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肉体派苦学生アスた! 4

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11話 逆玉は狙って乗ることに意義がある

 ”前略、天国のおふくろ様。
一番バレないように努力するネギがあのザマかよ……
っつうかさ、俺頭使ってごまかすって向いてねぇと思うんだけど!”


11話 ”逆玉は狙って乗ることに意義がある その1”
前話まで:明日太といいんちょの絆は深い。でもいいんちょのネギに対する愛も深かった。

「なぁネギ。木乃香と家事をしたり、あさってから新学期ってんで準備が忙しかったりで疲れてるのはよく分かる」
「はいっ……」
「……だからって何だこのエアメール! 魔法学校からってモロ書いてるじゃねぇか!! バレたらイカンってこと注意しとけやバカ教師!!」

新しい学年も近い春のある日、正座するネギと真っ向から怒号を飛ばす明日太……またネギさんやらかしたんか。

「分かってますよっ、お返事でお兄ちゃんにはよーく注意しておきますからー」
「ったく、お前の兄貴さんもとんでもねぇミスするもんだな。お前そっくりだ……で、何て書いてきたんd」
『It has been a long time since I saw you last,Negi! How――』

ぶつくさ呟きながら手紙を開くとあら不思議。紙面に男の人が浮かんで英語を喋くるもんだから、明日太もびっくりして手紙閉じなおしたよ。

「お……オイ何だ今の!? 魔法の手紙ってビデオレターか、まさかひそ○草か!?」
「わ、分かりやすく言えばビデオレターでしょうけどっ……ほら、落ち着いて読みましょうよ、日本語設定にしますからっ」
『久しぶりネギ。元気にしてたかい? まず、正式な先生になれてよかったね。でもこれからが本番だから、気を抜かないようにね』

ちょこちょこネギが操作をしてから手紙を開きますと、先ほどの男の人が流暢に日本語を話してくれるようになりましたよ。

「なぁ、俺に似てるかぁ? どう見ても外人の兄ちゃんじゃねぇか」
「所々はお兄ちゃんが圧勝ですけど、全体的な雰囲気がちょっとだkむ゛っ」
「余計なお世話だ!」
『それと……魔法が知れてないとはいえ大きな町だ、パートナーになれそうな人がもう身近にいるかもしれないね。もし見つけているのなら、早めに僕に会わせてほしいな――』

相変わらずな毒を吐いて頬からつままれるネギも、何だか物々しい手紙の内容に思わず早送りしちゃってますよ。

「や、ヤダお兄ちゃんったら、パートナーなんて気が早いよー」
「……そこな先生さんよぉ。まさかマギ何たらとかはデマカセで、その年で男引っ掛けに来たのかバカ助ェェェ!!」
「ぼきゅーーーー!!」

確かにパートナーなんて大げさな言葉ですが、ピコハンはやめようよ明日太。

「痛たたた……まだ何も言ってないじゃないですかっ! 魔法世界で伝わるおとぎ話に、偉大な魔法使いと戦士のお話がありまして……それが元で、多くの魔法使いにはミニステル・マギと呼ばれるパートナーが付くものなんですっ」
「はぁ……しかし、使いようによっちゃフィーリングカップルしようって時の口実になりそうだな」
「そんな不純な目的に使いませんって……でも異性のパートナーと結婚する、ってパターンは多いですねー」
「十分不純じゃねぇか! 大体兄貴さんモロ会わせろみたいなこと言ってたし、その気になってるだろ!」

内容聞いたとこで変わりばえのない結論にツッコむ明日太ですが、近寄っていた影にはネギ共々気付けなかったようです。

「へ~、ネギちゃん恋人探しに日本に来たん? ウチのクラスて結構ええ人おるし、すぐ見つかると思うえ」
「ですからそういう目的じゃ……って木乃香さんいつの間に来てたんですかっ!?」
「お、お前どこから聞いてた!? あれだ、魔法って空耳だから! マホ体験の話してただけだから!」
「落ち着き~や明日太、途中からしか聞いてへんよ~。あ、それネギちゃんの手紙? 誰からなん?」
「い、いえ、何でもないですっ!」

大きな包みを抱えながら入ってきていた木乃香に聞かれてしまって、ネギも明日太も大慌てで何喋ってるんだか。

「でもネギちゃん、恋人探すなら先生よりやりやすい仕事あると思うんやけど……」
「ですからっ、ホントに先生になろうとして来たんですって!!」
「冗談やて、ネギちゃんったらそない大声出して~。恋人できても引いてまうよ?」
「いや、そのツッコミだとジョーダンに聞こえねぇよ! 確かに信じらんねぇだろうが!」

木乃香さんの茶化しっぷりを見るに、魔法のことは知れていないと気付けて会話もまともなボケツッコミに戻ってきました。

「そ~や、2人ともシャワー使うん? まだやったらウチ使わせてもらうな~」
「あぁ、構わねぇよ……にしても、毎度ババァの趣味に付き合わされるんだから、お嬢様って大変だなぁ」
「木乃香さんどうしたんですかね、新しい服でも買ったのかなー」
「んなこと気にしてる場合か! とにかく、今度から魔法がバレそうなことはするんじゃねぇぞ、分かったな?」

包みを持ってシャワー部屋に入る木乃香を確認してから、ヒヤヒヤの収まらん明日太がネギに厳重注意です。
……明日に大騒動が起きると分かってりゃ、もっと早くにやってたんでしょうがねぇ。


明くる日のお昼前、いつもなら寝てる明日太が珍しくダビデ像へと向かっておりました。

「高畑先生、何で朝倉に俺を呼ばせたんだろう……意外と乙女心溢れる人だからひょっとして……」
「あ、こんにちはー明日太君」
「あら明日太君、こんにちは……ほら、あやかも挨拶したら?」
「……こ、こんにちは、明日太さん」

タカミからのお呼び出しに心の躍る明日太の後ろから、千鶴と夏美が声を掛けてきまして、いいんちょも恥ずかしながらご挨拶ですよ。

「あ、あぁ……この前は悪かったな」
「な……今更謝られても困りますわ! 余計なことばかり覚えていて、肝心なことはすぐ忘れるんですから」
「んだとぉ!? せっかくネギまで連れてってやったのに、それを余計っつうかこの野郎!」
「ほらほら、あやかも明日太君も抑えて……ところで、明日太君もネギ先生に呼ばれたのかしら?」

まーた仲良さそうにケンカしだす明日太といいんちょをなだめ、千鶴さんが初耳な事を切り出してきてます。

「え、ネギなら急に決まった職員会議に出るっつってたハズだぜ……それに俺は、高畑先生が呼んでるって朝倉から聞いただけだしよ」
「それじゃ、明日太君も朝倉から連絡されたんだ……ちづ姉、すっごくイヤな予感がしてきたんだけど」
「あらあら、和美が呼んだのは私たちだけじゃないみたいね」
「あー、明日太にいいんちょたちじゃん! 亜貴ー、これってクラス全員そろってるっぽいよー!」

広場に着いた明日太たちを確認してまき男が叫んだとおり、明日には3-Aとしてネギを戴いていくクラスメイトの皆々様のお姿が。

「正確には、30人中28人が集められてるみたいですよー」
「来てないのは近衛サンと朝倉ダケのようネ。サツキ、いい機会ダカラ皆に新開発の肉まんを試食してもらおうカ」
:はい、皆さんどうぞ召し上がってください

どうやら朝倉待ちって雰囲気が漂う中でも、超包子の面々はマイペースに蒸篭を取り出して試供品を振舞い始めてます。

「あらあら、今度は桜色の肉まんなのね。夏美とあやかの分もいただけます?」
:超さんに春らしい一品と言われまして……お口に合えばいいのですが
「ねえねえ葉加瀬君、さっき蒸篭をパッと出したのって、この前演劇部に貸してくれた機械?」
「ええ。村上さん達のお陰でデータが集まったので、超包子で実用化に向けてテストしている段階ですねー」

さすが一流料理人かと見紛う五月が作った一品、あっという間に和やかな空気を作り出したけどまだ笑えてない人らもいるぞ。

「全く……朝倉さんがどんな目的で呼んだのかも分からないうちから、ゆっくりできるのはこのクラスならではですわね」
「人の名前使って呼んだってのがクセェな。つか高畑先生の名前使ったのが許せねぇ!」
「まあ、明日太さんみたく高畑先生のことしか興味のないおサルさんよりはマシでしょうけど」
「誰がサルだ! そういうお前だってネギ先生が呼んでますわー的な浮かれ方してたんじゃねぇのか!?」
「お2人さん、愛人ゲンカはそこまでにしなよー。これから楽しいゲームを始めるつもりなんだからさ」
「「だから愛人じゃ……って朝倉!?」さん!?」

ちゃっかり肉まんを手にしつつも、思案に続いて口ゲンカへ流れる明日太といいんちょの後ろから、今回の首謀者のお声が掛かってきました。

「さー諸君、お食事タイムはそこまでにして集合してー」
「何が集合だ! そもそも何で俺たちをはぐらかしてまで集めて来たんだぁ!?」
「そーだよ和美ちーん、せっかく今日も千雨くんとカラオケ行こうと思ってたのにー」
「行くか! あの日はな、椎名に付き合わされて死に目にばかり遭わされたんだぞ!」
「ほらほら、これから話すつもりだからしーずーかーにー」

集まりながらもしつこーく尋ねてくる言葉を朝倉がなだめ、なんとか演説ぶてるレベルまで黙らせてから趣旨説明に。

「みんなもう聞いてるだろうけど……なんと我らがネギ先生、とある王国のお姫様にして王位継承者となる結婚相手を探してるという情報が入ってて……」
「って尾ひれ付きでバレてる!? 誰だよ、んな噂流したヤツ!?」
「ムダだったねー明日太、ボクたちの鳴滝流忍法にかかればコレぐらい朝めし前だよー!」
「クラス中を回ってる間に、いつの間にかお姫様にされたみたいですけど……」

あれまぁ、口封じする前に風香と史也に盗み聞きされていたようで。魔法が知れてないだけマシ……でもないよね。

「そこで! クラスにはネギ先生と付き合いたいって男子もいる、でもネギ先生を幸せに出来る男でなければ生徒の私たちも浮かばれない! なら厳しい試練を乗り越えて、真にネギ先生にふさわしい男を選ぶのが教師孝行だって思わない!?」
「えー、僕がネギちゃんを一番うまく愛してるんだから、試練なんていいじゃーん!」
「あら……まき男さん、ネギ先生を愛しているのなら試練の一つや二つ乗り越えられるでしょう? それが出来ないでは、パートナー失格ですわね」
「ノリノリになってんじゃねぇお前ら! 朝倉も変な真似するんじゃねぇっつんだ!!」

要するにワイワイ騒げる競争に持って行きたかったようで、朝倉の煽り文句に騙されたりノったりする人続出で明日太のツッコミも機能してません。

「ハァ……俺はそこまで意地悪になりきれん、帰るぞ」
「……下らん」
「あらら、龍宮に桜咲くんは棄権かー……まーいいか、参加する人はまずこの携帯テレビ電話を取ってってねー」
「そ……それはネギ先生が急に必要になったと聞いて、雪広グループより手配した最新の小型テレビ電話じゃありませんの!?」
「ちょ、何でんなデカい買い物させられても気付かなかったんだ、このバカいいんちょ!」
「おサルさんにバカと言われる筋合いはありませんわ! それに1台179,800円は決して高いお値段では……」
「十分高ェよ! そういうのが成金だっつんだろが!!」

やる気なく去る方々もおりますが、さて置いていいんちょに買わせたテレビ電話が、参加者の手にさばかれていきます。

「次はネギ先生とくっつきたい・くっつけてあげたいと思う代表者を中心にチームを組んで。そうそう、代表者は男子限定だからねーいいんちょ」
「な……卑怯ですわ朝倉さん! 私の気持ちを知っていながら……」
「大丈夫よあやか、四葉君が代表者になってもいいって」
:那波さんから頼まれましたし、僕でよければ協力します
「なんと! ありがとうございます四葉さん、貴方は命の恩人ですわ!!」
「うーん、一応代表者もいるしグレーゾーンだねー」
「さっちゃん止めとけ、それ地獄の契約だから! それにグレー飛び越えてピンクいっちゃってるから!!」

チーム戦から降ろされたっぽいいいんちょの元に、五月からの朗報が……一体なんつー妥協点だ。

「くひひ、ここは史也を代表にして暴れ放題だよー! 空とかえで姉も協力するよね?」
「ぼ、僕が代表になるんですか……確かに空さんよりは見栄えいいでしょうけど」
「それを言ってはイカンでござるよ史也殿、真実は何よりも重たいでござる」
「おいおいフォローしてくれよカナデさん……まー安心しな、俺が最速で勝利に導いて……」

さんぽ部+αが密談を交わして、ってスケープゴートかい……まともにネギが好きで立候補する奴いるの?

「ここが勝負所だよアキラ! 何としてもまき男を勝たせて、ネギちゃんと明日太を離しておかないとねー」
「そこまでエゲつない言い方せんでもええやろ……アキラも純粋にまき男の応援したいかもしれへんやんかー」
「え……う、うん、明日太君とは……だけど、まき男とネギ先生も応援したいよ」
「……なあフウコちゃん、恋心ってヤツはどんな速くても侵しちゃいけない聖域だと思うんだ。俺はノギちゃんとアスカを早く進展させたい!」
「オーイ、何ナマ言ってんだよ空ー! 考え直せー!!」

そこに意気込む裕奈たちの言葉を聞いて、空ったら妙な方向へ進もうとしてます。いや、企画を考えると間違ってないような……

「ズルいよ和美ちーん、千雨くんはくぎみんチームに入るんだってばー」
「ダメだよ桜子ー、私が実況する隣で解説やるって契約しちゃってるんだから、手を離しなさいって!」
「…………」
「3方向から引っ張られてるこの状況……いっそ殺せ……」

一方で桜子と朝倉に腕を引かれ、ザジにしがみつかれる千雨ってばげんなりしてます。その内血涙出しそーだね。

「そういえば明日太はいいの、チーム組まなくて……そーりゃーー!!」
「ぎゃーーす! ……あー、千雨くん持ってかれちゃった……」
「いつか死ぬんじゃねぇか長谷川……いやいやいや、俺は参加しねぇぞこんなバカゲーム!」
「ふーん。じゃあネギちゃんがロリコンに蹂躙されるのを黙って見てるってことだねー」
(な……そんな状況になったらネギが何するか分かんねぇぞ! もし魔法で大暴れなんてされたら、オコジョネギが強制送還なんて脅威の打ち切りエンドなんてことも……)

千雨争奪戦に勝った朝倉から挑発されまして、明日太も普通じゃない思考の巡らせ方をしてます。

「……分かった、打ち切りにしねぇためだ、俺も参加してやるよ!」
「打ち切りって、どこまで妄想してたんだか……じゃあこれ、明日太のテレビ電話ね」
「いや、俺はエロ方面に考えたつもりはなiふべしっ!!!」
「ザジっちナイス、そんじゃ例の場所に持って行ってねー」
「…………」

参加決定とテレビ電話を手に取った明日太ですが、途端にみぞおちへ一撃を喰らってブッ倒れて……ってどうなるんですか!?


佐々木まき男 曰く、
”はい今回も黒板ネター! ’今更キャベツ描きなおしてm『おい、くぎみんチームって何!? 毎回そう呼ぶなって言ってるだろ!』『釘宮君は言えるだけいいよね、私なんてちづ姉に見つめられて反論なんて……』’……ってまた!?”



”前略、天国のおふくろ様。
何だか今回は観客っぽい登場の仕方だなぁ……
ま、こんなゲームにノリノリで参加してる俺ってのもイヤだけども”


11話 ”逆玉は狙って乗ることに意義がある その2”
前回まで:ネギのパートナー話を見事に利用され、争奪戦が始まるところに明日太脱落!?

時は進んで午後1時ちょい前、横たえられた明日太がそっと目を開けますと、見慣れた中等部校舎の屋上で。

「んっ……そうだ、朝倉のバカゲームに参加しなきゃいけないんだよな! ……ってカード?」

体を起こせば、近くにテレビ電話と大きく”Z”と書かれたカードが置かれておりまして。

「……何、この者何たら殺人犯人? 俺ってば日本じゃぁ2番目?」
『さーて皆さん! ゲーム開始5分前、準備はオッケーかな!?』
「え、どっから……ってテレビ電話? もう始まっちまうのか!?」

気持ちが立て直せてないところに、大音声でアナウンスが響き渡って明日太も腰を抜かします。

『さて! 今回の”プリンセス・ネギのハートをゲットしろ! アプローチ王決定戦”の実況を務めます、報道部のエース・朝倉和美でーす!』
『え……解説の、長谷川千雨です……何だよこのノリ』
『…………』
『……あ、あとマスコットのザジ・レニーデイちゃんでーす』
「いや、喋らないヤツ入れてどうすんだよ……つうかホントに何このノリ!?」

画面を覗きますと、整った司会席にてノリノリな朝倉とだらけた千雨、遠い目線なザジなんて纏まりのない面々が映ってます。

『それではルールを確認しましょう! この後午後1時、ネギ先生はクラブ棟から中等部校舎へと戻るルートを通っていきます! 候補者は抽選で決められた順番で道すがらのネギ先生にチームでアピール! 全6チームの持ち時間は登場も含めて各自5分間! 校舎からスタートするジョーカー・明日太に邪魔されないように気をつけろ!!』
「何だよその扱い! 俺ボンビーのポジなのねん!?」
『そしてネギ命な候補者を紹介します! いいんちょの隠れ蓑・四葉五月! 麻帆良の暴れアホウドリ・佐々木まき男! いたずらは心の絆・鳴滝史也! ロリまでいける天才・超鈴音! つーか女装させられるだけだろ・釘宮円! 図書オタクの真髄を見よ・宮崎のどか!』
『もっとマシなキャッチフレーズにしろよ、どこのダメホストだ……』

元気に説明する朝倉とは対照的に、千雨さんツッコむのにもやる気ないねぇ。

『さて解説の長谷川さん、今回イチオシの候補者は誰でしょう?』
『知るか、勝手に引っ張り出されてやる気ないんだy』
『おーっと、番組の途中ですがここでお知らせ! 新宿・歌舞伎町に構えるホストクラブ”マジックナ”……』
『おいこら止めろ、真面目にやるから店の名前は出すな!!』
「苦労してんのな、長谷川も……そうじゃねぇ、早くネギんとこ行ってどうにかしねぇと!」

千雨に同情してる暇なしと、明日太は階段を駆け下りますと校内に午後1時のチャイムが鳴り響きましたよ!

『はい午後1時になりました! これからネギ先生に電話して、校舎へ向かってもらいましょう……』
「やっべ、もう始まっちまう!!」
『……もしもしネギちゃんー、今どこいるー?』
『あ、朝倉さんですか。言われたとおりクラブ棟で先生方を待ってるんですけど……そうだ、何で私のケータイ番号知ってるんです?』
『それどころじゃないんだって! 瀬流彦ちゃんが連絡トチっててさ、職員会議は中等部校舎でやるハズだったんだって』
『えーっ! それじゃ、私遅刻になっちゃうんですかっ!?』
『でも安心して、あくまで瀬流彦ちゃんのミスだから、開始時間を30分遅らせることに決まったみたい。だから、1時半までに校舎に来てちょーだいねー。 それじゃ!』

何もかんも瀬流彦先生に押し付けた連絡で、ネギを校舎まで誘導することに成功したようです。

『それでは、今からアプローチタイムのスタートです! 実況席ではロボ研にて実験中の飛行ロボット・機体番号T-ANK-α1より送られる映像を中継していきますので、刻々と変化する戦況を見定めろ!』
『何でそこだけ命令形にしてるんだ』
『…………』
『え、どしたのザジっち、スケッチブックなんて出して……”奇抜なアピールだけではこの先生きのこれない”……含蓄あるコメントありがとうございます』
「あー、ザジさんそういうカラミ方すんのか……じゃねぇじゃねぇ、急がねぇと!」

テレビ電話片手なもんで明日太の足も遅くなったままでして、戦況の方が早く進んでしまうようでございます。

『……おーっと、早速さっちゃんチームがネギ先生に接触した模様です!』
『エッヘッヘ……ボク村上夏、略してムラナツ、遊ぼうよ』
『え……村上さん、一体何してるんですか』
「ちょ、夏美ちゃん何エゲつない役やってんの!?」
『これはさっちゃんチームの村上夏美、演劇部所属を生かしてかチンピラに扮して先生の前に登場だー!!』
『しかし、役柄考えるとこの後は……』

夏美さん、女優生命を賭けた演技を披露してネギを引き止めて……あれ、どっかで見た屋台の車が走ってきて……

『あの村上さん、私急がなきゃいけないんで……』
『そんなこと言わないでネギせんs……へぶっっっっっ!!』
「って轢いたぁぁぁぁぁ!?」
『何ということでしょう! 突如現れた超包子の屋台バスに村上夏美が撥ねられたーー!!』
『いや、コレ死んでるだろ……』

車に撥ね飛ばされた夏美さん、不自然に置いてあったマットに倒れてぐったり……やっぱ死んだ?

:おおどうしたことだ、事故を引き起こしてしまったぞ
『あらあら大変、うちの娘とネギ先生にはトラウマとなってしまったわ』
『何でそんな棒読みなんですかっ、四葉さんに那波さん! それにトラウマとか言ってないで保健室へ……』
『”トラウマで動けません”、わよね?』
『は、ひゃいっ……』
『轢いた事実をすっ飛ばしてさっちゃんと那波千鶴が登場、那波さんの強圧でネギ先生を押さえ込んだー!』

バスから降り立った千鶴に脅されてしまえば、ネギも固まるってもんですよ。

「一体なんつー展開だ、いいんちょ絡んでるからってやりすぎだろ……」
『しかし長谷川さん、那波さんの手際には年の功を感じますねー』
『あれは4人ぐらい子供を産んだ団地妻の顔だ、たまにあんなのが店に来る』
『…………』
『ん、今度は何よザジっち……”オーノーだザジ おまえらもうだめザジ 帰りに尻がオダブツだザジ”……ま、まさか、ねー』

安全だと思って、好き勝手言ってる司会者に警告するマスコットでごぜぇますが、今の彼らに気づけまいてか。

『ああお母様……この惨劇の記憶から逃れるには、ネギ先生のように可愛らしい義妹が必要不可欠ですわ!!』
『い、いいんちょさんっ、それって関係ないですし村上さんは……』
『あらあら、降りてきてはいけませんよあやか……でも、貴女の言うことも最もね』
「どこがもっともだよ! これってシブ○クネタ使う意味あんのか!!」

続けてバスから降りたいいんちょが、ネギを無理矢理にキャプチャーしようとします……どこのコントなんでしょうね。

『とにかくっ、私は職員会議がありますから! 村上さんお大事にっ!』
『待ってくださいネギ先生、まだアピールタイムは終わってませんわ!』
『残念ながらさっちゃんチームこといいんちょチーム、ネギ先生に逃げられ追いかけっこになってしまったー!!』
『頑張るのよあやか、恋路を邪魔する者を蹴散らすことが、2人の間に課せられた試練よ!』
:起きられますか、村上さん
『し、死ぬかと思った……リハより車速いんだもん……』

そこで捕まるネギさんでもありませんで、燃え上がるいいんちょに追いかけられながら校舎へ逃げ延びていくようです。

「とにかくいいんちょはミスったか……早く追いつかねぇと!」
『さーて、そろそろまき男チームのアピールタイムに突入します! いいんちょそろそろ止まらないと失格ですよー!』
『絶対聞こえてないぞ、あれは……うちの店には金落とそうが来て欲しくない客だな』

ネギに落ち合おうと明日太も食堂棟へ走りますが、また騒ぎの大きくなりそうな候補者にお鉢が回ってきそうですねぇ……


「このペースなら見つけられるハズ……あ、ネギ!!」
「あ、明日太さ……」
「おーとこにはーじぶんのーせーかいがーあるーー!!」
「ひゃ、ひゃうーーーーっ!」

明日太が食堂棟に辿り着いてすぐとネギを見つけましたが、緑のジャケットを羽織った誰かがターザン風にかっさらっていかれちゃいましたよ!

「あ、明日太さん……一体、今のは……」
「お前もしつこいやっちゃな……じゃなくて、リボン使ってたってことはまき男か!?」
『なんと急展開! 失格ながら先生を追いかけるいいんちょの前に現れたのはジョーカー明日太! しかし、既にアピールタイムに入っていたまき男候補者のウルトラCでゲッツされてしまいましたーー!』

バテバテないいんちょが明日太にしがみついたらば、ノリを崩さない朝倉の実況が轟き渡ります……よく適応できるね。

『…………』
『”今のでジャス○ックにしょっ引かれてしまうんでしょう”……いや、アレぐらいなら許容範囲だろ……』
『ですがさすがロボ研の最新型! 食堂棟内部に逃げたまき男チームの捕捉に成功しました!』
『……大丈夫だったかい、クラリ○?』
『ですから○ラリスじゃありませんって……あれ、そう呼んだってことは、まき男さん?』

司会席への中継映像だけはしっかり追えていたようでして、どこぞの屋上にて困惑するネギを映し出しました。

『まき男じゃないさ、オレ様はかの名高き怪盗しn……あれ? 続きなんだったっけゆーなー』
『コラコラ、名乗りもちゃんとできないんじゃアピールにならないでしょー!』
『いや、どう見てもまき男さんですって……それより裕奈さんもどうしたんですか、グレーの帽子に付けヒゲなんて』
『あっれー、ネギちゃんにも通じると思ってたんだけど……ほら、劇場版で対戦車ライフル使ってた何気に怪力のガンマンの』
『いえ元ネタは分かってますよ、どうしてそんなカッコしてるのかって……』
『……どーやらまき男チーム、あの有名な盗っ人一味に扮装してアプローチを仕掛けるつもりのようです!』

そんなネギの周りには、まき男と裕奈が意図の読めないコスプレで、ネギを我が物にと働きかけているようです。

『あ、あのさ裕奈……私と桜咲君までこういう格好する意味あったのかな……』
『付き合わされた身で進言しますが、奇抜に過ぎて先生が困惑しきっていらっしゃるのでhごはっっ!!』
『にゃ~に言ってるのアキラ! メインは私とまき男でやってるから、アキラは画面の向こうの誰かさんにセクシーさを見せてりゃいーの!』
『え……ダメだよ、こんな体の線が出てる服、恥ずかしいし……それに裕奈、桜咲君跳ね飛ばしてるよ』
「ったく、どいつもこいつもしょっぱいコント見せに来ただけじゃねぇか」
「全くですわ……す、少しは私のエレガンスな作戦を……」
「いや、お前のも立派なコントだったろ! つか疲れてんなら無理すんな!」

渋々と剣豪っぽい装いをした刹那と、ライダースーツをもじもじ着てるから似合ってないアキラを取り残した合同コントにゃ、明日太もいいんちょも呆れるっきゃないようです。

『待て待てーー! こんなところでゲーム終了なんて認めないぞーー!』
『泥棒さんにはお縄についてもらうですよー!』
『しまった、双子に見つかった! ……って、あんたたちまだ時間じゃないじゃん!』

そんなコントに何故か陥落のニオイを感じたらしく、風香と史也が先走ってアピールに参上しちゃいましたよ。

『……おい朝倉、これは失格取らなくていいのか』
『うーん、このタイミングで取ると構成的に面白くないからなー、いいんちょも取り消しにするから時間制限取っ払おうか』
『ああ、そうかい……』

ああ、千雨君の受け答えが輪をかけてやる気なくなってるよ……そりゃ猛獣を檻から出すような真似だもんねぇ。

『風香殿、インターポールに重い腰を上げさせたでござるよ』
『いや、ルパンっつーかまき男、すんまへん……』
『何捕まってるんだよ亜貴ー! 時間ギリギリでネギちゃん下ろして、”ヤツらが盗んでいったのは、あなたの心です!”ってやるつもりだったのにー!』
「まぁ、オチ考えてるだけマシなんだろうが……ってオイ、どこ行く気だいいんちょ」
「決まっていますわ……失格が取り消されたとあっては、一刻も早く、ネギ先生の、元へ……」

ブラウンのコートを羽織った亜貴を楓さんが抱えて参りまして、そこにボドボドないいんちょまで向かったもんだから、ますます捕まえたモン勝ちな状況になってきまして……どうすんの!?

『さーて、史也チームの妨害が見事に成功しましたが、まき男チームも黙って見ているとは思えません! どう反撃を……ん、どうしたのザジっち?』
『…………』
『”あ……ありのまま起こったことを話すぜ! 「乱戦になると思ったら、ネギ先生が姿を消していた」”……あ、ホントだ! どうしたことでしょう、まき男チームが確保していたハズのネギ先生が、忽然と姿を消しています!』
「は、ハァ!? 消えたってどういうことだよ、まさか魔法でも使ったんじゃ……」
「Clock over……ノギ先生救出成功、と」

そしてそして急展開! 激戦区からネギの姿が消えたかと思えば、明日太の目の前に突如ネギを抱えた空の姿が現れましたとさ。

「へ……私、いつの間に下に来て……?」
「そ、空だとぉ!? お前どっから出てきた!?」
「そいつぁ言いっこなしだぜアスカ。ほら、速くノギちゃんと一緒に逃げな!」
「言いっこなしじゃねぇ、普通どうやって来たのか気になるだろ!? それと明日太だっ!」

そりゃいきなり目の前に誰か出てきてキョトンなロリっ子渡されりゃ、逃げろ以前にいろいろ聞きたくもなりますよ。

『あーっと、ネギ先生は既にジョーカー明日太の手に渡っているようです! どうやら史也チームの春日空くんが手引きしたとの未確認情報が入ってきました!』
「やっべ、朝倉に気付かれた! とにかく校舎まで逃げるぞ、ネギ!」
「え、逃げるって言われましても……ちょ、手を引っ張らないで下さいっ!」
「グッバイだアスカ、早く結ばれちまいなご両人!」

かと思えば目ざとい朝倉にしっかり捕捉されまして、明日太とネギの愛の逃避行のスタートです……って、この2人には似合わねーなぁ。


和泉亜貴 曰く、
”……まぁ、どうせ僕は脇役やし、こんなショボイ出番がお似合いやろーな。
あ、でもあの決め台詞は言っといた方がええよな。せーの、’いいえ、ヤツらはとんでもないものを盗んでいきました。それは貴方の……’
……ってちょっと待ちいな、今やろ邪魔入れるなら! ここいらで途切れささな笑いになれへんやん!? しっかり合図せえやAD!”



”前略、天国のおふくろ様。
いやもうこりごりだ、とにかくこりごりだ。
どうこりごりだったのか……いや、それさえも思い出したくねぇんだって”


11話 ”逆玉は狙って乗ることに意義がある その3”
前回まで:しっちゃかめっちゃかの中で合流できた明日太とネギ。でもまだ半分いるんだよね……

「……それじゃ、伝言ゲームの要領で私のパートナー話が膨らんじゃってるんですねっ!?」
「よく分からんがそうだ! とにかく校舎まで逃げりゃいいんだ、そうすりゃゲームも終わる!」

休憩所を全力疾走で駆け抜けながら、明日太はネギに事の顛末を話していました。まぁ半分ぐらいネギが推理して補足したけども。

「でも、まだ3人も残ってるんですよね、アピールしてくる人たち……」
「あぁ、でも超に釘宮に本屋だし、そんな大したことには……」

話がポジティブな方向に向かってる矢先、どーみても戦車っぽいデカブツが横から突っ込んで来ました! あーあ、大したことになっちゃった……

「「へ……」」
「グッドアフタヌーン、ネギ老師に神楽坂クン。ボクらロボ研謹製のマシンから、逃げ切ることが出来るカナ?」
「「は……はいぃぃぃぃ!?」」

いや、突然戦車的なモノに追われることになったら、普通は驚くって。

「と……とにかく逃げましょう!」
「あぁもう、ワケ分かんねぇよ! 何したいのコイツら、何したいのォ!?」
『上手く逃げ切れたかと思ったジョーカー明日太、超チームの巨大戦車に追われて大パニックです!』
『こいつら、最初からアプローチとか捨ててるだろ……年喰った賑やかし専用のホストかお前ら』

現場にいるかいないかの差なんだろうけど、割と素直に受け入れて実況や解説をする司会席……ヒドいってそれ。

「フフフ、流石長谷川クンは鋭いナ。ボクらは実験機のテストができれば満足、このゲームの目的ナド最初から無視のコトヨ」
「いや、自慢げに言えたこっちゃねぇだろ! 普通にネギたらし込みに来る方がナンボかマシだよ!」
「バカなことを言わないで下さいよー。僕も超くんも、恋愛事に首を突っ込めるほど安い青春にする気はないんですよー」
「葉加瀬さんいたんですか!? いや、青春って恋愛も十分に含めると思うんですけどっ!」

戦車のハッチから首だけ出していろいろのたまう超と葉加瀬ですが、どこまでも常識から外れてますねぇ。

「おぉハカセ、出てこれたということは完成したカ」
「はいー、外部からのプログラム修正は完了ですー。後は使い手の能力次第ですが……」
「……あ、明日太さん、横ですっ!」
「え……ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

葉加瀬がゴタゴタ難しそうなことをくっ喋っている合間に、またまた横からF1カーみたいなのが突っ込んで来ました……ってこんなパターンばっかり!?

「現在の性能、カタログスペックの87.42%。十分ネギ先生を追跡できます」
「男なんだろ~グ~ズグズするな~よ~♪」
「え、エヴァンジェルさんに茶々丸さん!? ってか何歌ってるんですかエヴァさん!?」

そのF1カーの主とは、首だけ出してメカメカしさ全開な茶々丸さんと、機首に立って鼻歌歌ってるゴキゲンなエヴァ君、なんてバカ騒ぎとは無縁な面子だから意外も意外。

「開発中のマシンは一つだけではないということですよー。仮名称FF-1です」
「違う、ド○だ」
「いえー、フィクス・フォーミュラー、略してFF-1と……」
「違う○ルだ、電子星獣だ」
「いや、何そこまでこだわってんだ!? つうかエヴァンジェルってこんなキャラだったのかよ?」

明日太をしてここまでびっくりさせるって、今までどんだけ交流なかったんでしょうか。

『これは予想外! エヴァンジェル君と茶々丸さんのコンビも加わって、ジョーカー明日太に今にも追いつきそうな勢いです!!』
「のんびり実況してんな朝倉ァ! こっちゃ必死こいて走ってるってのによぉぉ!」
「でもどうします、この調子だと直に追いつかれちゃいますよっ!」
「分かってるわい! どうにかしねぇと、もう少しで校舎の入り口が見えて……んんっ!?」

ふと明日太が校舎に目を向けると、見覚えのある顔が何か長物を構えている姿が目に入りました。

「茶々丸、見えるな?」
「……間違いありません、龍宮さんが狙撃体勢に入っています」
「フム、龍宮クンの襲撃に耐えられるかもテストのうちヨ。このまま追跡を続行するヨロシ」
「ハハハハハー! ロボ研が総力を挙げて開発したマシンですー、そう簡単に破らせまs」

葉加瀬が息巻くのも中断して、あっさりキャタピラとタイヤが撃ち抜かれ、2機とも横転してオダブツ……笑えねぇ。

「ひ、ひっくり返りましたよ、ひっくり返りましたよ!? 大丈夫なんですか!?」
「心配すんな、あんぐらいの失敗は何度もやってるヤツらだから! いや、エヴァンジェルと茶々丸さんはどうだろうな……」

ド派手な顛末に後ろを向けない明日太とネギは、揃って校舎へ向かっていきました。

「損傷率41%……まだ追跡は可能ですが、マスター」
「嬢ちゃん相手とはいえ、満月を逃がして戦う利はなかろう。マシンが壊れては超に協力する意味もあるまい」
「……了解しました」

超と葉加瀬がアフロ頭でなんとか残骸から抜け出た横で、エヴァと茶々丸ってば平然と密談交わしてましたとさ。何コレ、伏線?


一方逃げ続ける明日太とネギの目の前に、先ほど遠目に陣取っていた色黒な彼が現れました。

「た、龍宮……気を付けろネギ、釘宮か本屋の味方になってるからな」
「あのー龍宮さん、あんまりこういうゲームにノらない人ですよね、さっきみたいなことしませんよね?」
「済まないなネギ先生、悪趣味は承知だが俺も雇われた身だ。仕事ならば手は抜けない」
「仕事って何だよ!? つうかその構えてるのマジハジキじゃねぇよな、そうだと言ってくれ!」
「……想像に任せる」

いや、任せるほどやましいブツなんですか龍宮君。

『残る釘宮チームの一員、先ほど超チームを脱落させた名手・龍宮真! その彼がついに、ジョーカー明日太の前に立ちふさがりました!』
「実況も急かしているようだ……行くぞ」
「行くぞって言われてもどうすればいいですかっ! ……ん、花吹雪?」

龍宮が戦う構えを見せたその時、ピンクの紙吹雪と火の用心のとき鳴らすアレみたいな音が響き渡ります。
その元を辿って、ネギと明日太が後ろを振り向きますと……アレ、番傘持った3人組ってまさかぁ!?

「熱く歌い、エロを語る! 空チア・チアパープル!」
「友情厚く、女装を嫌がる! 水チア・チアブルー!」
「カラオケ命、運を引き込む! 陸チア・チアオレンジ!」
「人の前で……」「世の前で!」「チームを組んで応援を……んー、どうしたの美砂ー?」

体育館のまん前で、明らかに忍びっぽい登場を決めたチアトリオ……ですが、センターの柿崎さんの様子がおかしいですよ。

「……いいわね、沢山人が集まってて、その上テレビ中継までしてるんでしょ……」
「当たり前だ、こんな変な格好してるんだから人も集まるよ! っていうか何でわざわざ俺に女メンバー当てるの!?」
「なんてったって、たつみーがしっかり客引きやってくれたおかげだもんねー。楽しもうよーくぎみ……あれ、美砂だいじょーぶー?」
「せ……戦隊ごっこなんて下らないわ! 私の歌を聴けーーー!!!」

あれまぁ、注目を浴びすぎて柿崎さんがぶっ壊れたようです。

「か、柿崎さんもああいう電波系スキル持ってたんですね……」
『これは驚きました! 釘宮チームの司令塔・柿崎美砂が、どこからともなくギターを出してマジ演奏を始めました! これもアプローチの内なのでしょうか!?』
「いや、それはねぇだろ朝倉……あれは素で喜んでる顔だぞ」

お供を無視して、ギターをバリバリ弾いて恍惚に包まれた柿崎さんですが、そう長くは続きませんでした。

「それじゃいくよみんなーー! でこぴん☆ミサの1曲目、”ハッピーマテ……”」
「戦隊ネタは……バカレンジャーの十八番アルーーー!!」

突如現れたのは古菲さん、流星の如く飛び込んで柿崎さんに蹴りを加えました……やりすぎだろ!?

「クーフェイ? ってことは本屋まで乱入かよ!?」
「その通りです明日太さん……バカレッドともあろう者が、専売特許を奪われてジッとしていてどうするですか」
「無事ですか、ネギ先生!」
「あ、宮崎さん、綾瀬さんに早乙女さんも! ……うわ、宮崎さん目がマジっぽいんですけどっ……」

悲しいかな、折角出てこられてものどかの執着っぷりを考えると、絶対にプラスに働くと思えないネギと明日太だったりします。

「古、クライアントの邪魔はさせんぞ」
「おー、真が相手になるアルか! 退屈しなさそうアル!」
『最後を飾るのは宮崎チーム! メンバーの古菲、釘宮チームの龍宮真とガチバトルに入りましたー! 一方、これまでの候補者もなんとか追いつこうと全力疾走中です!』
『…………』
『”マジメにゲームする気がないのは……全員だったッ!!”……いや、今更のように指摘するなよ』
「……あぁ、このテレビ壊してぇ」

どんどんカオスが渦巻く現場を離れて、司会席でノリノリな朝倉とやる気ない千雨に明日太も本気で腹立ってきてるみたいです。

「達人同士で潰しあってる今のうちよのどか、秘密兵器で片を付けちゃいなさい!」
「ちょっと待てやですハルナ、秘密兵器って打ち合わせしてないだろです! つーかお前が仕組んでる時点で嫌な予感しか……」
「分かったよハルナ! ネギ先生に告白します……このノートには先生との様々な妄想を書いてまして、毎日これで最低5回はオナnげふっ!」
「何告白してんだよですのどかー! 冷静になれよです、捨てる物多すぎる上に得るもの殆どないことぐらい分かるだろです!」

そんな絶交の機会に、のどかは大博打を仕組みましたが夕にドツかれて発動しませんでした。いや、まず失敗するだろ……

「モメてる今のうちだ、ネギ、校舎に逃げるぞ!」
「はいっ! ……あ、そうだ! ラス・テル・マ・スキル……」
「ってオイ、杖持って何する気だ!?」

なんとか校舎に入り込めた明日太とネギですが、そこにネギが思い立って魔法を準備し出しました。
唱え終わったらばあら不思議、外の木々が折り曲がって校舎の入り口を塞いでしまいました!

「……これで、しばらくは入ってこれないハズです」
「ハズですじゃねぇよ! また魔法使いやがって、誰かに見られてたらどうするつm……」
「あや……2人ともどうしたん、またマジックの練習~?」

あーあ、明日太が恐れてたとおりに、いつの間にか来ていた着物の少女に見られちゃいましたよ。

「あ、あああああああのですねっ、これは今巷ではやってるCGでして……」
「そ、そそそそそうだぞ木乃香、何も怪しい魔術とかじゃねぇから、な!?」
「へ……木乃香、さん……?」
「あれ、ネギちゃん気付いてへんかったん? そうか~CGやったんか~。2人して多趣味やな~」

明日太はすぐに気付いてたようですが、着物少女は確かに木乃香さんでいらっしゃいまして、ごまかしも簡単に成功しましたよかったねぇ。

「でも明日太がおるんやったら百人力や、ウチと一緒に逃げよ!」
「な、逃げよじゃないだr……って引っ張るなよ、また途中でバックレたのかお前!」
「あ、木乃香さんに明日太さん、待ってくださーい!」

そこまではよかったんですが、木乃香が無理矢理明日太を連れまわしてしまい、ネギもそれについて行ってしまいましたよ!


木乃香の導きで逃げて来ましたるは、見慣れた旧2-A、明日からは3-Aとなる教室です。

「ど、どうして木乃香さんまで逃げ回ってるんですか? まさか朝倉さんが……」
「いや、朝倉は関係ねぇよ。こいつのババァがな、またお見合いすすめて来てるんだよ」
「今日は写真撮ろうってことやったんやけど、途中で逃げてきても~たんよ」
「ったく、毎回逃げ回るんならちゃんと断れよ……」
「ん~、おばあちゃんに頼まれるとどうしてもイヤとは言えなくてな~」

なるほど、それなら美しく着飾る訳も分かる……って、何だかネギさん考え込んでますよ。

「……ところで、お見合いって何ですか?」
「ありゃ、ネギちゃん知らんかったんか……要するに結婚相手、人生のパートナーを見つける日本の慣習やな」
「ま、つまりは今のお前と似たようなもんだ」
「へえー……って明日太さん、パートナーと結婚相手は違いますからっ!」

木乃香の説明はともかく明日太の付け加えに、ネギさんものっそ反発してます。事実そうだ的なこと言ったのは君だったけど。

「ええトコの娘やから、ってよ~け相手の人を見つけてくるんやけど……やっぱりウチらも子供やし、結婚どうこうより心が通じ合うかどうかが大事って思うんよ。明日太もそやろ?」
「それは……まぁそうなんだろうが、腕に抱きつくのはやめろって」
「またそない冷たくして~。好きか嫌いかで言うたら好き、て言うてくれたや~ん」
「いや言ったけどよ、付き合うとかそういうことじゃねぇよ! 第一あのババァに睨まれたかねぇし!」

木乃香に腕にひしと抱きつかれて戸惑う明日太ですが、好きか嫌いかの答え方が悪かった所為もある気がします。

「そや、ネギちゃんのパートナー誰がええか占ったげるえ! かわええ妹分のため、占い研部長の腕の見せ所や~」
「え、そんないいですよっ! ってか私、一応教師なんですけど!」
「ちょ、抱きついたまま引っ張るな、バランス崩して……どわぁぁぁぁぁっ!!」

逃げるネギと手を取り占おうとする木乃香、ついでに引きずられる明日太の足がもつれまして、3人まとめて引き倒してしまいましたよ!

「痛たたたた……何やってんだよ木乃香、せめて腕を放してからにしろよ」
「あはは……ごめんな~明日太にネギちゃん」
「ホントですよっ、強引なんですから……あ゛っ……」

倒れこんだ明日太たちの目の前で開いた扉からは、ネギをも唖然とさせる氷の微笑を浮かべたいいんちょの姿がありまして……

「ほう……明日太さん、ネギ先生に飽き足らず木乃香さんに着物を着せて一緒に押し倒すとは……」
「な、何を勘違いしてるのかないいんちょ、俺はやましいことなんてしt……」

あれ、何でしょうこの殺気。明日太も口告げなくなっちゃってますよ。

「お嬢様を……」「連れ出した挙句……」「ネギちゃんまで……」「タマ取られたいと……」「見ていいんですね……」

えーと、木乃香のSPさんとか桜咲君とかまき男とかのどかとか……あ、この負の念測りきれません。

『……というわけで、始業式前日の午後、とある教室から響いた断末魔についてのレポートをお送りいたしました♪ 実況の朝倉和美と……』
『解説の長谷川千雨でした、と……』
『…………』
「い、いや、司会してねぇで助けtふべらっ!!!」


『ちょっ、あっ、少しはてかげnごはっ!』
『……フウ、主人公があのザマなのでエンディングを担当しよう……誰だ、だと? エヴァンジェル・A・K・マクダウェルだ、これを機会に覚えろ。』
『あ、いや待て、鈍器はダメだ、鈍器hぐへっ!』
『まあ、3話に喋ったっきりで久々の出番だから忘れられても無理はないかもしれんがな……』
『えっ、その電動音何だ、ドリルか、ドリルなのkふべしっ!』
『しかし俺さm……私も大御所の自覚はあるからな、今度は憂さ晴らしのつもりで大暴れしてくれるわ! 次回”お前ら、新作ライ○ー出る度に「今度のはダメだ」とか言うクセ直せ”にスイッチ・オン!』
『お、おい、青色のダイオードなんてどうすんだよ、どうすrアッーーーー!!』

12話 真打ちは格好のタイミングを狙って出る主義に染まってる



”前略、天国のおふくろ様。
本って10何冊も持たされると重たくて仕方ねぇ、本屋って頑張ってたんだな……
ただ、今この状況でオカルト系の本渡されても困るって。いや、悪い予感を当てそうな自分が怖いんだよ!”


12話 ”真打ちは格好のタイミングを狙って出る主義に染まってる その1”
前話まで:命を賭してネギの貞操を守った明日太。君の名は決して忘れない……

風薫る4月、絶交の始業式日和となりました麻帆良学園中等部……の校舎の保健室にて。

「ったく……いくらギャグパートですぐに治るからって、死ぬほど痛めつけてどうすんだよ」

せっかく3年生になったってのに、そうボヤキながらベッドに寝っ転がる明日太君。よく生きてたなぁ……

「まぁ、今日は始業式と身体測定だけだからいいか……どうせ授業があっても寝ちまうし」
「こんにちはー! 明日太さん、元気にしてますかー」

怪我人を安静にさせる聖域なハズの保健室に、ハイテンションで入って来ましたるは、引き続き3-Aの担任になったネギ先生です。

「どう見たって元気なワケねぇだろうが! それにお前、ホームルームはどうしたよ?」
「もう終わって身体測定に入りましたよ、教室で男子が着替えるから追い出されたところなんですっ」
「あぁ、そんな時間か……って待て、まさかあの男共を野放しにしてこっち来たのかよ!?」
「え、野放しってどういうことですk……」
「おジャマするアル、ノゾキ魔を引き渡しに来たアルよー!」

ネギが警告を疑問に思ったところに、古菲さんがぞろぞろと怪我人を連れてまいりましたよ。

「超さんに春日さん、史也さんに釘宮さんまで!? 一体どうしたんですかくーふぇさん!?」
「さっき言たとおりアルよ、更衣室をノゾこうとしたところを粛正したアル!」
「……やっぱりな。ネギは今まで知らなかったろうが、超はこの手の常習だからな」
「何を言ているカ神楽坂クン。右腕のキミが不在だたカラ、古の貧相なカラダしか拝めなかtアリガトゴザイマスッ!」
「余計なお世話アル!」

一番痛手を負っていた超が肘鉄でKOされたのはさて置いて、明日太に汚名押し付けること言っちゃいましたよ。

「バカてめぇ、去年は俺に全部責任押し付けたクセして……あ、ヤッベ!」
「……最低ですねっ」
「そうアル、女の敵アルよ」
「僕とクギミーさんは騙されたんですよー、ノゾキをする気はなかったんですー!」
「そうだよ、主犯は超と空だけなんだから……でもクギミーって言うのはやめよう!」

ネギと古からの痛い視線に、史也と釘宮も必死の弁解に入りました。

「しょーがねーでしょ、アスカだけならまだしもマサオにマキまで脱落しちまってたし、ピンチヒッターが必要だったんだよ」
「明日太だっ! まぁまき男も亜貴も去年のでコリゴリだって言ってたし、来なくても無理はな……」
「みんなどいてんかー! 急患、急患やー!!」

噂をすればとばかりに、亜貴が騒がしく保健室に入って来ました……養護の先生共々、これまた噂のまき男を抱えての登場ではありましたが。

「まき男さん!? 一体どうして……あ、しず樹先生、何があったんですかっ!?」
「ああネギ先生、来ていたんですか……今朝、佐々木君の行方が分からなくなったと同じ寮部屋の和泉君から聞いて一緒に探していまして、桜通りで寝ているところを見つけたんです」

ネギ先生も今までにないことで動転してまして、遅れて入ってきたしず樹に慌てて顛末を尋ねています。

「さ、桜通りって、吸血生物が出るってウワサの場所じゃないですかー! ホントにいたら怖いですー!」
「待て待てフミトくん、吸血生物じゃ某チュパカブラになるじゃねーの。満月の夜に吸血鬼が出るって話だっただろ」
「どっちにしても怖いじゃないですかー!」
「オイ、何勝手に怖がってんだよ……どんなウワサだっつんだ、吸血鬼どうこうって」

どっか心当たりでもあるような史也と空のやり取りに、話の読めない明日太が茶々を入れてきました。

「さっき教室で話題になってたんだよ、寮近くの桜通りに吸血鬼が出るって有名な噂のことが……半分ぐらい美砂と桜子が尾ヒレつけてたけどな」
「心配することでもないヨ。もしいたとしてもダ、男子や古みたく魅力のナイ女子は狙わないyアリガトゴザイマスッ!」
「ケガ人は安静にしてろアル!」
「いや、腹殴って安静にもクソもあるか! 大体吸血鬼ってそんなデタラメが……」

内容を聞いてみればしょうもなく感じてか、明日太はデマと切り捨てようとしますが。

(待てよ、このパターンって期末の時にもあったような……いやいや魔法の本はあっても吸血鬼はねぇって。ネギなら否定してくれるハズだ、そうに決まってる!)
「……いやあるわけねぇって、なぁネギ? ……オイ、ネギ?」
「……私の他に誰か……図書館島以外でもしかして……」

チラとよぎったイヤな予感を振り払ってもらおうと、明日太がまき男の寝顔を見続けるネギを呼びますが、返事が返ってこないようです。

「コラ、聞こえてるのかネギ!? どうしたんだ、何ブツブツ言ってるんだよ」
「は、はうっ! ……い、いえ明日太さんっ、何でもないんですよー。まき男さんは多分貧血でしょうから心配いらないと思います」
「いや、俺そんなこと聞いてねぇって。気にならなくはねぇけど」
「あ……あーそれとですねっ、今日は急用があって帰りが遅くなるので、木乃香さんに晩ご飯はいらないって言っといてくださいっ!」
「いやだから聞いてねぇってそんなこと! まぁ木乃香には伝えとくけどよ!」

不思議とネギが強烈にまくし立てまして、明日太は言質を貰うことができませんでしたとさ。


「そっか~。新学期早々に残業なんて頑張り屋さんやな~、ネギちゃんて」
「まぁ、俺らも今日は図書室にしばらくこもることだし、久々に食堂棟で晩飯にしようか」
「ええな~それ。明日太のケガが治らんかったら、今日だけで本棚整理できんと思うし、今日はフンパツしよ~な~」
「ハハハ……ギャグパートじゃなかったら、多分死んでたけどな……」

午後に授業が割り当てられていないこともあって、木乃香とあっさり完治した明日太が図書室にお手伝いに向かっていますと。

「若さ~若さ~ってなんだ~ふりむかない~こと~さ~♪」
(え、エヴァンジェル? 一人でうろついてるとは珍しいな……)
(ホンマやな、エヴァくんがハミングしとるとこなんて初めて見たわ……)
「ン……神楽坂明日太に近衛木乃香か。私に何か用か?」

かなり特殊なチョイスの鼻歌を口ずさむエヴァンジェルと鉢合わせまして、コソコソと話す明日太と木乃香に気付いて話しかけてきました。

「い……いやな、エヴァンジェルが妙にゴキゲンだな、って思って……なぁ木乃香?」
「う、うん、そやよ~! エヴァくんて、何かええことでもあったん?」
「何だ、そんなことか……何、最近体の調子が良くて浮かれていただけだよ」
「あぁそうか、変なこと聞いて悪かったな。それじゃあ……」

ちょっとネタ気味に見ていた事をごまかせて、ホッとした明日太が去ろうとしますが。

「そういえば……桜通りの吸血鬼が噂になっているな」
「あん? それがどうかしたのかよ」
「お前達も気をつけることだ。大抵の吸血鬼は生娘を好むと言うが、食に窮していれば男でも襲うかもしれんからな……」

エヴァも噂を知ってはいたようで、何だか意味深に警告してその場を去っていきました。

「エヴァくんって、意外と喋る方やったんやな~」
「新学期だからイメチェン……ってガラでもなさそうだな。そういやぁあの歌って、あの手のキャラ定着させる気かよ……」

ちぃとばかりエヴァの行く末が案じられる明日太ですが、それほど考え続けることなく木乃香と共に図書室へと向かい始めました。


一気に時間が動きまして、満月輝く夜の食堂棟では賑やかな一団がテーブルに構えていました。

「あぁぁぁ……ったく、仮にも手負いだってのにドカドカ仕事任せやがって。本の持ちすぎで腕がパンパンだぜ」
「すみません明日太さん。本当なら図書委員だけでする仕事なのに、わざわざ来てもらいまして……」
「まったくだ。っつうかさぁ本屋くん、昨日は君も本でボコボコ殴ってたけど、俺とネギなんてありえねぇって! カン違い危険!」

明日太が箸を片手にのどかを問い詰めますが、そんだけ元気ありゃ根に持つことでもねーっしょ。

「……出来たえ、じゃ~ん! ウチ謹製の吸血生物フォトグラフや~!」
「ほほー、木乃香ってばなかなか上手じゃなーい! 漫研でもやってけるかもよ?」
「昔から根も葉もないデマだと言われているですのに、今更踊らされててどうするですか……」
「それは言いっこなしでしょー夕ってば。おばあちゃんは言っていた、”二次元と三次元とは地続きになっている……そう考えた方がオタ道は楽しい”ってね♪」
「吸血生物が現れて楽しくなるほど安い人生送ってねーよです」

片や木乃香直筆の絵に、夕とハルナが食いついてボケたりツッコんだりしてるうちに時間も過ぎておりまして。

「……あぁそうだ、そろそろ格闘技のテレビ中継あるんだわ。俺はもう帰るぞ」
「あ、でしたら僕も、一緒に帰りますよ」
「やーねー明日太ものどかも、まだ夜は長いってのに……ハッ!? もしかして俺のエクスカリバーをって展開じゃ……」
「妄想はそこまでにしとけです! それじゃあのどか、先に帰っててくださいです」
「また後でな~明日太、ウチはもうちょっと残っとくわ~」

明日太に続いてのどかも席を立ちまして、揃って寮への帰路に付きました。

「……そういえば、明日太さんって吸血鬼の噂、知っていましたっけ?」
「あ……あぁ、まき男が運ばれてきたときに聞いたな。でもありえねぇって、ネギも貧血で倒れただけだっつってたし」

そんな2ショットの帰り道、珍しくのどかから物を尋ねてきまして、明日太も少々驚きながら答えました。

「そう、ですか……それにしても、やっぱり明日太さんとネギ先生って仲が良いですよね」
「はぁ? バッカだな本屋、仲がいいってワケじゃねぇよ! まぁあれだ、くされ縁みたいなモンだよ」
「で、でも、その割にはマジックの練習も、一緒にしてるらしいじゃないですか……昨日使ってたのも、凄いマジックでしたし……」

心の底からネギとの仲を否定した明日太でしたが、続けて昨日ネギが使った魔法に話が触れてさあ大変。

「は、ハハハハハ……まぁそう、そうだなぁ! 俺も仕方なく練習に付き合っててさぁ、いや仕方なくで!」
「何言ってるんですか。あれだけ大きな仕掛けを動かすなら、コンビネーションができてるんでしょうし。あんな、魔法みたいなマジックは……」
(……あれ、何この展開!? ひょっとして本屋のヤツ気付いちゃってる? ひょっとして強制送還エンドですか?)

いやいや明日太くん、んなこたぁないって。ちゃんと続く仕掛けは用意してありますよ。

「Hey boy~空を見ろ~うつむかないでさ~♪」
「……あ、明日太さん、あれって……もう桜通りに入ってるってことは、まさか……」
「んっ? 人影……って、街灯の上に立ってるってどういうこったよ!?」
「小僧が2人では味に期待できんが……まあいい。光栄に思え、貴様らの血を少しばかり、俺様が直々に啜ってくれる」

桜通りにて明日太とのどかの前に突如出てきた黒い人影……果たして、噂の吸血鬼だったりするのでしょうか!? って、これで別人でしたーなんて展開上ありえないよな……

超鈴音 曰く、
”フウ……全く、古は手加減というモノを知らないから困るヨ。
コレが話題のツンデレというヤツなのだろうガ、モ少し肉付きがよくないtアリガトゴザイマスッ!『セクハラ封じの一撃、アルー!』”



”前略、天国のおふくろ様。
また魔法がらみで敵が出てくるんだな、お兄ちゃんやる前から疲れてきたよ……
あれっ、そういえばあの人、どうやってあんな飛び方したんスか!?”


12話 ”真打ちは格好のタイミングを狙って出る主義に染まってる その2”
前回まで:妙に目立ちだしたエヴァ、いきなり復刻した吸血鬼の噂。ボロボロな明日太が体当たりで迎え撃つ!

時は満月の夜。何があったか吸血鬼、桜通りで明日太とのどかの前に立ちふさがりました!

「へっ、血をすする……だぁ? そんじゃ、テメェがウワサの吸血鬼だってぇのか? 悪ふざけならとっとと帰りな!」
「威勢が良いな……面白い。悪ふざけかどうか、とくと見ててやろう」

三角帽子を目深に被った人影が街灯から降りまして、明日太の言を否定した瞬間、猛スピードで突っ込んで来ました!

「なっ……この野郎!」

動きを捉えるが早く、目の前に来る時を狙って拳を繰り出した明日太ですが。

「フン……」
「どぉっ……あ、当たって……ない?」

人影は明日太を腕ごと受け流しまして、明日太が気付けば影は背後に回ってしまっていました。

「根性は据わっているが、腕前が素人では俺様を止められはせんさ……そして」
「あ、あああああ……うーん……」
「宮崎のどかの方は声も出せずに気絶か……見習うのだな神楽坂明日太、ジタバタされては俺様も疲れる」

一方でのどかがあっさりぶっ倒れまして、明日太も徒手空拳の覚悟を決めましたところに!

「そこの人、待ってください! 私の生徒に、手出しはさせませーんっ!」
「! ネギか!?」
「ほう……早いな」

ネギが杖に足掛けながら、突風かという程の速さで飛んで参りました! って誰かに見られたらどうすんのよ?

「魔法の射手・戒めの風矢(サギタ・マギカ・アエール・カプトゥラーエ)!」
「なっ、んなハデな魔法、こっち巻き込む気か!」
「フン、氷楯(レフレクシオー)……」

先手必勝とばかりにネギが魔法を撃ち込みましたが、人影も薬ビンを投げると同時の詠唱で全て弾き飛ばします!

「障壁!? やっぱり、魔法使いの吸血鬼……!?」
「……コラネギ子! 俺がこの野郎の後ろに来てたからよかったが、喰らってたらどうする気だテメェ!」
「誰だ~光あふれるせ~かいに~誰だ~あら~しを~起こ~すのは~♪」
「あ……そっと~指で~触れた~人は~だ~れ~♪」
「いや、いきなり歌合戦してんじゃねぇよ! 緊張感なくなr……って、まさかお前!?」

ネギの魔法で起こされた強風で、人影の帽子が飛ばされて出てきた顔はなんと……

「大した魔力だ……血筋もあろうが、その年でここまでの威力を誇るとはな……」
「あ、あなたは……3-A・出席番号26番、エヴァンジェルさん!?」
「……マジかよ!?」
「少しばかり歓迎の儀が遅れたことは謝る……だが、新年度という節目は悪くない機会だろう、先生? ……いや、ネギ・スプリングフィールド」

いきなり出番があるから疑わしかったとはいえ、黒タキシードに黒マントなんていかにもな装いのエヴァンジェル・A・K・マクダウェルの姿を見て、ネギも明日太も驚きを隠せません。

「姿は母親に似ているが……魔法学校で基礎とされる魔法を学んでいる辺り、気質は祖父から受け継いだようだな」
「そ……そんなことより、何で貴方は生徒を襲うんですか!? こんなこと、魔法使いがやっていいことじゃありませんよ!」
「愚問だな、血を吸わぬ吸血鬼が何処にいる? そして……魔法使いが非道を働かんなどと、勝手に決めて掛からないことだ! 氷結・武装解除(フリーゲランス・エクサルマティオー)!」

またしてもエヴァが薬ビンを投げて発動させた魔法が、冷気の層となってネギとのどかへと向かって放たれます!
ネギはとっさに手を突き出した所為か、スーツの袖が吹き飛ばされただけで済みましたが、のどかは制服の殆どが凍って剥がされる羽目に……

「きゃぁーっ!!」
「咄嗟にレジストしたか……そうでなくてはつまらん。もし止める気があるならば、死力を尽くしても追いかけてみせるのだな、先生……ン」
「け、血液に波紋を起こす呼吸だ、血液に波紋を……いや、やり方分かんねぇけどとにかく……」
「ハァ……相手をするのも煩わしい。とっとと失せろ」
「何をゴチャゴチャ吐かしてやがる! まき男をやったのがテメェだってんなら容赦しnぐひゃっ!!」

この隙にその場を去ろうとしたエヴァの前に、どこか間違った気炎を吐く明日太が対峙しました。
とはいえ対抗策もない明日太がまともに止められる訳もなく、エヴァの飛び膝蹴りを顔面に食らって悶絶してしまいます。

「フフフ……」
「あだだだだだ……ま、待てこの野郎!!」
「明日太さん……宮崎さんを頼みます、風邪をひいては大変ですし……エヴァさんは、私が止めます!」
「何言ってんだ、相手も魔法使いだってのにお前だけでどうにかでき……ぐわぁぁっ!!」

冷気のモヤに紛れて逃げるエヴァを、ネギが強風を巻き上げながら追いすがっていきました。
……で、残されたのは今更鼻血が出てきた明日太とパンツ一丁ののどかだけということに。

「あのバカ、吸血鬼だぞ!? もし血を吸われでもしたら屍生鬼になっちまって……あれ、まき男って無事だったよな?」
「どうしたんや明日太、すっごい音やったけd……」
「お、木乃香か! ちょうどいいトコに来てくれたな」
「……ま、まさか明日太、ハルナが言うとったようにのどかくんと……でも丁度ええってことは、もしかして3人でする準備でも……」

魔法の爆音に気付いた木乃香さんがいらっしゃいましたが、あられもないのどかの姿に勘違いしてらっしゃいますよ。

「何をブツブツ言ってんだよ……とにかく手伝え、本屋を俺らの部屋に運ぶぞ!」
「うん、ええよ~。お部屋でしっぽり楽しもうな~」
「いや、しっぽりって何だよ!?」

ちーとばっかし身の危険を感じなくもない明日太が木乃香を引きつれ、のどかを抱えて寮へと戻って行きました。


「それじゃ木乃香、本屋が起きたらさっきのことは適当にごまかして、俺の制服貸して帰らせといてくれ!」
「はいな、りょ~かいや~」

明日太は部屋に戻るや、木乃香にのどかを託しまして、愛用のピコハン片手に廊下へ出て来ました。

「さて、ネギとエヴァの野郎を探さねぇと……って、あいつらドコ行ったのか分かんねぇじゃんか! どうしろと……」

勢いよく再参戦をと登場した明日太でしたが、当然行方を掴んでいるわけもありません。ここでお手上げですか……と思いきや。

「……ん? 飛行機の音……じゃねぇよな、こんな近いわけが……」

寮の外からジェット噴射っぽい音が聞こえてまいりまして、半信半疑ながら非常口から出てみた明日太の目の前では。

「…………」
「な……ひ、人が飛んでた!? あ……い、今の人って、どっかで見たような……」

人の形をしたナニモノかがとんでもない勢いで屋上へ飛んでいく、なんて異常極まりない光景が待っておりましたとさ。
それでも明日太には一瞬ながら克明に姿が見えておりまして、緑の長髪や大きな耳飾りには見覚えが……って1人しかいないんじゃね?

「……まさか、クラスで化け物はエヴァンジェルだけに限らないとか……いや、まさかなぁ……」

イヤが予感がよぎってならない明日太は、配管づたいに屋根の上へと登って確かめようとします……オイオイ、ここ8階建てだろ!?

「くっ……まだ手が冷えるぜチクショウ……さっきのヤツ、どこ行った?」
「……俺様は貴様の母親、つまりサウザンドマスターにしてやられた上ば魔力も封じられ! かれこれ15年もあのジャリ中坊共とお勉強をさせられているのだぞ!!」
「! 今のはエヴァの野郎か!? こいつは好都合だ!」

屋根に登った明日太が周りを見渡していますと、死角の方からエヴァンジェルの怒声に気付きまして……あ、考えなしに突っ込んだ!?

「うおぉぉぉっ! くあぁぁぁぁっ! ざけんなぁぁぁぁっ!!」
「何っ……KUAAAAAAAAA!!」
「……あ」

飛び出た明日太はピコハンを振りぬいて、ネギにしがみつく下着姿のエヴァともう一人を弾き飛ばすことに成功しました。
直撃したエヴァは豪快に顔面スライディングとなりましたが、もう1名はかすっただけらしく、少し転がっては立ち上がりました。

「チ……神楽坂明日太! いや、ならばこのレジストは……」
「エヴァンジェル、テメェ!! ネギの血を吸おうったってそうは……な、マジに茶々丸さん!?」
「…………」

さっきのシルエットで想定できましたとおり、エヴァの脇に控えていたノッポさんは同じく3-Aの絡繰茶々丸でありました。

「……ところで何で下着姿なんだテメェ!? またネギが脱がしたのか?」
「フン……雑魚に割り入られて興が削がれた。残りの血は後々の楽しみにさせてもらうぞ、嬢ちゃん!」
「…………」
「いや質問に答えろって、オイ!」

明日太がくっだらないことを尋ねているうちに、お2方は屋根を飛んで撤退して行きましたとさ。

「な……あれ、ここ8階じゃね? 何で飛び降りた上に消えてんのあいつら!?」
「……えぐっ、えぐっ……」
「そうだネギ、無事だったか!? ……あのなぁ、吸血鬼がどんなモンかは知らねぇが、学校中騒がすようなのを1人でどうにかしようってバカじゃねぇのか!? しまいには血を吸われそうになりやがって……オイ、泣いてんのかお前?」
「ぐっ……しょうがないじゃないですかっ! エヴァさんってば茶々丸さんをパートナーにしてて、私をとことん嬲ってくれたんですよ!? 魔法唱えようにも邪魔されてばっかりだし、怖くて怖くて仕方なくって……」

とりあえず一難去った状況に、緊張の糸が切れたネギが泣き喚いて明日太に抱きつきました。

「ちょ、ちょっと待て! ここ屋根の上だぞ、抱きついてくんな!」
「うっせー! あのガキンチョ高慢チキな態度ばっかりとりやがって、私は先生じゃクソボケ! あーそうだ、あのHMXモドキもメカメカしいくせにそこそこ胸ありやがって! 今度来るときにはパートナー引き連れて返り討ちにすっぞ待ってろよフゥハハハーハァー!! ……うわーん、明日太さーん!!」
「いや、んな暴言吐いてから泣かれてもごまかせねぇって……あぁもうそうじゃなくて、とにかく降りよう! つうか降ろせぇぇぇぇっ!!」

泣き続けたまま威勢良く叫ぶネギではございますが、果たしてそう上手くいく日が来るのでしょうか? そして結構に役立たずだった明日太に日の光は当たるのか? 健康を害さないよう、適度に瞬きしつつ目を開いて次回を……待ってください。


『……はあ~。明日太たち遅いな~、お茶冷めてまうやん。格闘技のテレビも終わってもうてるみたいやし……』
『あの、木乃香さん、僕って一体……』
『あ~のどかくんはな、ショッ○ーに捕まって改造手術されるところを逃げてきたんやえ』
『え、○ョッカーってどこから出てきたんですか……それじゃあ、あの吸血鬼っt』
『そやそや、次回予告やらなあかんのやったわ。なんだか元気のないネギちゃんを、ウチらがどうにか励ましすハートフルコメディーになってますえ。そしてウチと明日太がついに……』
『で、ですから、ショ○カーと吸血鬼って、どういう関係があったんですk』
『ん~納得いかへんのやったら、ゾンビを倒してイギリス軍に追われたところをイタリアの孤島に逃げ延びるところやった……ってえのでもええよ♪ そんじゃ次回、”同居人なんやし、Aにこぎつけてからはなし崩しでやってもうたらええやん”をみんなで見ような~!』
『でもいい、ってどういうことなんですか!? それにそのウソ予告、内容偏りすぎですって……』



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