※前回
スゴロクさんが書いた作品の
シスイ側の話です。
※
想像者さんの「闇野光一」、スゴロクさんの「火波スザク」、しらにゅいさんの「
朱鷺子」をお借りしました!
「は? ストラウル跡地でまた異変?」
アキヒロさんからの電話に、思わず俺はそんな反応をしてしまう。
『ああ。それも、
ホウオウグループが動いているかもしれない。エネルギーサーチが反応しているんだ』
ホウオウグループは規格のエネルギー資源をあまり使用しない。使うのは独自の物で、アースセイバーで使用されているサーチャーはそれに反応するように出来ている。少し前には
ケイイチさんがそれを頼りに
ボルカノンを発見し、破壊に成功している。
「そうですか……分かりました、すぐに向かいます!」
携帯の電源を切り、ポケットにしまう。俺はすぐさま、人気の無い場所へと移動しようとした。
「おい、シスイ。仕事か?」
「え、スザク?」
一体何時からそこにいたのか、振り返るとスザクが立っていた。
「ああ、そんなところ。ストラウル跡地でなんか起きているらしい」
「だったら、僕も手伝おう」
「え?」
思わず俺は聞き返してしまった。スザクは怪訝そうな顔をしている。
「……なんだよ」
「だって、スザクから仕事を手伝ってくれるなんて、今まで一度も無かったから……」
確かに俺達は、今までにも何度も共闘している。けれどもそれは、成り行きであったり止む得ずであったり、何より俺が勝手にスザクを手伝った場合がほとんどだ。彼女から手伝いを申し出てくれるなんて……
「なんだ? 君は僕に手伝ってほしくないのか?」
「いやいやいや、そんなそんな! 君が来てくれるなら百人力だ! だけど……」
本当にいいのか? そう思ってしまう。俺は仕事だが、彼女は彼女で暇ではない筈だ。
「気にするな。それに、たまにはこういうのも悪くはないだろ?」
彼女にしては珍しく、悪戯っぽい笑みを浮かべて見せた。それに釣られたのか、俺の頬も緩んでしまう。
俺は嬉しかった。明確に、スザクからの信頼が感じられて。
「よし! それじゃ、行こう!」
向かったのは、廃工場だった。天井が落ちて吹き抜けになっている。
「ストラウル跡地に向かうんじゃないのか?」
「ああ。だけど、念には念を入れて……」
戦力はいくつあっても問題無い。俺は携帯電話に特定の番号を打ち込む。
すると、少しして何かが飛んでくるような音が聞こえてきた。それはやがて俺達の頭上まで近付き、やがて黒色の戦闘機が目の前に下りてきた。
「これは……」
スザクの口から、驚いたような声が漏れる。
ラーのプロトタイプΣ。実験用のデータ収集を兼ねて、任務で使用する際には俺専用機として使わせて貰っているものだ。
「遠隔操縦なんて、そんな機能があったのか?」
「いや、後で付けてもらった。一々ラーを取りにアースセイバーまで行くのもなんだし、かと言って学校の近くに隠しておくのも問題だからね」
「なるほど」
さぁ乗り込もうと思ってハッチが開けるが、俺はその瞬間かたまってしまった。なぜなら、無人の筈のラーに人が乗っていたのだ。
「光一!? 何でお前が乗ってるのさ!?」
乗っていたのは、黒いくせっ毛の髪を持つ一人の少年だった。闇野光一。所属はウスワイヤであるが、俺の仲間に違いはない。何度か共闘した事もある。
「定期検診でウスワイヤにいたんだが、アキヒロさんから呼び出しを受けてな。お前を手伝えって言われた……って、何でスザク先輩とトキコが一緒にいるんだよ」
「……はい?」
一瞬、俺は光一が一体何を言っているのか理解出来なかった。
何でスザクが一緒にいる? それは分かる、ここまで一緒に来たんだから。
けど、「何でトキコが一緒にいる?」。何で、ここにいない人間の名前が出てくるんだ。
「はーい。それはー、私が鳥さんについて来たからでーす」
「!?」
俺とスザク、二人が硬直した。恐る恐る振り返ると、そこには場違いな笑顔を見せている一人の少女の姿が。
「トキコ!? 何でお前がここにいるんだよ!?」
「え? 一角君、聞いてなかったの? 私は鳥さんに――」
「いや、そうじゃなくて……」
なんてこった。まさか、一般人にこんな場所を見られるなんて……後でバク教官にどやらされるぞ……
「大丈夫だ、シスイ」
思わず頭を抱えそうになった俺に、スザクがそう言ってきた。え? と思って顔を上げると、彼女は何だか複雑な表情を浮かべていた。
「こいつは問題無い。ここで起きた事を他言するような奴じゃない」
そうだよな? とスザクが問いかけると、トキコはうん♪ とやはり場違いな声で反応する。
「私はここで起きた事、何にも言わないよ。だって、私も誰かに言われたら困るもん」
「……だろうな」
あ、あれ? 心なしか、スザクとトキコの間で火花が散っているような……
「おい、時間がないんだ。とにかく乗って現場に行かないと」
「あ、ああ、悪い」
光一に急かされ、俺達はラーに乗った。トキコは置いていこうと思ったが、いつの間にか乗り込んでいて、スザクの隣を陣取っている。
「しゅっぱつしんこー!」
トキコの明るい声が、ラーの室内に響く。
どうしてこうなった。俺は光一と顔を合わせると、疲れたようにため息をついた。
※尚、トキコがシスイを「一角」と呼んでいるのは、シスイの能力=「麒麟」=「角を持つ獣」という理由からです。
――そんなやり取りがあったのが、少し前の事。今となっては過去の話。
「くらえ!」
光一が光を放つ。しかもただの光じゃない、熱量を持った強力な光線だ。
しかし、目の前の多脚型高機動戦車――
ダルセノンには全く効いていない。表面が焦げ付くものの、中まで届いていない。
『ヒャハハハハ! なんだ、その攻撃は!』
ダルセノンのパイロットが笑い声を上げる。向こうはダルセノンを空高く跳躍させると、ダルセノンの「腹」に当たる場所から無数のミサイルを放ってきた。
「スタービングチルドレンか!?」
俺はミサイルをかわし、光一はレーザーでミサイルを撃ち落すようにして攻撃を避ける。
『どうした、アースセイバーの諸君? お前らの実力は、そんなものか!』
自分の優位を信じて疑わないのだろう。俺達を挑発する声には、ありありと余裕が見て取れる。
それも当然か。こちらの攻撃は全く向こうに通用していないのだから。
「まさか、ケイイチさんが戦った相手と戦う事になるとはな……」
ダルセノンは、少し前にケイイチさんと戦った相手だ。その時に既に破壊され、残骸はアースセイバーに回収されている。
……迂闊だった。ダルセノン自体は兵器だ。操縦者さえいれば、何度だって現れる可能性がある。一度倒されたからと言って、対策や傾向を調べなかったのは失敗だった。
「くそ、頑丈な上に機動力、攻撃力まである……厄介な相手だ!」
光一が善戦してくれているが、それも何時まで持つか。ナイトメアアナボリズムは超能力の中でもよく分かっていないタイプの能力だ。使い過ぎでどんな反動が起きるか、分かったものではない。
「…………」
俺はダルセノンの攻撃を掻い潜りながら、奴の弱点を考えていた。
相手は違うが、「内容」はこの間の
ギルギガントと同じだ。敵は強い。だけど、完璧ではない。絶対に。
「ケイイチさんのラーに記録されていた情報を思い出せ……何か、どこかに付け入る方法がある筈だ」
今回は、圧倒的に前回と比べて状況がいい。光一が注意を引いてくれているおかげで、俺は冷静に考える事が出来る。
「ギルギガントは人型だったけど、こっちは蜘蛛みたいな形だ……」
ギルギガントは人間の形をしていた。だから、そのモチーフである人間と同じ弱点が備わっていた。だけど、ダルセノンは蜘蛛型だ。足一本壊した位では、その動きは止まらないだろう。
「無人、有人……そうか!」
俺はハッとした。何でこんな簡単な事に気付かなかったんだ!
「光一、コクピットだ! 搭乗者を狙え!」
「それをさっきから探しているんだ! 一体どこに――」
「奴の正面! 電車の操縦席があるところと同じ場所だ!」
「よし……!」
光一が身構えた。それに合わせて、彼が合わせた手の間に光が集約していく。最大出力で放つ光一のレーザーには、現在なら加粒子砲に匹敵する威力がある。そいつを叩き込めば、装甲は無事でも中身が無事でいられるわけがない。
だけど、一つだけ欠点がある。攻撃を使用する為に、少しの間攻撃のチャージ時間が必要だ。
だから――
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「天子麒麟」、最大出力! 全身にありったっけの強化効果を施し、俺はダルセノンに向かっていく。今度は、俺が囮になる番だ。
強化のおかげで、体が軽い。ダルセノンの足元を掻い潜りながら、俺は敵をかく乱する。向こうは俺を踏み潰そうとするが、それよりも早く俺は動く。
『チィ、ちょこまかと……』
苛立つような相手の声が聞こえると、ダルセノンの体が空高く舞い上がった。
『そらぁ!』
ミサイルが飛んでくると思って身構えた俺だったが、何かが肩を掠め、それが服ごと俺の皮膚を切り裂いた。一体なんだと思って見上げると、飛んで来るのはミサイルではなく光の弾丸だった。
「光子砲!? こんなものまで持っているのか!?」
まずい。ミサイルならともかく、光子砲は弾速が尋常じゃない。ケイイチさんならともかく、俺にはこの攻撃を防ぐ手立てが無い。
「ぐ――はっ!」
物陰を利用しながら、俺はひたすら逃げ回る。その逃げた後を、次から次へと光の雨が降り注ぎ、貫いていく。
『どうした、どうした!? さっきまでの威勢はどこへ行った!』
「くっそ……」
チラ、と光一の方へと目を向ける。手の中に納まった光の加減から、完全にチャージが済むまでまだ少しかかるようだ。
「まずいな……あんまり防戦一方だと、向こうが攻撃対象を光一に移しかねない……」
意を決し、俺は物陰から躍り出る。直後に、頭上から光の雨が降ってくる。何発か体を掠めたが、無視。
「ピョンピョン跳ねやがって――」
着地したダルセノンに飛びかかる。その頭上に乗り上がると、俺は思いっきり拳を振り上げた。
「じっとしてろ!」
『うぉお!?』
バァン、と言う凄まじい音が辺りに響き渡った。装甲に傷こそ付けられなかったが、俺の拳が生み出した衝撃はダルセノンを地面に叩きつけるには十分な威力があった。
「今だ、光一ぃ――!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
狙うなら、今しかない。そう思ったら、光一の準備が済んでいるかどうかなど考える暇はなく、条件反射的に叫んでいた。
光一が手をダルセノンに向ける。次の瞬間、目も眩むような光の帯が、ダルセノンに向かって伸びていった。
『うおぉぉぉぉぉぉぉ!?』
パイロットが声を上げる。ダルセノンの装甲は予想よりも硬く、最大出力のレーザーにまだ耐えている。直撃部分から火花を上げているが、コクピットはまだ壊れていない。
「まだ足りないのか!?」
一瞬勝利を確信しただけに、俺は焦りを覚えた。このままでは耐え切られる。
見れば、光一は顔中に汗を浮かべ、歯を食いしばってレーザーを放ち続けている。もはや光一は限界だ。ここで倒せなければ、俺達に勝ち目はない。
「……だったら……!」
俺は光一に近付くと、「天子麒麟」のオーラをレーザーの発射基点に当てた。何事かと思って、光一が顔を上げる。
「何をするつもりだ!?」
「俺の能力は、本来何かを強化する事に特化している……身体強化は、その副産物でしかない!」
そう。俺の能力は、俺自身を強化するのが正しい使い方じゃない。本来の用途はもっと広く、様々なモノを強化・増幅する事なのだ。
「天子麒麟のオーラを浴びたものは、一時的にその力が増幅される。だから、こいつを使って光一のレーザーを強化する!」
「わ、分かった!」
「歯ァ、食いしばれ! でかいのがくるぞ!」
俺は光一に注意を促すと、ありったけの力をレーザーに注ぎ込む。と、その瞬間、レーザーの光が一気に膨れ上がった。
「な――」
叫ぶ間も無く、俺達は反動で吹っ飛ばされた。ぐるぐる回る視界の中で一瞬、とんでもない太さにまで威力が上がったレーザーが、ダルセノンに直撃したのが見えた。
閃光、爆発。顔を上げると、破片を撒き散らしながら爆発するダルセノンが見えた。
「か、勝ったのか?」
隣で倒れている光一が、信じられないものでも見るようにダルセノンの方を見る。俺は声も出せず、頷いて肯定するしかない。
俺達二人はすっかり放心していた。ダルセノンに勝てたからではない。自分達が生み出した力の大きさに驚いて、だ。
訓練や何やらで、俺は一応自分の能力について知っていた。だが、ここまで何かを増幅したのは初めてだった。もしかしたら、必死にやったせいで俺も光一もパワーセーブがおかしくなっていたのかもしれない。
と、その時、燃え盛るダルセノンの上方ハッチが開いた。
「な……!?」
その姿を見て、俺も光一も驚きを隠せない。
六本の腕を持つ男。その姿はまるで、人の姿をした蜘蛛か、或いは天上から降りてきた阿修羅のようだ。
スキュアロウ・バルカンチ。元自衛隊という、異色の経歴を持つホウオウグループの幹部だ。
「あーあ。よくもまぁ、大事なボルカノンを壊してくれたな、ガキ共」
スキュアロウはそう言って、俺達を見下ろしてくる。その様子はまるで、燃え盛る炎なんてまったく気にしてないようだった。アイスブルーと青色の混じった髪の毛が、オレンジ色の明かりに照らされている。その様子は、完全に人間を止めてしまっていた。
「……まずい」
一体何度まずいと呟いた事か。だが、今回ばかりは本当にまずい。
スキュアロウの戦闘能力は並ではない。ケイイチさんならともかく、この男とまともにやりあって勝てる能力者がいかせのごれに何人いるか。まだ未熟で、しかもダルセノンとの戦闘で消耗した俺達では、幾らなんでも相手が悪すぎる。
「遊んでやるぜ、ガキ共」
シャリンと言う音が聞こえて、六本の腕それぞれから鋭い刃が現れた。思わず、俺と光一の表情が強張る。
やられる。そう思ったがしかし、スキュアロウは向かってこなかった。
「……チッ。撤退か。やられっぱなしは俺の主義じゃないんだがなぁ……」
ギロリ、と俺達を睨み付ける。「覚えていろよ」。その目は、そう俺達に告げていた。
「……た、助かった……」
スキュアロウがいなくなってから、ようやく俺達は一息つく事が出来た。
勝った。だが、全く勝利の実感が無い。実際、ホウオウグループの上級幹部に見逃して貰えたようなものだ。命があるだけ儲けものである。
「……帰ろうぜ、シスイ。俺もう、家に帰って横になりたい……」
「ああ。俺も同じ気分だ……」
満身創痍の体を引きずり、俺達はラーの所まで戻ってきた。スザク達の姿が無いので一応探すが、どこにもいないのでどうやら自分の足で帰ったらしい。元気なものだ。
「……あ゛」
動かそうと思って操縦桿を握るが、ある事に気付いて俺は思わず声を上げる。
「どうした?」
「……計器がいかれてる。うんともすんとも言わない……」
起動させた筈だが、ラーの画面は沈黙したままだ。駆動系を司るバイパスが完全にいかれている。
「マジか!?」
「……多分、バスターキャノンを使ったせいだ。あれの反動で、駆動系のどこかが破損したんだ……」
なんてこった。
ウスワイヤに連絡したけど、別用で今人手がないらしい。今日中にΣの回収は出来ないと言われた。しかもそれだけじゃなくて、ラーが人目に付かないよう、回収班が来るまで見張ってろ、とも。
「……不幸だ」
某ライトノベルの主人公のように、光一が頭を抱えて呟く。俺はもはや現実を受け入れ、ラーのシートに寝転がった。
あぁ、もう。今日は色んな意味で疲れた。目を閉じると、すぐさま睡魔が俺の意識を奪っていった。
今日は何だか、ろくな夢を見ない気がする。
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最終更新:2013年06月14日 22:09