。
この場所に前原圭一ら、彼女をよく知る人間がいれば、お前が言えたことかと突っ込みをいれたかもしれないがそれはさておき。

「大体何なのこの格好は!?体育の時間に連れてこられたせいで私下ブルマーじゃん!?
ブルマーで殺し合いってどんな三流コメディーなのさ!TPOを考えてよTPO!!」

微妙に恥じらいつつも、鬼の様な形相で天を睨み絶叫するブルマー少女魅音。

その後もしばらく魅音のギラーミンへの罵倒は続き、
バトルロワイアルの開始から十分を数えようとした頃、ようやく彼女の絶叫は終了した。

「………はあ、すっきりした」
最後に小さく呟き、魅音は即座に気持ちを入れ換える。
ギラーミンへの怒りをひとまず引っ込めて、彼女は生き残る為の術を思索し始めた。

「まずはコレの中身を確認するべきだよね………」
魅音は、一つ一つ慎重に、ディパックの中身を取り出していく。
ペットボトルに入れられた水、携帯食糧、時計、会場の地図に参加者の名簿、コンパスに懐中電灯に筆記用具。
そして、魅音には理解不能な、筒の様な形状をした小さな謎の支給品。
(んー、とりあえずここが何処かぐらいは確認すべきだよね)
そう思い、懐中電灯の灯りで地図を照らす。が、しかし、今魅音がいるのは取り立てて特徴も無い森の中。
地図を見たからといって自分のいるエリアが判るわけも無く、魅音は溜息を吐きつつ地図を閉じた。
「はあ……お次は名簿、と」
役に立ちそうもない地図をディパックにしまって、参加者名簿を開く。とにかく今は少しでも多くの情報が欲しかった。
が、名簿を目にした瞬間、魅音の両目は信じられない物を見たかの様に見開かれる。

「嘘……でしょ………?」

前原圭一、竜宮レナ北条沙都子、古手梨花、園崎詩音

それは、魅音にとって何よりも大切な仲間達の名。
その名前が、この殺し合いの参加者を記す名簿に記載されていた。

「こんな……ことって………」

ギラーミンの説明によれば、元の世界に帰るチャンスがあるのは最後まで生き残った一名のみ。
すなわちそれは、元の世界に帰る為には皆とも殺し合わねばならないという事。
それなりの修羅場を潜り抜けて来たとは言え、本質的には唯の少女である園崎魅音にとって、その現実はあまりにも酷だった。




がっくりと崩れ落ちた魅音を、木陰からひっそりと見つめる一人の男がいた。
鬼を模した仮面をつけたその男は、トゥスクル皇ハクオロ
彼もまた魅音と同じく、大切な仲間達と共にこのギラーミンの主催するバトルロワイアルに参加させられていた。


◆◆◆

暗い森の中、一人ハクオロは名簿を見つめていた。
記憶を失った自分を温かく受け入れてくれた二人の少女。
共に数々の苛烈な戦場を駆け抜けてきた仲間達。
その名前を名簿で確認する。

ギラーミンは言った。
このバトルロワイアルを勝ち残り、ギラーミンとの殺し合いに勝利すれば、死者すら蘇らせる力が手に入ると。
ハクオロの脳裏に、自分が救えなかった人々の顔が浮かぶ。

「優勝して、皆を生き返らせる―――か。戯言だ」

呟き、ハクオロは今も何処かで自分達を監視しているだろうギラーミンへ宣言する。

「ギラーミン、お前はそう言えば私が殺し合いに乗るとでも思ったか。
―――とある老婆がいた。彼女は少女を守る為に、自らの躯を盾として散った。しかし、彼女は毛程も後悔してはいないだろう。
トゥスクルの民は皆彼女の志を受け継いでいる。
たとえ貴様がどのような卑劣な手段を用いようと、私達は決して貴様には屈しない!
首を洗って待っていろギラーミン!我々は必ず、貴様を倒してトゥスクルへ帰る!」

宣戦布告を終え、ハクオロは動き出す。
求めるものはギラーミンを倒そうとする志を持つ仲間。

と、当てもなく歩きだしたハクオロの耳に声が届く。

(―――女の声?エルルゥ達の声では無いが……行ってみるか)

◆◆◆

そして。
魅音が殺し合いに乗っていないと判断したハクオロは、木陰から出て、
体育座りでうなだれる魅音へと静かに近付く。

「……何があった」
「…………仲間」

一呼吸置いて、魅音は続ける。

「仲間って、何よりも大事な物だと思うんだ」

その言葉でハクオロは、目の前の少女もまた、親しい仲間と共にこの殺し合いに参加させられているのだと理解する。

「そうだな、仲間は素晴らしい」

だよね、と魅音は小さく笑う。

「どうすればいいんだろうね。仲間は大切だけど、生き残るチャンスがあるのは一人だけなんだよ」
「全員で結束して、あの男を倒せばいい」
「無理だよ。所詮ただの子供の私達が、殺し合いで生き残れるハズ無い」
「………君は、仲間を信じられないのか?」

魅音は静かに首を振る。

「なら、信じるんだ。結束というものは、時に奇跡のような力を生む。
それとも、君にとっての仲間とは、そんな簡単に諦められる程度の存在なのか?」

「違う!」

ハクオロの言葉を聞いた魅音の目に、光が戻る。

「詩音もレナも梨花ちゃんも沙都子も圭ちゃんも、私の大切な仲間だ!」

「なら諦めるんじゃない!自分の手で、仲間を救ってみせろ!仲間の為に何もしない奴が、仲間を語るな!」

「言われなくてもそうするよ!」

魅音は勢いよく立ち上がり、目前に立つハクオロに怒鳴る。

「この私にあんだけ発破かけたんだ、あんたも協力してくれるんでしょ?」
「ああ、だが私の仲間探しにも協力してもらう。その代わり、君もその仲間も私が責任を持って守ろう」
「了解、待ってなみんな!おじさんと、このお面さんが一人残らず助けてあげるからね!
そしてみんなで雛見沢に帰るよ!」
「………ハクオロ、だ」



トゥスクルを統べる仮面の皇と、雛見沢の若き王の出会いは、こんな感じだった。


【H-8/一日目 深夜】
【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備】:なし
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品1~3個(未確認)
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:ギラーミンを倒す
 2:仲間を探し、殺し合いを止める

【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
【装備】:なし
【所持品】:基本支給品一式、空気ピストル@ドラえもん
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:仲間を探し、殺し合いを止める

【空気ピストル@ドラえもん】
「バン!」と叫ぶと空気の弾丸が発射される秘密道具。指にはめて使います。
威力は低く、殺傷力もありませんが、性質上銃弾は無限です。



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ラッド・ルッソは喪失感に打ちのめされる ハクオロ 我はここに在り
GAME START 園崎魅音 我はここに在り





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最終更新:2012年11月27日 00:03