- ユーザー名
- 質問のタイトル
価値観が違う人と議論をするには
- 質問の内容
どうしても価値観が違う友人がおり、議論をすると根本的に前提が食い違うので、いつもけんかになってしまいます。彼と生産的な議論をするにはどうしたらよいのでしょう。何かいい本があったら教えてください。
- 質問のジャンル
国際政治
- おすすめする本(タイトル/著者/出版社)
アメリカ外交50年/ジョージ・F・ケナン/岩波現代文庫
- 書評
何を大切だと思っているかと、大切だと思うことが実際に実現されることは全く異なる。価値観と価値の違いを教えてくれたのが、この本だ。
冷戦時代、アメリカの外交官だったケナンは、リアリズムに依拠して国際関係を捉える。リアリズムの前提は次の2つだ。つまり、国家の上位主体は存在しないことと、国家は自国の権力を最大化しようとすることである。ここで言う権力とは、特定の価値を実現する力と捉えてよい。
ケナンは、権力が実現するであろう特定の価値には全く興味を示さない。彼が重きを置くのは、権力によって価値が実現されることなのだ。つまり、自由や平等といった理念を唱導することよりも、アメリカがソビエトより強大な権力を実際に確立することこそ、実務家である彼の関心だったのだ。
ケナンの議論の主体は国家だが、これを個人に置き換えることもできる。その場合リアリズムの前提は、絶対的な価値観は存在しないことと、個人は自分の価値観を押し通そうとすることである。
1人で考えているときは、思想としての価値観はとても重要である。しかしケナンに従えば、価値観の違う人と議論するときは、自分の価値観にこだわって結論が出ないことより、妥協してでも実際に結論を出して価値を実現することこそが重要なのだ。
国際政治において、価値観の違いで結論の出ない議論とは、お互いに全く譲歩し得ない凄惨な宗教戦争を意味する。自分の思考で妥協してはならないが、価値観の違う複数人で生産的な議論をするには、価値観の違いを真摯に認め、その上で妥協することが必要なのではないだろうか。
「高遠な道徳的原則の名において戦われる戦争は、何らかの形で全面的支配を確立するまでは、早期の解決を望み得ないものである。全面勝利という観念ほど、危険な妄想はない。問題となるのは、単にその観念が望ましいかどうかということだけでなく、それが実行可能かどうかということである。」