◆概説
昨今広まりつつある違法薬物。「HUD-16550」という能力へ干渉する特殊な物質と一般のドラッグを混ぜ合わせた、いわゆるカクテルと呼ばれるものである。
この「HUD-16650」は多種のドラッグとのカクテルに対応しているため、『ヒュドラ』という名はこの薬剤が含有されたクスリの総称であるようだ。
使用すると、混ぜたドラッグと同じ快感や多幸感に加え、一定時間能力を格段に強めることが可能。能力者の中でも力の弱い者を中心に買い手が急増している。
ちなみに、「HUD-16550」は直で飲むには刺激の強い劇物であり、飲めば確かに能力は強まるが、数秒で耐えがたい高熱に苛まれて倒れる羽目になる。
現在のカクテルは、ドラッグによって使用者が強い興奮状態に陥っている場合にこの副作用が軽減される事が発見されて広まったらしい。
◆効能
外見は白色の粉末状で、一回の適切な摂取量は大体数十~数百ミリグラム程度。主に
マフィアなどが小袋やストローに詰めて販売しているケースが多いようだ。また、原料である「HUD-16650」自体の値段は意外と低いらしく、通常のドラッグの二~三割増程度の
比較的安い値段が付けられる傾向がある。
水溶性があるため、ドリンクに薬剤を溶かして飲む手軽な経口摂取が主流。その他、静脈注射や炙り、各種粘膜摂取などの従来の方法でも効果が発揮される。
効果時間中は重い風邪を引いたように
全身が高熱を帯び、顔や皮膚が異様なほど赤らむため、外見から容易に使用者を特定することが可能である。
……しかしこの『ヒュドラ』、能力増強薬という触れ込みで販売されてはいるが、実際のところの効果は「能力暴走薬」に近い。
この薬は使用すると数時間程度の間能力を強めるが、もしも過剰摂取した場合、身体強化系の能力なら肉塊じみた異形に変貌してしまったり、念動力系の能力なら周囲一帯に強いポルターガイストを発生させたりと、殆ど確実に能力が暴走。そのまま能力を使い過ぎたり更なる摂取を行った場合、使用者は死に至る。
そして忘れてはならないのが、この薬がドラッグとしての効能も持ち合わせているということである。
使用中は幻覚や興奮で精神状態が不安定になり、正常な判断も能力の制御も全く行えず、大抵の使用者は暴走する能力に任せて見境なく周囲を破壊してしまう。
その上、ドラッグ自体の快感と強い能力を振るう快感が合わさって精神的な依存性が強く、この危険な過剰摂取が非常に行われやすい。
まさしく最悪のクスリであるといえよう。
◆現状
このクスリが
beyond2などの従来の違法薬物と決定的に違うところは、普及に関わっているのが
大きな組織だけではないことにある。
というのも、『ヒュドラ』の作り方、つまり混ぜるドラッグの種類やその比率などの
配合法に機密性はなく、既にある程度出回っているのである。
つまり、後はどうにか「HUD-16650」を直接入手してしまえば、後はその辺で売られているドラッグを調達するだけで
一般人でも簡単に作れてしまう。
殆どの場合、この薬剤はマフィアなどの元締めによって管理されているものの、原価そのままで安く入手できる闇のルートも存在する模様。
このせいもあって自警団や警察でも検挙が追いつかないほど普及率は高まっており、
最近このクスリを原因とする能力暴走事件が頻発しているようだ。
今のところ、『ヒュドラ』の売人を個別に取り締まることは出来ても、『ヒュドラ』の開発者や大本である「HUD-16650」の出元などは全く不明。
しかし唯一の手掛かりとして、このクスリは元々ある能力を増強するものであり、
最初から何の能力もない無能力者には完全に無用の長物だという事実がある。
この能力者を狙い撃ちにするような性質から、当初は
GIFTとの関連が疑われていたが……。
最近
マリオン・リヴァーズが起こしたテロにより、
〝無能力者派〟を掲げるレイリスフィード大学が、能力の暴走によって能力者を害すると共に世間からの能力者の評判を落とすべく、このクスリを製造・流通させていた疑惑が浮上。まだ疑惑と言うレベルであったのだが……。
先日行われたGIFT拠点潜入任務の際、
SCARLETはついに
レイリスフィード大学が薬物を製造していた確固たる証拠を発見した。
相手が巨大な大学ということもあり本格的な捜査には少し時間が掛かりそうだが、検挙されるのは時間の問題であろう。
また当該の拠点では、GIFTの"能力発現薬"である『INFINITY』と「HUD-16650」を混ぜ合わせた特別製の『ヒュドラ』の投与実験が行われていたことも判明。
動物および人体(レイリス大関係者、またはGIFT戦闘兵からの志願者)を被検体に実験を繰り返していたようだが、確かに『INFINITY』の単独投与より能力を発現する可能性はほんの少しだけ高まったものの、肝心の『INFINITY』の致死率は下がらず、例え成功したとしても副作用があまりに強すぎて使い物にならなかった。
どうやら、実質的にこの試みは失敗だった模様である。
最終更新:2015年06月22日 00:20