「・・・・・・なんなんだ、こいつは」
目の前の男―――いや、女か? どっちともつかない奇妙な人物と戦う僕は、さすがに動揺せずにはいられなかった。
袖の長い、薄手の紺色の服を来たこの人物は、龍義真精を使うのだ。いや、正確に言うとそのものじゃなくて、僕の「偽」と同じく力の変化が感じられない。
さっきから能力の撃ち合いになっているが、相殺ばかりでラチがあかない。
「龍精落ッ!!」
両手を構え、赤い奔流を放つ。だが、向こうも青白い奔流を撃って来た。やはり、やりづらい。
龍義鏡で跳ね返しに来ていれば、その隙をついて走り込めたんだけど。
(強い)
判断力と身体能力が尋常じゃない。目星はついていたが、多分
ホウオウグループの一人、あるいはそうだった者だろう。
僕がいた頃にもその手の研究はされていたし、奴らの技術力なら人間一人くらい作るのは容易いはずだ。
しかし、龍義真精を使うとなれば話が変わって来る。恐らくだが、ゼアが関わっているはず。
僕がいた頃にはまだ新参者だったが、研究者としての実力は高く、よくセキ部長と張り合っているのを見た。龍義真精が専門というわけじゃないが、ホウオウ以外で一番詳しいのは奴だ。
(となれば、長居は無用)
僕の力は半ば偶然に近い形で得たものだ。今目の前にいる「誰か」とは違うはず。長期戦は不利、しかも千日手。
ならば、
「龍息塵! 逃げるッ!」
煙幕を張って一目散に逃走した。独自の技だが、まさかここで役立つとは。
「あー、やれやれ・・・・・・久々に戦ったらえらいのに遭った」
スカートを靡かせ、走りに走って辿りついた公園で、僕は大きく息をついた。
と、
「あれ? セナ?」
行動と言動、心理状態がまるで一致しない友達の姿を見つけた。歩きながら首を傾げたり、大袈裟にきょろきょろしている。
ころころと表情が変わるが、感情がこもっていない。まるでよくできた人形のようだ。
顔つきといい体格と言い、見ようと思えば男にも見える。なんだかさっきの奴を思い出して、ちょっと嫌な気分になった。
(・・・・・・やめとくか)
性格上、話しかけてもやたら捻くれた受け取られ方をするのは見えている。心配だが、僕が出て行った所でどうなるわけでもあるまい。
と思って立ち去ろうとしたまさにその瞬間、
「うおっ、しまった!!」
「!?」
その声と同時、背後から何かが迫るのを感じた。咄嗟に右手を突きだして龍義鏡を張ると、何かが当たってあらぬ方向へ跳弾した。――――銃弾だ。
振り向きざまに一瞬見えたその姿は、
「汰狩!?」
同級生の汰狩 省吾だった。かなり驚いていたようだから、多分暴発だろう。なぜ実弾を撃って来たのかはさておき。
どうもこっちには気付いていないらしいな、とその場を去ろうとした瞬間、
「うっ!」
右手を銃弾がかすめた。汰狩じゃない。あいつとは別の方向から来た。そちらにいるのは――――
「・・・・・・」
明らかに「敵」を見る目でこちらを見据える、セナだった。
――――違う。そう言いたかったが、声が出なかった。やがて、セナがその場を立ち去ると同時、膝の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。
汰狩が気付いてやって来てくれたが、もう返事をすることも出来なかった。
「僕は・・・・・・お前の、『敵』か・・・・・・?」
――――なんだか、無性に
ケイイチに会いたくなった。
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最終更新:2013年06月13日 21:06