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お花見

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匿名ユーザー

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「ふう、まさかアボガド珈琲まで売っているとは・・・・運が良かったです」
ある日の夜、部屋のジュース(変わり種)のストックが切れた夕は近場の自販機をいくつか廻って買い出しに行っていた。
もう四月とは言え、まだ空気は冷たい。夕は大量に買い込んだジュースを持参したビニール袋に入れ、早歩きで帰路についた。
その途中、公園の前で夕は足を止めた。
(そういえば、この公園には桜の樹がありましたね・・・)
住宅地の中にある公園、その中にひっそりと佇む桜の樹。満開になればこの時間でも近所の住民達が花見をしていたりするが、今はまだ五分咲きくらいなので公園の中は静まり返っていた。
「・・・・少し、見ていきましょうか」
桜は学園の敷地内にも何本も生えているし、今更珍しい物でもない。
しかしこの静かな夜、無人の公園で見るまだ咲き掛けの桜と言うのは夕を惹き付けた。
満開になってしまえば花見にかこつけてどんちゃん騒ぎをする輩が多くてゆっくりと桜を見るどころではないし、大体その様な騒がしい場所の中に身を置くのは性に合わない。
落ち着いて桜を楽しむのなら夕にとってはこの位が丁度良いのだろう。
なんだか少しワクワクしながら、夕は公園へと入っていった。

「やっほーーー夕くーーーーーーーんvV」
「・・・・・・・カモさん」
桜の樹のある方へと歩いて行った夕は、その下にあるベンチに誰かが座っているのを見つけた。
先客がいたか、と少し残念に思った夕だったが、よくよく見ると電灯の明かりが照らし出したその姿は明らかに彼の良く知る人物だった。
毛先だけが黒い白髪、だらしなくはだけたYシャツにジーパンの出で立ち、そして何より、普通ならあるはずのない獣の耳としっぽ。
彼の担任のペット(?)、オコジョ妖精のカモミール(人間ver.)である。
思わぬ先客ではあったが、こんな所で彼女に出会えたと言うのは、夕にとっては嬉しいハプニングであった。
「何してんのー?こんなとこで」
「ぼくは買い物の帰りです。あなたこそ何やってるんですかこんな所に一人で」
「あはははは、部屋でお酒飲んでると姉貴達に怒られるからさー。ホントはゼロちゃんのとこに行って一緒に飲もうと思ったんだけど、途中でこの桜見つけてね。こうやって一人でしんみり花見酒と洒落こんでるわけよー」
しんみりと言う割りにはテンションが高めだが、足元を見ると空になった缶ビールが数本転がっていた。すでに結構飲んでいる様だ。
「ねえねえ、せっかくだがら夕くん付き合ってよ」
「嫌ですよ酒臭い」
「いやーんつれなーい、おねーさん泣いちゃうーーあははははははは」
駄目だ。完璧に出来上がってる。
「はあ、仕方ありませんね。こんな飲んだくれをほおっておいて何かあったら大変ですし」
「いえーい夕くんゲットだぜー」
夕はカモの隣りに腰掛け、ビニール袋からジュースのパックを一本取り出す。
「お、丁度良いわね。よっしゃかんぱーい・・・って、何それ?」
「抹茶オレンジです」
「まった変なの飲んでるわねー」
「おいしいですよ。いっぱいありますから飲んでみます?」
「遠慮しとくわ」
「そうですか。残念です」
そう言って夕はストローに口をつけて中身を飲む。カモはそのよく分からない飲み物の味を想像しながらビールを一口、口に含んだ。

「やーそれにしても、まだ満開じゃないけどこれはこれで乙なもんね」
「ええ、そうですね」
電灯と月の明かりにほのかに照らされた夜桜。蕾は開ききっていないが、なんとも言えぬ幻想的な雰囲気があった。
ふと、夕はカモの方を見る。酔っている為か、少し上気した顔は何時にも増して色っぽく見えた。
ドキッ
そう思った瞬間、夕の心臓が跳ね上がった。
(な、お、落ち着くです自分!)
この頃、夕は少しずつカモを意識し始めていた。
最初はなんて人なんだろう、と思っていた。トラブルを引き起こしてネギ先生に迷惑をかけるわ、やけにおやじ臭いわ、隙あらば男の下着を狙うわ・・・考えてみればそんな事しか思い浮かばない。
しかし、いつの間にか自由奔放で底抜けに明るい彼女に夕は惹かれていった。
(不思議な人です・・・何故、こんなにも心を揺り動かされてしまうのでしょう・・・・って、またぼくはこんな事を・・)
夕は本人の真横でそんな事を考えているのがなにやら妙に恥ずかしくなって、それを誤魔化す様に抹茶オレンジを一気に飲み干した。
「ねえ、夕くん」
「へっ、な、なんですか?」
「最近どうなの?」
「何がですか」
「姉貴の事よ。少しは進展ありそうな感じ?」
「え・・・ええと、あの、それは、その」
その質問に、夕は思わず俯いてしまった。
「あーその感じだと全然みたいね」
「その・・・」
「ああもう皆まで言わないっ!焦らずにがんばんなさい、おねーさんも応援したげるから」
本人の気など知らずに、カモはあっけらかんと笑う。
「は、はい・・・・」
(・・・違うんですよ、カモさん。ぼくが好きなのは・・・・・)
言うべきか。自分が好きなのは、貴女だと。
(でも、そんな事をして・・・)
今の関係を壊したくない。こうやってなんの気兼ねもなく隣に座っていられる様な、今の関係を。
もしかしたら拒絶されるかもしれない。いや、その可能性の方が断然高いだろう。
(でも、それでも)
この想いは伝えたい。なんとなく、今なら言える気がする。
「・・・・・・あの」
ズイッ
夕が口を開こうとした瞬間、不意にカモが缶ビールを差し出してきた。
「ほれっ、夕くんも飲みなさい!飲んで嫌な事は忘れちゃおうっ」
「・・・・・・」
「ん?どした?」
「・・・ぼく未成年ですよ」
「あはは、細かいことは気にしなーい」
「まったく貴女は・・プッ、ふふふ」
「なによ、笑わなくてもいいじゃない」
完璧に言うタイミングを逃してしまった。もうこれは笑うしかないだろう。
「そういえば今なんか言いかけなかった?」
「いえ、なんでもないです。気にしないでください」
「ふーん?」
きっと今は言うべき時ではなかったのだと、夕はそう思うことにした。
どうやらこの片思いはまだまだ続きそうだ。

見上げれば桜の花。まだ開いていない蕾も、あと数日もすれば満開になる
それと同じ様に、この恋もいつか花開くことを願いながら
今はただ、アナタの隣りにいられることの喜びを噛み締めよう


「いよっしゃー!今夜はとことん飲むわよーー!!」
「程々にして下さいね」


.END

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