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夜間飛行~ヴィジュアルⅢ・その5~


靖子と真衣の二人と連れ立って、承太郎たちは歩きながらスタンドについての話をゆっくりと、靖子たちにもできるだけ分かりやすいように説明していった。
最初は不思議そうだった真衣も、自分のあの姿がそれによるものだと理解したようで、何度もうなずきながらそれを聞いていた。

「真衣ちゃんのは、なんていったらいいのかな…毛皮みたいなスタンドみたいね」
「毛皮…ですか…」
「それを纏って、獣化するみたいね…」

縁が真衣とそういった会話をしている最中、靖子は始めてスタンドを使って戦ったからか、ふらふらと歩いていた。
そして、案の定転びそうになったが、それを承太郎がすぐ支えた。

「あ、ありがとうございます…」
「いや…疲れたんだろう、初めて…スタンドを戦いに使ったから…」
「そう、ですかね…戦いに使うなんて…思っても見なかったから…」

そういいながら、靖子は首筋を自らの手で撫ぜる。
それを背後から見下ろしていた承太郎は、「それ」を見つけた。

「…その、痣…」
「あ、これですか?生まれたときからあるって、お母さんが言ってました!」

そこには確かに、ジョースター家の血統に現れる星型の痣が覗いていた。
疑惑は確信に変わっていくが、それでもまだ心のどこかに引っかかる問題があった。

-DIOの娘にしては、年齢が幼すぎはしないか-

DIOを倒した後、息子であるジョルノが確認された2001年、彼は15歳だった。
しかし、それよりも靖子は幼い。
DIOが倒されるより前に生まれていたのなら20歳になるか、それの少し手前といった年齢でなければ計算が合わない。
では、目の前にいる彼女の、首筋にあるそれは何を表しているのか?
そんなことを考えている承太郎を、不思議そうに靖子は見上げる。

「どうしたんですか?」
「…!いや…考え事だ…」
「そうですか?」

先ほどよりもふらつかなくなって来た靖子は、少し跳ねるように歩いていく。
そんな彼女の後姿に、かつて対峙した男の面影は一切見られない。
しかし、その思いすら彼女の首筋の痣により不安定なものへと変わっていく。

「あ…じゃあ、此処で!」

十字路まで来ると、靖子は真衣の手を取って自宅のほうの道へ向かい、少ししてから3人のほうへ向き直る。

「えっと…また、何かあったらよろしくお願いします!」
「…お願いします」

二人はそう言うとぺこりと頭を下げ、手を振ってから歩き出す。
縁と仗助はそれに答えるように手を振るが、承太郎はさっきまでの思いを引きずっていたので、それをただ見送るだけにとどまった。

「…で…承太郎さん、どう思います?」
「違ってほしいという思いもあるが…首筋に、痣があった…星型の」
「マジですか…そうは、全然見えないっすけどね…」
「…あぁ」

■■■

「ねぇ、真衣ちゃん」
「ん?」

二人で並んで帰っている途中、靖子は真衣のほうへ顔を向けて声を掛ける。
声を掛けられた真衣は、不思議そうに首をかしげながら靖子を見つめる。

「自分のスタンドにさ、名前付けておこうよ」
「名前…?」
「うん、縁お姉ちゃんたちのスタンドには名前があったから…」
「そうなんだ…じゃあ、どうしよう…んー」
「私はね、決めてあるよ」

前を向けながら、靖子はそういう。
そんな靖子を見つめながら、真衣は軽く首をかしげてたずねる。

「そうなの?どういう名前?」
「えっとね…『ナイトアウト』」
「『ナイトアウト』?」
「そう…明かりをともすくらいしか特別な力は無いけど、それって夜を抜けるのには大事だよね」
「わー…そういうとこまで考えてるんだ」

真衣がそういいながら目を丸くすると、靖子は恥ずかしそうに笑いながら真衣のほうへ顔を向ける。

「真衣ちゃんは?」
「んー…ヴィジュアル…Ⅲ…かな」
「Ⅲ?」
「あ、なんか言葉の響きがね」
「あはは、そっか~」
「ん~、安易だったかな」

二人は、笑いあいながら自宅へと急いだ。
そんな二人を…いや、靖子を少し離れた場所から見つめている者がいた。

「…彼女は、正しく育っているのね」

そう呟くと、それはその二人とは別の方向へと歩いていった…。

―ヴィジュアルⅢ・完―
最終更新:2009年09月25日 21:59