Last update 2007年11月10日
曲がりまくった道 著者:亜季
途中でそれる道などどこにもない。
急な斜面と岩の壁だけ。
急な斜面と岩の壁だけ。
何の面白みもない、
ただまっすぐな息苦しい窮屈な道を歩いている。
ただまっすぐな息苦しい窮屈な道を歩いている。
まるで、そんな夢の中にいつまでも溺れているような感覚だった。
* * *
「え?意味分かんない」
「どこがいいの~?センス悪っ!」
「あなたって変な人!」
「どこがいいの~?センス悪っ!」
「あなたって変な人!」
いつもユミは女の子の輪に馴染めないでいた。
何を言っても誰も理解してくれない。
理解されないだけならまだしも
好きなものまで否定や拒絶されるばかり。
理解されないだけならまだしも
好きなものまで否定や拒絶されるばかり。
昔からそうだった。
―話せば分かる、なんて誰か言ったんだろう?
ユミは中学生の頃に大好きだったカエルやヘビ、イグアナなどの
爬虫類の写真のコレクションを
仲のよかった友達に気持ち悪がられ
女の子たちの間で仲間外れにされて以来、
人に自分のことを話すのが怖くなった。
爬虫類の写真のコレクションを
仲のよかった友達に気持ち悪がられ
女の子たちの間で仲間外れにされて以来、
人に自分のことを話すのが怖くなった。
近づいてきてくれる子もいたけれど
仲良くなって、正直に好みの話をするたびに否定され、
毎回、ユミはいつのまにか、すぐにひとりぼっちになった。
仲良くなって、正直に好みの話をするたびに否定され、
毎回、ユミはいつのまにか、すぐにひとりぼっちになった。
* * *
「ユミって何が好き?やっぱり可愛いユミだから、コアラとか?」
17歳の夏、初めてできた彼氏とユミが動物園へ行った時のことだ。
彼、タカシはユミより5歳年上で
いわゆる「可愛いらしい女の子」が好きだった。
いわゆる「可愛いらしい女の子」が好きだった。
「俺のダチで爬虫類好きがいてさ、あんな気持ち悪いのどこがいいんだかね?まぁ、面白いヤツだから今度紹介するよ。」
―爬虫類、私も好きだよ。
なんて、とてもじゃないけど言えなくて愛想笑いした。
なんて、とてもじゃないけど言えなくて愛想笑いした。
タカシはユミの愛想笑いに気付かずに
普通にニコニコ喜んでいた。
普通にニコニコ喜んでいた。
ある日、タカシが例の爬虫類好きにユミを紹介した。
「前話してた俺の彼女のユミ。コイツはカツヤ。」
「ども。いつもタカシがお世話になってます。」
「おぃ!お前は俺のオカンか!?」
「は、はじめまして。」
「ども。いつもタカシがお世話になってます。」
「おぃ!お前は俺のオカンか!?」
「は、はじめまして。」
見た目はごくごく普通の男の子だった。
自分もだけど、爬虫類が好きそうには見えない爽やかだ。
自分もだけど、爬虫類が好きそうには見えない爽やかだ。
「あ、あの…。」
「はぃ?」
「は、爬虫類…好きなんですか?」
「はぃ?」
「は、爬虫類…好きなんですか?」
聞かずにはいられなかった。
私と同じものを好きな人。
私と同じものを好きな人。
「バカ!コイツに爬虫類の話させたら止まらなくなるって!」
「うん。アイツらはすごい美人…じゃなかった、『美動物』だよ!」
「うん。アイツらはすごい美人…じゃなかった、『美動物』だよ!」
それからがすごかった。
カツヤの爬虫類の話はえんえん3時間にも及ぶ熱弁だった。
カツヤの爬虫類の話はえんえん3時間にも及ぶ熱弁だった。
爬虫類の姿カタチ、習性、雑学、
こんなに面白い話は初めてだった。
こんなに面白い話は初めてだった。
「ユミ~、ごめんな?爬虫類の話なんて気持ち悪いだけだっただろ?」
「気持ち悪かねーよ!何度も爬虫類は『美動物』だって言ってるだろ?」
「野郎にならいいけど、女の子に爬虫類の話をしてどうすんだよ。」
「気持ち悪かねーよ!何度も爬虫類は『美動物』だって言ってるだろ?」
「野郎にならいいけど、女の子に爬虫類の話をしてどうすんだよ。」
カツヤの目はキラキラしていて、
「気持ち悪い」と言われても「好き」と言えるのが輝いて見えて
ユミには羨ましかった。
「気持ち悪い」と言われても「好き」と言えるのが輝いて見えて
ユミには羨ましかった。
「わ…私も爬虫類…好き…。」
タカシとカツヤはキョトンとした目でユミを見つめた。
「だ…だろ!爬虫類好きに性別はなぃ!俺、女の子で爬虫類好きがいるなんてマジで感動!」
「は…はぁ!?ユミも爬虫類好きなの?」
「は…はぁ!?ユミも爬虫類好きなの?」
タカシは理解できないと言った顔で頭をかいている。
ユミが昔から見てきた、いちばん嫌いな顔。
ユミが昔から見てきた、いちばん嫌いな顔。
ユミはカツヤの目をジッと見つめた。
「…爬虫類好きな女の子って…気持ち悪いですか?みんなと違うみたいで誰も理解してくれなくて…。」
「何それ?みんなと違っても一緒でも、好きなら好きでいいじゃん。むしろ、みんなと違う考えができるなら、人生、寄り道し放題だよ。自分の道を楽しんで曲がりまくっちゃえば?」
「何それ?みんなと違っても一緒でも、好きなら好きでいいじゃん。むしろ、みんなと違う考えができるなら、人生、寄り道し放題だよ。自分の道を楽しんで曲がりまくっちゃえば?」
カツヤの言葉に、ユミは心から重たい何かが消えた気がした。
「あ、今度、爬虫類図鑑を貸してあげるよ。」
「え!?嬉しいですっ。」
「な、なんだよ、二人して爬虫類で盛り上がるなんて、ありえね~!」
「え!?嬉しいですっ。」
「な、なんだよ、二人して爬虫類で盛り上がるなんて、ありえね~!」
タカシの話題に入れない悔しそうな顔を横目にユミは心に決めた。
自分の将来の道は自分の道だもの。
曲がって、曲がって、曲がって、曲がる。
曲がって、曲がって、曲がって、曲がる。