無知・無名 - (2009/03/12 (木) 14:26:54) の1つ前との変更点
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*無知・無名 ◆XksB4AwhxU
(非登録タグ) [[パロロワ]] [[弱音ハク]] [[VOCALOID派生キャラ]][[[百>http://dic.nicovideo.jp/a/vocaloid%E6%B4%BE%E7%94%9F%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%A9]]]
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「あなた、予定調和を信じる?」
たとえ、街中でそんな言葉をかけられたとしても、多くは宗教の勧誘か何かと思って立ち去るだけだろう。
今の世の中、何を信じようと構わないし、何も信じないということを信じるという手すらある。
まして、信仰対象を見つけるのに怪しげな団体の力を借りる必要などもはや皆無だろう。
それなのに、彼女は立ち止まってしまった。たまたま通りがかったミクの助けがなかったら、そのままヒドい目にあっていただろう。
後で話を聞くには言葉巧みに話を持ちかけて若い女性を誘い、仕舞いには人間ダルマにして東南アジアの方に売り払ってしまうと言う恐るべき密輸窃盗麻薬殺人強姦組織がアレだそうで……。
今になって彼女は思ったが、ゾッとしていた。
そんなことを考えながら、彼女はパックを開ける。
彼女に与えられたのは基本的な支給品一式とシャープペンシル、それにテレビを象ったマスコットの刺繍がされた財布だけだった。
カッターナイフならわかる。それなら手首でも切ったら楽になれるとでも言いたいのだろうから。
だが、肝心の支給品がこれじゃあ自殺も出来やしない。彼女は最初の選択肢を消去した。
だから、考え事を続行することにする。あと――
財布の中身は、丁度2525円だった。妙に作為的な数字を感じる。きっと何か意味があるのだろう。
小市民的な発想だと言うことは彼女にもわかっていた。だけど、こんな場所でお金が何の役に立つんだろうか。
彼女はそう思っていた。銭形平次の真似事なんて誰も出来っこないし、ただドブに捨てるのももったいない。
――なら、使い切ってやるのもいいかもしれない。
盗みなんてしない。持ち運びきれないだけの荷物があってもしょうがないし、ついでにあの二人への嫌がらせのつもりで。
「お買い物をしよう」
だから、目の付いたデパートに入った。特に意味はなかった。エスカレーターで降りた。彼女もまたボーカロイドである以前に女性ということなのだろう。
だが、悲しいかな。彼女の選んだ商品はことごとく何かがズレていた。自分のためなのか、他人(ひと)のためなのか、それさえわかっていないのだから。
ついでに、このデパートも何かがズレていた。なぜか、本来あるはずのものがなく、逆にどうでもいいはずのものが無駄に転がっていたりするのだから。
結局、まともな食料品はほとんど見つからなかった。ただ、それは選択を狭めることで、時間の軽減につながったのだが。
まず、知り合いの赤い人を思い出した。きっと、トロくさい私だって、お酒が入れば三倍くらいで動けるだろうから。
それ以前に酒飲みとしては妥協するわけには行かなかったし。
売り場を遠目に見ると、見知った銘柄らしきビンは目に入らなかった。どうやら、焼酎しかこの店にはないらしい。
正直がっかりした。でも、考え直す。
「そう言えば……」
九州に行くと、芋焼酎は量り売りしてくれるところがあるらしい。それくらいだから安いに違いない。予算には限りがある。
だけど、そろーっと周る。立派な瓶に物怖じするかのように……、だって……。
高かった。
彼女が普段飲んでいる銘柄は一つもなかった。一体、自分はどれだけの安酒飲みなのだろうか? そんなことを言いたかった。恨めしそうに瓶を睨んで、いって、ようやく買えそうな銘柄を見つけ出した。
「魔王……? 怖いから安そう……」
残念ながら30万以上の値段が付いたこともある幻の焼酎です。本当にありがとうございました。
しかし、激しく! 洋酒派で、哀しく……安酒飲みの彼女にとっては仕様のないこと。だが、彼女は財布から2009円を出すと、右手の中に移す。
「でも……」
硬貨を包んだ二千円札を左右に振り回す。ふらふらとふら回す。だって「時価相応」とだけ値札には書かれていたから、この店で一番安いお酒ということはわかっていた……。
……、このお金で事足りるとわかっている。だけど、これから買い物をするのに足りるだろうか。
「きっと足りるよね?」
誰にでもなく問いかけた。
次に青い人を思い出した。
「いっか」
多少、打算を働かせたのかミニサイズを手に取る。250円の廉価版ハーゲンダッツだ。
しかし、彼はレディボーデン派だった……残念。もっと言えば、スイカバーか……。
「……………」
正直言えば、この買い物に一番時間をかけたのだろう。生鮮食品のコーナーを過ぎて、彼女は差し掛かったのは――
「ネギ」
誰に伝えるわけでもなく呟いた。そして、そのネギを天に掲げた。それはどことなく誇らしげな言葉だった。淀みなく、ニコニコと。
常日頃から、緑色の心無い言葉をぶつけられてきた彼女にとっても、その緑は心地良く思えた。
最後に思い出したのは会場で見かけた塩のこと。なぜ気になったかは知らない。恋ではない。
ふと気になってしまったことが頭の中にこびりついて離れなくなってしまう
黄色い双子のことも考えたが、既に足を動かしてしまった以上は仕方がなかった。
彼女は塩の小瓶を手に取った――
ところで、遠雷のような唸り声が響いた。近い……?
彼女は荷物をデイパックにすべて押し込むと、レジに向かって走り出した。もちろん、塩を忘れずに。
よって、二番目の問いに答えることはできない。塩の小瓶が幾らかは神のみぞ知る――。
財布を叩きつけるようにレジに置き、階段を勢い高く駆け上がる。
デパートの一角に爆炎が上がり、咆哮と激音が何度も上がる。上がる……、上がる……。彼女は何も出来ず、立ち尽くす。
ついで強面の男の人が出てきても何も出来ず、震えていた。
情けないことに、本物の殺気を目にしただけでさっきまでの平穏と余裕はどこかに飛んで失せてしまったのだ。
代わりにやってきたのは恐怖と弱音――。
しかし、男がこちらに気付くことがなかったのは幸運だった。もし、目が合いでもしたらタダで済んだとはとても思えない。
ところで、最初の問いに戻ろう。宗教の勧誘に応じた彼女の返答はこうである。
「はい……」
弱々しく呟かれたものだったが、応える表情(かお)は満面の笑みだった。
予定調和という概念をハクは信じている。勧誘の人に聞かれるでなく、最初からそうだったのだ。
ボーカロイドとして生まれた私はその存在意義とかけ離れたことに音痴だった。そして、多くのマスターに見捨てられていった。
きっとこれから先も自分は他人に迷惑をかけるんだろう。ツマンネwと揶揄されるボーカロイドとしていつまでも花咲かせることなく、いつか萎んでいくんだ。
繰り返される日常は自分からも他人からも愛想を奪い、いつしか弱音をハクだけのボヤキロイドに変えてしまうのだろう。
それを予定調和、運命と言わずに何と言うのだろう。勧誘が胡散臭いものだなんて最初から気付いていたから。これは消極的な自殺のつもりの返答だったのだ。
「ならば、それは崩せるものだと――」
「ハクさんっ! 何やってんですかっ!」
それから先はなし崩しだった。
年下?に諭されるのも慣れたものだった。お説教も聞き慣れたもので、ただうなだれて流す。
どうして、こんな自分に優しいのかと言う質問は「当たり前」という答えで切って捨てられた。
そして、私なんかがこんな優しい子に近づいてはいけないという弱音が強くなる。
強くなった。けど……、最後の言葉は
「何でも自分で抱え込まないでください! 私たちがそんなに信じられないんですか!」
「……うん」
でも……、その瞬間だけは弱音をハクことなく、他人(ひと)を信じることが出来たのだ。
だが、瞬間は時間という大きな枠組みでは小さな力しか持てない。今、彼女が頑張ったとしてもこの殺人ゲームという歪な時間の中では何も出来ない。
彼女はそうとも信じていた。何も出来ないどころか逆に足を引っ張る自分しか想像できないと、弱音をハク。
結局、彼女は何も分かっていない。いや、心の奥底で気付けてはいるのかもしれない。
そろそろ他人に何かを求めてもいいということに。信じなければいけないところに来ていることに。
「結局……、あれっきりなんだよね……」
後悔はしていた。結局、逃げ出す形になってしまったから、もう合わせる顔がなかった。
もう会いたくなかった。でも、会いたかった。誰にも会いたくなかった。誰にも会わない場所に行きたかった。
与えられた地図を思い出した。足の向く先が決まった。声をかけられた? え……?
誰かが見ているの? 声をかけられるの? 誰……? ダレッ!?
私は知らない。こんな人は知らない。知っていても、知らない!
もし知っていても、こんな知らない目をさせる私なんて知らない!?
「あ……、ああ、ああああああああああああ!!!」
彼女は逃げ出した。
これは瞬間しか勇気を持てない彼女にとっては精一杯の行動であった。文字通り逃げでもあったが。
(私には何も出来ない……。誰の役にも立てないっ! 誰にも会いたくないんだッ!)
そして、思いのすべてであった。
【F-3 デパート外/一日目・深夜】
【弱音ハク@VOCALOID(亜種)】
[状態]混乱、絶望、健康、弱音吐く
[装備]福沢玲子のシャーペン@学校であった怖い話
[所持品]基本支給品、九条ネギ@現実、ハーゲンダッツ(ミニカップ)@現実、伯方の塩(瓶)@現実
魔王(芋焼酎)@現実、ランダム支給品(残り0~1)
【思考・状況】
基本:誰とも会いたくない。だから、誰とも会わない場所(MAPの隅)に篭って、事が収まるまで待つ。
0.誰かに出会ったら一目散に逃げる。
1.他のボーカロイド勢(特にミク)については考えたくない。
2.財布どうしよう……?
3.酒場がちょっと気になる
【備考】
※設定はマスターでなく、ボーカロイドとしての彼女です。
※衣装にあるスピーカー等の装備は飾りに変えられています。
※南北どちらか、もしくは酒場に向かうかは次の書き手さんにお任せします。
※2525円が入った財布(ニコニコ印)はデパートB1階レジに放置されています。
※バルバトス(名前は知らない)を危険人物と認識しました。
【福沢玲子のシャーペン@学校であった怖い話】
ある女子高生が殺人のために選んだ凶器。
基本は現実準拠だが、実際これで人を殺せてるのを見ると侮れない。
【2525円が入った財布(ニコニコ印)@???】
妙に作為的な金額が入れられた財布。主催者の意図を感じるが……?
内訳は2000円札1枚、500円玉1枚、10円玉2枚、5円玉1枚。
【魔王(芋焼酎)@現実】
森伊蔵らと並んで幻の芋焼酎として知られる一品。
本来の評価を離れてプレミアが付いたといってはなんだが、立派に通の舌に耐える一品だと思う。
【ハーゲンダッツ(ミニカップ)@現実】
かつて、レディボーデンと人気を二分していた普通の高級アイスクリーム。季節によっては溶けて大惨事。
普通においしいが、それはプラセボ効果を甘味した上でのことだと筆者は思う。
【伯方の塩(瓶)@現実】
飛んだり跳ねたり喋ったりしない「ふ! つ! う! の! し! お!」
メキシコ産なのは参加者と変わらない。成分もたぶん変わらない。
【九条ネギ@現実】
京都市南区九条地区が主産地であったことからその名がついたネギ。
ここでは葉鞘部が比較的太く濃緑色の九条太葱を指す(Wikipedia参照)
|sm18:[[卑怯だッ!]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm20:[[月に吠える]]|
|sm18:[[卑怯だッ!]]|[[投下順>00~50]]|sm20:[[月に吠える]]|
||弱音ハク|sm56:[[夢想歌]]|
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*無知・無名 ◆XksB4AwhxU
(登録タグ) [[パロロワ]] [[弱音ハク]] [[VOCALOID派生キャラ]][[[百>http://dic.nicovideo.jp/a/vocaloid%E6%B4%BE%E7%94%9F%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%A9]]]
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「あなた、予定調和を信じる?」
たとえ、街中でそんな言葉をかけられたとしても、多くは宗教の勧誘か何かと思って立ち去るだけだろう。
今の世の中、何を信じようと構わないし、何も信じないということを信じるという手すらある。
まして、信仰対象を見つけるのに怪しげな団体の力を借りる必要などもはや皆無だろう。
それなのに、彼女は立ち止まってしまった。たまたま通りがかったミクの助けがなかったら、そのままヒドい目にあっていただろう。
後で話を聞くには言葉巧みに話を持ちかけて若い女性を誘い、仕舞いには人間ダルマにして東南アジアの方に売り払ってしまうと言う恐るべき密輸窃盗麻薬殺人強姦組織がアレだそうで……。
今になって彼女は思ったが、ゾッとしていた。
そんなことを考えながら、彼女はパックを開ける。
彼女に与えられたのは基本的な支給品一式とシャープペンシル、それにテレビを象ったマスコットの刺繍がされた財布だけだった。
カッターナイフならわかる。それなら手首でも切ったら楽になれるとでも言いたいのだろうから。
だが、肝心の支給品がこれじゃあ自殺も出来やしない。彼女は最初の選択肢を消去した。
だから、考え事を続行することにする。あと――
財布の中身は、丁度2525円だった。妙に作為的な数字を感じる。きっと何か意味があるのだろう。
小市民的な発想だと言うことは彼女にもわかっていた。だけど、こんな場所でお金が何の役に立つんだろうか。
彼女はそう思っていた。銭形平次の真似事なんて誰も出来っこないし、ただドブに捨てるのももったいない。
――なら、使い切ってやるのもいいかもしれない。
盗みなんてしない。持ち運びきれないだけの荷物があってもしょうがないし、ついでにあの二人への嫌がらせのつもりで。
「お買い物をしよう」
だから、目の付いたデパートに入った。特に意味はなかった。エスカレーターで降りた。彼女もまたボーカロイドである以前に女性ということなのだろう。
だが、悲しいかな。彼女の選んだ商品はことごとく何かがズレていた。自分のためなのか、他人(ひと)のためなのか、それさえわかっていないのだから。
ついでに、このデパートも何かがズレていた。なぜか、本来あるはずのものがなく、逆にどうでもいいはずのものが無駄に転がっていたりするのだから。
結局、まともな食料品はほとんど見つからなかった。ただ、それは選択を狭めることで、時間の軽減につながったのだが。
まず、知り合いの赤い人を思い出した。きっと、トロくさい私だって、お酒が入れば三倍くらいで動けるだろうから。
それ以前に酒飲みとしては妥協するわけには行かなかったし。
売り場を遠目に見ると、見知った銘柄らしきビンは目に入らなかった。どうやら、焼酎しかこの店にはないらしい。
正直がっかりした。でも、考え直す。
「そう言えば……」
九州に行くと、芋焼酎は量り売りしてくれるところがあるらしい。それくらいだから安いに違いない。予算には限りがある。
だけど、そろーっと周る。立派な瓶に物怖じするかのように……、だって……。
高かった。
彼女が普段飲んでいる銘柄は一つもなかった。一体、自分はどれだけの安酒飲みなのだろうか? そんなことを言いたかった。恨めしそうに瓶を睨んで、いって、ようやく買えそうな銘柄を見つけ出した。
「魔王……? 怖いから安そう……」
残念ながら30万以上の値段が付いたこともある幻の焼酎です。本当にありがとうございました。
しかし、激しく! 洋酒派で、哀しく……安酒飲みの彼女にとっては仕様のないこと。だが、彼女は財布から2009円を出すと、右手の中に移す。
「でも……」
硬貨を包んだ二千円札を左右に振り回す。ふらふらとふら回す。だって「時価相応」とだけ値札には書かれていたから、この店で一番安いお酒ということはわかっていた……。
……、このお金で事足りるとわかっている。だけど、これから買い物をするのに足りるだろうか。
「きっと足りるよね?」
誰にでもなく問いかけた。
次に青い人を思い出した。
「いっか」
多少、打算を働かせたのかミニサイズを手に取る。250円の廉価版ハーゲンダッツだ。
しかし、彼はレディボーデン派だった……残念。もっと言えば、スイカバーか……。
「……………」
正直言えば、この買い物に一番時間をかけたのだろう。生鮮食品のコーナーを過ぎて、彼女は差し掛かったのは――
「ネギ」
誰に伝えるわけでもなく呟いた。そして、そのネギを天に掲げた。それはどことなく誇らしげな言葉だった。淀みなく、ニコニコと。
常日頃から、緑色の心無い言葉をぶつけられてきた彼女にとっても、その緑は心地良く思えた。
最後に思い出したのは会場で見かけた塩のこと。なぜ気になったかは知らない。恋ではない。
ふと気になってしまったことが頭の中にこびりついて離れなくなってしまう
黄色い双子のことも考えたが、既に足を動かしてしまった以上は仕方がなかった。
彼女は塩の小瓶を手に取った――
ところで、遠雷のような唸り声が響いた。近い……?
彼女は荷物をデイパックにすべて押し込むと、レジに向かって走り出した。もちろん、塩を忘れずに。
よって、二番目の問いに答えることはできない。塩の小瓶が幾らかは神のみぞ知る――。
財布を叩きつけるようにレジに置き、階段を勢い高く駆け上がる。
デパートの一角に爆炎が上がり、咆哮と激音が何度も上がる。上がる……、上がる……。彼女は何も出来ず、立ち尽くす。
ついで強面の男の人が出てきても何も出来ず、震えていた。
情けないことに、本物の殺気を目にしただけでさっきまでの平穏と余裕はどこかに飛んで失せてしまったのだ。
代わりにやってきたのは恐怖と弱音――。
しかし、男がこちらに気付くことがなかったのは幸運だった。もし、目が合いでもしたらタダで済んだとはとても思えない。
ところで、最初の問いに戻ろう。宗教の勧誘に応じた彼女の返答はこうである。
「はい……」
弱々しく呟かれたものだったが、応える表情(かお)は満面の笑みだった。
予定調和という概念をハクは信じている。勧誘の人に聞かれるでなく、最初からそうだったのだ。
ボーカロイドとして生まれた私はその存在意義とかけ離れたことに音痴だった。そして、多くのマスターに見捨てられていった。
きっとこれから先も自分は他人に迷惑をかけるんだろう。ツマンネwと揶揄されるボーカロイドとしていつまでも花咲かせることなく、いつか萎んでいくんだ。
繰り返される日常は自分からも他人からも愛想を奪い、いつしか弱音をハクだけのボヤキロイドに変えてしまうのだろう。
それを予定調和、運命と言わずに何と言うのだろう。勧誘が胡散臭いものだなんて最初から気付いていたから。これは消極的な自殺のつもりの返答だったのだ。
「ならば、それは崩せるものだと――」
「ハクさんっ! 何やってんですかっ!」
それから先はなし崩しだった。
年下?に諭されるのも慣れたものだった。お説教も聞き慣れたもので、ただうなだれて流す。
どうして、こんな自分に優しいのかと言う質問は「当たり前」という答えで切って捨てられた。
そして、私なんかがこんな優しい子に近づいてはいけないという弱音が強くなる。
強くなった。けど……、最後の言葉は
「何でも自分で抱え込まないでください! 私たちがそんなに信じられないんですか!」
「……うん」
でも……、その瞬間だけは弱音をハクことなく、他人(ひと)を信じることが出来たのだ。
だが、瞬間は時間という大きな枠組みでは小さな力しか持てない。今、彼女が頑張ったとしてもこの殺人ゲームという歪な時間の中では何も出来ない。
彼女はそうとも信じていた。何も出来ないどころか逆に足を引っ張る自分しか想像できないと、弱音をハク。
結局、彼女は何も分かっていない。いや、心の奥底で気付けてはいるのかもしれない。
そろそろ他人に何かを求めてもいいということに。信じなければいけないところに来ていることに。
「結局……、あれっきりなんだよね……」
後悔はしていた。結局、逃げ出す形になってしまったから、もう合わせる顔がなかった。
もう会いたくなかった。でも、会いたかった。誰にも会いたくなかった。誰にも会わない場所に行きたかった。
与えられた地図を思い出した。足の向く先が決まった。声をかけられた? え……?
誰かが見ているの? 声をかけられるの? 誰……? ダレッ!?
私は知らない。こんな人は知らない。知っていても、知らない!
もし知っていても、こんな知らない目をさせる私なんて知らない!?
「あ……、ああ、ああああああああああああ!!!」
彼女は逃げ出した。
これは瞬間しか勇気を持てない彼女にとっては精一杯の行動であった。文字通り逃げでもあったが。
(私には何も出来ない……。誰の役にも立てないっ! 誰にも会いたくないんだッ!)
そして、思いのすべてであった。
【F-3 デパート外/一日目・深夜】
【弱音ハク@VOCALOID(亜種)】
[状態]混乱、絶望、健康、弱音吐く
[装備]福沢玲子のシャーペン@学校であった怖い話
[所持品]基本支給品、九条ネギ@現実、ハーゲンダッツ(ミニカップ)@現実、伯方の塩(瓶)@現実
魔王(芋焼酎)@現実、ランダム支給品(残り0~1)
【思考・状況】
基本:誰とも会いたくない。だから、誰とも会わない場所(MAPの隅)に篭って、事が収まるまで待つ。
0.誰かに出会ったら一目散に逃げる。
1.他のボーカロイド勢(特にミク)については考えたくない。
2.財布どうしよう……?
3.酒場がちょっと気になる
【備考】
※設定はマスターでなく、ボーカロイドとしての彼女です。
※衣装にあるスピーカー等の装備は飾りに変えられています。
※南北どちらか、もしくは酒場に向かうかは次の書き手さんにお任せします。
※2525円が入った財布(ニコニコ印)はデパートB1階レジに放置されています。
※バルバトス(名前は知らない)を危険人物と認識しました。
【福沢玲子のシャーペン@学校であった怖い話】
ある女子高生が殺人のために選んだ凶器。
基本は現実準拠だが、実際これで人を殺せてるのを見ると侮れない。
【2525円が入った財布(ニコニコ印)@???】
妙に作為的な金額が入れられた財布。主催者の意図を感じるが……?
内訳は2000円札1枚、500円玉1枚、10円玉2枚、5円玉1枚。
【魔王(芋焼酎)@現実】
森伊蔵らと並んで幻の芋焼酎として知られる一品。
本来の評価を離れてプレミアが付いたといってはなんだが、立派に通の舌に耐える一品だと思う。
【ハーゲンダッツ(ミニカップ)@現実】
かつて、レディボーデンと人気を二分していた普通の高級アイスクリーム。季節によっては溶けて大惨事。
普通においしいが、それはプラセボ効果を甘味した上でのことだと筆者は思う。
【伯方の塩(瓶)@現実】
飛んだり跳ねたり喋ったりしない「ふ! つ! う! の! し! お!」
メキシコ産なのは参加者と変わらない。成分もたぶん変わらない。
【九条ネギ@現実】
京都市南区九条地区が主産地であったことからその名がついたネギ。
ここでは葉鞘部が比較的太く濃緑色の九条太葱を指す(Wikipedia参照)
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