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守人達の願い

「で…何故連れてきた。ここに」

いつもと変わらぬ微笑を浮かべるヤマネを、思い切り睨みつける佳乃。
当人はというと、笑みを崩すどころか楽しそうにこう言った。

「いやー、この二人の望みに応えるには、こうした方がいいかなってね」
「お前、本当に守人としての責任感あるのか?」
「あるけど?」
「ここは守人の住居区だって分かってるのか?」
「うん」
「……もういい。それで、そこの二人の望みとやらは、一体何ですか」

溜め息交じりに聞く佳乃。

「あのね、たなばたさまへのお願いごと集めてるの」
「七夕、ですか?」
「うん。いっぱい、いっぱい集めるの」
「そうでしたか。それなら、他の皆にも言いましょうか」
「ありがとう、くろかみのおねえさん」
「いえ。それと、私の名前は佳乃です」
「分かった。佳乃のお願いごとはなに?」
「え」

いきなり聞かれて一瞬固まってしまう。
渡された短冊とペンを手に、佳乃は「う~ん」と頭を抱えた。

「……やっぱり、これですね」

『皆の人生が幸と平和に恵まれますように』

「ありがとう」
「ありがとう」
「ヤマネ、貴方も書きなさい。連れてきたのは貴方なんだから」
「何その理屈。というかもう書いたよ」
「あら、そうでしたか。因みになんと?」
「んー…ひ・み・つ、ってね」

『いかせのごれの人間の成長』

「七夕ですか。そういえば忘れてました」
「私もですよー。あ、お饅頭どうぞ!」
「ありがとう、猫のおねえさん」
「おねえさんも、お願いごと書いて」
「いいよー! 何書こうかなあ」
「おねえさんも、書くの」
「はいはい。あ、後、僕はお兄さんですよ」
「そうなの?」
「女の人みたい」
「よく言われますよ」
「昔から可愛がられてましたしね! 若君!」
「そ、それは言わないで下さいよ!」

と、笑いながら斎はペンを走らせた。

『姉君の組織嫌いで暴走しませんように』
『守人、ひいては水無瀬家の無病息災』

水無瀬家から離れた二人は、しばらく歩くと、花が咲き乱れた庭に出た。

「お花、いっぱいだね」
「いっぱい」

花の海を歩いていると、桜色の髪をした女性が二人に気付いた。

「あら、どちら様ですか~?」
「アオは、アオギリなの」
コオリはコオリよ」
「アオギリちゃんに、コオリちゃんですね~。二人だけでここに?」
『うん』
「どうしたんだい、ウララ」

ウララ、と呼ばれた女性の後ろに、着物の左側がはだけている女性が。

「おばさん、だれ?」
「ん? アタイはハルだよ。コイツの姉貴さ」
「あねき?」
「お姉さんのことですよ~」
「そうなんだ」
「そうですよ~」
「ってか、呑気に話してる場合なのかい? 迷子なんじゃあ…」
「ちがうよ」
「違う?」

アオギリの言葉に、首をひねるハル。

「お願いごと、集めてるの」
「たなばたさまへの、お願いごと」
「あぁ~。なるほどな」
「彦星様と織姫様のお話ですよね~?」
「そうだな。で、アタイ達に願い事書いてほしいって訳かい?」
「うん。書いてほしいの」
「小さいお姉さんも、書いて」
「分かりました~」

『生徒の皆と仲良く過ごせますように』
『美味しい抹茶スイーツ食べたい』


ハルとウララの姉妹に別れを告げた二人が、次に向かったのは――。

「お兄さん。もふもふのお兄さん」
「起きて」
「う…ん…」

二人に揺すられ、眠気が抜けない眼をこする少年。
少しして、ようやく自分の目の前に、二人の少女がいたのに気付く。

「…誰?」
「アオは、アオギリ」
「コオリはコオリなのよ」
「ふーん。…何か、用?」
「お願いごと書いてほしいの」
「願い事…? ……あ、そういう事か。ちょっと紙取ってくる」

立ち上がろうとする直前、アオギリは短冊の紙を突き出した。

「たんざく、あるよ」
「…準備良いな」
「たくさん、集めるの」
「そうか。じゃあ、他の人達にも、書いてもらった?」
「うん」
「…………ん。出来た」
「ありがとう、もふもふのおにいさん」
「もふもふ?」
「おにいさん、髪がもふもふしてるから」
「あー…まあ、な。……狼だし」
「おおかみ?」
「あ、いや、何でもない」
『?』

『妹と仲直りしたい』

「次はどこにいくの? おねえちゃん」
「そうだね」

きょろきょろと、辺りを見渡す。
と。

「ありりー? 何やってるのー?」

白い帽子を被った少女が声をかけた。
アオギリとコオリの中間くらいの背丈だ。

「あのね、アオ達、たなばたさまへのお願いごと、集めてるの」
「いっぱい集めて、かざるのよ」
「そっかー! じゃあ、あたいもてつだってあげるよー」
「ありがとう、帽子のおねえちゃん」
「むふふんー、まかせろー! あ、あたいの名前は京子 八代だよー。よろしくー」
「やつしろ? へんななまえ」
「でしょー? でもあたいはきらいじゃないよー」

『立っぱな頭りょうになれますように』

「お願い?」
「たなばたさまへのお願いごと」
「もってかえって、ささにかざるの」
「蛍、たなばたって何?」
「…お前、マジで聞いてる?」
「うん。知らない」
「…はあ。あのな、七夕ってのは、7月7日、紙に願い事書いて、笹の葉につけるやつのこと! 分かったか?」
「うん、分かった」
「本当か~? で、あたしらに書いてほしいのね?」
「そうなの」
「っつっても、何書きゃあいいのか…」
「水色のお兄さんも」
「いいよー。…蛍、大好き、と」
「お前本当に聞いてたのかよつか口に出しながら書くなぁああああああ!!!!!」

ハルキと幸せにいられますように』
『蛍とずっと一緒にいられますように(消した痕がある)』


「たんぽぽのおねえさん、お願いごと書いt」
「断る」
「どうして?」
「どうしても何も、修行の邪魔だよ。とっとと立ち去れ」
「しゅぎょうって何?」
「武術の練習だ。これで満足したろ。早くどっか行きなよ」
「ぶじゅつって何?」
「…戦いの為の技術」
「ぎじゅつって何?」
「……分かったよ書けばいいんだろ書けば!!」
「ありがとう、たんぽぽのおねえさん」

『強くなりたい』

『今のお前、見ていて中々面白かったぞ』
「黙れ虚空」

「願い事か」
「バンダナのおにいさん、書いて」
「おう。……ほい」
「ありがとう」

『おじさんとおばさん達が戦いで物壊しませんように』

「こっちの身にもなってほしい」

「おや、アオギリじゃないか」
「あ、ウミネコ」

歩いていると、海猫と、彼女の車椅子を押している少年、茶髪の少女に出会った。

「んあ? …誰だよそいつら」
「以前、学校で会ったんだ。そっちは…友達?」
「うん。コオリっていうの」
「コオリ、か。オレはヒロヤ。で、コイツは暴れん坊のアンジェラ…いでぇっ!」
「暴れん坊なのはお前だろ」
「はいはい喧嘩しない。子供の前でみっともない…」
『うぐっ』

海猫の言葉にダメージを受けたらしい二人。

「それで、どうしたの?」
「あのね、たなばたさまのお願いごと集めてるの」
「いっぱい、いっぱい集めてるの」
「だから、ウミネコのお願いごとほしいの」
「あ、あたしの? 困ったな~」
「てっぽうのおにいさんと、ちゃいろのかみのおねえさんも」
「オレらも?」
「……あっ、浮かんだ!」
「…どうせロクでもねーだろ」
「何よ。『ヒロヤが犬死にしますように』って考えただけよ」
「撤回しろ爆ぜろ」

『一番弟子がもっと強くなれますように』
『武器増やしたい』
『ヒロヤの悪い癖が治りますように』

「…出来た」
「はえーな、お前」
小烏丸が遅いだけ…」
「うるせー。もう少しで書くって」
「むう……どれどれ…」
「だあああ何で覗く?!」

『綺麗な花を見つけたい』
『今年は雪が降ってほしい』

「う~んう~ん…」
「凄い悩んでますねー袖子さん」
『どーせあの小僧絡みだろ』
「ちっ違うし!!!! 変な事言わないでよ!!」
「袖子さーん、顔赤いですよー。大丈夫ですかー?」
「あんたも余計な事言うな!!!」

『これから寒くなりませんように』
フミヤとずっと親友でいられますように』

「いっぱい集まったね」
「ね」


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最終更新:2013年07月07日 15:16