目が覚めると、庭に穴が開いていた。
まるで漫画のように、上半身を地面にうずもれさせて、二本の足が天を向いている。
まるで漫画のように、上半身を地面にうずもれさせて、二本の足が天を向いている。
いろいろと、変なことには慣れている積もりだったが、甘かった。
「夏目、これはなんだ」
足元でニャンコ先生が言った。
先生に解らないものが、おれに判るわけは無いと思う。
先生に解らないものが、おれに判るわけは無いと思う。
「人間? かな?」
首を傾げている内に突き出していた下半身は、上半身を引き抜いた。
「ぶはっ! 畜生アンゼロットの奴っ! 覚えてろよっ!!」
泥だらけで叫んだのは、おれと同じぐらいの男だ。
青いブレザーに、濃紺のスラックス。ネクタイを緩めたその姿は、高校生のようだが、制服に見覚えがない。
勿論、男の顔にも見覚えがない。
その男は空に向って絶叫した後、おれたちの存在に気付き、
青いブレザーに、濃紺のスラックス。ネクタイを緩めたその姿は、高校生のようだが、制服に見覚えがない。
勿論、男の顔にも見覚えがない。
その男は空に向って絶叫した後、おれたちの存在に気付き、
「あー、スマン。ここ何処だ?」
頭をかきながら、そんなコトを言った。
ナイトウィザード×夏目友人帳 嘘予告
妖(あやかし)が多すぎる ~~柊蓮司と夏目貴志~~
妖(あやかし)が多すぎる ~~柊蓮司と夏目貴志~~
―――小さい頃から時々、変なものを見た。
他の人には見えないらしいそれらは、おそらく、妖怪と呼ばれるものの類。
他の人には見えないらしいそれらは、おそらく、妖怪と呼ばれるものの類。
事の発端は、何時もの事だった。
「アァァァァァンゼロットォオオオオオオオ!!!
俺を学校に行かせろぉおオオオオオオオオ!!!」
俺を学校に行かせろぉおオオオオオオオオ!!!」
宮殿より排出された柊蓮司を拾ったのは、一人の少年。
「あんた、人間か?」
「失礼なっ!! 俺が人間以外の何なんだ!!」
「失礼なっ!! 俺が人間以外の何なんだ!!」
少年の名は夏目貴志。
人在らざる妖をみる力を持つもの。
故に、誰にも理解されず、親類をたらい回しにされ、藤原夫妻に引き取られた。
そんな少年。
人在らざる妖をみる力を持つもの。
故に、誰にも理解されず、親類をたらい回しにされ、藤原夫妻に引き取られた。
そんな少年。
「へぇ。この辺には、結構妖怪がいるんだな」
「蓮司―――、あんた。妖(アレ)が見えるのか?」
「蓮司―――、あんた。妖(アレ)が見えるのか?」
―――今は亡き祖母レイコも、妖をよく、見ていたらしい、
人々に気味悪がられた彼女は、やがて妖相手にやつあたりをはじめた。
人々に気味悪がられた彼女は、やがて妖相手にやつあたりをはじめた。
のどかな田園に、伸びる魔の手。
田沼が、多軌が、名取が、そして数々の妖たちが、次々と襲撃を受ける。
そしてその牙は、ついに夏目に到達する。
田沼が、多軌が、名取が、そして数々の妖たちが、次々と襲撃を受ける。
そしてその牙は、ついに夏目に到達する。
「何だこいつらっ!? 妖じゃあないのか!?」
「逃げるのだ夏目!! コイツらは侵魔と呼ばれる連中だ!!」
「侵魔!? なんだそ―――!? うわぁああッ!!」
「夏目っ!!」
「逃げるのだ夏目!! コイツらは侵魔と呼ばれる連中だ!!」
「侵魔!? なんだそ―――!? うわぁああッ!!」
「夏目っ!!」
襲い来る裏界の尖兵。
見たことも無い異形に、立ちすくむ夏目。
本性を現した斑の疾走も虚しく、侵魔の牙が夏目を捉えた。
見たことも無い異形に、立ちすくむ夏目。
本性を現した斑の疾走も虚しく、侵魔の牙が夏目を捉えた。
そう、誰もが思った瞬間。
閃く銀光。
肩口から脇腹まで、袈裟懸けに両断された異形が崩れ落ちる。
肩口から脇腹まで、袈裟懸けに両断された異形が崩れ落ちる。
「大丈夫か? 夏目」
断末魔に、恐る恐る目を開けてみれば、目の前には巨大な剣を担いだ男の影。
魔剣使い―――柊蓮司。
魔剣使い―――柊蓮司。
「蓮司? あんた、一体何者だ?」
―――妖をいびり負かし、子分になるよう証として紙に名を書かせ集めた。
持つ者に名を呼ばれれば、決して逆らう事のできない契約書の束『友人帳』。
持つ者に名を呼ばれれば、決して逆らう事のできない契約書の束『友人帳』。
「魔王……だって?」
0-Phoneを通して届いた言葉は、余りにも馴染がなく
『ええ。今回の黒幕は『女公爵』モーリー=グレイでしょう。
彼の魔王は、財宝の類に強い執着を示します。
恐らく夏目さんが受け継がれたレイコさんの『友人帳』を狙っているのだと思われます』
彼の魔王は、財宝の類に強い執着を示します。
恐らく夏目さんが受け継がれたレイコさんの『友人帳』を狙っているのだと思われます』
得体の知れない恐怖が、全身を駆け巡る。
「なあ、蓮司。
おれ、ココにいない方が良いのかな?」
おれ、ココにいない方が良いのかな?」
ふと、零れ落ちた言葉。
「夏目。お前は何も悪くない」
「蓮司?」
「悪いのは全部、お前にちょっかいをかけてきたエミュレイターだ。
お前が、責任を感じなければないらないことなんて、何にもない!!」
「でも―――、おれが狙われてるんだ」
「悪いのは全部、お前にちょっかいをかけてきたエミュレイターだ。
お前が、責任を感じなければないらないことなんて、何にもない!!」
「でも―――、おれが狙われてるんだ」
襲撃された友人も、妖たちも、すべて夏目が狙われたとばっちり。
その上、心優しい藤原夫妻まで巻き込んでしまったら。
そう考えると、怖ろしくて仕方がない。
その上、心優しい藤原夫妻まで巻き込んでしまったら。
そう考えると、怖ろしくて仕方がない。
「―――だったら、俺が護る。
お前も、お前の大切なモノも、全部俺が護ってやる!」
お前も、お前の大切なモノも、全部俺が護ってやる!」
強い眼光―――それがどれだけ困難か知っている。
強い覚悟―――己一人の力は、ちっぽけなものだと知っている。
強い覚悟―――己一人の力は、ちっぽけなものだと知っている。
「それに夏目。お前は、一人じゃない」
柊蓮司の瞳には、吹きぬける風に、燃え盛る炎のような意思が浮かんでいた。
―――遺品としてそれを継いで以来、
友人帳を狙う妖に襲われたり、希望者に名を返したり。と、てんてこまいの日々。
友人帳を狙う妖に襲われたり、希望者に名を返したり。と、てんてこまいの日々。
ついに夏目の前に現れた魔王。
白銀の光沢を放つ全身甲冑。
鳥肌を覚えるほどの威圧を放つ両手剣。
端正な相貌は、おぞましいほどに麗しく凛々しい。
ありとあらゆる財宝を求めるもの。裏界の宝物庫番。『女公爵』モーリー=グレイ。
月匣の中、夏目は一人きりでそれと相対する。
鳥肌を覚えるほどの威圧を放つ両手剣。
端正な相貌は、おぞましいほどに麗しく凛々しい。
ありとあらゆる財宝を求めるもの。裏界の宝物庫番。『女公爵』モーリー=グレイ。
月匣の中、夏目は一人きりでそれと相対する。
「さあ、友人帳を渡せ。それは人間風情には過ぎた宝。
このモーリー=グレイが有効に活用してやろうではないか」
このモーリー=グレイが有効に活用してやろうではないか」
恐怖が、身体を駆け巡る。
蛇に睨まれた蛙。蟷螂に出会った飛蝗。
絶対的な捕食者を前に、指の先まで夏目は怖気に支配される。
蛇に睨まれた蛙。蟷螂に出会った飛蝗。
絶対的な捕食者を前に、指の先まで夏目は怖気に支配される。
「さあ」
魔王が足を踏み出す。
それだけで、魂の底まで震え上がった。
それだけで、魂の底まで震え上がった。
断れば、命がないだろう。
頷けば、命だけは助かるかもしれない。
頷けば、命だけは助かるかもしれない。
友人帳は妖との契約書。唯でさえ碌な事にならない妖との出会いを、加速させる厄介な代物。
答えなど、解り切っていた。
答えなど、解り切っていた。
「……る」
「ほう? 良く聞こえなかった。もう一度言え」
「ほう? 良く聞こえなかった。もう一度言え」
うっすらと、魔王の貌に笑みが浮かんだ。
足が震える、歯の根が合わない。それは絶対に賢い選択ではない。しかし、
足が震える、歯の根が合わない。それは絶対に賢い選択ではない。しかし、
「断るって、言ったんだっ!!」
友人帳は、たった一つ、たった一つだけ祖母が残したもの。人と上手く付き合えなかった彼女の悲しみの記憶。
顔も知らないけれど、唯一血縁の自分ぐらいは、遺品を大切にしたいし、繋がりを持っていたい。
顔も知らないけれど、唯一血縁の自分ぐらいは、遺品を大切にしたいし、繋がりを持っていたい。
「友人帳に名を連ねている妖たちは、ある意味で祖母の恩人たちだ。
おれは、その名を預かっている。だから、おれには総ての名を妖に返さなければならない責任が在る!!
ハイ、そうですか。と、簡単に渡せるか!!」
おれは、その名を預かっている。だから、おれには総ての名を妖に返さなければならない責任が在る!!
ハイ、そうですか。と、簡単に渡せるか!!」
たった一人で、それでも夏目は一歩も引かず、裏界の魔王を睨みつけた。
―――多くの妖を統べる友人帳。
これを持つ限り、妖との縁は切れないだろう。
これを持つ限り、妖との縁は切れないだろう。
振り上げられた剣が、落とされる。
脆弱な人間如き、剣圧で押しつぶす断頭の刃。
為す術なく、避ける事も受けることも、反応する事すらできず夏目の頭を直撃する。
脆弱な人間如き、剣圧で押しつぶす断頭の刃。
為す術なく、避ける事も受けることも、反応する事すらできず夏目の頭を直撃する。
そんなコトを、一体誰が許すと言うのか。
紅玉を砕くように、紅月を割る白い影。
狐のような、猫のように優美なシルエット。
陽光にも似た光の炸裂が、魔王の剣を吹き飛ばす。
狐のような、猫のように優美なシルエット。
陽光にも似た光の炸裂が、魔王の剣を吹き飛ばす。
「夏目は私の獲物で、友人帳は死後私が譲り受ける事になっている。
横取りはやめて貰おうか」
横取りはやめて貰おうか」
白い獣は、夏目を支えるように咆哮する。
「ニャンコ先生!!」
「ニャンコ先生!!」
―――用心棒。斑。
地を揺るがす衝撃。
巻き上げられた土塊岩盤が魔王を直撃する。
「何者!?」
大地の破片を両断し、声を挙げる魔王。
巻き上げられた土塊岩盤が魔王を直撃する。
「何者!?」
大地の破片を両断し、声を挙げる魔王。
「キサマが、友人帳を持ったところで、面白くはない」
巨大な影が、夏目の傍らに寄り添うように。
「ミスズ!?」
「ミスズ!?」
―――牛頭の巨人。三篠。
空中で身を翻し、着地する魔王の足元に陣が展開する。
わだかまる闇。伸展し、展開する黒の触腕が、甲冑の魔王を縛り上げる。
「嘗めるな!」
魔力を解放、魔王は拘束を弾き飛ばし、術を放った者を睨みつける。
わだかまる闇。伸展し、展開する黒の触腕が、甲冑の魔王を縛り上げる。
「嘗めるな!」
魔力を解放、魔王は拘束を弾き飛ばし、術を放った者を睨みつける。
「良い女だが―――。夏目に手を出すコトは、許さないよ」
夏目を抱きかかえるように、その女は笑った。
「ヒノエ!?」
「ヒノエ!?」
―――呪詛使い。ヒノエ。
「なんで、あんたたちが!?」
驚きを隠せない夏目に、ヒノエが笑って言う。
「言っただろう。夏目。弱いお前を、私たちが護ってやるってな」
今この場、月匣の最深部で魔王を取り囲むように並ぶ影。
一つ目が、牛頭が、河童が、紅峰が、子狐が、ちょびが、
一つ目が、牛頭が、河童が、紅峰が、子狐が、ちょびが、
「夏目様! 夏目組犬の会!!
参上しましたぁ!!」
参上しましたぁ!!」
夏目が今まで関わってきた妖たちが、夏目を護るために集結した。
「みんな、何で―――」
「だから、お前は一人じゃないのさ」
「だから、お前は一人じゃないのさ」
最後に、夏目の前に歩み出た柊蓮司が、己の魔器を魔王に向ける。
「皆、お前の為に集まったんだ。
お前が、誰も傷ついて欲しくないように、皆お前に傷ついて欲しくないんだよ」
お前が、誰も傷ついて欲しくないように、皆お前に傷ついて欲しくないんだよ」
神殺しの業を刻み、魔王の剣を取り込んだ魔剣。
斑、三篠、ヒノエを中心とした妖たち。
それらを前に、それでも魔王は、笑うことを止めない。
斑、三篠、ヒノエを中心とした妖たち。
それらを前に、それでも魔王は、笑うことを止めない。
「面白い。面白いぞ貴様ら!!」
魔王の疾走が爆発する。
体重に魔力を上乗せした重たい一撃。
叩き落される一撃を、同じく突進した柊が受け止める。
軋む魔剣と魔剣。鍔迫り合いの下から、叫ぶ。
体重に魔力を上乗せした重たい一撃。
叩き落される一撃を、同じく突進した柊が受け止める。
軋む魔剣と魔剣。鍔迫り合いの下から、叫ぶ。
「言ってやれ、夏目!!」
首を振る。横ではなく縦に、今この場に集まってくれた妖たちの思いに答える為に。
「皆、あいつを斃すぞ!!」
鬨の声、歓喜の咆哮が月匣をゆるがせる。
赤き月の下、魔王の匣のその奥で、最後の戦いが始まった。
赤き月の下、魔王の匣のその奥で、最後の戦いが始まった。
―――それは、そんなある日の物語。
妖を見る少年と夜闇の魔法使いの出会いの御話。
妖を見る少年と夜闇の魔法使いの出会いの御話。
なお、本編は予告なくその内容が変更される場合があるので、あらかじめご了承下さい。
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