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Attack on ×××

『今度、』

「?」

『今度、もしまた会えた時は――私の故郷の綺麗な風景を、キミ達に見せてあげるよ』

「「ほんとぉ?!」」

『あぁ、ほんとうだ』

「やくそくだよっ!」

『ヤクソクだ』

「「またねー!」」

『あぁ、また、いつか――』


――――・――――・――――


「…ここ、か」

ざ、っと進めていた足を一旦止める。ユウイはあの『色のない森』へ辿り着いた。
ここまで、小さな白い鳥が何度も自分達の前に現れていた。その鳥を追いかけて、ここまできた。
その鳥が夢で出会った「白い女性」なのかどうかはわからないが…夢の中で出会った女性は言っていた。『私が道案内をする』、と。

「ここから見ると、普通の森だけどな」
「ユウイ、もうやめておいた方が…」
「イイヤ…、だめだ。行かなきゃ、だめなんだ」

リオトが心配そうにユウイの肩を掴む。しかし、ユウイは直ぐに首を横に振った。
此処まで来たらもう、立ち止まらずにはいられない。
彼女の瞳には、強い決意が込められていた。

今まで見たことのないユウイの表情に、リオトは言葉を失った。何も言わず肩から手を離し、森を睨みつける。
どうか、何もないように。ユウイをこれ以上闇へ引きずりこもうとするものがないように。そう強く願って。

「凪、ユズリ、平気?」

「あぁ、問題ないね」
「平気なのだよ。さくっと終わらせてしまおう」

頼もしい仲間の言葉に、ユウイは自然と笑みを浮かべた。

――――・――――・――――

周囲を警戒しながら森の奥へと進んでいくと、何やら男二人が言い争うような声が聞こえてきた。

「アタシ達の他にも、此処に来てる人がいたのか…」
「―――!あいつッ!」
「……あ…!」

リオトのクラスメイトである「カクマ」と、榛名姉弟がついこの間遭遇した「ハーディ」という男。
その二人が、この「色のない森」の中にいた。

「カクマ、ハーディさん!」
「うわっ、なんでお前らが此処に来てんだよ!」
「君達…!どうして、こんな所に!」

カクマにはそっくりそのまま言葉を返してやりたい。
そして近付いてきたハーディは、明らかに怒ったような表情をしていた。

「ここが、どれだけ危険な場所かわかっているのかい?!」
「ごめん、でも…アタシ、どうしても此処に来なきゃいけない気がして…。
「ヤハト」って人を助けて欲しいって、白い女の人に言われて…。」

途端。ハーディの表情が変わった。まるで信じられないもの――お化けかなにかを見ているかのような表情だ。
その表情を隠すように、帽子を深く被り直した。

「…勝手に、すればいい。何があっても、私は知らないよ」
「いいよ。アタシが勝手に来てるんだもん。用が終わったらすぐ帰るからさ」

ユウイは余裕たっぷりな表情で笑ったあと、じとっとした瞳でカクマを見て、

「カクマ、あんた、帰らないの」
「あー、もうちょっと奥の方見て何もねーようなら帰るよ」
「そ、じゃあ一緒に行こう。一人だとなんかあった時危ないし」
「仕方ねーなぁ、少しだけだからな?」

――カクマと、ハーディの二人が仲間に加わった。ハーディの方は、何か難しい顔をしていたが…。
とにかく、なんだっていい、この森の奥に行けば「ヤハト」とあの女性を救う何かがあるはずなんだ。
アタシにしかできないこと。…必ず、成し遂げてみせる。



――――・――――・――――

歩いていると、段々と景色が変わってきた。「色のない森」その名の通り、木々の色が無くなっている。色を失う途中の樹もあった。
幹が緑であったり灰色であったり、なんとも、気味が悪い。七人は更に警戒の色を強める。

そしてさらに歩くこと数分。もう周りの木々は完全に色を失っていた。地面も、草もだ。まるで灰色一色の道を歩いているかのよう。
目の前に、明らかに他とは違う大樹が見えた。もちろん、それも色を失っている。その樹を囲うように存在している泉も同じだ。色がない。
大樹の周りには木は殆どなく、広く丸いスペースの真ん中に大樹が存在している。まるでその大樹が祀られているかのようであった。



そして、



「ユウイ?」
「み、ゆ…?」


―――ユウイのよく知る「少女」が、そこにはいた。


「あっは!やっぱりユウイだー!久しぶり。元気だった?」
「………あ」

ユウイが話し出す前に、リオトが走り出した。
見たことのない顔で、目の前に現れた少女に向かって、まるでそのまま体全体で突進でもするかのように。
隠し持っていたカッターの刃を手馴れた手つきで出し、素早く己の腕に傷を付ける。
ユウイは思わず眼を背ける。その光景を見ていた凪、カクマらは全員目を見開き驚いていた。
血が辺りに飛び散るが、それらは直ぐに鋭い針の形に変化し少女を襲う。

「うぉおおおおおおおおおおおおおッ――!!!!」

かと、思われた。が、

「ッ!?」

つい先ほど自分が付けた傷を、自分の血を固めて塞ぎながらリオトは急ブレーキをかけ、「少女」を見た。

おかしい。リオトは間違いなく少女に向かって、血の針の攻撃を仕掛けたはずだ。
見間違いじゃなければ、その針は少女の心臓目掛けて飛んでいったはずだ。


だが―――少女は怪我一つしていなかった。


信じがたい話ではあるが、「針は少女をすり抜けた」と、考える他なかった。

「ふふ、びっくりしてる?びっくりしてるよね?」

光のない目で、にたぁ、と気味の悪い笑みを浮かべる少女。
言葉を失っている全員に言い聞かせるように、両手を広げて言った。

「どうして今の攻撃が私にあたらなかったんだろう、って!」

「ミユ…お前、死んだんじゃなかったのか」
「えへへ、久しぶり、凪。元気だった?いつ振りだろ?」
「なんで、どうして、ミユ、が…」


ユウイは恐怖で声が震えた。


この、「ミユ」という少女は、




自分が殺したはずの――殺されたはずの、「親友」――




「まったく、リオト君も相変わらずだね、いつでもユウイのことばかり」
「黙れ…」
「あぁ、こわい、こわいわぁ!」

両手を頬に添えながら、わざとらしく怯えたフリをするミユ。
細眼でユウイの表情を伺い、再び笑みを浮かべた。

「…ふふ、じゃあそろそろ私がなぜここにいるのか、それを話しましょうか」
「…み、ゆ」
「ぶっちゃけた話、私もう死んでるのよ」
「え?」

あまりに突飛な話に、ユウイは短く声を漏らした。
親友は、死んでいる?……あ…いや、そうだ、それは当たり前だ。自分が殺してしまったのだから。
殺したのに、存在している。喋っている。笑っている。…どうして?

「ゆう、れい…?」
「ぴんぽーん!だいせーかいっ」

わぁい!とミユは両手をあげて喜んだ。

「幽霊なんて、そんな馬鹿な話があるか!」

姉の怯える姿を見て、いてもたってもいられなくなったユズリが怒鳴る。
リオトはただただ、殺意のこもった瞳でミユを睨みつけていた。

「不思議よね、ここって。前々から変な土地とは思っていたけど、まさか幽霊まで生み出せちゃうなんて…、ね」
「…お前の目的は一体何だ」

今までだんまりを決め込んでいたハーディがミユに話しかけた。聞いたことのない、とても、「怒り」の混じる声で。

「よくぞ聞いて下さいました!私が幽霊になってまでしたかったこと…それは」


榛名 有依をもう一度殺すこと!


その言葉を合図に、リオトがカッターで腕を切りつけ、
凪が「氷の悪夢」で氷の剣を作り出し、ユズリが「鋏の悪夢」で巨大鋏を生み出した。

「だけど、そっちは「幽霊」だろ?姉貴に攻撃できる手段が…そっちにあるのか?!」
「やだなぁ、弟君ったら。ユウイを殺すのは私じゃないわよ」

森が、ざわめきはじめる。

「私はね、ユウイがこの世からいなくなればそれでいいの!死ねば!死ねばそれでいいのよ!!」
「な――」

ミユの叫びと同時に、数匹の大きな猫が森の奥から飛び出した。その猫には眼がなく、全身が黒。例えるなら影で作られたような――
突然の出来事に、リオトは反応が遅れ、猫の鋭い牙が腕に食い込む。

「が、ァあッ!?」
「リオ兄っ!」

リオトが悲鳴を上げるが、さすがは戦闘慣れしてるだけあるのか、即座に噛まれた部分から流れ出た血を変形させ、鋭い棘を作り上げる。
それは頭を容易く貫き、猫の体から力が抜けた。その瞬間、猫は細かい光の粒となって消滅する。

「……く、そ…油断した」

「ユウイ以外はアレに任せるとして…さ、ユウイはこっち!」
「……え?」

恐怖の連続で頭が回っていなかったユウイ。自分の立っている地面から棘の先端のようなものが突き出していた。

「え、何、こ―――」

肉を裂くような音と共に、幾つもの棘が空へ向かって伸びた。
きっと「ミユ」はユウイとリオト達を隔てる壁、一対一となれるスペースを作りたかったのだろう。だが、

「は、はーでぃ、さん…?」
「ぼーっとするな!また死にたいのか!?」

肩に傷を負ったハーディが、いた。
おそらく棘が伸びる直前に、ハーディはユウイを突き飛ばしたのだろう。もう少し飛び出すのが遅れでもしていたら自分が串刺しになっていただろうに。

「あーらら、邪魔なのも入っちゃったな…ま、いいか。一緒に殺せば」
「これ以上…私の森を汚すな…!」
「みんな…」

…まさか、こんなことになるだなんて。
自分が殺した親友が、「幽霊」という形で現れるだなんて、誰が予想しただろうか。
先ほどリオト達を襲った大型の猫が数匹現れた。涎を垂らしながら、ゆっくりと近付いてくる。



―――アタシは、また死ぬのかな。



―――いやだ、しにたくない。…もう死にたくない!




逃げるか。

戦うか。

逃げるか。

戦うか。

逃げるか。

戦うか。

逃げるか。



(―――戦う!!)


立ち上がったユウイの瞳が、灰色に輝いた。
同時に、生み出された猫が駆け出す。

「う…ぉおおおおおおおおおおおおおおおおお――ッッッ!!」


―――・―――・―――


「く…!」

噛まれたところから流れ出る血を止めながら、リオトは他三人の表情を見た。
三人は確実に「恐怖」を植えつけられていた。あのカクマでさえ、笑顔ではあるが冷や汗をかいているほどだ。

(なんとかして…ここを生き延びねぇと…!)

「おい、三人とも、オレの言うことを聞け…!」
「真っ先に敵さんにやられたくせに、何を偉そうに…!」
「カクマうるさい!とにかくだ、この中で一番戦闘慣れしているのはオレだ。
いいか?もう一度言う。死にたくなきゃ…オレの言うことを聞け!オレの傍に来い!」

四人は一箇所に集まると、それぞれ背中合わせになり、武器を構えた。


「おそらく、こいつらはユウイとミユの決着が付くまで消えない。
それまで、とにかく奴らを殺し…だと言葉が悪ぃな。消しまくれ。」


「やっと…俺の練習の成果が発揮できるってわけ、だな。凪、そっちは大丈夫か?」


「……あぁ、正直、とても恐ろしいが…やるしかない」


「いいねぇ、思う存分暴れられる。お前ら、俺の脚引っ張んじゃねーぞ?」



「よし、―――行け!!」



Attack on ×××


――――・――――・――――


『……ヤハト』

「なんだ?」

『…キレイね、ここ…』

「……私の、好きな場所だ」

『…………ずっと』

「…?」

『…ずっと、こうしていられたら、いいね』

「…あぁ」

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最終更新:2013年06月25日 00:13