- ユーザー名
- 質問のタイトル
結婚って何?
- 質問の内容
20代半ばになったころか多くの友人が結婚し始めましたが、私自身は結婚相手さえもいない状態です。「負け犬」も悪くないけれど、やはり夫婦の絆を自慢されると寂しくなります…何か気がまぎれる本はありますか?
- 質問のジャンル
文学
- おすすめする本(タイトル/著者/出版社)
鍵/谷崎潤一郎/中公文庫
- 書評
今まで一緒に仲良く遊びに行っていた友人達がぞくぞくと結婚していく中で、なんとなく自分は置いていかれたような、「負け犬だから」と開き直ってみたもののまったく寂しくないと言えば嘘になる…そんな気分でしょうか。結婚式に出席するばかりで、すっかり御祝儀貧乏。「私もこの先、結婚して人並みの幸せになれるんだろうか」———私もしょっちゅう考えます。結婚生活といえば心の安らぎ、なんて思ってうらやんだりひがんでみたりもしました。でも「この本の夫婦」は安らいでいる場合ではありませんよ。
初老の大学教授である夫が、美しい40代の妻を性的に奔放にして性の享楽を得たいと思う願望を日記に書き、妻がその日記を読むように仕向けます。 妻も日記に夫の期待に添う気持のあることを書き、夫婦それぞれの日記を読み進める形で物語はすすみます。
妻を泥酔させて蛍光灯の下で裸にして眺め、写真まで撮り、しかもその現像は娘の婚約者にあえてさせます。妻も妻でその状況を楽しんでいて、そのうちに娘公認で娘の婚約者と不倫をしたり、とまあ、全員倒錯しています。でもこれを異常だと思うのは、たぶん違います。日記にはきわどいことをさらけ出しているものの、日常生活ではおそらく何も今までと変わらずに平凡に過ごしているように感じられます。そもそも、家族が読んでいることを前提として書かれた日記はどこまで真実が書いてあるかも分かりません。都合の良い妄想だけですすめられた交換日記みたいなものかもしれません。だから壮絶なラストに至っても、妻の真意がどこにあるのかなんて結局わかりません。
他人から見れば「寡黙な教授と貞淑な妻」という、なんとも心おだやかな取り合わせとも思える夫婦でも、言いたい事を互いに直接には言えず、おまけに日記も盗み読みし放題。他人の結婚生活を覗いてみたら、「夫婦の絆神話」も消えるというものです。気分が滅入りそうになったら、この教授が最後どうなったかを思い出してみると…。