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夜間飛行~予感・その2~


「…んん?」

雪魅町から遠く離れた、M県S市杜王町。
一糸も纏わぬ姿で寝ていた、青葉縁(あおば ゆかり)は今まで見ていた夢からいきなり現実に引き戻され、まだ覚醒しきっていない眼で辺りを見回し、とりあえず上半身を起こす。

「…今のは…」

幼い少女の夢だった。
何処にでもいるような、明るい少女の。
しかし、何かが引っかかる。

「まさかねぇ…」

縁は、そういいながらも何かを探すように頭に手をやる。
そして、触れたものを引っ張ると目の前につるす。

「あぁ…やっぱり」

目の前に現れた黒いトカゲを見て、縁は苦笑いを浮かべる。

「メモリー、今のあんたが見せた夢?頭の上でおとなしくしてたってことは、そういう事よね?」

メモリーと呼ばれたトカゲは、まるで何も知らないというように顔をそむけて見せる。

「あんたが動かないってことは、予知夢ってことでしょ?何年、あんたの本体やってると思ってるのよ」

苦笑しながら縁はベッドから這い出し、ベッドの下に放り出されていた真っ白なナイトガウンを羽織ると冷蔵庫のほうへと歩いていく。
その途中、キッチンに掛けられている時計を見上げる。
まだ、7時前だ。
あの夢が今日起きるのなら、あと数時間後には彼女は体育館で倒れることになる。

「…でも、たまに逆夢になるし…だいたい、私に何の関係があるんだろ…?」

首を捻りながら冷蔵庫を開き、200mlのパックの冷えた牛乳を取り出すと一口、口に含む。

「はぁ、目が覚める…」

そんなことを考えながら、縁は食パンをトースターに放り込み、焼けるのを待ちながらテレビをつける。

「ん…?」

ニュースに、先ほど見た夢の中で聞いた町の名前が流れた。
雪魅町-…
ニュースは、その町で起こっている変死事件について、短く伝えただけのものだったが、縁の心を強く掴んだ。

「…何かあるってことよね…」

そう呟きながら、焼きあがった食パンにマーガリンを塗り、一口口に含んだ。
それと同時に、テーブルの上でケータイが鳴り出す。
聞きなれたそのメールの着信音に、パンを口にくわえたまま縁はケータイを手に取り、メールを開く。
メールは恋人である仗助からだった。
本文には「電話しても大丈夫か?」とだけ書いてある。
縁は「ok」と短く打ち込むと、送信ボタンを押した。

■■■

「おはよー」
『おう、縁おはよーさん』

返信してから1分もしないうちに、仗助からの電話はかかってきた。
他愛の無い会話をし、縁は少し間をおいて仗助にたずねた。

「…で、わざわざ電話してきたのは何かあったわけ?」
『それなんだけどよー…縁、雪魅町って分かるか?』

縁は驚いた。
夢の中から連続で、また「雪魅町」の名前を聞くとは思っていなかった。

「…その町がどうしたの?」

仗助から語られたのは、次の通りだった。


DIOに子供がいる可能性を知ったSPW財団が調査したところ、どうやら「雪魅町」に住んでいる少女がそれに該当する可能性が出てきた。
ただ、少女は今年で12歳でDIO死亡時から数えると年が合わない。
調べたいのだが、相手はまだ小学生の少女なので、どうしたものか…。


「…」

縁は、頭の上のメモリーに視線をやる。
メモリーはまた、「何のことかさっぱり」といった風にそっぽ向いた。

『縁?』

電話の向こうから仗助に呼びかけられ、縁は視線を元に戻した。
そして、一つ息を吐いて話し始めた。

「あのね、仗助。その子の夢、さっき見たわ」
『は?』
「さっき、メモリーが見せてきたの。予知夢。何の関係があるのかと思ったら、そういうことだったのね…」
『…じゃあ、やっぱり』
「その子は、DIOの娘なんじゃないかな…雪魅町に行くの?」
『承太郎さんは、そう考えてんじゃねーかな』
「そう…まぁ、承太郎さんも調べてるだろうけど、一応、こっちでも雪魅町について調べてみるわ」
『ん、サンキューな』
「んーん。じゃ、後で連絡する」

そう言って電話を切った縁は、すっかり冷めたトーストを急いで頬張り、それを牛乳で胃に流し込むと、ケータイの電話帳を開き、とある人へ電話を掛け始めた。
最終更新:2009年09月17日 14:58