―――我はこの世界の住人にして主…我が望むは強き者なり―――

 ―――汝は影の背なを見つめるだけの弱き者か?それとも影を越えようとする強き者か?―――

 ―――さぁ…汝の強さを我に見せてみよ!!―――


                 リリカルプロファイル
                  第二十三話 一層


 聖王教会の地下へと向かった一同は、其処に存在していた魔法陣を通り、
 神の住まう場所セラフィックゲートに辿り着くと、周囲の光景にそれぞれは唖然とした表情を表していた。
 何故なら一同が転送された場所は屋外で、空は夜空のように暗く星々がちらつき、一同が立つ円上の床には魔法陣が描かれ光を放ち
 灯りの代わりとなっており、更に周囲を槍のような柵に覆っていたからである。

 そんな神秘的な場所を目にした一同は、神は必ず此処に存在していると考え気を引き締めると、
 奥に一カ所柵がないところを発見、赴いてみると奥には長く緩やかな下り階段が存在してた。
 恐らく此処から神のいる場所へと行けるのだろうと判断すると、一同は意を決し階段を下りていく。

 階段は一本道でゆっくりと慎重に降りていくと、奥に何かが掲げられいるのを発見
 そして近くまで降りていくと、それは「Welcome!!」と書かれた旗が掲げられているアーチであった。

 「なっ…なんやこれ?」
 「さっ……さぁ?」

 一同はその旗に神の趣味か?!と呆然とした表情を表すも、意を決しアーチをくぐり抜ける。
 すると先には広場があり中央には黒髪のツインテールの女性が出迎えていた。

 「ようこそ!セラフィックゲートへ!私、主の命により道案内を務めさせてもらいます
 ディルナ・ハミルトンと申します!気楽にディルナちゃんって呼んでください!」

 そう言って笑顔で深々とお辞儀をするディルナ、しかし一同は口をあんぐりと開け唖然としたまま動けないでいた。
 それもそのハズ、今まで描いていた神秘的なイメージを崩され、かなりノリが軽い女性が出迎えの挨拶されたからである。
 本当に此処は神の住まう場所なのか?実は本当はただの遊園地かなにかなのではないだろうか?
 そう疑問に感じたなのははディルナに質問を投げ掛ける。

 「あの~?ディルナちゃん?」
 「ハイ!何でしょう?」
 「ホントに此処、セラフィックゲートなの?」
 「モチロンです!!」

 なのはの問いに威勢良く答えるディルナ、そしてディルナはセラフィックゲートの説明を始める。
 セラフィックゲートは全部で五層で構成され、それぞれの層には試練が用意がされてあり、試練を突破する事に次の層へと向かうことが出来、
 そして最後の五層にはディトナの主である流浪の双神が住んでおり、其処までの道案内はディルナが担うと説明を終える。
 ディルナの説明を聞き確かに本に書かれた内容と同じであると確認するが、未だ一同の目は疑いの色がにじみ出ていた。。
 しかしそれを知って知らずかディトナは何処からともなく旗を取り出すと、
 一同を先導し始め、広場の奥に存在する第一層へと続くゲートをくぐるのであった。

 ゲートをくぐった先には一層への下り階段が一本並び、順調に下っていくと第一層に辿り着く。
 其処は先程とは異なり、青い空間に星々が浮かび、巨大な塔のような建物が幾つも並んでおり、
 その中にはゆっくりと時間を刻む時計塔の姿も見受けられ、
 そして一同が立つ床の中心には魔法陣が描かれおり奥には閉まった扉が存在していた。
 ディトナの話では此処で試練が始まるという、すると突然スバルとティアナが白い光が包まれ始める。
 どうやら最初の試練の対象がこの二人のようである。

 「スバル、ティアナ、頑張って!」
 『ハイッ!!』

 なのはの応援に気合いを込めて返事すると、二人はどこか別の場所に転送されるのであった。


 スバルは水色の空間で円形の広場の中央に転送され、ポツンと立っていると周りを見渡すとティアナの姿が見受けられなかった。
 どうやら自分はティアナとは別の場所に転送されたと考えといると、
 奥へ続く道を発見、先に進むと奥には更に巨大な床が広がっていた。
 その広場の中心には背中を向け佇んでいる人影がある。
 その人影は女性で紫かかった髪にマッハキャリバーともブリッツキャリバーともとれるローラーブーツを履いており
 両手には薄紫と紫色で構成されたリボルバーナックルが付けられていた。
 そして女性はスバルの気配に気が付き振り向くと、スバルは唖然とした表情を表していた。

 「か……母さん……?」
 「久し振りね、こんなに大きくなって」

 指を震わせながらクイントを指すスバル、それもそのハズ、クイントは既にこの世にいないハズである。
 するとクイントは説明をし始める、此処セラフィックゲートはあらゆる次元、時間、事象を超越した世界、
 死んだ人間の魂を呼び寄せるなど神にとっては稚気に等しいと語る。

 「それじゃあ…最初の試練って」
 「そう、私と戦って勝つ事よ」

 そう言うと構え始めるクイント、だがスバルは折角会えた母と戦う事に動揺を隠せずにいると、クイントが「しっかりしなさい!」と一括する。
 その声に目が覚めたスバルは気を取り直し同じく構え始め対峙するのであった。

 一方でティアナはスバルとはまた別のオレンジ色の空間に転送され、スバルと同じく下り階段を下りていき広場へと赴く。
 その広場の中央にはオレンジの髪の青年が佇んでおり、その見覚えのある青年の姿に動揺を隠せないティアナ。

 「兄さん………?!」
 「久し振りだな、ティアナ」

 其処にいたのはティーダ・ランスター、ティアナの実の兄である、彼もまた神に呼び出され此処に赴いていたのだ。
 そして呼び出された理由とは此処でティアナと対峙するためでもあると話す。

 「ティアナがどれだけ強くなったか…見せてもらうぞ!」
 「……分かりました、兄さん」

 ティーダの言葉にティアナは頷くとクロスミラージュをダブルモードにして構え、ティーダもまたD・Eをダブルモードにして構えるのであった。
 先ずはティアナが先手を取り、クロスミラージュが火を噴き複数の魔力弾がティーダに襲いかかる。
 だがティーダは丁寧に魔力弾を相殺しつつ更に魔力弾を五発撃ち抜く。
 するとティアナは左に移動しつつ魔力弾を回避すると、カートリッジを一発ずつ消費、
 速度を高めた魔力弾が両銃から雨のように撃ち鳴らされる。
 しかしティーダは上空へと飛びティアナの周りを旋回しながら魔力弾を回避しつつ、
 左のデバイスから薬莢が一つ排出されると魔力弾を二発撃ち出す。
 撃ち出された魔力弾はティアナの魔力弾と接触すると音を立てて大爆発、魔力の残滓が二人の間に舞い散り分け隔てた。

 「反応弾?!」

 反応弾、接触した対象の周囲を巻き込み爆発、複数の対象を殲滅させる特性を持つ反応炸裂弾を応用した魔力弾である。
 尤もティーダの反応弾の爆発は残滓を増やし、煙幕としての役割が殆どなのであるが…

 話は戻し、ティアナの前方には未だ残滓が未だ煙のように舞う中、
 煙から突き破るようにクロスファイアが螺旋を描きティアナに迫ってきた。
 するとティアナはカートリッジを消費させてクロスファイアを展開、更に回転させて撃ち放つ。
 するとティアナのクロスファイアもまた螺旋を描き、迫って来ていたクロスファイアを見事相殺させ周囲の残滓を吹き飛ばすと、
 其処にはデバイスをティアナに向け構えるティーダの姿を現した。
 それを見たティアナはデバイスを向けようとしたが、ティーダの様子に違和感を感じる。

 「もしかして…フェイクシルエット!?」
 「…よく見抜けたな、ティアナ!」

 その声に振り向くと、其処にはオプティックハイドを解除しティアナを見上げる形でしゃがみ込み見つめるティーダの姿があった。
 ティーダはクロスファイアを打ち抜いた後フェイクシルエットを用いて自身の幻影を作り出し、
 更に自分自身をオプティックハイドで包み込む事で気配を消し、ティアナの後ろを取ったのだ。

 そしてティーダは右のデバイスをダガーモードに切り替えると、
 デバイスの銃口に魔力刃が展開されティアナの頭部目掛け突き上げる。
 するとクロスミラージュが右のデバイスをダガーモードに自動的に切り替え
 ティーダの一撃をデバイスのグリップエンドに伸びる魔力刃で受け止めた。

 「ほう…面白いダガーモードだな」
 「まぁね」
 「だが、こっちはどうする?」

 そう言うとティーダは間髪入れず左のデバイスを向け魔力弾を撃ち出す。
 しかしティアナは撃ち出された魔力弾に対しとっさに首を左に傾け、こめかみを掠めつつギリギリで回避する。
 それを見たティーダは驚いた表情を見せると、ティアナは勝機と言わんばかりにティーダに左のデバイスの銃口を向ける、
 しかしティーダはすぐに冷静になるとティアナの攻撃から回避する為、後方へと飛ぶが
 ティアナはティーダを追いかけるように速度を高めた魔力弾を連射する。
 すると、ティーダはカートリッジを一発ずつ消費すると反応弾を三発撃ち抜き、
 ティアナの魔力弾を相殺、辺りはまたもや魔力の残滓が土煙のように舞い散り再び二人を分け隔てると、
 煙から飛び出すように三体のティアナが姿を現した。
 三体のティアナは左右と正面に展開すると手にはダガーモードにしたクロスミラージュが握られており、
 ティーダは一つ一つ見ると口の端がゆっくりとつり上がる。

 「全部、フェイクシルエットだな!」

 ティーダは幻影のティアナを無視すると、正面の煙が徐々に晴れていくと、
 中から本物のティアナがファントムブレイザーを撃つ体勢をとっていた。
 するとティーダもまたファントムブレイザーを撃つ体勢をとると、カートリッジを二発消費する。

 『ファントム……ブレイザァァァァ!!』

 両者は声をそろえファントムブレイザーを撃ち抜くと中央で激突、辺りには激しい衝撃が走り残っていた残滓を吹き飛ばし二人の体を揺らす。
 そしてファントムブレイザーを撃ち抜いた二人は空になったカートリッジバレルを排出すると、次の作戦を考えるのであった。

 一方でスバルはクイントの攻撃に苦戦を強いられていた。
 クイントはシューティングアーツの創始者にしてリボルバーナックルの本当の所持者、
 その攻撃はギンガとスバルを足したような攻撃を行っていた。

 クイントはカートリッジを一つずつ消費すると真っ直ぐスバルの懐へ突っ込む、
 そして左のナックルバンカーを打ち込むがスバルはプロテクションにて攻撃を防ぐ。
 しかしクイントのナックルバンカーはスバルのプロテクションを打ち砕き、間髪入れず右のリボルバーシュートを撃ち出す。

 スバルは衝撃波に巻き込まれ吹き飛ぶとクイントは追い打ちとばかりに追いかける。
 一方でスバルは衝撃波を自力で抜け出すと追いかけてきたクイントの一撃に合わせるようにカウンターのナックルダスターを顔面に振り抜く。
 しかしスバルのカウンターを読んでいたクイントはスバルの一撃を左に髪一つで交わし、
 左拳を振り下ろし、間髪入れず右拳を振り上げるストームトゥースを打ち抜きスバルの顔を跳ね上げると、

 今度はウィングロードを伸ばしつつ右足でスバルのコメカミ辺りを蹴り抜く。
 スバルはクイントの蹴りをモロに撃け錐揉みしながら吹き飛ぶとクイントが伸ばしたウィングロードに激突する。
 そしてゆっくり立ち上がると目の前にはウィングロードで加速したクイントがまるで乗り物で轢くかのように拳を腹部に打ち抜く。
 ウィングロードは何も足場のみの効果ではない、その上を滑ることで効率良く攻撃を与えることも出来るのだ。

 一方で、なす統べなくクイントの拳を受けたスバルは吹き飛ばされ床に激突しながら転がっていく。
 しかしスバルはゆっくり起きあがりギアセカンドを起動させると、マッハキャリバーが火を噴き一気に加速、クイントに突撃する。
 するとクイントはカートリッジを一発ずつ消費すると、衝撃波がリボルバーナックルを包み込む。
 そしてボクサーの構えをとると左のジャブから小さく、しかし硬度の高いリボルバーシュートが幾つも撃ち出されスバルに襲い掛かる。

 これがもう一つのリボルバーシュートの撃ち方である、この撃ち方は連続的に撃ち出す事が出来る為、相手を牽制するのに適しているのだ。
 しかしスバルはカートリッジを消費すると全身を魔力で強化し、攻撃を受けながらもクイントに迫る、
 そして飛び掛かるように右のリボルバーキャノンを打ち抜くと、クイントもまた右のリボルバーキャノンで応戦、
 二人の一撃は顔に直撃し、歪ませると後から来る衝撃波にて吹き飛ばされる。
 二人は互いの一撃により床を砕きながら転がるが、ゆっくり起きあがり顔を上げると
 口の端から血が垂れており、二人は血を左腕で拭い去る。

 「やるわねスバル…でもあなたの強さはこの程度なの?」
 「母さん……」
 「この程度じゃギンガを助け出す事は出来ないわよ!」

 そんなクイントの言葉がスバルの胸に深く突き刺さる。
 確かに戦況はクイントが有利、だからといって今の自分は戦闘機人の能力を自力で制御することが出来ない。
 だからといって負けるわけにはいかない、ここで自分が負ければ試練をクリアすることが出来ない。
 ならば今出来る最大の能力で答えよう…そしてスバルは真剣な面もちに変わるとギアエクセリオンを起動、
 前傾姿勢をとるとクイントもまた同じ構えを始めカートリッジをそれぞれ二発ずつ消費する。

 辺りは沈黙に包まれ二人は微動だにせず時間だけが過ぎていく。
 すると双方の足下からウィングロードが伸び、大きく弧を描きつつ部屋の中央辺りで直線しぶつかると一斉に動き出す。

 二人はそれぞれのウィングロードを通り加速していくと直線にてスバルはA.C.Sドライバーを用いて更に加速、
 クイントもまた同じく直線にてカートリッジを二発消費すると魔力を足に集中させ同じく加速させる。
 そして互いのウィングロードがぶつかり合う中心まで向かうと一撃を繰り出しつつシールドで互いの一撃を防いでいた。

 互いの一撃とシールドが鍔迫り合い火花が散る中、先にシールドを砕いたのはクイントであった。
 クイントの右の一撃はスバルの頭部を狙うが寸でのところで回避、右のコメカミを掠めトレードマークであるリボンを破るだけに至った。
 ならばと左のナックルバンカーを打ち抜こうと拳を構えるが、
 今度はスバルがクイントのシールドを砕き、スバルの拳は腹部に深くめり込む。
 スバルの一撃にクイントは動きを止めるとスバルは勝機とばかりに左拳を腹部に突き出す。
 左拳には環状の魔法陣が張り巡らせており、手には魔力球が光を放っていた。

 「一撃必倒!!ディバィィィィンバスタァァァァ!!!」

 次の瞬間、右拳を突き出すと水色の魔力砲がクイントを飲み込んでいった。
 そしてスバルは左膝をつき肩で息を切らしながら先を見据えると、其処にはクイントが仰向けの状態で力なく倒れていた。

 「かっ………勝ったの?」

 スバルは自分の勝利に実感がわかずにいるも母の元へ向かおうと足を運んだ瞬間、
 辺りは闇に包まれスバルもまた闇に飲み込まれるのであった。


 一方ティアナ達はカートリッジバレルを排出したのち、ゆっくりとスペアを取り出し慎重な手付きで交換を行っていた。
 それは次の作戦を練るための時間稼ぎのためである。
 そして二人は作戦を練り上げるとカートリッジを一発消費する。

 「そろそろ終わりにしよう…何か言い残すことはあるか?」
 「そうね……この戦いで兄さんを必ず越えてみせる!」

 ティアナの力強い返しに笑みを浮かべると直ぐに真剣な面持ちへと変わる。
 そして互いに右の銃口を向けるとティーダは反応弾、ティアナは通常の魔力弾を撃ち抜き、
 二人の体は魔力の残滓に覆われ姿が見えなくした。

 ティーダは周囲に気を配りつつ移動していた、ティーダは元空戦魔導師である、
 しかし今この煙から飛び出せば絶好の的になる事は間違いない、寧ろ煙に乗じてフェイクシルエットを展開させた方が得策である。
 それにフェイクシルエットは、ある程度の動きならば対応出来るし、威力にもよるが魔力弾も数発程度なら耐えられる。

 すると何処からともなく魔力弾の音が響き、その音を切っ掛けに次々に魔力弾が飛び交い始める。
 その魔力弾の中には幻影も混ざっており、流石のティーダも煙の中にいるのは危険と感じ表に出る。
 そして煙に向け銃を突きつけると煙の中からは十体を越すティアナが姿を表す。
 ティーダは中に本物がいると考えデバイスを向けた瞬間、後ろからオプティックハイドを解除したティアナが姿を現す。

 ティアナの手にはダガーモードが握られており、その刃がティーダの身を貫いた瞬間、陽炎のように姿を消す。
 それがフェイクシルエットだとティアナが気が付いた瞬間、上空にオプティックハイドを解除しファントムブレイザーを撃つ体勢のティーダが存在していた。
 ティーダは高度なフェイクシルエットを一体作り出しオプティックハイドを纏って上空に移動し操作、ティアナを呼び寄せる餌として使ったのだ。

 「どうやら、この勝負俺の勝ちみたいだな」

 そう言うとファントムブレイザーをティアナ目掛けて撃ち抜く。
 一方ティアナはティーダのいる上空を見上げ驚いた表情を見せると迫ってくるファントムブレイザーに苦い顔を見せこう言い放った。

 「くぅ、化かし合いは…………私の勝ちみたい」
 「なに!?」

 ティアナは含み笑いを浮かべながら言葉を口にすると驚きの表情を見せるティーダ、
 するとティアナは幻影のように消え去った、今のもフェイクシルエットであったのだ。

 そして本物のティアナはティーダの後方、見上げる形でブレイズモードを握られていた。
 大量のフェイクシルエットも高度なフェイクも全てはこの一撃の為の布石であったのだ。
 そしてブレイズモードから撃ち出された圧縮されたファントムブレイザーは吸い込まれるようにティーダに直撃し、力無く落ちていく。

 その光景に兄を助けようと思わず我を忘れデバイスを置きティーダの落下位置まで移動すると手を伸ばす。
 そしてティーダを捕まえる瞬間、辺りは闇に包まれティアナもまた闇に飲み込まれるのであった。


 「此処は一体……」
 「ティア!?」

 闇に包まれたティアナは周囲を見渡し言葉を口にするとその声にスバルが反応する。
 どうやらスバルもまた闇に包まれ此処に来たようである、
 そして二人は身なりを見ると先程まで戦闘していたとは思えない程に綺麗で塵一つ残ってはいなかった。
 更に先程まで存在していた疲労感もなくなっており、二人は腕を組み考え込む。
 すると足下が光り出し二人の目の前にはクイントとティーダの姿があった。

 「おめでとう、第一の試練クリアね」

 クイントの祝福に二人はキョトンとしているとティーダが趣旨を説明する。
 二人はそれぞれ心の内に潜む想いがある、スバルは母親への想い、ティアナは兄への想いである。
 想いは強さとなる、だが彼女達の想いはいずれ乗り越えねばならない壁になる。
 其処で神は自分達を呼び出し敢えて壁として二人の前に姿を現した。

 「そしてよく乗り越えたな、ティアナ」
 「スバルも、その想いがあればギンガを助け出す事が出来るハズよ」

 二人の激励に思わず泣き出すスバルとティアナ、おそらく今までの緊張が一気に抜けたからであろう。
 其処するとクイントとティーダは二人のそれぞれのデバイスを握り始める。

 「母さん…何を?」
 「これはね…試練を乗り越えた時に渡せって言われたのよ」

 そう言うとスバルとティアナのデバイスが輝き出し二人も光に包まれていく。
 そして光は吸収されるように消えるが一切変わった様子が見受けられなかった。

 「兄さん、一体何をしたんですか?」
 「まぁ慌てるな、取り敢えずモードエクストラと呼んでみるんだな」

 ティーダの言葉に首を傾げるも二人はモードエクストラと口にすると
 デバイスから《extra.mode》と電子音が響きまたもや光に包まれる。
 するとスバルのリボルバーナックルとマッハキャリバーは真っ黒く染まり、
 バリアジャケットとリボンも黒に近い緑色に変わり、リボルバーナックルには赤い魔力が帯びていた。
 そしてティアナは黒いリボンが白く十字の部分は緑に染まり
 バリアジャケットもまた同じく緑色に染まっており、クロスミラージュは白く輝き、周囲には光り輝く粒子を纏っていた。

 「この姿は一体?!」
 「これは神の試練を突破した者が得られる力だよ」

 そして更に説明を続ける、ティアナのクロスミラージュが纏っている光はエーテルと言い魔力とよく似た特性を持つ、
 そしてエーテルによる攻撃とその最大の攻撃、奥義エーテルストライクを繰り出すことが出来ると語る。

 次にクイントがスバルの力を説明する、その赤い魔力は虐げられし者の力、
 つまり不死者に似た力を持ち相手を攻撃する度に魔力を少しずつ吸い取るという。
 そして同じく此方にも奥義ブラッディカリスがあるのだが、リボルバーナックルが一つな為、威力は半分位しか出せないだろうと語る。

 「スバル、ギンガを助けてあげてね」
 「うん!!」
 「ティアナ…お前はお前の道を行って欲しい、俺はそれを望んでいる」
 「兄さん…大丈夫です、今は自分の意志で執務官を目指してるって言えますから!!」

 クイントとティーダの問い掛けに力強く答える二人を見て安心すると、スバルとティアナは光に包まれる。
 そしてスバルとティアナは力強く敬礼すると、クイント達もまた力強く敬礼で答えスバル達は転送された。

 「心配ですか?」
 「そぅね、でもあの子達なら大丈夫だと信じているから」

 そう言うと二人は光の粒子となって肉体は消滅し、元いた場所へと帰っていったのであった。


 一方此処は一層付近、一同はスバルとティアナの帰りを待っていると部屋の中心が輝き出し其処からスバル達が姿を現した。
 二人の無事を確認した一同は駆け寄ると二人はVサインで答える。

 「二人共お帰り、無事に試練をクリアしたみたいだね」
 『ハイッ!!』

 なのはの問い掛けに力強く答える二人、すると今まで塞がれていた扉が開きだし次の層への階段が続いていた。
 それを確認するとディルナの案内の下、更に奥に進む一同なのであった。




   …しかし神のいる場所まではまだまだ遠い………








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最終更新:2009年07月12日 13:44