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夜間飛行~ダークメルヒェン・その3~


それは、ゆっくりと部屋の中に忍び込んできた。
黒い影のようなその体は、ベッドの上で寝ている縁と仗助の顔を覗き込むと、さらに体色の黒が鮮やかになっていく。
そして、仗助に狙いを定めると、口の部分が笑っているかのように開く。
血のように赤い口が、嗤う。
その時-…

「ドラァ!」
「ギッ」

寸での所で拳をかわし、それはまるで爬虫類のように壁に張り付く。

「ったく…安眠妨害だっつーのよぉ…」
そういいながら、仗助は軽く首を回しながら起き上がり、それを見据える。
それは、再び赤い口を大きく開く。
今度は嗤っていない。
むしろ、怒っている様であった。

「ったくよぉ…何なんだオメーは…」

そういいながら身構えると、それは大きく腕を広げる。
その腕からヒレのようなものが伸びる。

「ギィィィィィィィィィッ」
「っ…!?」

古いドアの軋むような鳴き声を上げ、それはそのヒレを大きく振るう。
それは空気を切り裂き、僅かにかすった仗助の頬を傷つけた。
「ってぇ…」

思わず声を漏らすも、その目はしっかりとそれを捉えていた。
それは壁から降り、その腕のヒレを仗助に向けたまま身じろぎ一つしない。
じりじりとにじり寄るそれから、一定の位置を保つように仗助は後退する。
しかし、後ろには縁が寝ている。
あまり後ろへは下がり続けられない。

(どーすっか…な…)

不意に、ドアが視界の隅に入る。

(あそこまで…なんとか、いければ…)

相手に気づかれないよう、後退しながら進路をドアのほうへと少しずつ変更していく。
相手はまだ気づいていないようで、時折短く鳴きながら仗助へじりじりとよってくる。
だんだんと背後に扉が近づく。
そして、ついには背中がドアに付く。

「(来た…ッ!)ドラァ!!」
「ギッ…!?」

ドアを破り、外へ飛び出す。
すかさず、相手も仗助を追って部屋から飛び出した。
その間に、ドアはクレイジーダイヤモンドの力によって元通りに収まっていた。

「ギィィ…」

それの目が爛々と輝き、仗助をにらむ。
仗助は再び身構えると、それと対峙する。

「縁に近づけさすわけにいかねーからな…」
「ギィィィィ…」

それは腕のヒレの切っ先を仗助に向け、姿勢を低くし、一気に飛び掛る。
それにあわせるように、仗助は拳を繰り出した。

「ギィィィィィィィィィィッ!!」
「ドララララララララァーッ!!」

二つの影が交差する。
最終更新:2009年12月27日 00:37