護りえなかった事と救い得なかった事と ◆UcWYlNNFZY













――――そうだ、そんな事もあった。












◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「そんなものか」

放送を聴いたリヴィオが呟いた言葉はそれだけだった。
ミュウツーと分かれて、廃坑にある小屋で放送を聞いていた。
けれど、何も特別な感想を持つこともない。
頭がすげ変わっただけのことだ。
それだけで殺し合いに大きな影響はない。
盤面の更に上にいる者が変わっただけで、駒は変わることはないのだから。
取り除かれた駒の数も順当に落ちているとしかいえないだろう。
同盟者の一人が死んだ所で、リヴィオそのものはやることは変わらない。
同盟は殆ど消滅したに近いが、ミュウツーがまだ居る。
彼を意識しながら、戦えばいいだけだ。
為すべき事を為せばいい。

それ、即ち、生きる事に繋がる。

その為には、いや、リヴィオがリヴィオ・ザ・ダブルファングである為には、やるべきことがある。
人間台風、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの抹殺。
心のそこから決めた、ひとつの思い。
何もかも護ろうとして、何かも諦めていない。
あの真紅の男。
あぁ、そうだ。何もかも手放さないで、理想を語る人間。
なのに、彼は、もう既に取りこぼしているではないか。
彼自身の盟友を護れてないではないか。

「護りたいもの、大切な友達を護れてない癖に、貴方は下らない理想を言ってるのでしょうね」

ニコラス・D・ウルフウッドは、ヴァッシュにとっても唯一無二の盟友ではなかったのだろうか。
自分の使命すらも放り投げて、助けにいくぐらいの。
それなのに、彼は護りきれなかった。
ウルフウッドの話を聞く限りだと、この殺し合いでも出会えてすらなかっただろう。
何が、友達だ。
そんな人すら、護れないのに。


「あぁ……なんだ、そういうことか」

あの男が護れないから、ウルフウッドもまた護れなかったのか。
リヴィオは納得したように、冷めた言葉を口にする。
護るというのは、どんなに大変なことで、そしてどんなに身勝手で、どんなに重いことだろう。
そんなのに縛られて、あの人は逝った。
不死身の人間の理想に縛られて、護れずに逝った。
何かを切り捨てられずに、逝った。
あこがれていた男は、きっとそんな「護る」事に囚われて逝ったのか。
ヴァッシュは、あの男は、護ろうとしていた。
世界の人を、大切な仲間を、身内を、全部、全部。
護りきれてないのに。
護れていないのに。
大切な友達すら失わせて。


ギリっと、リヴィオは歯をかみ締めた。


誰かを護ること。


そんなこと、出来る訳がないだろう。
そんなの、この世界では、無理だ。
いつだって、生き残るに必死で。
いつだって、死ぬ事に怯えて。
他人を護ることが、自分の救いになるなんてこと。


絶対に、あり得てはいけない。



救いになるというなら。




なぜ、ニコラス・D・ウルフウッドは死んだ?


あんな、疲れた表情で、なぜ逝った?



不相応な生き方をして、大切な少女を護れず、何故、逝った?





「……そんなものは――――救いになりえないんですよ。ヴァッシュ・ザ・スタンピード」



だから、そんなものは、救いにならない。
誰も殺さずに護るなんてできやしない。
きっと、このように死んでしまう。
貴方がそんなことをいえるのは、死なないからだ。
絶対的な力を持ってるからだ。


そんなモノが。


今を生きるので、精一杯な人間を惑わすな。




あぁ。


だから、殺そう。



護るという言葉すら、もう聞きたくない。



この世界に、愛も平和もない。



そんなものが救いになるなら…………






ウルフウッドは死ななかったのだから。




そんなものが救いとなるというなら。





ヴァッシュ・ザ・スタンピードは、ニコラス・D・ウルフウッドを護れてないといけないだろう?




護れてないじゃないか。



救えてないじゃないか。



大切な友達すら。




「だから、俺は…………」





ふと、目に入ったものがあった。
小屋の壁に掛かっていた黒い外套と、黒い帽子だった。
今の自分の服が余りにも血まみれだった事に気付き、それを羽織る事にする。
血塗れで感付かれても面倒だから。
休憩は終わりだと、リヴィオは小屋をでて、思い走り出す。






「――貴方を殺すんです、大切な友達すら、護れなかった貴方を、ね」




護りえなかったもの。
それが、ウルフウッドを狂わし、死に至らしめたというなら。


ヴァッシュ・ザ・スタンピードはきっと、ニコラス・D・ウルフウッドを殺したのだろう。


だというなら、自分は、俺は、僕は、




「――――誰が、この力を何かを護る為につかってやるものか」




もう誰かを護る事は、絶対にないのだろう。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


あの時、護った事を思い出した。
高いところから落ちそうになった少女を護った、記憶。
誰かに頼りにされた、唯一の記憶。
けれど、それは、もう遠い昔で。




きっと、もう、それは、二度と思い出すことはないだろう。







今、偶然にも誰かを護る決意をしたリヴィオと同じ姿をした、リヴィオが居る。



けれど、それは近いようで、絶対的に遠いモノ。



ニコラス・D・ウルフウッドが救い。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードが頼りにした男。



そんなものには、何処にも無く、遠いモノで。
何もかも正反対になってしまったモノ。




そんな、モノが、そこには在った。




【H-3 南部/2日目 深夜】
【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
【状態】:ラズロ帰還、両手両足にダメージ、筋肉断裂、全身にダメージ(大)、背中のロボットアーム故障
【装備】:黒衣の外套、パ二ッシャー@トライガン・マキシマム(弾丸数35% ロケットランチャーの弾丸数1/2) ラズロのパ二ッシャー(弾丸数35% ロケットランチャーの弾丸数0/2)@トライガン・マキシマム
【道具】:支給品一式×9(食料一食、水1/2消費)、スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾20発)@BLACK LAGOON、
     M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×19、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×2@トライガン・マキシマム
     ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×2、.45口径弾×24(未装填)
     天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース、ミリィのスタンガン(残弾7発)@トライガン・マキシマム
     三代目鬼徹@ワンピース、コルト・ローマン(6/6)@トライガン・マキシマム
     投擲剣・黒鍵×4@Fate/zero、レッドのMTB@ポケットモンスターSPECIAL、コルト・ローマンの予備弾35、グロック26(弾、0/10発)@現実世界、
     謎の錠剤入りの瓶@BLACK LAGOON(残量 50%)、パ二ッシャーの予備弾丸 1回分、キュプリオトの剣@Fate/Zero
     詩音の首輪、包帯、デザートイーグル50AE(0/8)
【思考・状況】
0:このまま南下する
1:覚悟は決まった。参加者の排除。特にヴァッシュ・ザ・スタンビート。
【備考】
※原作10巻第3話「急転」終了後からの参戦です。
※ウルフウッドの死体はそのままです





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恥知らずの破壊者たち リヴィオ・ザ・ダブルファング [[]]



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最終更新:2014年08月14日 10:22