アイディアを形にする 〜素材と主題

  物語を書く上で、二つの核となるものを明確にしたほうがよい。
  それが、書きたいこと(主題)と、書きたいもの(素材)である。この両者が明確になっていないと、物語にブレが生じ、散漫な印象になってしまう。
  それぞれは相互に関連しあっている。主題を描くために素材があり、素材によって主題が決定される。
  主題ばかりでそれを表現するための素材がなければ、それはただの説教だし、素材ばかりで主題がなければ、物語は早晩目的地を見失って破綻、または頓挫してしまう。
「物語のアイディアを思いついた」といったとき、たいていの場合、思いついたそれは物語の素材である。そのアイディアを思いついた勢いのまま一本の物語を仕上げることは不可能ではないが、うまくいかない(書き上げることができないか、書き上げられても思っていたほどいい出来ではない)ことの方が多いだろう。物語の素材は物語を書き始めるための原動力にはなるが、物語を完成させるための燃料としては、それだけでは足りないのである。
  アイディア(素材)を思いついた際、それをプロットへと落とし込んでいくのと同時に、その物語で表現したいテーマ(主題)を明確にしておくとよい。主題が明確になっていれば、物語の組み立てに行き詰まった場合でも、そこに立ち返り、物語を検証してみることで打開へのとっかかりが見えてくる。
  主題については、さまざまな書籍でもいわれているとおり、特別に高尚なものである必要はない。極端な話、「べたべたな恋愛小説が書きたい」と思ったときには、その「べたべたな恋愛小説」が主題である、といっても構わない。とにかく、その物語で何を表現したいのか、それを明確にすべきである。
  また、あれもこれもと欲張ってしまうと、まとまりのない、何がいいたいのかよくわからない作品になってしまうため、必ず主題は一つに絞ること。
  素材と主題の両者を明確にした時点で、おぼろげながらも一本のストーリーラインが見えてくる。私自身はこのストーリーラインを「軸」と呼んでいるが、軸を明確にすることで、物語のブレを少なくすることができる。

最終更新:2007年04月28日 23:00