夜間飛行~予感・その3~
「羽月ー、ケータイ鳴ってるぞー?」
「え?…あ、ほんと…」
朝食を終え、出勤準備をしていた杜若羽月(かきつばた うづき)に、億泰が呼びかけた。
億泰に差し出されたケータイを受け取り、羽月はケータイを耳に押し当てる。
「もしもし…?」
『あ、羽月ちゃん?縁だけど…』
「縁ちゃん?…どうしたの?」
『うん、ごめんねこんな時間に…ちょっと、お願いがあって』
電話の向こうで、縁は先ほど聞いた話しを羽月に話した。
羽月はそれを聞きながらメモを取りながら、相槌を打つ。
『それで…羽月ちゃんのとこの図書館で、その街のこと調べられない?』
「うん、大丈夫だと思うけど…」
『じゃあ、少しお願いしてもいい?私もそれなりに調べるけど…』
「うん、わかった」
『じゃあ、お願い!また!』
「うん、またねー」
そう言って電話を切ると、羽月は途中だった出勤準備を素早く終わらせ、職場へと出かけていった。
■■■
仕事の合間、地理の本を開き、羽月は縁に聞いた町を調べていた。
I県I市雪魅町-…
町の中央に流れる雪魅川と、北の「あぎと渓流」・南の「竜尾渓流」といった水に恵まれた町。
町のキャッチフレーズ(的なもの)は「雪が魅せる町」。
人口は62000人ほど。面積は400.10km2。
8月には「雪流し祭」が三日に渡って行われる。
その際、六花燈(りっかとう)と呼ばれる灯篭を流す、「雪流し」(所謂灯篭流し)が行われる。
雪魅川の両岸は北側は「北黄(ほくおう)」で、南側は「南黄(なんおう)」という地区に分けられている。両岸に中央商店街。
雪魅町の北には、「北風(ほくふう)」、「北家(ほくや)」、「冬花(とうか)」、「玄武(げんぶ)」という地区があり、北家区に雪魅町立北小学校がある。
南には、「南風(なんふう)」、「南家(なんか)」、「夏花(げか)」、「朱雀(すざく)」という地区があり、南家区に雪魅町立南小学校がある。
東は交通の拠点であり、バスは此処から発車し、駅もこの区域にある。また、雪魅川の上流にあるため、雪魅川に地区は二分されている。地区は「東風(とうふう)」、「東屋(あずまや)」、「春花(しゅんか)」、「青竜(せいりゅう)」で、東風区に雪魅町立東中学校がある。
西は雪魅川の川下に当たるため、東と同じく川に二分されている。地区は「西風(さいふう)」、「西家(さいか)」、「秋花(しゅうか)」、「白虎(びゃっこ)」で、西家区に雪魅町立西高校がある。
あぎと渓流と竜尾渓流は北から南へ延びる一本の道でつながっており、その道は竜王大路(りゅうおうおうじ)と呼ばれている。
「こんなところかしら…」
その部分のコピーをとり、自分のクリアファイルに挟む。
なぜ、8月の祭りに雪流しと名がついているのか、と不思議に思い、民間伝承の本を読んでみるが、あまり知られていないからか、なかなかそれを見つけることはできない。
「…関係ないわよね…というか」
そう呟くと、持ってきていた本を本棚に戻していく。
すると、目の端に小さな冊子が目に入った。
いつからそこにあったのか、思わず羽月は手に取った。
「雪の民話…?」
どうやら、図書館のものではないようだ。
小さな、薄い冊子である。
「…なんだろう」
背中に沿って、ぞわぞわと何とも言えない感覚が上ってくるのを感じ、羽月はぶるっと身震いをした。
最終更新:2009年09月17日 15:00