謙虚でいる

「作家と一般の読者との違いは、わずか指先にのった塩のあるなしにすぎない
 その塩を大切にしなければすぐ失われてしまう。
 それを錯覚して自分はエリートだと思い込むほど作家にとってのつまずきはない」
——司馬遼太郎
 創作をしている自分を特別視し、「自分はエリートだ」と思い込んでしまう人はいる。もっとも本人は「エリート」とまでは思っていないつもりなのかもしれないが。
 うっかり人気が出てしまったことで天狗になり、自己中心的な言動を始め、その結果作品のクオリティが落ちてしまう。その言動や、作品の質が落ちてしまったことを心ある人たちが注意しても、「自分のことを妬んでいるからそんなことをいうのだろう」と自分に都合良く解釈し、逆に注意してくれた人たちを攻撃してしまう。
 そんな言動を見て、それまで作品を愛していてくれた人たちが「そんな人の作品なんて読みたくない」と離れていく……。
 プロの作家でも、オンライン上で活動されている小説書きでも、そのような人は存在している。
 なかなか、むずかしいことだとは思う。やはり私も、書いた小説がうっかりヒットしてしまい、「センセー、センセー」などとちやほやされたときに平静でいられるかといえば、そんな自信はない。
 では、どうすればいいのか。
 やはり、常に謙虚でいることを心掛けるよりほかはないのではないか。
 批評・批判にはきちんと耳を傾け、常に「自分よりも上がいる」ことを認識する。よりよいものを書くための努力を怠らず、句読点一個の位置もおろそかにしない。
 当たり前といえば当たり前のことだけれども、人間というのは(特に自分は)なかなか弱い生き物だから。
最終更新:2007年04月21日 10:07