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修学旅行

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匿名ユーザー

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修学旅行 2日目 2班


今、俺達3-Aは京都にいる。場所はホテル嵐山。で俺がいるのはその一室…班行動の時
間まであと少し。起きなきゃだけど…んんっ…まだ眠いなー。

「おい!空いつまで寝てる気だ?お前神父見習いって人間が二度寝なんかしてていいも
んなのかよ?」

あーうるせーってお前だって二度寝好きじゃんかよ。


「わかってるわかってるって、明日哉君はうるさいねー」

俺のそばにいるやつがうるさそうなんで上半身を起こし起きる。あー欠伸がでんねー。こ
の部屋は残念ながら当然男しかいない。面子はスケコマシとさっきのうるさいやつ、漫
画家。室長はスケコマシ柿崎義砂だ。

「ったくしょうがねぇ奴だな。そんなんであの超の班でやっていけるのか?」

余計なお世話だと言いたいけどこれはこいつなりに気を遣ってくれる。まぁお節介には
代りがないんだけど。と、ドアを開けて義砂が入ってきた。

「おーい点呼とるぞ。お、空も起きたみたいだな。明日哉もいる。ってハルオは?」

そういえばいない。明日哉を見ると明日哉はベランダに目配せした。

「はっはー。ついに書きあがった!美少女教師と内気な少女のいじらしくも濃厚な恋の
物語が!」

ベランダには原稿らしき物を高らかに掲げ山に向かって叫ぶ早乙女ハルオがいた。朝から
テンション高いこって。

「…さて、とりあえずみんなそろってると。10分後にロビーに集合だから着替えたら
自分の班に行ってくれな。ところで…」

義砂は俺を見てにやりと表情を変えた。

「今回俺達、班別々だよね。俺はお前ら以上に深い仲である円、桜子と行動するのは
まぁ当然として」

当然かよ!隣の明日哉と顔を見合すが今きっとこいつとは気持ちが一つになった。

「明日哉が若妻とその繋がりで図書館組連中と行動するのもわかる。」
「バッカ野郎!木乃香はそんなんじゃねぇ!」
「誰も木乃香なんていってないけど?」
「ぐっ…」

はは、相変わらずだなーバカレッドってなんでこっちを見てやがりますか?義砂さん。

「でさ、空お前はなんで超達と一緒なわけ?双子と仲良いんだし俺の班に来るのかなー
って思ってたんだけど?」

ジーッと俺を見据える義砂。なんか疑ってます?

「なーに言ってんの?双子繋がりで楓とも俺仲いいし自然な流れじゃね?」
俺の返答にちょいと不満気な顔した義砂は
「まっ俺の推測なんだけどね。いつも親しそうにしてる双子はあくまでも友達で空の
ほんとの好みはその逆のクールな天才超鈴音なのかなーと思ったわけよ。」

とぶっちゃけた。

「そ、そうだったのか!?空!」

やめろって、義砂、隣のまっすぐさんはすぐ騙されるんだから。

「それはない」

俺の目はきっと今、モブ用驚きの黒丸目になってるぜ。俺は顔の前で手を仰ぎ否定した。
いや、ほんとそれはないって。

「ふーん、まぁ今回の旅行で告って彼女くらいゲットしても悪かないぞ。超でも古でも
いいから当たってみれば?恋の悩みならいつでも相談に乗るぜ?」

そういい残すと義砂は一足先にホールへ降りていった。余計なお世話ッす。

「さーて俺も着替えっか。」

わけのわからん言いがかりから気を取り直し着替えようとするとドアをノックする音が
聞こえた。問答無用で入ってこないのをみると女子か。明日哉の若妻さん辺りかな。

「明日哉-一緒にロビーまで行きひんー?」

おっしドンピシャ!って俺には無関係だけど。

「あー木乃香か、今行く。」

当たり前のように答えて出て行く明日哉。この妻帯者め。といいつつ俺も明日哉に続いた。
ドアの外では明日哉と談笑する近衛木乃香すぐ隣に図書館組のバカブラックこと綾瀬夕
映と通称本屋の宮崎のどかがいた。そしてすこし離れたところに桜咲刹那。桜咲は切れ
るとアレだが普段は近衛から距離をとっている感じがする。

「あのー春日君、ハルオはいないんですか?」

来訪者を観察しているとおずおずと話しかけてくる本屋。あいつこの娘が仲良いって俺
には理解できね。

「ああ、中にい…」

俺が本屋に告げる前に室内から駆けてくる音が聞こえた。

「のどか!できたぞお前の希望を具現化したやつが!」

ドタドタと駆けてきた早乙女ハルオは俺の前を素通りすると宮崎の前にさっきのだと思
える原稿を突き出した。ってか宮崎の望んだ内容って美少女なんとかって奴?いいのか
その内容で。満足なのか?宮崎。そんな俺の気も知らずページをめくる宮崎。

「ありがとう!ハルオ!」

きゃあきゃあと喜び原稿を胸に抱え込む宮崎。よかったな!宮崎!…まぁこれも俺には
関係ねっす…
ロビーへと歩き出す中一人離れて歩いている桜咲に話しかけた。

「今日はあいつが近衛と話してても怒んないの?」

明日哉を指差し尋ねた。なぜか今日まで3年間飛ばし続けていた嫉妬のオーラが感じら
れない。

「…ええ、あのくらいなら、神楽坂さんにも許して差し上げてもいいかなと今は思って
ます。」

桜咲はそう少し困ったような嬉しいような表情を浮かべた。…な、なんだってー!?

「桜咲、昨日なにかあったのか?ま、まさか明日哉に惚れ――」
「違います!」

素早く俺の口を塞ぎだまらせる桜咲。やや焦っているようにも見える。これは…新しいか
らかいの種を発見っすよ。フフフ。

「ふーあなたは突然何を言い出すかと思えば…あまりくだらないことをいうと…あなたは
素人というわけではないのですからね………切りますよ?」

額に血管浮き立たせついでに汗も流しつつの笑顔は中々…からかい甲斐がありますよ?
まぁ達人を怒らすと怖そうだしこの辺でギブといきますか。

「あー悪かったってあのバカに桜咲が惚れるはずないことはわかってるって。」
「いえ…決して評価しないというわけではないんですが…」

怒気が消え途端に俯き小声になる桜咲。…ここはつついてみるべきかなー♪

「で、本当は何があったのさ?」
「…春日さんになら話しても問題ありませんね。昨夜お嬢様が関西側に誘拐されたんです」

…全然気づかなかった。ハハハ…。

「それで私とネギネ先生、と彼で助けにいったのですが…もしかしたら私ひとりではお
嬢様をお守りしきれなかったかもしれません。お二人の協力のおかげで今お嬢様はここに
いられるんです。ネギネ先生もですが彼があんなにお嬢様を守ろうという意志があるな
んて思っていませんでした。もっといい加減で駄目な人だと思っていたのに。昨夜の本気
の顔を見たら少し、見直しました…」

昨夜の事を思い出しているのか桜咲は満足気だった。明日哉の評価も急上昇中らしい。
やるじゃんか明日哉。

「むっ!?」
「どうしたですか?」

早乙女ハルオは頭髪にてラヴ臭なるものを感知できる。その顔に掛ける眼鏡を光らせ発
信源を嬉々として探すのだ。

「今、わずかにラヴ臭を感じた…」
「またですか。今度はどこからなんです?」
「背後から微量に…」
「背後?桜咲さんと春日君しかいませんですよ?」

振り返る二人の視界に入るのは桜咲刹那と春日空だけだった。

「あの二人がそのような関係だとは私は思えないのですが?」

疑問を呈する夕映にハルオはちちちと指を揺らした。

「あっまーいな!夕映は!恋はいつ何時どうのように発生するかなんて誰にもわからない
のだよ!そう!今この時このハルオ様の横顔にゆえっちがときめいてしまうこともない
とはいいきれない!」

夕映の肩を抱き大声で宣言するハルオに前後を歩く面々が会話止め振り向く。

「拷問です…これは…」

やっぱり友達やめようと何度目かの思考をする夕映だった。

「とりあえず聞き取りだけしてみようじゃない、夕映。」
「そういうことは朝倉君任せておけばよいのではないですか?」
「いやいや朝倉はドロドロした猥褻空間にしか興味ないんだよ。こういう純な気持ち達
は俺たちが導いてあげないと。な?夕映。」
「はー。仕方ないですね。ハルオがネタにしないか見張るのも大事な仕事です。」

夕映はさしずめ子供のいたずらを監督する親の心境だった。
ロビーに着く前にハルオが話しかけてきた。

「で、さぁ空。お前と桜咲の関係は実のところどうなの?」
「答えにくければ答えなくても結構ですよ。いえその方がきっといいです。」
「おいおいハルオ、少しばかり話しただけでそんな扱いになるんならお前や綾瀬はどうな
んだっての?あと宮崎とお前とか」

全然意思統一できていない二人組みに切り替えした。

「んー空、もしかしたら俺たちに嫉妬して…」
「春日君この男の戯言を真に受ける必要は全くありませんです。疑惑は全くの白。そ
ういうことですね?ご迷惑をおかけしました。」
「ああ!?ちょっと夕映~。」

大の男が小さな女の子に引きずられていく光景は実に情けないものだと他人を見て改め
て実感し自分もしっかりしようかなと少し思った。


ロビーにつくとネギネ先生の取り合いが行われていた。取り合いをしているのが女だけってのは…
まぁ男が取り合ってるのよりは健全か。なんせまだ10歳だし。

「あーやっと空がきたアル。他の皆はもうそろてるアルヨ。」
「いやぁ二度寝が気持ちよくてついつい、これは神父になるには必要な修行でさ…」

2班は俺を除いてもう全員そろっていた。

「おー神父の修行は随分気持ちよさそうアル。」
「クク、いけませんよ春日君。そのような嘘でクーさんを騙そうなんて。クーさんを騙
していいのは僕らだけなんですから。そのまま寝ていてくれれば新マシーンの実験台に
してあげられたのに実に残念です。」

無邪気に笑うクーの背後から現れたマッドに少々気味悪いものを覚えるがこれでも慣れた方だ。

「お、おはようハカセ。」
「はい、おはようございます。時間には正確に頼みますよ。」

後ろから時間守らないと実験台にされるアルヨーという声が聞こえる。お前はそんなこ
とされてるのか辛いなチャンピオン。いえ安全性は確認されてますからハカセを信じて
あげてくださいとの声も聞こえる。いや、四葉、まず実験台にされるってのがどーよ。

「超包子の面々は愉快でござるなー。」

と、天井から降りてくる楓。く、どう突っ込めばいい?ハイレベルだ。

「さて、クー全員そろったようだし出発の報告をネギネにしてくるといいネ。」
「了解アル!」

首領が静かに命じると部下が素早く動いた。そんな構図。

「や、超りん待たせて悪かったな。」
「いやいや空、気にする必要はないヨ。クーが早起きしたために今日は実験ができなく
てネ。ハカセ同様空を実験台にしようか思案していたところヨ。もう少し寝ていてもら
っても構わなかったカナ。」

爽やかな顔で語る内容ではないはずだよな…きっと。
クーが連絡を終えもどってくると超が俺を含め2班の全員を見渡し口を開いた。

「諸君準備は万端カナ?この修学旅行において我らの目的が観光と勉学とためだけでないことは
元より知っていた者も知らなかった者も理解して欲しい。」

え?ちょ、何いってんの?

「決してネギネや学園側に気取られてはならない。バレれば我々の進退に大きく響くこ
ととなる。今回の実地試験は今後の大規模行動を可能にする上で避けては通れない重要な
データを収集するのが目的ネ。」

ひと呼吸おき超は改めて全員を見渡した。

「みんなの力をこの超鈴音と超包子に貸して欲しいネ!」

一瞬の沈黙の後

「まかせ(てください!)(るアルヨ!)」

と続く超包子のみなさん。楓は楽しそうに眺めている。楽しむのが正解か?

「ありがとう諸君!クー体力の方は十分カ?」「充電完了してるアルヨ!」

「ハカセ、新成分の調合はどうカ?」「完璧です。」

「樹、仕込みの方はどうカ?」終了していますと答える四葉。

超は深くうなずくと俺と楓に向き直った。

「勝手に盛り上がってしまって悪かたネ。できれば二人にも参加して欲しいのダガ…あ、
もちろん予定の場所はちゃんと回るつもりヨ?」
「うむ、面白そうだし拙者は乗るでござるよ。」

即決?早!!

「おお、ありがとう楓さん、では空はどうカ?」
「俺は…」

こいつはやべー。やべー臭いがプンプンするぜ!学園にバレないようにだとか大規模行動
の下準備だとか。だが退学覚悟といえるような臆病な考えは命取りよ。この俺にそれは
ない!あるのはただ楽しむこと!それだけが満足感!家庭や任務など…

「と、いうわけでよろしく。」
「?お、手伝ってくれるカ、ありがとネ。」

ハハッこれはシャークティに怒られそうだなー。

「いいですか?あなたのクラスにいる超鈴音はすでに警告を3度受けている要注意生徒
です。定時に報告を……聞いているのですか!!」

出発前に受けた言葉を思い出す。目の前のクラスメイトは外見だけならごくごく普通。
そんでもって結構いい奴。なのに…ったく…。

「楓も空も手伝ってくれるアルかー?今日は楽しくなりそうアルネ。では2班さっそく
出発アル!」

「まぁ待つネ、クー。荷物の分配がまだ終ってないヨ。」

そういって超が手渡してきたのは背に背負うぐらいの四角柱の塊。結構重い。

「さてあと空、楓さんがあまりにも快く承諾してくれたので報酬のことを忘れていたヨ。」
「報酬、でござるか?拙者はなにかのんびりできるものがよいでござるな。」

楓の答えにしばし考え込む超。そこにハカセが横から意見を述べた。

「超さんアレはどうです?こないだクーさんで試した体を伸ばすマッサージマシーン☆
◎◆は?」

「いいネ…それ。」

黒い微笑みを浮かべる超。その会話に…クーは震えている。

「おや、なにやら嫌な予感がするでござるな…」

きっとやめといた方がいいって…このマッド供にデータという名の甘い汁を吸わせるだけ
だって。

「では楓さんには私達の自信作をプレゼントするヨ。性能はあそこで喜びに震えている
クーが証明しているから無問題ヨ。3年間の無料保障は元より希望があれば改修も請け
負うからネ。」
「かたじけない。超殿の自信作ならきっと良いものでござろうな。」

素直に喜ぶ楓。どうなっても俺はしらねー。俺はもっと堅実にいくぜ。フフッ楽しみを
追求しないとな。超の奴が動揺する顔を見るチャンスだぜ。

「さて空は何がいいカ?」

その言葉を待ってました!

「俺はそうだなー超りんが熱ーい口付けをしてくれる、とか?」

一瞬の静寂…
「おお!?」「ほほぅ」「…ム」言いますね春日君…と驚きの反応を示す一同。まぁ冗談
なんだ…

「いいヨ」

けどな………………え!?

「それにしても空は欲がないネ。神楽坂さんに短距離で圧勝できるような筋力増強マシ
ーンなんてのもあるのにネ。」

肩をすくめ残念そうにため息をつく超。もしかしなくても全然動揺なしっすか?むしろ
落胆しておられる…?

「よかったでござるな。空、なかなか言えぬことでござるよ。」

ポンッと肩を叩く楓。

「空が超とキスアルー!空の告白アルー!」
「…本気ですか?春日君…」

やけにマジな顔のハカセと頑張ってくださいと告げる四葉…

「いや…その冗談なんだって…ハハッやだなーみんな。」

俺が逆に動揺してるし…やるな超りん…。


2班の目的地は奈良公園。すごくオーソドックス。この奈良公園はほとんどの班が来て
いると思う。大仏だ寺だーは大体そろってるし春日大社に春日山なんてのもあるつまり…

「空!みるアル!空の神社と山があるアルヨ!」

こういう反応は織り込み済みだぜ。山まで駆けようというクーに楓が二つ返事で答えて
駆け出そうとしている。班行動は守ろうよ二人とも。
二人をなだめていると神社の建築技術に感心しながら構造について熱くなっていた天才
組と四葉が帰ってきた。

「見物するものもなくなったしいよいよ行動のときヨ」

渡された荷物をついに使うときってわけかー全く重みを感じないけど何が入ってるやら。
願わくば穏便に済んで欲しいねー。頭に浮かぶのは魔法、秘密、掟、眉間に皺を寄せた
シャークティと超の情報。おそらく行う行動は反魔法使い的な行動。まぁやばい事態に
なったらちょっと頼りないけど先生に連絡を入れればいっかなー。あまり固くない覚悟を
固め荷物を開ける――――――と『出張!!超包子!』の文字が入った制服?と肉まん
の具材が…な、なんだって―――――!?
驚愕に顔を引きつらせているとハカセが後ろから声をかけてきた。

「どうしたんです?さぁ春日君もその制服に着替えて店支度の手伝いをお願いしますよ。
仕事の内容はクーさんに聞いてください。」
「奈良まできて肉まん売りってマジッすか?」

商魂のたくましさに感心シマシタ。

「僕らが集まって先生の目を逃れて行うことといったら肉まんの販売くらいしかありま
せんよ。超さんの提案で通販を始めようとのことだったんですが校外でのマーケティン
グが十分でなかったので今回の実地試験となったわけてす。これも十分校則違反ですので
内密に願いますよ。ああ、それとですね今回の肉まんは関西用に新規の調味料を開発し
て…」

えらく長―くなりそうなハカセの話を遮る。

「先生の目を逃れてやてるのは肉まんの販売だけ?」
「はい肉まんの販売くらいです。」
「ふーん」

今回は白っかなー。
制服に着替えると目の前にはない胸を堂々と張ったクーが俺を見下ろしていた。

「さあ何ぼさっとしてるアルカ?新入り。超包子での足の使い方をみっちり叩き込めと
しゃっちょさんの命令アル!しっかり付いてくるアルヨ?」

えー厳しいのはちょっと…が問答無用で引っ張られこき使われることになった。


奈良からの帰り道そこには互いの働きぶりを褒めあい騒ぐ少年少女達がいた。そして
電車に乗り込もうとする時

「超さんそっちの電車だとホテルに行きませんよ?」

ガラにもなく電車を乗り間違えようとしている超にハカセが声をかけた。

「イヤイヤみんなに見せたいところがあてネ。何も言わずに付いてきて欲しいのヨ。」

顔を見合す2班の面々。

「聡殿も聞いておらぬのでござるか?」
「ははは、まぁ超さんの考えてることはわからないことが多いですから。」

楓の質問にハカセは苦笑いを浮かべることしかできなかった。

「超りんのお勧めとあれば喜んでのろうじゃん?」
「そうアル。早く連れて行くアルヨ。」

四葉も賛同し特に反対するものもなく2班は超の先導する電車に乗り込んだ。
そして山の手前の駅で降り森を抜け着いたのは京都北方の地。目の前に見えるは透き通った水を湛えた湖。

「うひょー綺麗アルネ。」
「森の中に静かに佇む様は中々に風情があるでござるな。」
「そう、ですね。とても綺麗です…この疲労した体には通常より多大なアドレナリンが分泌されているようでして視神経において

も…ハァハァ」

かなりグロッキー入ってるハカセと樹と比べてイエローとブルーはピンピンしてる。体力
すげーなー。完璧超人もその名に恥じず涼しい顔しているみたいだ。当の俺は…結構きてます…。
湖は綺麗だけど帰るの考えるとちょっと憂鬱になるねー。

「空には気に入ってもらえなかたカナ?ここはネ…地図にものてない湖。伝説では大昔に
暴れた強力な鬼が封じられているそうヨ。」

湖の方を向き静かに語りだす超。みんな湖と超を交互に見て話しに聞き入った。
てなんで現地人でも日本人でもない超がそんなことしってんのかねー。

「えとその鬼をこの私が復活させてやるネー!とか考えてないっすよね?」
「まさか、私のことをなんだと思てるのカネ空は。今回はそんなことしないヨ。」

一笑に付す超。

「そっかーそうだよね。」

今回は…か。

「そしてここはとある少女が新たな仲間と勇気、決意、手がかりを得て大きく成長を始
める場所でもあるヨ。みんなここは素晴らしいところヨ。ここへの来方は覚えておいて
損はないヨ。」


ホテルについてからも超の言動が気になって考え込んでいたがこの部屋の空気のおかげ
でそんな難しい気持ちも吹っ飛んだ。平和っすね。

「なーウチの気のせいやもしれんけど明日哉とせっちゃんが仲よーなったんと思うん
よ。昼もちょくちょく話しとったやろ?今もなにやら小声で話しとったし。」

俺たちの部屋には図書館組がきていた。

「うんうんこのハルオお兄さんも今朝からとある気配を感じているんだよ。3年目の浮気かな?明日哉君?」
「なに言ってやがる!お前の嗅覚はおかしいんだよ。そもそも浮気の前に俺は誰とも付き合ってねー!」
「そうです。私が神楽坂さんのような品性の欠片もないような人とそのような関係にな
るはずがないでしょう!」

あ、明日哉がへこんだ。

「す、すいません。言い過ぎました…。と、とにかくそのような事実はありません!
すでに私はお嬢様を守る剣として身も心も捧げているのですから!」

おおーと拍手が巻き起こる。

「聞いた?のどか。ここにも女同士の愛の一例があるんだ。お前も自信をもって生きていい!」
「うん…私、ネギネ先生に告白してよかった…これからも自信をもって頑張るね…」

ハルオの煽りに宮崎は拳を握りしめ答えた。

「私もその…応援してるですよ?のどかの好きになった人が年下の女の子でも…のどかの
気持ちが本物ならいいのだと…思うです…。」

綾瀬は少々抵抗があるみたいだ。普通の人がいて嬉しいっすよ。

「早乙女さん!あなたはどうしてそういう方向に話をもっていくんですか!?お、お嬢様
も顔を赤らめないでください。」
「ほらほら、木乃香も宮崎たちももう部屋に戻れよ。そろそろ消灯時間だろ?」

騒ぎを収拾しようとした明日哉だったがその言葉は思わぬ地雷だった。

「えーいやや。いつもは一緒に寝取るやない。旅行中は一緒に寝られへんのやからもう
少し一緒にいてもええやん。」
「こ…木乃香…どうしてお前はそういう誤解を産みそうな言い方を…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「説明を………お願いしましょうか。神楽坂さん…あなたを見直したのはやはり間違い
でした……よくも!このちゃんを!」

久しぶりに大爆発する嫉妬のマグマ。

「平和だねー。図書館組がくると明日哉と桜咲を肴に楽しめていいよなー。」
「まぁね。にしても空の方はなにもなしか。このままだと思い出もなく旅行終るぞ?」
「うるさいってのそういうお前の方は…いやなんでもねっす。」

しまった話を振るんじゃなかった。

「え?聞きたい?俺と彼女のラブトーク。さっきも電話してたんだけどさ」

とそのときナイスなタイミングでポケットの携帯が着信音を鳴らした。が、それはあんま
りナイスでもなかった。『着信   シャークティ』すっかり連絡のことは忘れてた。あまりでたくないがこれは仕方ない。

「空、電話でないの?」

着信の名前を見て興味津々の義砂。ふー後で追求されそうだ。

「はい…もしも」
「なにをしているんですかあなたは!!定時に連絡をいれなさいとあれほどいったでしょう!!」

耳をつんざく怒声。その声は部屋じゅうに響き明日哉たちも乱痴気騒ぎとめ驚きこちら
をみている。声でかすぎだってシャークティ。耳痛いし。そんななか義砂だけはにやけ
顔を崩していない。ほんと楽しそっすねあんた。

「お、お、空その人、シャークティさん?誰だよ俺にも紹介してくれてもいいんじゃない?」
「はは、バカだなー母親だよ母親、過保護で困るんだねーこれが。」
「誰が母…!!」

スピーカとレシーバを押さえ声を遮る。

「ちょっとはずすな。」
「ああ、ただし俺には定時連絡入れてくれよ」

片目をつぶり送りだす親友、手を振り答え廊下へ出人気のない場所まで歩きそこでよう
やく声をかけた。

「えーとお待たせしました。一応今は周りに誰もいません。」

わずかに間をおき返事が返ってきた。

「…コホン…定時連絡を怠った理由は?」

さきほどと違い落ち着いた女性の声がスピーカから聞こえてきた。一般人を前に大声を
出したのを多少気にしているのかいささか声がうわずっているようにも思えた。悪いね。
シャークティ。

「すみません多分シスターのお察しのとおりかと…」

携帯の向こうからブチっと切れる音は聞こえてきそうだけどさすがに大人のようで冷静
だった

「…まぁいいでしょう。ですが次回の連絡は忘れないように。あまりひどいとご両親に契
約の解消を通告させてもらいますからね。では任務の経過報告を…こちらは大丈夫でしょうね?」 
「はい、今日一日付いて回った上では特に怪しい行動はありませんでした。」
「そうですか。あなたに任されている時点でこの件の重要度は低いのでそうそう問題が
起こることはありません。安心なさい。ですがこれは修行の一環です。
気に食わない任務かもしれませんがしっかりこなすように。いいですね!?
次の連絡は怠らないようにいいですね!?」

その後もなんども念をおす師をなだめて電話をきった。

「はー気分転換に外でもでっかねー。」

クラスメイトを監視するって仕事はあんまり気分のいいものじゃない。

「だから魔法使いなんてのにはなりたくないんだよねー。」

ホテルを出て夜空を見上げると満天の星空が広がっていた。そのまま敷地を歩いていると無表情で
夜空を眺めている見知った監視対象が一人で立っていた。

「よ、超りん風呂上り?」

いつもの団子を解き浴衣に身を通しわずかに水気を帯びた姿はまさにそれ。

「空カ。いい湯だたネ。疲れたろうし入てくるといいヨ。」

顔だけを向け超は答えた。

「ほんと疲れたっすよ。クーの奴手加減してくれないし。ねーしゃっちょさん?」
「クーは体を動かすことに関しては容赦しないからネ。しゃっちょさんとしては今日の
二人の動きに大変満足ヨ。助かた。どうせならこのまま空も私達の一員になってくれ
れば良いと思てるがどうカナ?」
「それは勘弁、超りん。俺、商売は苦手だし。」
「そうか残念ネ。」
「星みてんの?」

超の視線の先を見ると星が光っていた。

「故郷をネ。」
「…湖で言ってたことだけど今日何か起きたりすんの?」
「今日は多分もう起きないヨ。」
「じゃあ明日とか?」
「それは誰にもわからないネ。」

フッと笑い続けた。

「今日みんなを連れて行ったが私が何もしなくても結局あそこにいくことになる者はいる。
私がしたことはちょっとした感傷ネ。」

自嘲気味に語る超は俺のほうを向いた。

「さて空は私が何か行動したときはどうするのカナ?」
「手伝いだけなら呼んでくれればやってもいいかな。」
「そういう意味ではないヨ」
「わかってる。でもさ俺はクラスメイト同士ではやりあいたくないからそういう日が来な
いことを祈ってる。超りんもそう思ってくれたらいいんだけど。」

俺の言葉に半ば呆れたような表情を浮かべた。

「空は重いものを背負って走れなくなるのが嫌いということカ。羨ましくもあり憎らし
くもあるネ。ま、嫌いではないガ。」
「だってさ、そんなやばい橋渡るより面白い…」
「黙るネ。」
短い一言とともに空の言葉はかき消された。けれど言葉を封じたのは聴覚でなく触覚。
柔らかい感触が唇に重なり同時に頬に掛かった黒髪の甘い匂いが鼻腔をくすぐった。
暖かい少女の温もりはしかしながら惚けているうちに間もなく離れた。

「あ、あえーと?」
「言葉を封じるほどの熱―い口付け。報酬ヨ。内容はソフトだがネ。では今日は助かたヨ。」

小さく笑い超はホテルへと足を向けた。そして10歩ほど歩いたところで思い出したように
足を止め背中越しに告げてきた。

「もし、要注意生徒超鈴音として私が行動したとき空が魔法生徒として立ち塞がるのな
ら覚悟しておくといいヨ。私は容赦はしない。私は空と違って背負ってるものがあるし
捨てられないからネ。空がふざけた態度だけでなく背負うもの守るものを見つけて本気を出して
ぶつかてくることをほんのちょっぴりだけ期待してるヨ。」

最後にいつもの不敵な顔をこちらにむけると今度こそ中へ入っていった。


「・・・・こういうのも思い出っていうのか、義砂?」

残した言葉と唇に残る感触はなんて正反対の世界なんだろうって思う。だけどさ超りん
中国はそらにはねっすよ・・・・つっこみ損ねたことを悔やむ俺はもう一度超の見ていた
夜空を見上げた。


修学旅行3日目 1、4班

「ついたー!USJ!」

ウチらは今大阪のUSJにきとります。空は快晴やしとってもええ日和です。一緒にき
とるんはウチら4班と柿崎達の1班。ゆーな達ははりきって遊び倒すつもりのようやけ
どウチはゆっくりのんびりしよ思います。

「さーてどこからいく?一番の目玉ジュラシックパーク?今走れば一番狙うのも可能かもよ?」
「あ、ゆーな一番狙う気だなー一番は渡さないぞー。」
「ふーん。風香この私と競う気?そのちみっちゃい足でこの私に勝とうなんて甘いんじゃないかなー?」
「いったなー。史人、こい!僕らの秘密忍法を見せる時だ!」
「ええー!?お姉ちゃんここでやるのー?」

はは、いきなりヒートアップしとる…それにしてもジュラッシックパークエリアまで走
るんは骨やで…

「まぁ裕奈走るのは大変だし近場から回ろう。10人もいるからはぐれたら大変だよ。」
「やだなーアキラ冗談だって。あ、でも人数は分かれたほうがよくない?」
「逃げる気だなーじゃあ一番のりは僕がもらうぞー」

風香が走り出してもうた。迷子になったらアカンし止めなっよ、お?

「行ってらっしゃーい風香。その間、史君は私がもらっておくね。ねー史君。」
「あ、まき絵さん。だ、駄目です。そんなに抱きつかれると…」

まき絵…

「こ、こらー僕のものに手を出すなーって何度言ったらわかるんだー!」

急いでUターンしてくる風香。

「明石、別れて行動したいって?俺は構わないけど。」
「え?あ、柿崎。いやー私はどっちでもいいんだけどねーその方がアトラクションのりや
すそうじゃん?」
「確かにそれはあるかな。円、桜子はどう?」
「私も別れた方がスムーズにまわれると思うよ。」
「私はみんなと一緒の方が楽しいと思うなー」
「アキラは?」

柿崎がアキラに聞いた。

「僕は一緒の方がいいと思う。風香と史人が心配だし。」
「それはちょっとひどいです。アキラ君」
「そうだー僕らをなんだと思ってるんだー絶対別行動―!」
「それはやだよね史君、私達離れ離れになっちゃうよ?」

史人に顔を近づけるまき絵。目尻に涙ためとるけどそれ本物?

「え?え?それは確かに嫌です。」
「こらー拒否しろー騙されるなー史人―」

まき絵達に確認するまでもないとの顔の柿崎。

「あの3人は賛成反対棄権1ずつだな。亜子と龍宮は?」
「え?ウチ?ウチはそやなーせっかくみんなできたんやし別行動してまうのはもったい
ない気がするわ」
「同感だ。」
「ということは別行動賛成が3人反対が4人棄権が3人かじゃあみんな一緒でいいかみ
んな。」
「異議なーし。ねぇ近場のE・Tのところまで走ろうよ。近くならいいんでしょアキラ?」
「ま、まぁ多分」
「異議ありー!」

風香は釘宮に諭され、みんなはゆーなに引っ張られるアキラを先頭にE・Tのアトラク
ションへと向かいました。

「にしても双子がいるとやっぱり騒がしくなったな。」
「でもそのおかげで楽しくなってるんじゃない?私は好きかなこの雰囲気。そう思わ
ない?義砂。」
「そうだな。円も楽しんでるならなによりって何さ桜子?」
「にゃはは、なんか賭けがしたくなってきっちゃったよーん。」
「お、いいね。で今日は何を対象にするんだ?」
「それはね――――」
「あー待って史君―」「逃げるなー」「もういやですー」

後ろから迫ってくる足音と声――

「この声は…ひゃっ!?」

振り返った瞬間背中に当たった強い衝撃でウチはうつ伏せに押し倒された。

「アタタ…」
「ご…ごめんなさいです和泉さん!」
「史人はきにせんでええ。悪いのは後ろの二人やろ?」

膝をさすりながら立ち上がるとまき絵、風香とも申し訳なさそうな顔をしとる。仲ええ
のはええんやけどもう少し見境をもって欲しいところやな。

「ごめーん亜子大丈夫?」
「大したことあらへんよ。せやけどまき絵はほんま史人すきやなー。付きおうたりしたい
とかは思わんの?」
「やだなー史君はかわいい弟みたいな感じだよー。恋人にはまだはやいってー」

…精神年齢的には…いやなんでもあらへん…

「遅―いぞーそこー早くこないと昼ごはん奢らせるぞー?」
「ゆーな待ちくたびれているみたいや。急ごかまき絵。」
「そうだね。」


E・Tのアトラクションは自転車?のようなものでゆっくりまわる安心設計でした。
内容もE・Tを救うっちゅーええ話でしたし家族で来るにはええのかもしれません。

「くーもう少し刺激が欲しかったかなー。E・Tが操られてよだれをたらしながら襲い掛かってくるとか。」
「裕奈、それはもう作品が違う」
「そうですー明石さん。それではE・Tさんがかわいそうです。」
「明石、刺激が強いのがいいのか?じゃあこれいっとく?」
「どれどれ柿崎どんなの?」

ゆーなが覗き込んだパンフにはバックドラフトの文字が

「いいねーそれ色んな意味で燃えそうじゃん」
「もちろん最前列を狙うんだそこが一番すごい。」
「OK!」

悪巧みを考え付いたような得意顔の二人。

「でも義砂、確かに最前列は迫力すごいらしいけど危ないとも聞くじゃない。大丈夫?」
「大丈夫だってアトラクションだしさー。それに釘宮は危なくなったら柿崎に守っても
らえばいいじゃん?」
「な…!?何言ってんのよ裕奈!。」
「ああ、安心しろって円達は俺が守るよ」
「―――――ッ」

釘宮、顔、顔―赤いでー。

「危険が迫ったときは俺も全力を尽くそう。」
「龍宮さんはほんま強そうやもんなー。」
「いや、和泉。俺もまだまだ未熟だよ。」

その言葉にアキラが反応した。

「そう聞くと本当に達人みたいに聞こえるね。」
「…惚れた女くらいは自分で守れよ大河内。」
「え?あ、うん…」

アキラの好きな人って…まぁええかなんとなくわかるし。
せやけどアトラクションいくだけやのになんやこの緊張感は?

「みんな暗いよーガンガン燃え上がる家事現場をみてドンドン盛りあがっちゃおうよー」
「史君は私が守るからね!怖かったらお姉さんに抱きついてもいいからねー。」
「それは僕のやくだぞーまき絵―」

そんなこともあらへんか…


ウチら運良く…いや柿崎達の工作で柿崎とゆーなの目論見通り最前列で見られることなりました。

「アキラ!すごっすごくない!本当に熱いよ!」
「すごい…」

大音響と熱風で構成される惨状。これはお子様には刺激が強―てアカンな。

「ひーお姉ちゃん怖いですー。」
「な、泣くなー史人―ぼ、僕は全然怖くないぞ?」
「わー!きゃー!熱―い!怖―い!」

まき絵…
確かにこれは迫力ありすぎやけど…

「中々良くできているな。本物と比べることはできないが」
横で腕を組みながらアトラクションを見上げる龍宮さんはなんやえらい懐かしそうな顔
しとる。男前ではあるんやけどこの近よりがたい感じがどうもなー

「ん?どうした和泉。怪訝な顔して。」
「な、なんも」
「?」

「ヒューいいねーこの臨場感。USJに来た甲斐があるってもんだ。」
「そ、そうね」
「あー円さてはびびってるねーにゃはは。」
「す、少しだけよ…」
「それももうそろそろ終わりみたいだ。クライマックスではセットがこちらに飛び出し
てくるらしいぞ。」

こんなのが現実に起こったら人が大勢死んでまうんやろな。

「なぁ龍み…」
「気をつけろ和泉」
「へ?」

舞台に振り返ると今までで最大の爆音とともに大きななにかが倒れてきおった。

「い…いやー!?」

恐怖のあまりそん時ウチは手近なものに抱きついたんと思う。

「いややー!まだ付きおーたこともないのにしにとーないー」
しばらく泣きじゃっておったウチにアトラクション終了を告げるアナウンスが流れた。

「もう大丈夫だ。目を開けてみろ。」

ポンッと頭に乗せられる手。恐る恐る片目を開け声のほうを見上げると暖かい表情をした龍宮さんがおった。

「ヒヒッ。亜子―なーに龍宮さんに抱きついてるのかにゃー。」

改めて自分格好を見直すと力いっぱい龍宮さんに抱きついとった。

「あわわ、ウチ、なんてことを…」
「気にしなくていい。怖かったんだろ?」
「え、ええ」
「それが正常な反応だ。こんな空気には慣れるものじゃないからな。」

小さく笑うと龍宮さんは背を向け歩いていった。

「や、やっぱりかっこええかも…」

そのときウチの様子をうかがう影があった。

「桜子、まず一勝か、やるな。」
「まだまだこれからだよー」
「あのポーッとした顔。亜子もまんざらじゃなさそうね。」

そしてイベント好きのゆーなも

「うんうん後は龍宮さんに亜子の気持ちを受け入れさせればオッケーって感じじゃない?」
「それは気が早すぎじゃないかな裕奈」
「まぁアキラのいうとおり少しずつあの二人を意識できる空間に放り込むのが吉だろう。
で次のアトラクションはBTFにしよう。これは最大8人乗り俺たちは10人この意味
みんなわかるな?」
「おーーー!」


次のアトラクションは柿崎達の意見が通ってBTFにいくことになりました。

「まき絵は情けないよねー怖い怖いって叫んでてやっぱり史人を守れるのは僕だけだね。」
「ふ、風香だって涙目だったくせにー」
「二人とも喧嘩はいやですー。」
「くー!元はといえば史人がはっきりしないのが悪いんだぞー。こーなったら」

風香は手を伸ばし史人をあっという間に抱きしめた。

「お、お姉ちゃん?」
「ふ、ふふ。どうして今まで気づかなかったんだろう。僕の体の虜に史人をしちゃえば永
久に僕のものじゃないか。そうだキスしてやるぞ史人。史人まだしたことないよねー?
初めての相手は誰でもないこの風香だーーーー!」
「だめですー!」
「やめてー!風香―!」

そして…次の瞬間…風香の体は宙に浮いていた。

「3人ともいつまで遊んでいるつもりだ。早く来ないとおいていくぞ。」
「ぐ…龍宮」「龍宮さん!?」「真君!?」

片手一本で持ち上げられている風香は悔しそうに唇を噛んだ。

「では遅れるなよ」

風香を下ろすと悠然とした足取りで去る真に史人は追いすがった。

「真君おいてかないでくださいー。」
「龍宮…許さないぞー僕の怒りを聞けー!」

前を進む二人を見つめながら風香は怒りの咆哮を上げた。


「さ、はやく来い円、桜子!ほら風香と史人もだ」
「アキラ、まき絵早く!」

柿崎とゆーなの誘導で乗り込む。よしウチも!って

「ごめん亜子これ8人のりみたい悪いけど次のに乗って。大丈夫幸い1人じゃないみた
いだし、ね?」

ゆーなその表情全然悪びれた様子あらへんみたやけど…残されるんはウチ…と龍宮さん?

「和泉一人で乗ってきてもいいぞ。俺は別に乗らなくてもいい。」
「い、いえできれば一緒に乗ってもらえませんか?一人はいやなんで。」
「…わかった。」

は!?これってウチら2人きりやない?で、でも龍宮さんはクラスメイトなんやし少し
くらいなかよーなってもええよね。前を歩く…龍宮さん、龍宮、おっきな背中やなー大人
っぽいてゆーか男らしいわー

「もうすぐ始まるぞ和泉。」
「え!?ウチいつの間にかすわっとる!?」
「フフッそれにしてもいいのか新幹線でも酔ってたみたいだがこれはその比ではないみたいだぞ?」
「エエッ!?」
「上下左右斜めに揺れるタイムマシンデロ号の旅をお楽しみくださいとのことだ」
「斜めにも!?ウ、ウチお、おりまーす。」
「残念、少しばかり遅かったみたいだな。動き出した。」

無情な機械音が部屋に響き始めた。

「ヒ、ヒィィーー!!」

それから数十分ウチは機械による拷問を受け続けた。か細い意識の中で隣をみると龍宮
さんがこちらを見て微笑んでおった…。

「あ、うあ…氷が、恐竜が…」
「本当に目を回しているな。吐き気を抑える薬だ飲んでみろ。」

肩を支えてもらい薬を受け取る…ウチ今えらく情けないわ…

「あ、ありがとうございます…。」
「ん?膝を切っているな。血は固まっているみたいだが。」

血、血やて?

「ど、どれ…ほんまや…あっ…」

赤いイメージが脳内に一杯になったときウチは意識を手放した。

「!?和泉!!」

意識を手放す最後の映像は必死でウチを支える男の人の顔やった…


「亜子と龍宮さんどーなったかなー」
「亜子はともかく龍宮は恋愛に興味はなさそうだけど。」
「えーなになに?亜子ががどうしたのゆーな?」
「それはねーまき絵…」

「そろそろあいつら出てきてもいころだけどな。」
「二人でフェードアウトしちゃったとかない?」
「円、それは面白いけど多分ない。」
「そ、そうよね。亜子と龍宮君に限ってそんなことは」
「あー出てきたよー!」

桜子の指差す先に8人の視線は集まった。

「ゆ…裕奈あれは…」
「こりゃーおったまげたねー」
「きゃー亜子いいなー。」
「「「お姫様だっこか」」」
「これは正直驚いた…」
「ねぇでも亜子の様子おかしくない?」
「あ、ほんとだ亜子ちんぐったりしてるね。」
「クククきっと龍宮のやつが亜子にひどいことしたんだ。」
「お姉ちゃん真君はそんな人じゃないですよ。」
「ふーんわかるもんか。」
「私見てくる!」

亜子の異常に血相を変え円は駆け寄った。

「釘宮か」
「龍宮君亜子はどうしたの?」
「アトラクションに酔いその後膝の出血を見て気を失った。膝の血はすでに固まってい
たが一応処置はしておいた。今は気を失っているだけだ。心配にはおよばんさ。」

その言葉に円は安堵し胸を撫で下ろした。

「そう、ありがとう龍宮君」
「和泉はクラスメイトであり友人だ俺でもこれくらいするさ。」

20分もすれば目が覚めると断言する真の力強い口調には年季といえる説得力が存在し
異論を挟むものはなかった。

「じゃあ亜子が起きるまでそこのベンチで休もう。アトラクションに並ぶので皆結構疲れ
ただろうし。それで亜子が起きたら昼食にしないか?」
「そうね。もうお昼だし調度いいわ。」

義砂の言葉に答えみな思い思いにベンチに腰をかけた。
日は中天に差し掛かり熱く輝く太陽のもと園内の喧騒はいよいよ盛んとなる。また人々の
足音の多くは飲食店へと向かい1日の半分が終わろうとしていることを告げていた。

「あーやっぱりじっとしているのはもったいない!私どこの店がいいか見て回ってくるよ。」
「あ、私もいく」

裕奈が元気よく立ち上がるとまき絵も続いた。

「なら俺もいこうかな。アキラはどうする?」
「僕は残るよ。亜子をみてる人も必要だろうし」
「アキラー、寝てる亜子に悪いことしないでよー?」

ニターとした顔つきでせまる裕奈。

「しないよ…裕奈こそ迷子にならないようにね。割と方向音痴なんだから。」
「ほっとけー」
「大丈夫だよ裕奈には私がついてるもん」
「…」
「私は大河内君と亜子を見てるわ。義砂美味しそうなお店探してきてよ?」
「円」
「何?」
「牛丼屋はないかもしれないけど…」
「そういう意味じゃないわよ!」

円は顔を赤らめて叫んだ。

「にゃはは円かわいいーよー。」
「史人―史人の好きな甘いもの探してきてやるからなー待ってるんだぞー」

弟を抱きしめ耳元で囁く姉。実は二人とも頬を朱に染めている。

「はわわーお姉ちゃんみんなみてますよー」

弱弱しく抵抗するも真によって寸止めにさせられたせいもありテンションがあがったま
まのおませな姉は悪乗り中である。

「じゃあ誰もみていないところならいいんだなー」
「わわわ」

行動をエスカレートさせようとした刹那風香は食券長者の腕に絡めとられていた。

「風ちゃんお店探すなら私たちと一緒にいこー」
「わ、わ、!桜子!?は、はなせ~」

桜子の動きに多く者が頭が下がる思いであった。

「柿崎、私とまき絵はこっち見てくるからそっちよろしく」
「ああ、わかった。いくか桜子…と風香」
「おっけー」
「ぬぅ~」

6人が去り4人が残った。

「あれ龍宮君は?」
「さっきトイレに行くって言い残していったよ。…釘宮さん牛丼好きだったんだ。」
「わ、悪い?」
「いやそうじゃなくて…仲いいね柿崎と。」

アキラの言葉に円は少し寂しげな顔を見せた。

「大河内君達には敵わない気がするけどな。性格知り抜いてるって感じだもの。良かっ
たの?一緒にいかなくて。亜子は私が見てるから平気だったのに…あ、もしかして本命
は亜子?」
「本命とかって…ええと…」
「駄目だぞーはっきりしないと。誰かに取られちゃってからじゃ後悔しても遅いんだから。」

年上のように諭す円にアキラは苦笑しうなずいた。

「…そうだね…」
「あの二人に相談がしたいことがあるんです」

アキラと円が振り向くと史人がうつむきつつ立っていた。

「史人…あんたの言いたいことはなんとなくわかるわ。なんてゆーかもう危険水域?」
「はい…」


「いやー甘いものが目玉のお店が多いねー私はもうどこでもよくなっちゃうな」
「そうだよねーあーあのパフェ美味しそう」
「で、まき絵どうするのー史人取られそうじゃん?」
「う、やめて考えないようにしてたんだから」
「まき絵がしっかりしないと史人が禁断の世界に連れて行かれちゃうよー。一度そういう
世界に嵌っちゃうとなかなか抜け出せないっていうしねー史人がもう普通の恋愛できな
くなっちゃうかもよ」
「…ゆーながいうなら本当かも…私、体を張ってでも風香から史君を守ってみせる!」
「ちょっとそれどういう意味だー!?こらー」

裕奈の突っ込みを後頭部に受けながらも決意を新たにするまき絵だった。


「あの店は和風な感じがいいかも、あっちの店はどう思う…って桜子そのクレープ何
個目?」
「んー3個目かな。まだまだ入るよ」
「食べ過ぎて自慢のプロポーションとやらが崩れてもしらないぞ?」
「大丈夫、大丈夫。動いて歌って消費しちゃうから。ところで良さげなお店は決まったの?」
「お前がクレープを食い歩きをしてるうちに大体はね」

皮肉を飛ばすもそんなもので目の前の娘の破顔は崩れない。

「さすが義砂だねー私が手伝うまでもないよー」
「…まぁいい。ん?おい桜子、風香はどこだ?さっきまでお前とクレープ一緒に食べてなかった?」

桜子のとなりをみるといるべき双子の片割れがいない。あわてる義砂に対し桜子はし
れっとした顔で答えた。

「風ちゃん?たっちんを見つけた!とかいって駆けていったよ?」
「たっちん?ああ、龍宮のこと。けど本当に龍宮だったのか?心配だな。店探しの目処も
ついたしとりあえず一度みんなのとこに戻ろう」
「ねーねーところで彼女とはうまくいってる?」
「まぁ多分。昨日電話で学祭のライブの話したら喜んでいくいくとか言ってたよ。ライ
ブで顔合わせたら相手してやってくれ。」
「うん。そっかー順調なんだねーなによりなにより」

悩みなど抱えていなさそうな桜子の満面の笑みに苦笑する義砂だった。



鳴滝風香は物陰に身を潜め人気のない場所で電話をしている男を注意深く見ていた。

(もう少し近づけたら電話の内容が聞こえそうなのにここから一歩でも前にでると隠れる
場所がないし…くそー)

「・・・はい・・・・・・こちらはなにも・・・・大したことではないですよ・・・・・・
やはり向こうに・・・・・・はいわかりました・・・・・・・では先生もお気をつけて」

男が電話を切り会話は終わった。

(ちー終わったか)
ますます慎重に身を隠し男の動きをじっと見据える風香。が突然男の姿は掻き消えた。
まばたきやよそみをしたわけではない。だというのにその男は目の前から消滅したのだ
った目の前で起きたことが信じられない風香は思わず身を乗り出した。

「な!?な!?一体何?」

そして

「こんなところで何をしている鳴滝姉」

声は後ろから聞こえた。


ウチが目を開けるとアキラ、釘宮、史人、ゆーな、まき絵が話しとった。

「ねぇ裕奈、まき絵、気に入ったお店はなにかあったの?」
「いやーどれも似た感じで私達の目に適う店はなかったかなー。ここは柿崎達に期待だ
ねー」「ねー」

そんなゆーな達をジト目で見つめる釘宮。

「ふーん。そう。どう思う?大河内君。」
「…多分途中から違うことに興味が移って気が付いたらそんな目的あったっけー。じゃな
いかな」
「う」「えへへ、ドク爺さんの独演会が面白くて。」
「まき絵それ35点や」
「亜子!?」

みんなの視線があつまる。なんや恥ずかしいな。

「ごめんな、みんな気い失のーてたみたいや。」
「いいのよそんなことは。どこか痛いとか気分が悪いとかはないの?」
「うん平気や。龍宮さんに酔い止めももらってのんだし」
「心配させてくれっちゃって。亜子が龍宮さんにお嬢様だっこされて出てきたときは驚いたなーすこーし羨ましかったかなー」

ゆーながわざとらしく語尾を上げる。

「お、お姫―!?」
「ほんとほんと龍宮さんは大人びてるからすごくさまになってたんだよ?」
「と、とにかく龍宮さんにお礼言わな!」

そのときウチの求めるその人は向かいから歩いてきていた。

「目を覚ましたか和泉」

涙目でぶるぶると震えた風香をつれて…その様子に即座に反応したんは史人やった。

「お姉ちゃん!」

史人の姿を目にした風香は龍宮さんの腕を振り払うと史人に駆け寄った。

「ふ、史人~怖かったよ~あいつ化け物、怪物、お化けだよ~」

真を指差し叫び泣きじゃくる風香を史人はきつく抱きしめ正面の人を睨み付けた。

「お姉ちゃんに何をしたんですか?真君!」

史人の勢いに一瞬意外な顔をした真だったがすぐに楽しそうな顔なった。

(ほう…少しはいい顔をするようになったじゃないか。近しいものの異常に突き動かさ
れるなにかがあったか。)
「史人、俺が風香にひどいことをしていたらどうするつもりだ?」

真は低く通る声で告げる。橙の瞳に宿る魔眼の力を用いずとも人を気圧させるには十分
であった。幾たびもの戦場を生き抜いてきた者の存在感が皆を圧倒し沈黙させる。
こ、怖い…龍宮さん…。なんつー顔しとるんや…う、ウチ足が動かへん…。

「謝ってもらいます!」

だが真の目の前の少年は怯えの色を見せつつも目だけは抵抗の意思を失っていなかった。

「ぷ、くく、ははっいい顔だ見直したぞ史人。安心しろ。後ろから声をかけて脅かした
だけだ。驚かせて過ぎてしまったようだが。」

重い空気を破ったのは真本人だった。

「ほ、本当ですか?」
「ああ、嘘は言わないさ」
「そ、そうなの?お姉ちゃん?」

未だに泣き続ける姉に尋ねると

「電話が止まって目の前で消えて後ろに怖い声がー!」

混乱しているみたいだけど驚かされたのは事実みたいだと史人は納得した。

「おーい戻ったぞー風香はいるかー?」
「あれー?どうしたのー?みんな猛獣でもあったみたいな顔してるよー?」


昼食をとる店は柿崎の提案によりジュラシックパークエリアにあるレストランに決まりました。

「うーん、いいお店だねーフルーツが豊富だよーこのお店。よく見つけたねー義砂」
「お前は本当に何も見ても聞いてもいなかったんだな…」
「えへへ。ごめんねークレープが美味しくてさー。ねーねーまきちゃん、さっき固まって
たけどなんでー?」
「そ、それはね大きな声ではいえないんだけど龍宮さんが風香を連れて帰ってきたときに
風香の様子がおかしかったの。それを史君が問い詰めたら龍宮さんが怖い声だしてね。
それで私動けなくなっちゃった。でねでね龍宮さんを問い詰めた時の史君はなんかかっ
こよかったんだよー」
「成る程ねーたっちんは時々人をバンバンぶっ殺しそうな雰囲気だしてるもんねー」
「バンバンって…ゴクッ…」

桜子の放言を受けてまき絵は横目で真を見たが桜子の言葉にも平然と笑って流している様
にまき絵はかえって背筋を凍らせた。

「桜子、それは失礼だよ。それよりライブの楽器の割り当ては昨日話したのでいいの?」

割って入ったのは円。

「いいんじゃないかなー後はベースを誰かに頼む必要があるけどね」
「チケットなんかはクラスのみんなにも配るんでしょ?」

円がとなりに座っている義砂に尋ねた。

「ああ、後は家族とか学外のダチとかかな」
「…当然恋人にも渡すんでしょ?」
「他のバンドの奴らは彼女が最優先とかいってたな」
「義砂も…なの?」
「…ああ」

義砂は答えると円から目をそらした。隣り合う二人に訪れる数瞬の沈黙。

「あはは、彼女が最優先なのは当然だよね。義砂にとって彼女は一番の存在だもんね!
私ったらなに言ってるんだか。ははー忘れて。」
「円…」

再び沈黙が訪れるということ…はなかった。

「えー!?柿崎って彼女いたの?誰?どんな子?」

恋人、彼女という単語に反応したのは明石裕奈。テーブルに身を乗り出し格好の獲物を
見つけたというような瞳で義砂、円をみつめた。

「明石、今はその話はやめないか?」
「んー?隠すということはもしかして3-Aの誰かとか?もしかして今ここにいる誰か
とかー?釘宮、桜子あたりが怪しい筆頭だけどー」
「私は…違うわよ」
「私と義砂がー?にゃはは、それ全然違うよーゆーな」

恋話に華を咲かせるみんなを龍宮さんは静かに暖かく見つめておった。

「あのー龍宮さんはああいう話興味ないんですか?」

ウチはとなりに座る龍宮さんに話しかけた。

「多分和泉ほどはないな。こう眺めているだけで十分だ。恋に興味がありそうな和泉に
俺の少ない経験からのアドバイスをさせてもらうとだな。好きになる相手はちゃんと選べ
外見や雰囲気だけでなく相手の本質と世界を共有できるものかを見極めてからな。それ
ができなければ相手に引きずられとんでもない人生を歩むことになる。」
「…」

龍宮さんはどうな経験はしてきたんやろか。今の口ぶりやと女の人とつきおうたこ
とがあるみたいや…
短い会話は止まり二人の食事の音だけが耳に響く。
せや、それとなく誰かとつきおうておるのか聞いてみよ。
亜子が真の顔を見上げるとそこには口を半開きにし彼方見つめたまま小刻みに震えてい
る真の姿があった。今さっき諭すような口調で恋を語った男の面影は微塵もなかった。

「龍宮さん!?」

驚き思わず声を上げる亜子。

「グ・・・・・・」
「?」
「グボガァァァ――――――!!」
「きゃああああああ!?」

奇声を発し立ち上がるとすさまじい勢いでトイレへと消えた。

「な、なにが起こったんや?」

亜子は目の前で起こったことが一体なんなのか全く理解できなかった。真はどこへ消え
たのか。今の物体がはたして本当に真だったのか。しかし答えは意外なところから示
された。

「ククク、いい気味だー!楓にいの情報はバッチシ。あんな龍宮をみれるなんてねー。
一度とならず二度までも僕に恥をかかせた報いだー。」

一斑と四班の全員だけでなく店内にいる多くの客が真の走り去ったトイレのほうを呆然と
見やるなか風香の高笑いだけが響いた。
風香のいたずらか、龍宮さんなんかとんでもないもん食わされたんちゃうやろか。めちゃ
きつそーな顔しとったもんなー。…あんな姿みてなんやけど少し親近感沸いたわ。あの
人は決してウチと交わらん人やない……トイレまで見にいったほうがええかな?ウチ一
応保険委員やし。

「ウ、ウチ様子をみてくんな」

そして亜子がトイレのドアを開けると洗面台の前で憔悴しきった真が荒い息をついていた。

「…ト、トマトサラダ注文したのにいつの間にかエビとオクラが混入していた…

この俺がいつやられたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうっだった…拷問やフラッシュ
バックなんてそんなチャチなもんじゃない…もっとおそろしい地獄を味わったぞ…」
「あ、あの…」
「楓!!貴様だな俺の秘密を漏らしたのは!…そして実行したのは双子…風香か…こん
な気分になったのは久しぶりだなフフフ、楓…貴様はカエル責めの刑に決定だ。だがま
ずは実行犯にお仕置きが必要だな…」
あ、あかん。今、龍宮さんをここから出したらなにをするか…

「ま、待ってな龍宮さん!」

不気味な笑い声を上げて立ち上がる真の前に亜子は立ちふさがった。

「和泉?」
「龍宮さんは大人なんやから風香と同じことしたらあかんて。それに風香はもう怖いめ
にあっとるんやしこれでおあいこにしたらどうや?風香を嬲る龍宮さんなんてウチはみ
とうない」
「・・・」
「だ、駄目?」

しばし目をあわせていたが真は目を閉じ深く息を吐いた

「見苦しいところを見せた。エビとオクラにはそれぞれ少しばかりトラウマがあってな。
ついつい感情的になってしまったようだ。すまないもう落ち着いた。この感情は全てあの
ろくでなし忍者に向けることにする。」

長瀬君なら平気やろ…多分…

「いえ、今日は色々お世話になりましたしこのくらい当然です。ウチのほうこそ手を煩わしたり生意気なことゆーたりしてすんま

せん。」
「いや俺のほうこそな」

しばし二人は互いに頭をさげあった。


「ウチ、少し今の龍宮さん見れて少し嬉しかったです。」
「あれをか?それは趣味が悪いぞ。」

真は渋い顔をした。

「お、怒らんといてくださいね。なんとゆーか龍宮さんはクラスの中でも一歩引いてる雰
囲気があって仲よーなりたいと思ってもなんや近寄りがたい雰囲気があったんです。せ
やけどさっきいたずらに打ちのめされたり怒ったりしてる龍宮さんをみたら少し距離が
縮んだ気がしたんです。」
「…それはやはり趣味が悪いな。俺も和泉と同じ中学生だ大本は大して変わらんさ」
「うう、すんません。でも桜咲さんや長瀬君とまではいかなくても龍宮さんと仲よーな
りたいゆーんは本気です。なんの取り柄もないウチやけど少しでも気に留めてもらえた
らええなと思います。」

照れながら内心を吐露する亜子をまっすぐ見つめていた。

「刹那も楓も…和泉、お前も友人であることに変わりはない。大事に思っている。そし
て勘違いするなよ。お前のことを必要としている人間はたくさんいる。今も俺を止めに
来てくれたのは和泉だけだ。お前のおかげで助かった人間がいる。だからそんなに自分
を卑下しないでくれ。あの時和泉を必要としていたのが俺だ…」

優しい口調と表情で語りかける真に亜子の心は蕩けかけていた。
ああ、そんな顔でそんなこと言われたらホンマ惚れてまう。せやから聞いとかな。付き
おうとる人がいるんか。遠まわしに…

「龍宮さんは付きおうとる人はいるんですか?例えば桜咲さんとか?」
わー!!何めっちゃストレートに聞いとるん?いきなりこんなこと聞いたら嫌われてま
うやないか!

この言葉に真の表情は硬化した。

「…やはり和泉も恋愛話が好きか。刹那に聞いてみたらいい面白い答えが聞けるかもし
れんぞ?」

だが亜子は真の変化に気づかなかった。
今の答えやと桜咲さんとは付きおうてあらへんのや…でも付きおうてないともゆーてお
らんし…ど、どないしよう?
一人で百面相を始めた亜子に真は続ける。

「さっきもいったが相手は選べ。和泉、友人としてなら相談のろう」

この言葉を聴いたとき初めて亜子は真の顔から柔らかさが消えていることに気づいた。
今の言葉…もしかして予防線…張られた…?

「そろそろもどろう。和泉、来てくれて助かった。」

真の言葉は亜子の劣等感を刺激し真の後ろにつき従う亜子の表情は暗く沈んでいた。


「ねぇ…大河内君…」
「うん、僕らの助言は効果がないどころか逆効果だったみたいだね…」

円、アキラは罪悪感に苛まれていた。彼らの右隣には真の復讐に怯える姉とそれを抱き
しめ励ます弟。数分前、真に一杯食わせ意気軒昂と胸を張る風香に史人が一言伝えたのが端緒となった。
楓が史人に残した一説、エビ食い真暴走伝説について―――を伝えたのが。

「僕らは確かに史人が男らしくなって風香の保護が不要となれば風香は次第に弟か離れ
ていくと思ったのだけど」
「時期が悪かったわね。龍宮君のことを責めるのも悪いきがするんだけどやっぱり責任
は重いわ…今じゃ風香が弟に甘えるダメ姉にしか見えないもの…」

史人を精神的に成長、自立させ風香、史人を引き離そうとした二人の目論見は風香が史人に頼るということを
覚えてしまったために事態が180度変わり計画は開始一時間で水泡に帰そうとしていた。

「う~ん史人~」
「お姉ちゃん本当に怖がってるの?」
「・・・・・・・」

史人の胸の中で頬すりする風香を円とアキラは黙って見守ることしかできなかった。

「名前もどこの人かもどんな人かも教えないってなにそれーそんなの柿崎らしくない
よー」
「うるさいな、別に言いふらすことじゃないだろ。お前も彼氏ができればわかるよ。まぁ
できればだけど、佐々木もな」
「なに言ってんの?私が男を作ろうとしたらすぐにでも…」
「あーそれは無理だよーだって裕奈はファザ…」
「言うなー!!まき絵こそほらみなよ!もー完っ全に史人取られちゃったよ!」

まき絵が指されたほうをみると抱き合う?鳴滝姉弟が見えた。

「いやー!?史君―――!!」
「やれやれ」

目の前で騒ぎ立てる二人を見ながら義砂は肩をすくめた。また義砂の視界のはしにはト
イレからでてくる男女二人も映っていた。

「大嫌いな食べ物を食べてしまった暴れん坊が復活なすったようだぞ。怒りが収まって
いるといいな風香。」
「うう、やっぱり怖い…」
「大丈夫です楓にいがいったことが本当だとしても僕がなんとか説得してみます」
「うん史人のことは信じてる」

改めて弟に抱きつく風香。その様子に義砂は少々呆れていた。

「龍宮のやつがやばい行動に走りそうだったら俺も止めに入るけどお前たちお互い様な
んだからな。そのへん忘れるなよ」

「ううー桜子―史君とられちゃったよー」
「大丈夫、大丈夫だってー風ちゃんに飽きたらまきちゃんも振り向いてもらえるよー」
「…うん」

まき絵、その言葉にうなずいちゃだめでしょと思いつつ、真の後ろを歩く友人の姿を見
た円は天を仰いだ。

「あっちゃーあの子自分専用の地雷を思いっきり踏んじゃった顔してる。あんな顔させ
るなんて龍宮君も案外駄目なんだから。義砂、桜子悪いけど私やっぱり賭けはおりるよ。」
「うんわかったよー」

亜子の暗い顔が表情が引き金となって亜子は真に振られたのだいう理解が女子の間に伝染
し始めていた。そこに元凶と思われる男が顔をだした。

「アレルギーのある食べ物を誤って食してしまってな。だがもうなんともない。」

円はぐいと踏み込んだ。

(亜子に何言ったのよ?)
(友人としてなら相談にのると)
「――!!」

なにがあったか確信した円は亜子に声をかけた。

「ねぇ亜子次はUSJのメインともいえるジュラシックパークよ。はりきっていこ?」
「せやなーメインやもんなー脇役と違うてメインは楽しまなあかんなー」

これはまた復活するのには時間がかかりそうだと感じる円であった。

「恋をうしなう女二人っとこの賭けは俺の勝ちかな?」
「柿崎は随分ドライだね。」
「こういうのはどっちが悪いって話じゃない。のりと空気と相性の問題だからな」
「そうかもしれないけどやっぱり賭けにするのは良くない」
「賭けはたのしんじゃいるけどうまくいってカップルになってもらうのを邪魔なんてしな
いさ。むしろ積極的に応援するよ。アキラお前のこともな。亜子の場合と違って何の障
害もないと思うよお前の場合。」

義砂の言葉にアキラは無言だった。


「さて最初に目指そうとしたジュラシックパークがついに目の前に!みんな盛り上がって
いこうじゃん?」

10人の中心に座っていた裕奈が切り出すとみんなそれぞれに声をあげた。
門をくぐれば左右に木々が立ち並び広がる光景は太古のイメージのそれだった。

「すごいねー恐竜が出てきてもおかしくない感じだよ」
「アトラクションが楽しみだね。ただ、今回は最前列はやめとくべきかな。カッパもな
いし最後のところでずぶ濡れになるよ」

当然のように先頭を行くのは裕奈そしてアキラ。いつものように陽気に振舞っている目
の前の少女だがそれが今はぎこちないとアキラは感じていた。口調は普段通り動きにも
おかしいところはない。ただ目が笑っていなかった。アキラには原因もわかってはい
た。だが答えを出すべきかは未だに迷いがあった。

「ねぇ…アキラ…」
「何?」

声のトーンを落とし言いよどむ相方を覗き込んだ。一瞬の変化も見逃さぬよう。

「龍宮さんは亜子のこと振っちゃったのかな。亜子は性格もいいしあんなにかわいいのに」
「龍宮がふったのか、亜子が告白したのかもわからないけど亜子が拒絶されたと思ってる
のは確かだね。釘宮さんがそばにいてくれるから安心だけど本当は僕達がいるべきかも
しれない。」
「アキラは…アキラは亜子に告白されたら付き合う?付き合うよね?私たちずっと一緒に
いて仲良くしてきて相手のことわかってるし、今だってアキラは亜子のことよくわかっ
てるし」
「付き合わないよ」
「!?なんで?」

裕奈は驚きに目を見開いた。

「僕には好きな人がもういるから…亜子じゃない人が…裕奈、は…好きな人いる?」

アキラの答えと問いかけに裕奈は息を呑んだ。そして口をゆっくりと開いた

「私は……ア…アトラクションの前になんでこんな話してるんだーって思うよ!ははは。
話振っといてなんだけど今の話は忘れてっ無しっ!おー見えてきたよーまき絵一緒に
のろー」
「…裕奈」
「あれー?アキラと一緒に乗るんじゃないの?」
「いいの、いいの。アキラだって私といたくないときがあるんだって」
「ふーん。いいよーごめんねー桜子。私ゆーとのるね」
「OK―OK―私は義砂引っ張っていくからいいよー」
「はいはい、俺の意見は無視なのね」
(こんくらいでへこたれるなよアキラ)
(大丈夫だよ)
「じゃあ大河内は俺とか」
「よろしく龍宮…」

裕奈、まき絵を先頭に義砂桜子、円亜子、風香史人がそれぞれ二人ずつ。最後、一番後ろ
にアキラと真が乗り込んだ。

「明石に振られたみたいだな」
「別に、龍宮こそ亜子を振った?」
「友人でいよう言っただけだ」
「亜子は傷ついている」
「ならお前が慰めてやれ親友だろ?」
「今は龍宮の言葉が一番届く」
「・・・・・・・・」

二人は顔を合わせることなく左右の景色をそれぞれ眺めたまま黙りこくった。


「ねぇ、ゆーなー最前列はやばかったんじゃないかなーびしょ濡れになったらどうしよー
私たちカッパもってないよー?」
「スリルを味わうならここ以外ないじゃん。濡れるくらいじゃないと楽しめないって。」
「そうかなーなんかやけになってない?」
「なってなーい!」

「おっみろ桜子!なんかちっちゃいのがいるぞ!」
「あっはっは ほんとだかわい…おっわー水吐いたよー」

「ほら亜子しゃきっとする!告白して振られたわけじゃないんだから大丈夫よ。まだ亜
子の良さが伝わってないだけなんだから」
「ええんや、わかっとる。ウチが本気になる前に予防線張ってくれたんや。ウチのような
人間じゃ駄目言うことなんや…」
「マイナス思考禁止――――!!」

「恐竜さんが4匹…恐竜さんが5匹…だ、だめです!全然怖さが減らないですよ!?」
「フフフ当たり前じゃないか。そんなの信じるなんて史人もまだまだだなー」
「う、嘘ついたですか?それよりお姉ちゃんは怖くないの?」
「だって史人がいるも~ん。うーん史人の体はあったかいー」


10数匹恐竜が現れては消えていく中最前列の二人は

「意外となんともなかったかなーちょっと拍子抜けかも」
「そう?私は結構すごかったと思うんだけど…」
「まき絵は双子と同じくらい怖がりだもんねーニヒヒ」
「笑わないでよーそんなことないの…に!?きゃあああああ!!」

最後の門番たる大恐竜が咆哮をあげる。

「おおーこれは…てぇぇ!?」

恐竜に見入っていると前面が開け突如としてゴンドラは落下を始める。搭乗者たちの悲
鳴と歓声が水面を切り走る中響いた。しばらくして止まったゴンドラの中は惨状と化していた

「わ!っっぷはっ。あーんびしょびしょ…」
「あはは、甘かったかなー全身とまではいかないけどびしょ濡れ…ごめーんまき絵…」
「ほーんとだよー肌からブラまで透けっちゃってるねーあ、ゆーなまた大きくなったんじゃないじゃないの~」
「あ、ちょっと、触らないでまき絵っ…そっちがその気ならこっちだってー」
「ひゃっ!?ゆーなのエッチ~」

公衆の面前ということも忘れじゃれあう女子二人。視線を集める二人に普段通り運動部
4人のストッパーが仕方なく動いた。

「裕奈、まき絵いつまで乗ってるの?係りの人が目のやり場にも困ってるみたいだよ。
僕もだけど」
「あーアキラ、ずぶ濡れになっちゃって困ってたのどうしよう?」
「・・・・・・」
「どうしたのゆーな?」

馬鹿騒ぎをしていた顔が一転だんまりとなりアキラから顔を背けて横を向いてる親友を
まき絵は怪訝に思った。

「僕のTシャツならあるけど着る?」
「ええ!?予備があるの?さすがアキラだね!」

と、その時Tシャツを受け取ったまき絵に忍び寄る腕があった。

クイクイ
「まきちゃんちょっと問答無用で私と話でもしよーよー」
「え?何?桜子?ちょっとそんな強く・・・きゃあー?何で私だけー!?」

そして勢いよく連れ去られるまき絵の悲鳴だけが残った。

「さっきのこと怒ってる・・・よね?・・・」
「怒ってない」

ゆっくりかぶりをふるとアキラは俯いたままの裕奈に語りかけた。

「裕奈もそういう顔するんだよね・・・僕は時々すごくみたくなる」
「悪かったね・・・どーせいつもは能天気だもん」
「僕はどちらの裕奈もいいと思う。はい、Tシャツ。」

受け取ったTシャツをまじまじとみながら裕奈はぼやいた。

「・・・私が強引に乗るってわかってたんでしょ?・・・準備よすぎ、アキラは・・・」

けれどアキラにとってそれは自分に課した当然のことで

「僕は裕奈に嫌われるのはいやだから、だらしない人間にならないように日々気をつけ
ているだけだよ」
「馬鹿なんだから・・・アキラはそんなこときにするより私の・・・あ、は・・はっく
しゅん!!」

盛大なくしゃみが二人の間に響いた。

「・・・ごめん引き止めて・・・早く着替えてきたほうがいいね」

無言でうなずき裕奈は物陰に走っていった。

(また逃がしちゃったかアキラ)
(残念やったなーもう少しやったのに)
(亜子元気になってきたじゃない)
(なにゆーとんの釘宮?脇役は影から主役を応援するもんや)
(・・・・・・)


その後はウォーターワールドのショーで保安官の人に龍宮さんが風香、史人の親御さん
と勘違いさればつが悪い顔したりジョーズのアトラクションでゆーなまき絵がボートか
ら落ちそうになったり他にもいろんなアトラクションまわったりしとったらもう日が傾
いてくる時間になっとりました。ラグーンを集合場所にして帰るまでの最後の30分は
それぞれ別行動をすることにしました。こうしてウチらの修学旅行3日目はもうすぐ終
わろうとしとります。

「今日は楽しかったか?円」
「うん久しぶりの遠出だったしね。今日はとっても満足。残りの2日も思いっきり満喫
するつもりよ。」

園内を一望できるベンチに体をあずけ二人は、いや一人は今日という日に浸っていた。

「このままずっと旅行が続いたらいいのに・・・」
「・・・・」

円は無言の男の肩にもたれ寄り添った。まるでそう恋人のように。


「桜子、このバンソーコーどうやろかわいいと思はへん?」
「私にバンソーコーのこと聞かれてもあんまわかんないよーでもこっちのやつのがバン
ソーコーって感じがしていいかなー」
「それは自己主張が強すぎやなーもうちょっと控えめの大きさのが・・・」
「亜子ちんらしーねーでも大きいバンソーコーのほうが傷口はたくさん塞げるよ。
たまには気を大きく持って黒くて大きいやつを2,3度買ってみたらどうかなー?旅行中
限定でいいからさー傷口は開ききってないんでしょ?」
「桜子・・・途中から意味かわっとっていっとること無茶苦茶やん」
「ごめんねー私が難しい話しちゃだめっだねー」
「・・・・確かに傷口は開ききっておらんのやけど・・・・・」


ラグーン、園内中心部

「まだこんなところにいたんだ・・・お店は回らないの?」

浜風に黒髪を揺らされ湖を見つめる少女にアキラは声をかけた。

「だってね。ここから湖を眺めてると夕日がとっても綺麗なんだよ」

姿勢はそのままに朗らかな声で答える裕奈。アキラが湖面に目を向けると湖上にたゆた
う太陽は茜色に染まり夕日影に包まれていた。

「いい夕日だね」
「そうでしょ。でもこの夕日よりずっと大事なものが私の中にはあるんだ。」
「それはいいもの?」
「うん、とってもね・・・・・・でもこれ一人でもってても無意味なんだよ。ううん、
それも悪くはないんだけどね。今までずっとそうっだったし」
「これからは?」
「一人のものから変えたいけど相手が必要だし・・・今朝までは絶対大丈夫、相手も
きっと私と同じ気持ち、いつでも必ず答えてくれるって思ってた。だけど今は少し不安
なんだ」

夕吹は一瞬の間を縫って吹きすさぶ。

「私たちはずっと一緒にやってきたよね。この3年間A組みで。私とまき絵と亜子と・・
アキラは・・・。辛いことも楽しいことも私たちは共有してきたよ。クラスの中でも私
たちだけしかない4人だけの繋がりがある。だから、多分、亜子と私は同じ。亜子にでき
ることは私にもできるし亜子にできないことは私にもできない。亜子が先輩に告白して振
られた時、ショックだった。なんで亜子みたいな子を振るんだろうって。きっと私でも
同じなんだろうなって。でも私の好きな人は先輩じゃない。だからまだ大丈夫って思っ
てた。けどね、亜子は今日振られちゃった、クラスメイトに。だから私もきっと駄目な
んだろうなーって・・・・・」
「違う!裕奈が好きになった男は亜子と同じじゃない!」

聞きなれた声――いつもそばにいてくれた人の、大切な人の―聞きなれない力強い声――

「だってそいつは私のことをすごくよくわかってて私の気持ちなんてとっくに知ってる
はずなのにずっとほっとくような奴なんだよ?」

離れることなど想像もつかない自分の半身のような、自分にはない多くの輝きをもつ少女。
その少女の涙を見たときアキラはいつもの静かな佇まいをかなぐり捨て、駆け寄り抱き
つき抱きしめた。驚き目を瞠った裕奈だったがすぐに心からと思える笑顔となり身をあ
ずけた。

「僕の好きな人は裕奈だよ。今までもこれからもきっと。ごめん、裕奈の気持ちは僕もわ
かってた。けど、踏み出す勇気が足りなかった。」
「うん・・・その言葉ずっとずっと聴きたかった。私もアキラのことが大好き・・・・絶対に離したくないよ・・・・」

裕奈の涙はそのわけを変じても止まることなく喜びに紅潮した頬を流れ続けた。


ハリウッドエリア ショップ

「あれ亜子じゃない?」
円と義砂が店内で見たのはバンソーコーとにらめっこしている亜子だった。
「釘宮に柿崎か今、傷口を完全に開いて脇役になるかそのままにしといて半端もんに
なるか考えてんよ」

二人に気づいた亜子は難しい顔でいった。

「血を見るのも駄目なのにずいぶん勇気あるじゃない。見直したな。」
「決断のときって奴か。最後まで諦めないといいと思うぞ。じゃ俺はあっち見てくるから」

そういう義砂はとなりのフロアへと歩いていった。

「釘宮は何か買うん?」
「うーん多分このフロアにあると思うんだけど・・・・ああ、あれあれ」

円がみつけた先には瓶詰めのプルーンがあった。

「釘宮それって・・・」
「そう、あいつの好物よ」

品を手に取る円を見つめる亜子は複雑な表情だった。

「見せてくるね。きっと目を輝かせて喜ぶはずよ」
「あ、ウチもいく」


となりのフロアで義砂がみたものは子犬のぬいぐるみを手に取る真だった。

「龍宮をこんな場所で見るなんてな。それ誰かにやるの?」

真はそれに見入ったまま義砂に見向きもせずに答えた。

「これは俺の趣味だもっとも本当にすきなのは生きているやつだがな。」
「あ、そ、そう」

真とぬいぐるみの組み合わせに大いに驚いた義砂だったがそういうのもありだろうとな
んとか自分を納得させ言葉をしぼりだした。

「それ、お前が亜子にあげれば亜子、喜ぶだろうな」

その言葉は友人が少しだけみせた勇気を応援しよういう心から発したものだったが藪を
つついて蛇を出すことになるとは義砂は思いもよらなかった。

「俺はお前のように残酷にはなれないからな。それはできないな。和泉は俺のような男
よりもっと合う奴がきっといる。気が弱いところがあるが優しく献身的ないい女だ。だが
だからこそ俺には近づかないで欲しい。」
「何だよそれ。お前はやばい女が好みだったりすんの?それに俺が残酷って何のことだよ?」

おいおいと肩をすくめる義砂に真は初めて顔を向け薄ら笑いを浮かべた。

「気づかない振りをしているのか?自分自身についている欺瞞に。いつまで続ける気だ?
誰もが傷つくような血を見る修羅場でも演出してくれるのか?」

真の言葉は義砂の心を深くえぐり動揺を誘った。

「う、うるさい・・・・」
「お前の一番大事な人間は誰だ?今いる女かそれとも・・・・釘宮か?」

心の中で常に迷い揺れていた事実を思わぬ相手に指摘され義砂は色を失った。だがいつ
までも迷っていることもできないこともわかっていた。自分に言い聞かせるように義砂は
言葉を紡いだ。

「円は俺の大事な存在だ・・・今あるA組みで親しく大事な・・・・今のクラスの中で
あいつとるんでいない自分を想像するのは正直難しいそれは部活でも同じだ。円とはこ
れからも顔を合わせていきたい・・・・最高の仲間として・・・・・だけど俺の一番大
切な女は円じゃないんだ・・・今いる彼女なんだ・・・・」
「そちらを選んで後悔はないのか?」
「・・・・ああ・・」

その時、がしゃんと瓶の割れる音と駆け出す足音が聞こえた。

「釘宮!」

と叫ぶ亜子の声も

「まさか・・・円・・・」
「最初から聞いていたな。だが後悔はないんだろ?」
「ああ・・・・・」
「悪いな。いらぬ厄介を招いてしまったようだ。ただ、よく決断したと俺は思うよ。」

義砂の肩をぽんと叩いた真の顔から薄ら笑いはもう消えていた。


「ハッ・・・・ハッ・・・・どこまで・・・・走るっ・・・気や?」

息をきらして円を追う亜子。そして円は先ほどまで腰をかけていたベンチの前までくる
と足を止め立ち尽くしたまま嗚咽を漏らした。

「・・・はは私なんで泣いているんだろうね。当たり前のこと言われただけなのに・・・」

肩を震わせ咽ぶ姿はとても小さく見えた。

「惚れてしまったんはしょうがあらへんよ。ウチも惚れっぽいからよーわかる。」
「しょうがないか・・・・義砂に初めて会ったときはこんな感情抱くなんて思いもよら
なかったわよ。何?このちゃらい男は、チアリーダーのマネージャーになろうなんて下心
丸出しじゃない!ってね・・・・」
「せ、せやろな」
「でも同じクラスっていうのもあって桜子を通じて少し話すようになったら見方が変わ
ったの。ふざけたところもあるけど意外と芯は結構しっかりした奴でまとめるときはちゃ
んとまとめたりするのよ。いつの間にか3人でいるのが楽しくなってた。」

当時を懐かしむように円は空を見上げた。

「それで惚れたん?」
「意識し始めたのは割と早かったんだけどね。軟派なやつって先入観が色々邪魔して中々
自分の気持ちを認められなかったわ。それがだめだったのよね。気づいたら義砂には彼女
がいた」
「後悔したん?」
「したわよ、さんざんね。今だってしてる。でも義砂が決めたことなら受け入れるわ」

辛い事実を前向きに受け止めようとしている円に亜子は感嘆した。

「釘宮は強いわ」
「自分の気持ちを認められない弱さが招いた結果だもの。そのくらいは甘受するわよ。
これから私と義砂の関係は変わるかもしれないし変わらないかもしれない。けれど私は
そばにいるつもり。いまは節度を守って友人としてね。でも今の彼女と別れたりした時
は容赦しないで奪い取ってやるんだから。」
「は、はは」

ここまで回復が早いと亜子にとっては自分とは違う生き物のようにみえた。

「と、強気になったのはいいんだけど落ち込んでるのも事実。しばらくは幸せな人たちを
眺めて傷をいやすことにしようかな。裕奈と大河内君とか那波君と村上とかね。
亜子と龍宮君でもいいんだけど」

円は振り返ると流し目で亜子を見た。

「なにゆーとんのや。今また拒絶されたばかりやない」
「うーんさっきの聞いた限りじゃ龍宮君意外と情が深そうよ?必死に近寄らせないよう
にしてるけど一度懐に入っちゃえば勝ちみたいな」
「近寄らせない理由がわからんのやから駄目駄目やん!」
「それもそっか」
「円!!」

笑いあう2人に男の声が届くその声は円の心臓をしめつけ笑顔を強張らせた。

「義砂・・・・」

走ってきて乱れた息を整えると義砂は円を正面から見つめ円は義砂の言葉を待った。

「俺、自惚れかもしれないけど円に好かれてたと思ってる。その気持ちが本気だとしても
今おれは答えられない。俺の一番好きな人は今いる彼女なんだ・・・・こんなこと言っ
ておきながら円に友人のままでいて欲しいとも思ってる。調子がいいのはわかってるけど」

義砂の告白を聞き終わると涙のあとも乾かぬ顔で円はにっこりと笑いかけた。

「バカなんだから・・・私は義砂の親友よ。昨日も今日も明日も・・・・」

けれどずっと先のことはわからないけど、と円は最後にそっと誰にも聞こえぬ言葉を付
け加えた。


「あわわー二人抱き合ってますね」
「ゆーなとアキラ・・・すごい幸せそう・・・」
「あ、あーキ、キスしてるぞ・・・お、おー」

史人、まき絵、風香は湖に向かおうとしていたが何やら取り込み中の裕奈、アキラを見た途端反射的身を隠したのだった。

「ふ、風香なんか私当てられちゃったかなー」
「ま、まき絵も?フン、でも独り占めはさせないぞ」
「え?二人ともどうしたんです?」
「じゃあいくよー」

飛び掛る少女二人次の瞬間少年の悲鳴が湖畔に響いた。


真は義砂が走り去った方角を見つめていた。

「椎名、もうでてきたらどうだ?」

物陰からひょっこりでてきたのは真の言うとおり桜子だった。

「さすがたっちん隠れてるのに気づくなんてすごいねーなんか出るタイミングを逃しち
ゃて、出る必要なんてなかったんだけどね」
「今の一件でお前たち三人の中を壊してしまったかもな。」

少し申し訳なさそうな真に桜子はあっけらかんと答えた。

「ううん全然大丈夫だよー多分今頃は仲直りしてるかなー、それよりたっちんの亜子ち
んへの愛の告白ちゃんと聞かせてもらったよ!」
「なんだ・・・それは?」

桜子のすっとんきょうな発言に真は鳩が豆鉄砲食ったようなポカーンとした顔になり固まった。

「だって『和泉はいい女だ本当の俺をもっと知ってくれ』って聞こえたよ?」
「どんな意訳だ。俺は近づかないで欲しいといったんだ」
「そうかなー寂しがりやなたっちんが俺の心の壁を突破してきたならもう離さないって
意味だと思ったんだけどなー」
なにをいっても徒労に終わりそうな相手に真は呆れ返った。
「馬鹿なことをいうな!俺と同じ世界に住みということがどれほど・・・・!」
「えーどうやったらたっちんと同じ世界にいられるのー?」
「・・・・・それより何か賭けをしていただろうどうなった?」

のせられているような感じがした真は話題をかえた。

「女子6人のうち今日幸せになれる人、不幸せになる人どっちが多いかって賭けだよ。私
は幸せになる人が多いに賭けたんだけどね。」

桜子の強運をクラスメイトとしてある程度知っている真は少し意外な気がした。

「椎名が勝てないなんて珍しいな。よくて引き分けだろう。明石はともかく佐々木、和泉釘宮にとってはよくない日だったろうし

な。」
「ううん今回もやっぱり私の勝ちだよゆーなもまきちゃんも円も風香も亜子ちんも今日が
幸せだったか聞けばみんなきっと答えは○なんだよ」
「・・・・・お前はどうなんだ椎名?」
「私はね賭けに勝てたからもちろん幸せだよ」

屈託なく笑う桜子に真も笑いかけた。

「変な奴だなお前は・・・・」


ウチらは最後に湖の前で写真をとることにしたんです。沈み始めた太陽をバックに。夕
映えがとても綺麗でした。

「佐々木と風香は史人を真ん中にすればいいだろ。桜子、円はとなりの奴らをくっつけて
明石とアキラは・・・もういいよ、それ以上くっつかなくても・・じゃあ撮るぞ」

カメラをセットして駆け寄ってくる柿崎。点滅する光。今日という日は二度とこないけど
ウチらは精一杯・・・・

「なに物々いってるの亜子、やるわよ桜子!」「OK♪」
「きゃあ!?」

押されたウチの体は・・・・

「な!?和泉!?」


できた写真には史人を中心に抱き合うまき絵、風香、いつのまにか進展しとったゆーなと
アキラ、またいらんお節介をやく柿崎、釘宮、桜子と抱きつかれて困った顔をした人と
抱きつくウチが写っとりました。

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