―――我等の試練に討ち勝ちし者達よ、見事である―――

        ―――さあ…我等の下へ来るが良い、そして汝の強さを示せ―――

          ―――さすれば我等は汝の力と成らん事を約束しよう―――


                  リリカルプロファイル
                   第二十七話 五層


 第四層の試練も、なのは達の活躍により無事突破した一同は、
 帰ってきたなのは達に激励をすると、今回の目的でもある神が住まう地、第五層へと足を運ぶ。
 目的の地まで今までとは異なる程に長い階段を下る一同は、今までの試練を思い返していた。

 最初はスバルとティアナが憧れ、そして目標である母と兄の壁を乗り越えた。
 次にエリオとキャロが自らの内に潜む暗い闇に打ち勝ち、
 はやてとヴオルケンリッターは自分達の罪を乗り越え、
 そしてなのはとフェイトは守る意志を試され、父と母に打ち勝った。

 …全ての試練を乗り越えた今ならば……そう考え気合いを込めていると、神が住まう地へと辿り着く。
 それは今までとは異なり、とても広く三倍近くの面積があり、柵の外には見上げる程の巨大な柱時計がゆっくりと時間を刻んでいた。

 そして神との対峙に鼓動が高鳴っていくと、床に描かれている二つの魔法陣が赤と青の色に分けて輝き出し、
 なのは、ヴィータ、スバル、ティアナ、シャマルの身が赤い魔力に包まれ始め
 フェイト、シグナム、エリオ、キャロ、ザフィーラの身が青い魔力に包まれていく。

 その中ではやて一人だけがぽつんと無色で佇んでおり、自分の身を何度も確認するが、
 周りのような変化が起こらず、思わず怒鳴り散らすはやて。

 「なんや!何で私だけなにも変化せぇへんのや!!」
 「あ~たぶん定員オーバーなんですよ」

 今回は神がバランスよく二班に分けた結果、一人余ったはやてが留守番する事になったとディルナが語ると、
 全く納得いかない表情を表しながらシャマルに指を指し怒鳴り散らしながら抗議する。

 「んじゃ何か!私よりシャマルの方が役に立つっちゅうんか!!」
 「……それはどういう意味かな?はやてちゃん…」

 シャマルはとても綺麗な笑みを浮かべながらこめかみに血管を浮き出させて質問する。
 その表情に思わず慄くが、直ぐにつふてくされるはやて。

 「私はもう真の夜天の王になったっちゅうねん、なのに何でハブかれなきゃいかんのや……」

 ブツブツ言いながら体育座りで呟くはやてをリインが慰めているところで、なのは組、フェイト組は転送されていき、
 その場にははやてとリイン、それにディルナが取り残されていた。
 そしてディルナは落ち込むはやての肩に手を当てると顔を見上げると優しい笑みを浮かべ出迎える。

 「心配なのはわかりますけど、大丈夫ですよ!試練を突破した皆さんなら!!」

 そう言って励ますディルナ、確かに此処に来てから自分を含め成長したかに見える、
 自分が此処で出来る事…それは皆の無事を祈る事であるだろう…
 そう考えたはやてはディルナの励ましに感謝して立ち上がるとディルナはある方向を指さす。

 其処にはカフェなどに置いてありそうなお洒落な白いテーブルとチェアーが置いてあり
 テーブルクロスの上には白いティーポットとカップ、それにクッキーが入ったバケットが置いてあった。

 ディルナ曰わく神が用意してくれたようで、此処で暫く休息を堪能して欲しい為の処置のようである。
 そして説明を終えたディルナとリインはいち早くテーブルに向かい、はやては困惑しながら、テーブルへと赴くのであった。


 場所は変わりなのは達は一面白い大地に覆われた場所に転送され、フェイト達もまた似たような別の場所に転送されていた。
 一同は離れないように纏まって警戒をしていると両者の目の前に魔法陣が現れ中心から等身大の神が姿を現す。

 その姿は金髪に三日月を彷彿させる杖を持ち、黒いローブを着ていて背中には六枚の翼、頭には金色の輪が浮かんでおり、
 両者に現れた姿はほぼ同じなのであるが、なのは達の下に現れた神は赤い翼と魔力に覆われ、フェイト達の下には青い翼と魔力に覆われていた。
 一同は神の出現に唖然としていると、神が静かに言葉を口にする。

 『よくぞ辿り着いた…』
 「我は男神ガブリエ・セレスタ」
 「私の名は女神イセリア・クイーン」
 『我等はこの世界の住人にして主である』

 別の場所で言葉を合わせるように話す流浪の双神、様々な修羅場を潜って来た一同だが
 その圧倒的な存在感に息を飲まれていると、その中でなのはだけが先陣を切るように神に問いかける。

 「流浪の双神よ!私達は―――」
 「皆まで言わずとも分かる、我等の力を貸して欲しいのだろ?」

 此処に来る者は、大抵腕試しか力を借りに来たかの二択位で
 なのは達は入って来た当初から力を借りに来たというのは分かっていたと語ると、
 流石、神を名乗るだけの事はあると考えつつも話が早いと考える一同。
 すると双神は杖で一同を指すと力強くこう述べる。

 『我等の力を欲するのであれば、我等に強さを示せ!!』

 神の言葉を合図に一同はデバイスを次々と起動させ神と対峙するのであった。


 …フェイトは仲間と念話で作戦を伝える、先ずは自分とエリオが先手を打ち
 次にザフィーラが時間差で攻撃、そしてキャロの援護と共にシグナムが攻撃を仕掛けるものであった。
 フェイトの作戦に一同は頷くとフェイトはザンバーフォーム、エリオはデューゼンフォルムに変え構える。

 「行きます!!」

 気合いがこもったフェイトの声を合図に二人は飛び出し縦横無尽に動き回りフェイントをかけながらフェイトは
 上空から振り下ろしエリオは地上から突き上げる。
 しかし神、ガブリエはフェイトの攻撃を左上の翼で、エリオの攻撃を右中央の翼で難なく防ぐ。

 だが時間差でガブリエの右後方上をとったザフィーラが拳を合わせガブリエの後頭部を狙うが
 それすらも右上の翼によって防がれる。

 ザフィーラは一つ舌打ちをするとそれを合図に三人は怒涛の連撃を繰り出すが
 それぞれの翼にて難なく防がれてしまい、流石の三人も困惑の色を見せていた。

 「そろそろ…此方も攻撃を仕掛けるか……」

 ガブリエは小さく呟くように言葉を口にすると右手に持つ杖の先端が鈍く光る。
 杖の先端の三日月部分は刃物のように鋭利で首を跳ねやすくする為に出来ている。
 そしてフェイトとエリオの攻防で一直線に首が並んだところを狙い杖を右に振り抜くガブリエ。

 しかしいち早くフェイトが気が付きエリオに念話で下がるように指示を送り二人は
 ソニックムーブにて回避、二人の前髪を何本か切り散らしただけですんだ。

 だがガブリエの杖は更に進み後方を捉えていたザフィーラの頭部に迫るが、障壁を展開させ一撃を止める。
 ところがガブリエの一撃は徐々にザフィーラごと障壁を押し上げ、
 こう着状態から直ぐに障壁が砕けると、その勢いによりザフィーラは吹き飛ばされる。

 一方ガブリエが背中を向いている位置にはキャロがおり、勝機と考えたキャロはフリードリヒにブラストレイを命じ
 フリードリヒはブラストレイを撃ち込むと、既にキャロの動きを察していたガブリエが左手をかざしファイアランスを唱え相殺する。

 動きを読まれていた事に気が付いたキャロは驚きの表情を見せていると、
 既にガブリエは目の前で見下ろしており、振り上げた右手には杖が握られていた。

 「…まずは一人目」

 そう小さく呟くと容赦なく杖は振り下ろされる、しかしガブリエの一撃はキャロの頭上を直撃する事はなかった。
 何故ならガブリエとキャロの間をシグナムが割って入りレヴァンティンにて防いだからである。

 そしてシグナムはキャロに下がるように指示をすると、キャロはフリードリヒに乗って後方上空へと避難
 横目でそれを確認したシグナムはカートリッジを消費し刀身は炎に包まれ押し返すように紫電一閃を振り抜く、

 シグナムの一撃はガブリエの予想を大きく上回り後方へと押し返されるが、
 その勢いに乗りながら左手をかざしクールダンセルを唱え氷の刃を持った氷人形がシグナムに襲いかかる。

 シグナムは一つ舌打ちをすると氷の刃を受け止め鍔競り合っていると刀身が凍り始め、
 カートリッジを使用して溶かそうと考えた瞬間、金色の閃光がクールダンセルをバラバラに切り裂く。
 そしてその場にはライオットブレードに切り替えたフェイトの姿があり、
 愚直なまでに真っ直ぐ上空に移動したガブリエの下へ向かう。

 フェイトはガブリエの目の前でソニックムーブを行い一気に後ろをとるが、動きを既に予測していたガブリエは右上の翼にて防ぐ。
 ガブリエの翼とフェイトの攻撃により火花が散る中で、フェイトはエリオに念話で合図を送る。

 (エリオ!!)
 (了解です!フェイトさん!!)

 エリオもまたフェイトに念話を送り応えると、カートリッジを二発消費、
 ストラーダの矛先をガブリエに向け構え、スピーアアングリフを打ち出す。

 そして見る見ると距離を縮めていきガブリエに迫るが、中央の二枚の翼にて受け止められエリオを吹き飛すように跳ね返し、
 ガブリエは更に翼でフェイトを後方へ吹き飛ばした後エリオに迫ると、止めとばかりに杖を振り下ろす。

 だがエリオの左手は電撃に覆われており、それに気が付いた瞬間の隙を狙いガブリエの顔を目掛けて紫電一閃を打ち抜く。

 エリオの紫電一閃が迫る中でガブリエは振り下ろした杖の先端を向け攻撃を防ぐが、
 エリオはそのまま拳を振り下ろしガブリエを吹き飛ばす。
 しかしガブリエは体勢を立て直し床に静かに着地するのであった。

 一方、空中から落ちて行くエリオをフリードリヒが口でキャッチ、
 エリオは一言礼を言うとフリードリヒの背中ではキャロが微笑みを浮かべていた。
 そしてガブリエはそれぞれに目を向けると口の端が徐々につり上がる。

 「…成る程……がしかしまだまだこの程度では無かろう、さぁ…もっと強さを見せて見ろ!!」

 そう言ってけしかけるガブリエを後目にフェイト達は冷静に今の状況を整理し対峙するのであった。


 一方なのは達も念話によって作戦を練りそれぞれの役割の為に移動し始める。
 そして定位置に付くとまずはなのはとティアナがアクセルシューターとクロスファイア合わせて12発で牽制する。

 更に魔力弾に合わせるようにスバルは地上を滑走、ヴィータが上空を飛行してイセリア下へ迫りデバイスを堅く握る。
 二人が放った魔力弾がイセリアの下へ辿り着き次々に着弾する中でスバルとヴィータは合わせるように一撃を放つ。

 「ラテーケン!」
 「リボルバー!」
 「ハンマァァァ!!」「キャノォォォン」

 二人の叫びが合わさると共に振り抜きヴィータの一撃は頭部に、スバルの一撃は腹部にそれぞれ直撃する。
 だがイセリアは平然とした表情で右手に持つ杖を振り抜き二人を吹き飛ばす。

 その間になのはとティアナは次の行動に入っておりアクセルシューターとクロスファイアが二人の前で激しく回転していた。

 「アクセルシューター…」
 「クロスファイア…」
 『スパイラルシュート!!』

 此方も声を合わせて放つと魔力弾が螺旋を描きながらイセリアへと迫る。
 しかしイセリアは持っていた杖を振り抜き衝撃波を発生させると魔力弾をかき消し更に二人に襲いかかり、
 衝撃波に飲まれた二人は吹き飛ばされていると、シャマルが二人の後方にヴァルヒ・スツーツを張り難を逃れる。

 その頃スバルは反撃とばかりにイセリアへ向かうと拳と蹴りのコンビネーションであるキャリバーショットを繰り出すが
 イセリアは平然と攻撃を体で受け止め、その状況に困惑するスバル。

 「…どうしたの?もう終わり?」

 イセリアの優しく問いかける言葉にスバルの体に戦慄が走り、思わず離れると今度はヴィータがギガントフォルムに切り替え頭上から振り下ろす。
 しかしイセリアは全く動じることもなくヴィータの一撃を頭で受け止め更に左手をかざしイグニートジャベリンを唱える。
 そしてヴィータの頭上から光の槍が降り注ぎ、危険を察知したヴィータはパンツァーシルトにて攻撃を防ぎつつ後退すると、
 一同はなのはを中心に集いイセリアを睨みつけながらも頬に冷たい物を垂らす。

 …神とはこれ程の実力を持ち尚且つここまで差があるとは思っていなかった。
 だからといってこの差を何とかして縮めなければ神の協力を得られない…
 なのははそう考えているとイセリアの口がゆっくりと動き始める。

 「さて……そろそろ体も解れてきたようですし、始めますか」

 今までの一連の動きは全て只の準備運動に過ぎず、今から本番であるとイセリアは話すと
 赤い魔力が全身から噴き出し、魔力が衝撃波となって身を貫き、恐怖心をかき立てる。

 なのはは震える左手をまるで恐怖心を押さえ込むように握り締めると、
 自身の最大の能力であるブラスターシステムを起動、それを皮切りに次々に能力を解放させる。
 それを見たイセリアは不敵な笑みを浮かべ杖をなのは達に向けると第二幕を開始する。

 先ずはシャマルがスバルとヴィータにブーストアップのアクセラレイションとストライクパワーのツインブーストを掛けると
 スバルはA.C.Sドライバーを起動させて突進、ヴィータもまたギガントハンマーに
 フェアーテを加えて加速、イセリアの後方へと回ると一気に振り下ろす。

 一方イセリアはスバルの一撃を左手一本で受け止め、ヴィータの一撃は杖にて受け止める。
 するとヴィータはすぐさまその場から上空へ逃げ込むと、スバルの左手に環状魔法陣により発生した魔力球が握られており、
 そのままイセリアの胸元に打ち付けると右手を突き出しディバインバスターを撃ち抜く。

 イセリアはディバインバスターに飲み込まれ吹き飛ばされるが、魔力を放出し攻撃を吹き飛ばすと
 上空から追い討ちとばかりにギガントハンマーを打ち出すが簡単によけられ、むしろ杖で弾き飛ばされ返り討ちに合うヴィータ。

 するとイセリアの下へクロスファイアが弧を描いて襲いかかり、イセリアは杖で次々に払いのけるとティアナの下へ向かい一気に杖を振り抜く。
 だがティアナは陽炎のように消え、辺りには無数の五人の幻影が姿を現す。

 ブーステッドイリュージョン、ティアナの幻術をシャマルのブーストにより増幅・強化させたものである。
 流石のイセリアも驚きの表情を隠せずにいると後方から桜色の直射砲が襲い掛かり
 それに気が付いたイセリアはギリギリのところで回避すると左右からクロスファイアが二発襲い掛かる。

 「ちっ!」

 イセリアは一つ舌打ちをするとその場で回転を行おうとしたところ、幻影の一つがシャマルに変わり戒めの鎖にてイセリアを縛り付けるとそのまま退避、
 イセリアはなす統べなくクロスファイアを受けるが対したダメージは負っていなかった。

 すると左右からショートバスターが襲い掛かり後方へ退避すると後ろの幻影がヴィータに変わりラテーケンハンマーを背中に受け、
 そしてヴィータはそのまま退避し幻影の中に溶け込む。

 イセリアはこのままでは埒があかないと考えた結果一つの案を導き出し
 幻影の森よりも更に上空へと逃げ込み地上を見下ろす。

 一方地上からはリボルバーシュートやアクセルシューター、クロスファイアに
 シュワルベフリーゲンなどがイセリア目掛けて襲いかかって来ていた。

 「ちっ!仕方がないわね」

 そう言うと足下に巨大な多角形の魔法陣を展開すると詠唱を始めるイセリア。

 「…我、久遠の絆断たんと欲すれば……」

 イセリアの詠唱により更に上空には巨大な槍が姿を現し縦回転を始め、
 その状況を唖然とした表情で見上げる形のなのは達。

 「まさか!アレは広域攻撃魔法!!」
 「…言の葉は降魔の剣と化し汝を討つだろう」

 すると巨大な槍の矛先がなのは達に向けられ、動揺の隠せないなのは達に対し
 不敵な笑みを浮かべ見下ろしながらイセリアは杖を振り上げこう述べた。

 「分からないから全てを吹き飛ばすだけよ!ファイナルチェリオ!!」

 そして杖を振り下ろすと巨大な槍の鍔部分から魔力が放出し真っ直ぐ勢い良く落下、
 床に激突すると辺りに衝撃が走り幻影ごとなのは達を吹き飛ばし、その勢いは床全体を超えるほどの広がりを見せ
 その光景を上空にて見下ろしているイセリアなのであった。

 一方フェイト達もガブリエとの戦いにおいて切り札を切り始める。
 先ずはフェイトがライオットザンバー・スティンガーに切り替え、二刀流による牽制を促す、
 だがガブリエはいとも簡単にフェイトの猛攻を防いでいると、左後方へと先回りしていたエリオが突き刺す、

 しかしガブリエは左手一本でストラーダをつかみ取り受け止めると、
 エリオはウンヴェッターフォルムに切り替えノイズから金の針が飛び出す

 「サンダァァ!レイジ!!」

 エリオの叫びを合図にフェイトが退避しガブリエの周囲は稲妻に覆われ始めその身を打つ。
 しかしガブリエは動じることなくエリオごとストラーダを振り投げ杖を向けるとキャロによるアルケミックチェーンに縛られる。

 「フリード!ブラストレイ!!」

 更に追い討ちとばかりにブラストレイを撃ち抜きガブリエの身は炎に包まれ、
 加熱された鎖が身を締め付ける中でガブリエは魔力を一気に解放、炎と鎖両方を弾き飛ばした。

 しかし弾き飛ばした瞬間の隙をザフィーラが突き鋼の軛にてガブリエの身を呪縛する。
 そしてガブリエの前方にはフェイトとシグナムがおり、フェイトはスティンガーをカラミティに換え空いた左手をかざし、
 シグナムは居合いの構えをとっており、両者はカートリッジを使用する。

 「飛竜一閃!!」
 「トライデントスマッシャー!!」

 次の瞬間、金色と炎の直射砲がガブリエに迫り直撃、それを目撃した一同はフェイトの下へ集う。
 二発の強力な魔法が直撃した場所は白煙に包まれており、白煙から上空へ突き抜けるようにガブリエが姿を現し、左手をかざし詠唱を始める。

 「冥府の底で燃え盛る聖玉の採光…贖罪無き罪は罰と化し裁きの時を呼び寄せる」

 するとガブリエから炎が放たれフェイト達の周りを青く染め包み込むと球体となって上昇、徐々に赤く染め上がり一気に爆発した。
 ペイルフレアー、ガブリエ・セレスタが放つ闇属性の広域攻撃魔法である。

 そして跡地をガブリエはじっと見つめていると、中からブーステッドプロテクションを展開しているキャロと
 エクストラモード起動させ更に多重障壁を展開させているザフィーラが姿を現し、
 二人の障壁に守られる形で姿を現す一同、その状況を上空で見下ろしていたガブリエは、ゆっくりと下降し床に足を着ける。

 「よくぞ耐え抜いた!だが貴様達の強さは此処までなのか?」

 ガブリエは誉めながらも挑発を促し、一同はガブリエの挑発に乗る形で次々に力を解放させる。
 そしてまずはエリオが動き出す、その動きはまさに地を走る雷鳴の如き動きで、
 一回り小さくなったストラーダを右手に携え振り上げ、払い、通り抜けるように振り下ろすと、
 全身に光る雷光が更に輝き出し加速、ストラーダから繰り出される突きは最早、人の目では認識出来ない程の速度にまで至っていた。

 「奥義!エターナル!レイド!!」

 加速された無数の突きはガブリエの身を突き、最後の一撃はすり抜けるように貫き通すと
 次に真の姿のレヴァンティンを握り締めたシグナムが薙払うように振り抜く。

 「火龍一閃!!」

 撃ち出された火龍一閃は瞬く間にガブリエを飲み込み辺りが炎に包まれる中、
 ガブリエが炎の中から飛び出すと、その周囲は長方形の刃に囲まれ飛び回りながらガブリエの身を切り裂いていく。
 そして右腕に次々と刃が連結し巨大な刃に変わると一気に振り下ろすザフィーラ。

 「奥義!グリムマリス!!」

 振り下ろされた一撃をガブリエは杖で受け止めるが、ザフィーラは力を込めガブリエに直撃させると、
 真・ソニックフォームの姿をしたフェイトが閃光の如くガブリエの下へ向かい、残像を発生させながら次々とその身を切り裂いていく。

 「無限の剣閃、アナタに見えますか!」

 そう言いながら徐々に加速しつつ斬りつけ最後はカラミティに切り替えて一気に振り抜き吹き飛ばす。
 だがガブリエは最後の一撃に耐え抜き見上げると上空ではキャロが召喚したヴォルテールが見下ろしており、キャロはヴォルテールの肩の上で
 エクストラモード起動させを起動させるとヴォルテールの胸元に竜紅玉が姿を現し魔力が集い始める。

 「奥義!ドラゴンドレッド!!」

 キャロの命に呼応するように胸元から強力な光線が発射され、ガブリエに直撃すると爆発
 辺りは爆風と衝撃が響きフェイト達の身を揺らす。
 その中でフェイトは確かな手応えを感じ、拳を握り締めるのであった。


 一方、ファナルチェリオを受けたなのは達は辺りに横たわっており、それを見かけたイセリアはゆっくりと床に着地する。
 するとゆっくりとではあるが、確実に起き上がる一同にイセリアは不敵な笑みを浮かべながら話し出す。

 「成る程…耐え抜いたか……しかしその分では抵抗すらままならそうだ……」

 見下すような目線で見渡しているが、なのは達の目は未だ諦めの色が見えず、
 その死んでいない瞳に密かに期待を寄せているイセリア。
 そして全員が立ち上がるとなのはが振り絞るように声を発する。

 「まだ……まだ私達は負けていない!」

 そう力強く言葉を口にするとそれぞれの全力を解放させる。
 先ずはスバルがエクストラモードを起動させてカートリッジを消費すると、体に纏っている赤い魔力が増大し威勢良くイセリアの元へ向かう。

 そして右拳を突き出し、振り下ろし、更にその場で左回転して勢い良く振り上げ、
 更に左回転から体ごと持ち上げるようにアッパーを繰り出しイセリアの体を持ち上げながら的確に顎を狙い撃つと
 床に着地、そして床を打ち砕くように拳を振り下ろした。

 「奥義!ブラッディカリス!!」

 次の瞬間、床から大量の赤い魔力がイセリアに襲い掛かり、その身を何度も打ち抜いていく。
 そしてスバルの攻撃が終わると間髪入れずティアナの攻撃が始まる。

 ティアナはエクストラモードを起動させると、エーテルを散弾のように撃ち出すクリティカルフレアと呼ばれる攻撃で牽制する。
 牽制が功をそうしたのか続いてクロスミラージュを平行に構えると白い直射砲サンダーソードを撃ち出し、
 そして間髪入れずにカートリッジを消費すると魔力によってエーテルが増大、ティアナの前で巨大な球体となって姿を表す。

 「奥義!エーテルストライク!!」

 次の瞬間、エーテルストライクはイセリアを飲み込み辺りは閃光に包まれていき
 閃光が落ち着き始めると今度はヴィータの番とばかりに力を現す。

 ヴィータの全身には稲妻が走り右手は重厚な鉄の手袋、そしてその手にはツェアシュテールングスフォルムのグラーフアイゼンを握り締め
 稲妻がグラーフアイゼンに伝わると目を瞑りたくなる程までに金色に輝き出していた。

 そしてグラーフアイゼンの先端が外れ柄の部分を稲妻で繋ぐとヴィータは頭上で回転させ始める。
 そして金色の環を描き最大加速に至ったところでイセリアの頭上目掛け一気に振り下ろした。

 「食らえぇ!ミョルニルハンマァァァ!!」

 振り下ろされたツェアシュテールングスフォルムの先端はドリル状で稲妻を発生ながら回転しており
 流石のイセリアも息を飲み杖にてヴィータの一撃を受け止める。

 しかしヴィータの一撃はイセリアを中心として広範囲に渡って稲妻が走りまたもや辺りを閃光で包む、
 そして閃光が消え始めると跡地からイセリアがヴィータを睨み付けながら上空へ飛び出すと
 その瞬間的な隙をついてシャマルが鋼の軛を打ち出し、イセリアの身を貫き動きを止める。

 するとシャマルの動きに呼応するようになのはが6基のブラスタービットを六角形の形で置き
 イセリアより更に上空でなのはは構え、なのはとブラスタービットの前には桜色の魔力が収束されていた。

 「全力全開!スターライト…ブレイカァァァ!!」

 七発のスターライトブレイカーはイセリアを飲み込み着弾地点では桜色の魔力光が球体の形となって輝いていた。
 そして―――――

 「ブレイクゥシュゥゥゥトォォ!!!」

 なのはの言葉と共に七発の収束砲が消えると中央で形成されていた魔力球が膨張、
 一気に爆発し天を貫くと言わんばかりの桜色の魔力柱が姿を現しそれは徐々に細くなって消滅、

 スターライトブレイカーが直撃した地点の床は大きくクレーター状に窪み、其処にはイセリアの姿を見受けられなかった。
 その頃上空では肩で息をし左手を抑えながらなのはがゆっくりと降下し床に着くと力が抜けたかのように膝を付き、
 その姿に一同は集まり、跡地を見つめ確かな手応えと安堵が見え隠れしていた。


 両者の世界は静寂に包まれ試練の終わりを感じる頃、それは起こった。
 なのは達そしてフェイト達の下へ竜巻の如き勢いで姿を現した流浪の双神が仲間達を次々に巻き込んでいく。

 それはまさに疾風怒濤、一騎当千に相応しい動きで相手を叩きつけるように次々と杖を振り下ろし
 次に吹き飛ばすが如く突き刺すと、今度は回転しながら移動、なのは達フェイト達はなす統べなく跳ね上げられ、

 更に流浪の双神の回転が増すとガブリエは青いイセリアは赤い魔力の嵐を生み出し、一同はまるで木の葉の如く舞い上がる。
 そして流浪の双神は持っていた杖を力一杯振り下ろした。

 「力とはこういうものだ!!」
 「これぞ真の裁き!!」

 別空間にいる両者の声が重なる瞬間に合わせ、空間が断裂するほどの激しい衝撃がなのは達フェイト達の身を貫き、力無く次々に床に落ちていく。

 …女王乱舞、流浪の双神の切り札ともいえる怒涛の連撃で、これを受けた者は立ち上がる事が出来ないとさえ言われる程である。
 故に床に落ちたなのは達フェイト達は一切動きを見せてはおらず、流石に流浪の双神も此処までだと考えその場から転送しようとしていた。

 だがなのは達フェイト達はゆっくりと身に染み込む痛みに耐えながら徐々に体を動かし始め、
 それぞれはまるで生まれたての動物のように弱々しく…しかし確実に力強く起き上がり
 あれだけの攻撃を受けてもなお彼等の瞳は死んではいなかった。

 そんな彼等の行動に自分達が知る人の強さを垣間見た流浪の双神は、歓喜に震え笑みを浮かべる。
 流浪の双神の見たかった人の強さ、それは不屈、根性、“ガッツ”とも言えるもので
 かつてこの地を訪れた人の中で何度も倒れても立ち上がり、結果自分達は倒す人物が現れた。
 その敗北から人の強さ不屈の精神を知り、同じ精神を持つ人物には力を貸すという考えに至っていたのである。

 そして流浪の双神は杖で床を叩くと一面が変わり、其処でなのは達フェイト達は合流を果たす。
 互いはボロボロの姿に笑い合い心配し合いしていると、流浪の双神が一同を回復させて更にゆっくりと話し始める。

 「お前達の強さ、確かに見せてもらったぞ!」
 「その強さならこの力に溺れる事もないだろう…受け取るが良い!」

 そう言うと流浪の双神の前に杖が姿を現す、魔杖アポカリプスと聖杖ミリオンテラーである。
 この二本は持ち主の能力を高める事出来るほか、アポカリプスはペイルフレアーが
 ミリオンテラーはファントムデストラクションが撃てるようになり、
 更に杖を媒介に此処の魔法陣を展開させれば流浪の双神を一回だけ召喚が出来ると語る。
 しかし流浪の双神を召喚し終えると媒介となる杖は消失すると付け加えられた。

 「では…お前達の武運を祈る」
 「ありがとう…流浪の双神」

 そう言ってなのは達を転送させると、先程までの戦いを思い返し自分の身を確かめる。
 彼女達の攻撃はとても優しく、今まで此処に来た者に無い攻撃であった。
 故に彼女等なら自分達の力を正しく扱ってくれるだろう、そう確信にも似た気持ちで考える両者であった。


 一方で神との契約を終えた一同ははやての下へ転送されると其処ではへばったはやてとディルナの姿があり
 一同ははやて達の下へ駆けつけると、はやての手にはひまわりの種が握られていた。

 「何があったの?!はやてちゃん!」
 「いや…ちょっとネズミがな……それよりどうやったんや?」

 はやての言葉になのはとフェイトは首を傾げるものの、証拠の品でもある杖を見せる。
 証拠を見たはやては頷き褒め称えると、頭を掻き照れ臭いようで赤く染め、
 そして先程までへばっていたディルナが復活し、一同を連れて出入り口へと転送されるのであった。


 …此処はセラフィックゲートの出入り口、それぞれが一列に並ぶと対面にはディルナが佇んでいた。

 「またのご利用をお待ちしておりま~す!!」

 そう言って手を振るとなのは達も別れの挨拶を交わす。
 …だがその中ではやてだけが苦い顔をしながら見つめていた。

 結局あの場でなにが起きていたのかは教えてくれなかったが、
 きっと酷い目に会ったのだろうと言うのが一同の展開である。






 そして…ディルナに背を向け一同は魔法陣に足を踏み入れ、聖王教会へと意気揚々に戻るのであった………









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最終更新:2009年09月06日 08:10