深い闇が辺りを包む黒の草原。
普通なら風の音、草が揺れる音だけが場を支配するのだがこの草原では違った。
草原に似つかわしくない音と無言の圧迫感が場を支配している。
普通なら風の音、草が揺れる音だけが場を支配するのだがこの草原では違った。
草原に似つかわしくない音と無言の圧迫感が場を支配している。
キンキンキンと甲高い金属音がうるさいぐらいに響く。
音の出所は二人の人間。
音の出所は二人の人間。
「小さな子とて、容赦はしない。俺の大切な人達のために大人しく死んでもらおうか」
一人は剣道着を来た大柄の青年。逆立てた銀髪が目に引く。
青年の名は宮沢謙吾。
謙吾は手に持った巨大な野太刀を駆使し、刀を振るう。
青年の名は宮沢謙吾。
謙吾は手に持った巨大な野太刀を駆使し、刀を振るう。
「それでは他の人はどうなる!他の人にも大切な人はいる。それを無視する気か!」
もう一人は黒の服に身を包んだ少年。実直そうな顔立ちだ。
少年の名はクロノ・ハラオウン。時空管理局の執務官を努めるほど正義の意志が高い。
クロノは手にレイピアらしき剣を持ち、謙吾の野太刀を受け流す。
少年の名はクロノ・ハラオウン。時空管理局の執務官を努めるほど正義の意志が高い。
クロノは手にレイピアらしき剣を持ち、謙吾の野太刀を受け流す。
「それでも、俺は決めたんだ」
「ただのエゴじゃないか、そんなの!」
「ただのエゴじゃないか、そんなの!」
謙吾はクロノの突きを軽くいなして野太刀による振り下ろしをクロノの脳天目がけて放つ。
受けきれないと感じたのか、クロノは野太刀による一撃を横に飛ぶことで躱す。
謙吾は逃さず、クロノが跳んだ方へ駆け、袈裟に野太刀を振るう。
受けきれないと感じたのか、クロノは野太刀による一撃を横に飛ぶことで躱す。
謙吾は逃さず、クロノが跳んだ方へ駆け、袈裟に野太刀を振るう。
「っ!」
「おしい」
「おしい」
クロノはぎりぎりで刀身で受け切れたのだが腕がしびれ、苦い表情を顔に出す。
クロノは実戦経験は豊富なれども、まだ十四歳。
身体が出来ていない。それにデバイスが無い状態では魔法が使うことができないため、
魔法なしで謙吾と戦っている。
つまりの所、クロノは経験と自分の肉体だけで戦っているのだ。
クロノは実戦経験は豊富なれども、まだ十四歳。
身体が出来ていない。それにデバイスが無い状態では魔法が使うことができないため、
魔法なしで謙吾と戦っている。
つまりの所、クロノは経験と自分の肉体だけで戦っているのだ。
「まだだ!」
クロノは下段からの振り上げ、右からの横一閃の切り込み、正面への打ち込みなど多彩な一撃を繰り出し、
謙吾を殺すとまでは行かなくても無効化しようと画策する。
だが謙吾はゆるがない。
謙吾を殺すとまでは行かなくても無効化しようと画策する。
だが謙吾はゆるがない。
「確かに上手い。俺の隙を狙ういい一撃だ。だが、身体が追いついていない」
謙吾は振り上げを余裕で避け、切り込みと正面への打ち込みは野太刀で受ける。
クロノと謙吾は鍔迫り合いになりぎ辺りにはちぎちと金属同士がこすれ合う音が鳴る。
クロノと謙吾は鍔迫り合いになりぎ辺りにはちぎちと金属同士がこすれ合う音が鳴る。
「はあああああ!」
「……気合いは十分なのだがな!」
「……気合いは十分なのだがな!」
謙吾がクロノのレイピアをあっさりと押し返し、胴へ向けて神速の一撃を繰り出すが、
クロノ押し返された勢いを利用して、後退することによってぎりぎりのところで躱す。
クロノ押し返された勢いを利用して、後退することによってぎりぎりのところで躱す。
「はぁ……はぁ」
「大分、息が上がっているようだが生憎、手加減はしてやれん」
「大分、息が上がっているようだが生憎、手加減はしてやれん」
クロノは息が上がり片膝を地につけ辛そうな表情をしているが、謙吾は変わらず堂々と両足で大地を踏んでいる。
「君はよくやったと思う。身体能力の差からしても本当にな」
だがそれでもクロノはよろよろと立ち上がりレイピアを構える。
「僕は……時空管理局の、執務官なんだ。こんな所で、くじけちゃいけないんだ」
クロノは立たなければいけない。自分のプライドのために。この島にいる仲間を護るために。
決して折れない不屈の意志を胸に抱えて。
決して折れない不屈の意志を胸に抱えて。
(ここをどう切り抜けるべきか。逃げる?近くに森はあるが入る前に追いつかれる。
それに他の人を巻き込んでしまったら元も子もない。
なら真正面から打ち勝つ?悔しいが無理だ。言われた通り身体能力の差が違う。
僕も経験で何とかここまで乗り切ってきたがもう限界だ。厳しすぎる)
それに他の人を巻き込んでしまったら元も子もない。
なら真正面から打ち勝つ?悔しいが無理だ。言われた通り身体能力の差が違う。
僕も経験で何とかここまで乗り切ってきたがもう限界だ。厳しすぎる)
クロノは頭の中で必死にここから生き抜くための手段を思考する。
だが、どれもだめだという結論に至る。
だが、どれもだめだという結論に至る。
「もういいか?しかし残念だ。いい気概を持っている子供を殺すのは。
こんな所でなければ剣道でも教えたのだがな」
「あなたがこんなゲームに乗るのをやめれば今すぐにでも喜んで学びたいぐらいだよ」
「それができればな……どんなによかっただろうに。俺には無理だ。
仲間を護るために殺し合いに乗った俺にはな……」
こんな所でなければ剣道でも教えたのだがな」
「あなたがこんなゲームに乗るのをやめれば今すぐにでも喜んで学びたいぐらいだよ」
「それができればな……どんなによかっただろうに。俺には無理だ。
仲間を護るために殺し合いに乗った俺にはな……」
謙吾は懺悔でもするかのように顔を少し歪めながら語る。
もう止められないのだ。一度決めてしまったことを止めることは謙吾の性格からして許さない。
もう止められないのだ。一度決めてしまったことを止めることは謙吾の性格からして許さない。
(くそっ!力が欲しい!ここを切り抜ける力。あの人を救える力。
僕には何もかも足りなさすぎる。力が……力が欲しい!)
僕には何もかも足りなさすぎる。力が……力が欲しい!)
クロノは心中で叫ぶ。何もできない自分に。これでもかと無力さを呪った。
《力が欲しいか……》
(な、何だ!?)
(な、何だ!?)
クロノの祈りが通じたのか声が聞こえてきた。
どこから?わからない。クロノは謙吾を見るが謙吾には聞こえてないそうだ。
どこから?わからない。クロノは謙吾を見るが謙吾には聞こえてないそうだ。
(何だ、お前は。誰だ!)
《力が欲しいかと聞いている……》
《力が欲しいかと聞いている……》
クロノの問い掛けを無視し声はクロノに問う。
力が欲しいか、と。
力が欲しいか、と。
(欲しいさ!でも、もうどうしようもない。僕はたぶんここで死ぬ)
《力が欲しいのなら願え……》
(願う?)
《願うのなら……力が欲しいのならくれてやる!》
《力が欲しいのなら願え……》
(願う?)
《願うのなら……力が欲しいのならくれてやる!》
クロノは訝しみながらも考える。だがそんな暇は今はない。
謙吾が地面を蹴り高速の勢いでクロノに迫る。手に持った野太刀でクロノの身を引き裂こうと。
謙吾が地面を蹴り高速の勢いでクロノに迫る。手に持った野太刀でクロノの身を引き裂こうと。
(いいさ。なら願ってやる!力が欲しい力が欲しい力が欲しい!力をよこせっ!
力を…………よこせえええええええええええええええええええ、“空虚”!)
力を…………よこせえええええええええええええええええええ、“空虚”!)
しらないなまえなのになぜかあたまからでてきた。
そんなことをクロノは思い浮かべながら。二人は光に包まれた。
◆ ◆ ◆
「何だったんだ、今のは」
草原に謙吾は一人佇んでいた。
光が収まった後、クロノはどこにもいなかったのだ。
謙吾は周りを見渡したがそれらしき人影は見受けられなかった。
光が収まった後、クロノはどこにもいなかったのだ。
謙吾は周りを見渡したがそれらしき人影は見受けられなかった。
「あの光が照らされている間に、近くの森へと逃げた?こんな搦め手を残してるとはな、侮れん」
謙吾は自分がクロノのことを侮っていたことを認識し唇を噛む。
自分の油断が招いた結果だ、と強く自分を戒めながら。
自分の油断が招いた結果だ、と強く自分を戒めながら。
「理樹……お前は俺が護る。だから、大人しくしているんだ」
謙吾にとっては仲間は何者にも変えられない大切なものであり、そのためには殺し合いに乗ることも辞さない。
その決意は鉄の如く固く決して折れるものではない。
その決意は鉄の如く固く決して折れるものではない。
「俺らの中で“生きている”のは、理樹だけなんだ。
なら、理樹を護るしかない、それ以外に何もないんだ」
なら、理樹を護るしかない、それ以外に何もないんだ」
謙吾は思い出す。あの全てが満たされた世界での楽しかった思い出を。
そして、それは虚構というとても儚い夢だということを。
そして、それは虚構というとても儚い夢だということを。
(夢は終わった。覚めない夢なんてどこにもない。あの世界のことを乗り越えて理樹と鈴は強く生きていくはずだった。
でも、鈴は死んだ。未来を見れるのは“生きている”理樹だけになった。
なら俺は理樹の為に何をしてやれる?そうして考えた結果が理樹以外を皆殺しとは、俺も大分ヤキがまわったな)
でも、鈴は死んだ。未来を見れるのは“生きている”理樹だけになった。
なら俺は理樹の為に何をしてやれる?そうして考えた結果が理樹以外を皆殺しとは、俺も大分ヤキがまわったな)
謙吾は自嘲するように笑う。
それがどれだけ愚かしいことで理樹がそんなことをしても喜ばないということも謙吾はわかった上でこの決断を下したのだ。
それがどれだけ愚かしいことで理樹がそんなことをしても喜ばないということも謙吾はわかった上でこの決断を下したのだ。
「理樹の未来の為に、殺す。理樹以外を全て」
剣の鬼が戦場を駆ける。全ては友の為に、ただ一振りの剣として。
【F-3草原/1日目・深夜】
【宮沢謙吾@リトルバスターズ!】
[状態]:健康
[装備]:夕凪@魔法先生ネギま!
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:直枝理樹を最後の一人にする
1 積極的に他者と争う。
2 直枝理樹を見つけたら即座に保護。
※虚構世界崩壊後からの参戦です。
【宮沢謙吾@リトルバスターズ!】
[状態]:健康
[装備]:夕凪@魔法先生ネギま!
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:直枝理樹を最後の一人にする
1 積極的に他者と争う。
2 直枝理樹を見つけたら即座に保護。
※虚構世界崩壊後からの参戦です。
【夕凪@魔法先生ネギま!】
桜咲刹那の愛刀。かなりの業物。
桜咲刹那の愛刀。かなりの業物。
◆ ◆ ◆
先ほど謙吾と戦った草原の近くの森の中にクロノはいた。
「これが力……」
クロノが“空虚”の名を叫んだ後、光が二人を包んだ。
その間にクロノは近くの森へ逃げたのだが。
その間にクロノは近くの森へ逃げたのだが。
「脚力が上がってる?」
そう、光で謙吾の目をくらましたとしてもそれで生まれる隙だけでは完全に逃げ切れることはできない。
だが実際クロノは謙吾から逃げ切れた。
だが実際クロノは謙吾から逃げ切れた。
「この力、身体能力を強化する力か。確かに役には立つ。この殺し合いを止めるのにも!」
クロノは誓う。この力で出来る限りの人を救い、大切な仲間を護ると。
しかしクロノは力を貸した存在、永遠神剣“空虚”のことを知らない。
“空虚”が心の隙を付け込んで持ち主を支配する魔性の剣だということに加え、
そしてその剣が原因で狂ってしまった一人の少女がいたことを。
しかしクロノは力を貸した存在、永遠神剣“空虚”のことを知らない。
“空虚”が心の隙を付け込んで持ち主を支配する魔性の剣だということに加え、
そしてその剣が原因で狂ってしまった一人の少女がいたことを。
【F-3森/1日目・深夜】
【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:疲労(中) 、空虚と契約
[装備]:空虚@永遠のアセリア
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:正義を貫く
1 助けを求めている人を救う。
2仲間との合流
【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:疲労(中) 、空虚と契約
[装備]:空虚@永遠のアセリア
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:正義を貫く
1 助けを求めている人を救う。
2仲間との合流
【空虚@永遠のアセリア】
永遠神剣の位は第五位。レイピア型の永遠神剣。
永遠神剣の位は第五位。レイピア型の永遠神剣。
BACK:糸仕掛けのプレリュード | 時系列順 | NEXT:Noir ou blanc |
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GAME START | クロノ・ハラオウン | NEXT:――これは英雄の物語ではない。 |