アットウィキロゴ

夜間飛行~上条靖子・その3~


自転車で学校まで戻ってきた靖子は、教室へ走りこむ。
まだ校庭で遊んでいる生徒もいるが、それもまばらだ。
6時になると校門はしまってしまう。
あと40分もあるが、早めに見つけて帰ろうと、靖子は自分の席へ駆け寄る。
机の中を覗くと、朝のHRの時間に読む本に、プリントが下敷きになっていた。

「あったー…」

安堵の息を吐くと、靖子はそのプリントを持ってきたカバンに入れると、小走りに昇降口へ向かう。

「あら、上条さん」
「あ、優奈せんせー」
「どうしたの?忘れ物?」
「えへへ…」
「大丈夫?一人で…先生、送っていこうか?」
「大丈夫ですよ!自転車できたし!おうち近いし!」
「そう…?…そうだ、何かあったら学校に電話するのよ?」
「はーい!!」

優奈と別れると、靖子は自転車に再び跨り、家に向かって走り出した。

■■■

「それ」は、飢えた獣のようにうめいていた。
理性の光をなくした目は、ぎょろぎょろと動き、「それ」は獲物を探すように目の前の道を見つめていた。
すると、自転車の車輪の音がする。
「それ」はその音に導かれるように、道へ飛び出していった。

「!!?」

靖子は思わず急ブレーキを掛けた。
目の前に、何かが飛び出してきた。
夕闇が迫るその道の中で、「それ」は四つんばいで靖子の目の前に立ち塞がる。

「な、なに…」

靖子の声が震える。
「それ」はじりじりと、靖子ににじり寄っていく。

「グルルルル…」

犬のうめき声のような声が、「それ」の口から漏れる。
ギラリと、目が強い光を放つと同時に、「それ」は靖子に飛び掛ってきた。

「きゃあぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!?」

周りの空気を切り裂くような叫びを上がる。
その時-…

「ドラァーッ!」
「!?」

誰かが「それ」を殴り飛ばした。
それにあっけに取られていた靖子の肩に誰かの手が触れ、靖子の体はびくっと震えた。

「…?」
「大丈夫?」

髪をポニーテールに結い上げた女の人が、靖子を覗き込んでいた。
靖子は小さくうなずく。
「よかった」というと、その女性は顔を上げて先ほど「それ」がいたほうを向いた。
靖子もそちらを見る。

「子供相手によー、本気になってんじゃねーっすよ」

背の高い男性が、靖子と女性をかばう様に立っていた。
「それ」は口から血をたらしながら起き上がり、男性をにらみつけた。

「グゥゥゥゥゥ…」
「…まだやんのか?」

うなり声を上げながらにらみ付ける「それ」に、男性は身構えた。
地面を蹴る音と、「それ」の雄叫びが響く。

「グゥゥゥゥルァァァァァァァッッッ!!!!」
「ドララララララーーーーッ!!」

「それ」の牙が届く前に、「それ」は殴り飛ばされ、地面に強く打ち付けられた。
くるっと男性を振り向くと、ふっと息を吐く。

「仗助」
「あぁ、縁…そっちの子も大丈夫かよ?」
「ぇ、あ…は、はい…」
最終更新:2009年09月17日 15:13