―――エヴァの茶室
「みんな、おつかれさま~」
1人も欠けること無く戻ってきたことに自然と顔をほころばせながら、弓塚さつきは6人に声をかけた。
7人…この場にいないのは、玲子と桜花、吾妻兄妹。
消耗の激しい玲子と桜花は客室で休み、吾妻兄妹は今回使用した武器の整備があると言って早々に茶室の奥にある備品庫へと行った。
「なんとか、無事に完了しましたね」
ほっとしたように一狼がこの場に残った全員に言う。
「当然だ。誰が指揮をしたと思っている」
汚れた衣装を着替え、余裕に満ちた態度で茶々丸の入れた茶を飲むのは、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
「そうね。魔人との戦力比から考えれば、犠牲者0は驚くべき結果だわ」
今回の事件で悪魔の強さを再び知ることになったライズが同意する。
一歩間違えば、損害どころか敗北すらあり得る、薄氷の上を歩くような戦いと勝利だった。
「…エヴァだけじゃない。もう1人…」
いつものようにシルフィードに背を預けて本を読んでいたタバサが言葉少なに言う。
「ええ…そうですね」
その言葉に頷きながら、一狼は入口付近に立つ1人の少年に目を向ける。
「隊長殿、今回の件での助力、まことにありがとうございました」
一狼が深くマモルに対して頭を下げる。
あのときマモルが1人であの場に残り足止めしてくれなければ、玲子たちは死んでいたかも知れない。
そう考えればこその、心からの礼だった。
「よしてくれよ。こっちだって一応任務でやってるんだから、当然だろ?」
そんな一狼にちょっぴり照れながらいつものぐるぐるメガネに灰色の学ラン姿になったマモルが言う。
「そうね。まさか、あの魔人を1人で足止めするとは思わなかったわ」
そんなマモルを見るライズの瞳に宿るのは感嘆と少しの恐怖。
あの、3人と1匹掛かりで互角だった魔人を1人で足止め出来るあたり、やはり隊長の名は伊達では無い。
「まあ、一応、避けるのだけは鍛えられまくってるからね」
昔…学園世界に来る前のことを思い出したマモルが遠い目をする。
あっちいた頃は今とは別の意味で大変だった。何しろ…
「…父さんと母さんが師匠だったもんなあ。避けられないと死ぬかも知んない技とかトゲトゲした武器とかポンポン飛んでくるし」
陰守家の一員として、お隣さんをありとあらゆる危険から1人で守り切れるように両親にとんでもね~厳しさで鍛えられたのだ。
お陰で避ける技と危険を察知する勘は、若くして既に常軌を逸した領域に達している。
「まあ、そうやって鍛えられたお陰で何とかゆうなを守れてるんだけどさ」
学園世界で危機が起きると、高確率でゆうなは巻き込まれる。牙の塔と楯神学園の戦いの戦場に迷い込んだり、よりにもよって柊蓮司が休みの日にモンスターに襲われたり。
400年の間、お隣に護られ続けて磨かれた紺若家の集大成とも言える、ゆうなの不運とドジ。
彼女が危険な目にあわないためには、"巻き込まれる前に潰す"のも必要なのではないかと言うのは、マモルを勧誘した時の荻原の弁である。
「…と。電話だ」
学園世界で、ゆうなが巻き込まれた色々を思い出していたマモルの0-phoneが震える。相手は…
「え~と、誰?」
知らない女の人だった。
「はぁ。輝明学園の赤羽くれはさん?…ああ、ゆうなと椿が交換留学に行ってる輝明学園の理事長か…ですか?」
慣れない敬語に悪戦苦闘しながらマモルはくれはに要件を尋ねる。
荻原から番号を聞いたと言うくれはははわはわとテンパりながらマモルに用件を伝える。
「…いや、はわとはわわじゃ分からないから、です。え~っと…」
耳元に集中し、その女性の言う内容を聞き取る。どうやらやっぱりゆうな関係のことらしい。
「…ゆうなが、校舎と間違えて"旧校舎"に迷い込んだ?」
1人も欠けること無く戻ってきたことに自然と顔をほころばせながら、弓塚さつきは6人に声をかけた。
7人…この場にいないのは、玲子と桜花、吾妻兄妹。
消耗の激しい玲子と桜花は客室で休み、吾妻兄妹は今回使用した武器の整備があると言って早々に茶室の奥にある備品庫へと行った。
「なんとか、無事に完了しましたね」
ほっとしたように一狼がこの場に残った全員に言う。
「当然だ。誰が指揮をしたと思っている」
汚れた衣装を着替え、余裕に満ちた態度で茶々丸の入れた茶を飲むのは、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
「そうね。魔人との戦力比から考えれば、犠牲者0は驚くべき結果だわ」
今回の事件で悪魔の強さを再び知ることになったライズが同意する。
一歩間違えば、損害どころか敗北すらあり得る、薄氷の上を歩くような戦いと勝利だった。
「…エヴァだけじゃない。もう1人…」
いつものようにシルフィードに背を預けて本を読んでいたタバサが言葉少なに言う。
「ええ…そうですね」
その言葉に頷きながら、一狼は入口付近に立つ1人の少年に目を向ける。
「隊長殿、今回の件での助力、まことにありがとうございました」
一狼が深くマモルに対して頭を下げる。
あのときマモルが1人であの場に残り足止めしてくれなければ、玲子たちは死んでいたかも知れない。
そう考えればこその、心からの礼だった。
「よしてくれよ。こっちだって一応任務でやってるんだから、当然だろ?」
そんな一狼にちょっぴり照れながらいつものぐるぐるメガネに灰色の学ラン姿になったマモルが言う。
「そうね。まさか、あの魔人を1人で足止めするとは思わなかったわ」
そんなマモルを見るライズの瞳に宿るのは感嘆と少しの恐怖。
あの、3人と1匹掛かりで互角だった魔人を1人で足止め出来るあたり、やはり隊長の名は伊達では無い。
「まあ、一応、避けるのだけは鍛えられまくってるからね」
昔…学園世界に来る前のことを思い出したマモルが遠い目をする。
あっちいた頃は今とは別の意味で大変だった。何しろ…
「…父さんと母さんが師匠だったもんなあ。避けられないと死ぬかも知んない技とかトゲトゲした武器とかポンポン飛んでくるし」
陰守家の一員として、お隣さんをありとあらゆる危険から1人で守り切れるように両親にとんでもね~厳しさで鍛えられたのだ。
お陰で避ける技と危険を察知する勘は、若くして既に常軌を逸した領域に達している。
「まあ、そうやって鍛えられたお陰で何とかゆうなを守れてるんだけどさ」
学園世界で危機が起きると、高確率でゆうなは巻き込まれる。牙の塔と楯神学園の戦いの戦場に迷い込んだり、よりにもよって柊蓮司が休みの日にモンスターに襲われたり。
400年の間、お隣に護られ続けて磨かれた紺若家の集大成とも言える、ゆうなの不運とドジ。
彼女が危険な目にあわないためには、"巻き込まれる前に潰す"のも必要なのではないかと言うのは、マモルを勧誘した時の荻原の弁である。
「…と。電話だ」
学園世界で、ゆうなが巻き込まれた色々を思い出していたマモルの0-phoneが震える。相手は…
「え~と、誰?」
知らない女の人だった。
「はぁ。輝明学園の赤羽くれはさん?…ああ、ゆうなと椿が交換留学に行ってる輝明学園の理事長か…ですか?」
慣れない敬語に悪戦苦闘しながらマモルはくれはに要件を尋ねる。
荻原から番号を聞いたと言うくれはははわはわとテンパりながらマモルに用件を伝える。
「…いや、はわとはわわじゃ分からないから、です。え~っと…」
耳元に集中し、その女性の言う内容を聞き取る。どうやらやっぱりゆうな関係のことらしい。
「…ゆうなが、校舎と間違えて"旧校舎"に迷い込んだ?」
ぶほぉ!
マモルがその言葉を口にした瞬間、エヴァが勢いよく茶を吹き出した。げほげほとむせるのを、茶々丸が慌てて介抱する。
タバサが思わず本を取り落としてマモルの方を見、シルフィードは部屋の隅で頭を抱えてきゅい!と一声鳴いてガタガタと震えだす。
さつきは目をまんまるに見開いて口をパクパクさせ、ただ1人"前回"のことを知らないライズだけが何事かと眉をひそめていた。
「…ん?みんなどうかした?」
そんな様子に、マモルは首をかしげる。マモルは知らない。
『輝明学園の旧校舎』が何を意味するのかを。
「あ、あの隊長殿…今…旧校舎って!?」
うまく言葉に出来ないことをもどかしく思いながら、何とか一狼はその言葉を口にした。
「ああ、何か爺さんが言ったんだってさ。僕に迎えに行けって。多分迷子になってるだけだろ~し、別に僕じゃなくてもいいと思うんだけどね」
ポリポリと頭を掻きながら、マモルが言う。
「ま、そ~言うわけだから、ちょっと行ってくるよ」
そう言い残し、シュバッと消えた。一狼たちに止める暇なんて与えちゃくれないスピードだった。
「…まあ、あのバグキャラなら死にはすまい」
ようやくお茶のダメージから回復したエヴァがこほんと咳ばらいして言う。
「奴は、逃げ足もバグキャラだからな…」
陰守マモルの、エヴァなりの評価を。
タバサが思わず本を取り落としてマモルの方を見、シルフィードは部屋の隅で頭を抱えてきゅい!と一声鳴いてガタガタと震えだす。
さつきは目をまんまるに見開いて口をパクパクさせ、ただ1人"前回"のことを知らないライズだけが何事かと眉をひそめていた。
「…ん?みんなどうかした?」
そんな様子に、マモルは首をかしげる。マモルは知らない。
『輝明学園の旧校舎』が何を意味するのかを。
「あ、あの隊長殿…今…旧校舎って!?」
うまく言葉に出来ないことをもどかしく思いながら、何とか一狼はその言葉を口にした。
「ああ、何か爺さんが言ったんだってさ。僕に迎えに行けって。多分迷子になってるだけだろ~し、別に僕じゃなくてもいいと思うんだけどね」
ポリポリと頭を掻きながら、マモルが言う。
「ま、そ~言うわけだから、ちょっと行ってくるよ」
そう言い残し、シュバッと消えた。一狼たちに止める暇なんて与えちゃくれないスピードだった。
「…まあ、あのバグキャラなら死にはすまい」
ようやくお茶のダメージから回復したエヴァがこほんと咳ばらいして言う。
「奴は、逃げ足もバグキャラだからな…」
陰守マモルの、エヴァなりの評価を。
…数時間後、マモルは生死判定に2~3回は成功してそうなくらいボロボロになって帰って来て。
「僕はまだ…ゆうなを甘く見ていたのかも知れない…」
と呟いた後にぶっ倒れて客室に運び込まれ、それでも生きて帰って来たことで隊長伝説がまた1つ増えることになるのだが、それはまた、別の話。
「僕はまだ…ゆうなを甘く見ていたのかも知れない…」
と呟いた後にぶっ倒れて客室に運び込まれ、それでも生きて帰って来たことで隊長伝説がまた1つ増えることになるのだが、それはまた、別の話。
―――エヴァの茶室 客室
一方その頃。
全員撤退した後、一旦集まることになったエヴァの茶室。その中に用意された客室の一間で、制服に着替えた玲子はぼんやりとベッドに腰掛け、落ち込んでいた。
今、客室に桜花はいない。1人になりたいからと伝えて、隣で休んでもらっている。
「私…」
頭の中を今日1日の出来事がぐるぐる回っている。
いつものように迎えた朝。いつものように学校に向かう通学路でのエレンとの出会い。玲二たちと一緒に行った、初めての任務。由美との再会と戦い。そして佐藤との再戦と…
そこまで思い出し、ぞくりと、身体が震える。
自分がやってしまったことの重さを実感して。
そして、再び落ち込みのサイクルに沈みこもうとした、その時だった。
コンコン
「…玲子、入ってもいいか?」
扉をたたく音と、聞きなれた男の声。
「…どうぞ」
鍵は掛けてない。それに、彼になら、話してもいい。そう感じた玲子が許可の返事を返す。
「…入るぞ」
その声に答えると同時に扉を開け入ってくる、制服に着替えた男の名は…吾妻玲二。
玲子の教育係でもある銃の使い手は、玲子の落ち込んだ表情を見て、悲しげな表情になる。
「…やっぱりか」
「…何が、ですか…?」
そんな、玲二の悲しげな表情を見て、玲子が問う。
「ああ、俺にも覚えがあるから…気になったんだ。玲子は多分、すごく落ち込んでるはずだって…何しろ」
向き合って、それでも立ち上がらなければ、前には進めない。
放っておいてもいずれは時間が回復させるのかも知れないが、それでは遅い。
辛いが、言わなければならない。立ちあがるための言葉を。そして。
―――初めて人を殺したんだからな…
玲二は、はっきりとその言葉を口にした。
全員撤退した後、一旦集まることになったエヴァの茶室。その中に用意された客室の一間で、制服に着替えた玲子はぼんやりとベッドに腰掛け、落ち込んでいた。
今、客室に桜花はいない。1人になりたいからと伝えて、隣で休んでもらっている。
「私…」
頭の中を今日1日の出来事がぐるぐる回っている。
いつものように迎えた朝。いつものように学校に向かう通学路でのエレンとの出会い。玲二たちと一緒に行った、初めての任務。由美との再会と戦い。そして佐藤との再戦と…
そこまで思い出し、ぞくりと、身体が震える。
自分がやってしまったことの重さを実感して。
そして、再び落ち込みのサイクルに沈みこもうとした、その時だった。
コンコン
「…玲子、入ってもいいか?」
扉をたたく音と、聞きなれた男の声。
「…どうぞ」
鍵は掛けてない。それに、彼になら、話してもいい。そう感じた玲子が許可の返事を返す。
「…入るぞ」
その声に答えると同時に扉を開け入ってくる、制服に着替えた男の名は…吾妻玲二。
玲子の教育係でもある銃の使い手は、玲子の落ち込んだ表情を見て、悲しげな表情になる。
「…やっぱりか」
「…何が、ですか…?」
そんな、玲二の悲しげな表情を見て、玲子が問う。
「ああ、俺にも覚えがあるから…気になったんだ。玲子は多分、すごく落ち込んでるはずだって…何しろ」
向き合って、それでも立ち上がらなければ、前には進めない。
放っておいてもいずれは時間が回復させるのかも知れないが、それでは遅い。
辛いが、言わなければならない。立ちあがるための言葉を。そして。
―――初めて人を殺したんだからな…
玲二は、はっきりとその言葉を口にした。
ビクリと、玲子の身体がその言葉に震える。
「…そう、なんですよね」
ダムの水が決壊したように玲子が心情を吐露する。
「殺さなきゃ殺されてたから。佐藤君は悪魔と合体した魔人だから。直接殺したのはタバサさんたちで私じゃない…
そんな、言い訳ばっかり思いつく自分が、嫌になりました…」
先ほどまでぐるぐると頭を巡っていた言葉がこぼれ出す。
「でも、どう言い繕っても分かってるんです。私は、悪魔じゃない…人を…佐藤君を殺したんだって」
殺した。自分の口から出た言葉の重さに、改めて震える。
「…大切な仲間で…友達だったのに…」
ポロリと涙が零れ出したら、止まらない。玲子は嗚咽を上げ、泣きだした。
「…ああ、そうだ。玲子、お前がやったことは、人殺しだ。それはどうしようもないくらいに事実だ」
声を殺して泣く玲子を玲二はいたたまれない気持ちで見つめる。
嗚咽を上げる玲子の心情は、痛いほど分かった。そう、今の玲子は…
「だから、玲子。お前には、やらなきゃならないことがある」
泣きはらした顔で、玲二を見る玲子に、玲二は言う。
「なん、ですか…?」
「ずっと覚えておいてくれ。佐藤君のことと、彼を殺したときの嫌な気持ち、そして、それでも戦って…生き残りたいって思ったことを」
そう言ったときの玲二の顔は、酷く悲しげな表情だった。そう、まるで…
「玲二さんにも、そんな人がいたんですか…?」
今の玲子の表情と同じような表情。玲二にも、大切な人を殺したことがあるとでも言うのだろうか。
「ああ」
即答する。誤魔化しは許さないとでも言うように。
「あのあと、俺は間違えた。殺したことを無理に忘れようとして、何も感じないようにした。最悪だ。結局、立ち直るのに1年かかったよ…それも、他の人の手を借りて、だ」
そう言う玲二の脳裏に浮かぶのは、玲二を立ち直らせた天使のように元気な少女。彼が護ると誓い…果たせなかった、2人目の女の子。
「人を殺すのは怖いことで、悪いことだ。だけど…それでもやらなきゃならないことがあるかもしれない。今の仕事を…カゲモリを続けている限りは、な。
だから、それを後悔しないようにしてくれ。間違っていたとしても、自分が信じた道だと、胸を張っていてくれ」
その決意が無ければ、これから先続けることはできない。いずれ、つぶれてしまう。
「…ごめんな。もっと、優しい言葉でも掛けてやれればいいのに…バカだな。俺」
自嘲する。言えた義理か?自分だって後悔してばっかりだろうが。大体、エレンは生きていてくれただろう…
心に渦巻く思いは表に出さない。自分は…玲子を教え導く"教育係"なのだ。弱音を吐いていたら、玲子を安心させられない。
「いいえ…ありがとう、ございました…」
玲子の目から、涙が止まる。泣いていても、何もならない。
「私…頑張ってみます。佐藤君のこと、忘れません…私は…」
最後の言葉に、前以上の決意を込めて。
―――カゲモリとして、挟間君を、止めます。例え、何があっても。
玲子は、その言葉を口にした。
「ああ、それでいい。俺もできる限りの協力はする…これからは"仲間"として。よろしくな、玲子」
そう言って手を差し出した玲二は、その日、初めて、笑顔で玲子に言い。
「はい。今後とも、よろしくお願いします…玲二さん」
玲子もその日、初めて笑顔になった。
「…そう、なんですよね」
ダムの水が決壊したように玲子が心情を吐露する。
「殺さなきゃ殺されてたから。佐藤君は悪魔と合体した魔人だから。直接殺したのはタバサさんたちで私じゃない…
そんな、言い訳ばっかり思いつく自分が、嫌になりました…」
先ほどまでぐるぐると頭を巡っていた言葉がこぼれ出す。
「でも、どう言い繕っても分かってるんです。私は、悪魔じゃない…人を…佐藤君を殺したんだって」
殺した。自分の口から出た言葉の重さに、改めて震える。
「…大切な仲間で…友達だったのに…」
ポロリと涙が零れ出したら、止まらない。玲子は嗚咽を上げ、泣きだした。
「…ああ、そうだ。玲子、お前がやったことは、人殺しだ。それはどうしようもないくらいに事実だ」
声を殺して泣く玲子を玲二はいたたまれない気持ちで見つめる。
嗚咽を上げる玲子の心情は、痛いほど分かった。そう、今の玲子は…
「だから、玲子。お前には、やらなきゃならないことがある」
泣きはらした顔で、玲二を見る玲子に、玲二は言う。
「なん、ですか…?」
「ずっと覚えておいてくれ。佐藤君のことと、彼を殺したときの嫌な気持ち、そして、それでも戦って…生き残りたいって思ったことを」
そう言ったときの玲二の顔は、酷く悲しげな表情だった。そう、まるで…
「玲二さんにも、そんな人がいたんですか…?」
今の玲子の表情と同じような表情。玲二にも、大切な人を殺したことがあるとでも言うのだろうか。
「ああ」
即答する。誤魔化しは許さないとでも言うように。
「あのあと、俺は間違えた。殺したことを無理に忘れようとして、何も感じないようにした。最悪だ。結局、立ち直るのに1年かかったよ…それも、他の人の手を借りて、だ」
そう言う玲二の脳裏に浮かぶのは、玲二を立ち直らせた天使のように元気な少女。彼が護ると誓い…果たせなかった、2人目の女の子。
「人を殺すのは怖いことで、悪いことだ。だけど…それでもやらなきゃならないことがあるかもしれない。今の仕事を…カゲモリを続けている限りは、な。
だから、それを後悔しないようにしてくれ。間違っていたとしても、自分が信じた道だと、胸を張っていてくれ」
その決意が無ければ、これから先続けることはできない。いずれ、つぶれてしまう。
「…ごめんな。もっと、優しい言葉でも掛けてやれればいいのに…バカだな。俺」
自嘲する。言えた義理か?自分だって後悔してばっかりだろうが。大体、エレンは生きていてくれただろう…
心に渦巻く思いは表に出さない。自分は…玲子を教え導く"教育係"なのだ。弱音を吐いていたら、玲子を安心させられない。
「いいえ…ありがとう、ございました…」
玲子の目から、涙が止まる。泣いていても、何もならない。
「私…頑張ってみます。佐藤君のこと、忘れません…私は…」
最後の言葉に、前以上の決意を込めて。
―――カゲモリとして、挟間君を、止めます。例え、何があっても。
玲子は、その言葉を口にした。
「ああ、それでいい。俺もできる限りの協力はする…これからは"仲間"として。よろしくな、玲子」
そう言って手を差し出した玲二は、その日、初めて、笑顔で玲子に言い。
「はい。今後とも、よろしくお願いします…玲二さん」
玲子もその日、初めて笑顔になった。
―――数日後 エヴァの茶室
報告書
作成者:輝明学園所属 赤根沢玲子
作成者:輝明学園所属 赤根沢玲子
○月×日に隊長以下11名にて魔人3名と交戦する。魔人は報告者の元仲間であり、軽子坂学園高校2年の白川由美、黒井真二、佐藤勝彦の3名。
彼らはいずれも魔神皇こと挟間偉出夫の手で逆らえないよう呪いをかけられており、反逆した場合、死亡するとのこと。精神的な操作は受けていない模様。
戦闘においては隊長と2名毎の5チームの計6チームに分かれ、分断戦を実行。結果として、他2名の逃亡を許すも魔人の1人である佐藤勝彦の殺害に成功する。
戦闘終了後、魔神皇がカゲモリに接触、"神"を手に入れると宣言する。神についての詳細は調査中。
なお、作戦の結果、佐藤勝彦が使用していた『悪魔召喚プログラム』実行用パーソナルコンピュータ、通称"アームターミナル"を入手。現在絡繰茶々丸の手で解析中。
彼らはいずれも魔神皇こと挟間偉出夫の手で逆らえないよう呪いをかけられており、反逆した場合、死亡するとのこと。精神的な操作は受けていない模様。
戦闘においては隊長と2名毎の5チームの計6チームに分かれ、分断戦を実行。結果として、他2名の逃亡を許すも魔人の1人である佐藤勝彦の殺害に成功する。
戦闘終了後、魔神皇がカゲモリに接触、"神"を手に入れると宣言する。神についての詳細は調査中。
なお、作戦の結果、佐藤勝彦が使用していた『悪魔召喚プログラム』実行用パーソナルコンピュータ、通称"アームターミナル"を入手。現在絡繰茶々丸の手で解析中。
「―――ふむ。チームの一員として役に立ち、斎堂、ライズ、タバサと共に魔人を撃破して情報源も獲得…と」
玲子の提出した報告書を読み、エヴァが重々しく頷く。
「よかろう。赤根沢玲子。お前を今、この時から魔神皇討伐任務に関わるに足るカゲモリと認めてやる。特訓も今後は行わない…卒業だ」
「…ありがとうございます。マスター」
エヴァの言葉に玲子は少しだけ固い笑顔で答える。
もう、泣かない。戦うって決めたから。
「やりましたね~。なんだか急に玲子が成長してしまって、保護者としてはちょっぴり寂しいですけど~」
傍らに立つ桜花もぱちぱちと手を鳴らし玲子の成長を我がことのように喜ぶ。
「良かったね。エヴァさんから認められればもう、どこに行ってもやってけるようん…と、そうだ」
さつきが玲子の手をつかんでぶんぶんと玲子を持ちあげそうな勢いで振り回したのち、何かを思い出す。
「ちょっと待っててね~」
そう言って奥に一旦引っ込み、さつきは奇麗にラッピングされた小さな箱を持って来る。
「これ。玲二さんに頼まれてたの。玲子ちゃんが一人前って認められたら渡して欲しいって」
言われれば確かにその箱には『玲子へ』と書かれたカードがついている。
「開けて見て。その場で開けるのがアメリカ流だって言ってたから」
「あ、はい」
さつきに促され、玲子はラッピングを丁寧に剥がし、箱を開ける。
「これは…」
「わあ…きれいですね~」
玲子と桜花が中のものを見て感嘆の声を上げる。
中に入っていたもの、それは玲子の黒い髪に似合いそうな、小さなエメラルドがついた、深い緑のバレッタ。
落ち着いたシックなデザインが、真面目な玲子の雰囲気とよく調和している。
「『玲子の趣味とか知らないから適当だけど、一応俺から見て似合いそうなの選んできた』って言ってたよ。
あとそれ、店員さんの話だと魔法がかかってて、つけてるだけで魔法耐性と魔法の威力の両方が強くなるらしいよ。
それなら、いつでもつけたままでいられるから、防具としてもいいんじゃないか、だってさ」
そんなものを贈って貰えるなんて羨ましいな~などと思いながら、さつきは玲子に玲二から聞いた話を伝える。
「玲二さん…」
バレッタを大切な宝物のように抱きしめ、玲子は彼女の先生とでもゆうべき青年の名を口にする…頬を赤らめながら。
「…吾妻兄。奴が普通の学生をやっていたら今頃天然ジゴロの道を一直線だったな…なるほど、そう言うことか」
そんな玲子をエヴァは呆れたように見たあと、にやりと邪悪な笑みを浮かべて、言う。
「忘れるところだった。私もひとつ、お前に"卒業祝い"を預かってた。受け取れ」
そう言ってエヴァは懐から取り出したそれを玲子に放って渡す。
思わず受け取った玲子はそれのずっしりした重みと正体に思わず叫ぶ。
「これって…拳銃ですか!?」
「そうだ。"吾妻妹"から渡すよう頼まれた。良いものだぞ。茶々丸、説明してやれ」
「了解しました。マスター」
茶々丸が頷き、すらすらと答える。
「ベレッタM92FS、ロンギヌスカスタム・タイプJ(ジャッジメント)。通称神罰銃。
通常の同タイプ拳銃を遙かに上回る威力と射程もさることながら銃に施された魔力付与により装備者の魔力操作精度が向上。
更にプラーナと生命力を込めて弾丸を発射することで攻撃力が強化され、さらに命中後の対象の物理的、魔法的防御力を減衰させると言う魔法効果の付与された特殊仕様の拳銃です」
「よ、よく分からないですけどなんだかすごそうな銃ですね…もしかして、普通のより高かったりします?」
茶々丸の説明は正直理解しきれなかったが、とにかく普通の銃よりは凄いらしいことは分かった玲子が茶々丸に尋ねる。
玲子の提出した報告書を読み、エヴァが重々しく頷く。
「よかろう。赤根沢玲子。お前を今、この時から魔神皇討伐任務に関わるに足るカゲモリと認めてやる。特訓も今後は行わない…卒業だ」
「…ありがとうございます。マスター」
エヴァの言葉に玲子は少しだけ固い笑顔で答える。
もう、泣かない。戦うって決めたから。
「やりましたね~。なんだか急に玲子が成長してしまって、保護者としてはちょっぴり寂しいですけど~」
傍らに立つ桜花もぱちぱちと手を鳴らし玲子の成長を我がことのように喜ぶ。
「良かったね。エヴァさんから認められればもう、どこに行ってもやってけるようん…と、そうだ」
さつきが玲子の手をつかんでぶんぶんと玲子を持ちあげそうな勢いで振り回したのち、何かを思い出す。
「ちょっと待っててね~」
そう言って奥に一旦引っ込み、さつきは奇麗にラッピングされた小さな箱を持って来る。
「これ。玲二さんに頼まれてたの。玲子ちゃんが一人前って認められたら渡して欲しいって」
言われれば確かにその箱には『玲子へ』と書かれたカードがついている。
「開けて見て。その場で開けるのがアメリカ流だって言ってたから」
「あ、はい」
さつきに促され、玲子はラッピングを丁寧に剥がし、箱を開ける。
「これは…」
「わあ…きれいですね~」
玲子と桜花が中のものを見て感嘆の声を上げる。
中に入っていたもの、それは玲子の黒い髪に似合いそうな、小さなエメラルドがついた、深い緑のバレッタ。
落ち着いたシックなデザインが、真面目な玲子の雰囲気とよく調和している。
「『玲子の趣味とか知らないから適当だけど、一応俺から見て似合いそうなの選んできた』って言ってたよ。
あとそれ、店員さんの話だと魔法がかかってて、つけてるだけで魔法耐性と魔法の威力の両方が強くなるらしいよ。
それなら、いつでもつけたままでいられるから、防具としてもいいんじゃないか、だってさ」
そんなものを贈って貰えるなんて羨ましいな~などと思いながら、さつきは玲子に玲二から聞いた話を伝える。
「玲二さん…」
バレッタを大切な宝物のように抱きしめ、玲子は彼女の先生とでもゆうべき青年の名を口にする…頬を赤らめながら。
「…吾妻兄。奴が普通の学生をやっていたら今頃天然ジゴロの道を一直線だったな…なるほど、そう言うことか」
そんな玲子をエヴァは呆れたように見たあと、にやりと邪悪な笑みを浮かべて、言う。
「忘れるところだった。私もひとつ、お前に"卒業祝い"を預かってた。受け取れ」
そう言ってエヴァは懐から取り出したそれを玲子に放って渡す。
思わず受け取った玲子はそれのずっしりした重みと正体に思わず叫ぶ。
「これって…拳銃ですか!?」
「そうだ。"吾妻妹"から渡すよう頼まれた。良いものだぞ。茶々丸、説明してやれ」
「了解しました。マスター」
茶々丸が頷き、すらすらと答える。
「ベレッタM92FS、ロンギヌスカスタム・タイプJ(ジャッジメント)。通称神罰銃。
通常の同タイプ拳銃を遙かに上回る威力と射程もさることながら銃に施された魔力付与により装備者の魔力操作精度が向上。
更にプラーナと生命力を込めて弾丸を発射することで攻撃力が強化され、さらに命中後の対象の物理的、魔法的防御力を減衰させると言う魔法効果の付与された特殊仕様の拳銃です」
「よ、よく分からないですけどなんだかすごそうな銃ですね…もしかして、普通のより高かったりします?」
茶々丸の説明は正直理解しきれなかったが、とにかく普通の銃よりは凄いらしいことは分かった玲子が茶々丸に尋ねる。
その問いに、茶々丸は1つ頷き、答える。
「はい…公正取引価格は日本円にしておよそ250万円となっております」
「「にひゃくごじゅうまんえん!?」」
一介の女子高生から見たらとんでもない価格に、玲子とさつきが同時に声を上げる。
「な、なんでそんな高価なもの…と、とにかくこんな高いもの、頂けません!」
狼狽し、慌ててエヴァに返そうとする玲子に、エヴァは首を振って、言う。
「まあそう言うな。せっかくの吾妻妹からの厚意だぞ?ありがたく受け取っておけ。
それに魔法が使えないあいつに返しても、その真価は発揮できまい。それなら、お前が使った方が有効利用になるだろう」
「…はぁ。分かりました。それじゃあありがたく頂いておくことにします」
エヴァの言葉に玲子が釈然としない顔ながらもそれを備品庫から貰ってきた時空鞘にしまいこむ。
「それにしても、エレンちゃんも凄いよね~。そんな高いもの、ポンとくれるなんて。正直、エレンちゃんと玲子ちゃんって玲二さんつながりくらいでしか接点無いのに」
「はい…そうですね」
さつきの言葉に玲子が頷く。考えて見れば玲二とはかなり長い時間顔を突き合わせて訓練に励んでいたが、エレンとは前回初めて組む前までは玲二つながりでたまに顔を合わせる程度。
時々玲二と一緒にいるときに見られてるかな?って感じるくらいで、親しく話した記憶もない。
「でも…どうしてエレンさんは私にこんなすごいものくれたんだろう?」
そう言って首をかしげる玲子を見ながら、エヴァは邪悪な笑みを浮かべながら今気づいたとでも言うように、ポツリと呟く。
「…そう言えば、こんな話を知ってるか?」
「なんですか?」
玲子が不思議そうに聞き返す。
「ああ、前にとあるイタリア人の吸血鬼から聞いたんだが…」
そこで、エヴァは一旦言葉を切る。怖い話でも始まりそうな雰囲気に玲子は思わずごくりと唾を飲み込み、エヴァの次の言葉を待つ。
「イタリアのマフィアはな…本当に殺したい相手に会ったとき、その殺意を隠し、贈り物をするそうだ…しかも、高価なものをな」
茶室になんとも言えない沈黙が降りる。
「あ、あのそれって…」
「い、いやでもほらエレンちゃんって別にそう言う関係の人じゃあ…」
冷汗を流しながらフォローしようとしたさつきを遮るようにエヴァが言う。
「…魔法の存在しない平和な現代社会系の世界出身のくせに、あれだけの戦闘技術を身に付け、それを他の生徒に悟られぬよう隠している。
軍人、では無いな。奴らのスタイルは"少人数戦"に特化しすぎている…となると、その正体もおのずと限られてくるように思うのだがな?」
更に空気が重くなる。ちなみに、玲子の顔は真っ青だ。そして、無言。…膝だけはガタガタと笑っているけど。
「…玲子~」
「…ひゃ!?な、なんでしょうか。桜花さん」
ポンと肩をたたかれ、玲子はうわずった声で聞き返す。
「…その…学校も~、試験も何にも無い分、幽霊って意外に楽しいですよ~?」
「洒落になってませんからそれ!?」
言いにくそうに囁かれた桜花の言葉に、玲子が悲鳴を上げる。
「はい…公正取引価格は日本円にしておよそ250万円となっております」
「「にひゃくごじゅうまんえん!?」」
一介の女子高生から見たらとんでもない価格に、玲子とさつきが同時に声を上げる。
「な、なんでそんな高価なもの…と、とにかくこんな高いもの、頂けません!」
狼狽し、慌ててエヴァに返そうとする玲子に、エヴァは首を振って、言う。
「まあそう言うな。せっかくの吾妻妹からの厚意だぞ?ありがたく受け取っておけ。
それに魔法が使えないあいつに返しても、その真価は発揮できまい。それなら、お前が使った方が有効利用になるだろう」
「…はぁ。分かりました。それじゃあありがたく頂いておくことにします」
エヴァの言葉に玲子が釈然としない顔ながらもそれを備品庫から貰ってきた時空鞘にしまいこむ。
「それにしても、エレンちゃんも凄いよね~。そんな高いもの、ポンとくれるなんて。正直、エレンちゃんと玲子ちゃんって玲二さんつながりくらいでしか接点無いのに」
「はい…そうですね」
さつきの言葉に玲子が頷く。考えて見れば玲二とはかなり長い時間顔を突き合わせて訓練に励んでいたが、エレンとは前回初めて組む前までは玲二つながりでたまに顔を合わせる程度。
時々玲二と一緒にいるときに見られてるかな?って感じるくらいで、親しく話した記憶もない。
「でも…どうしてエレンさんは私にこんなすごいものくれたんだろう?」
そう言って首をかしげる玲子を見ながら、エヴァは邪悪な笑みを浮かべながら今気づいたとでも言うように、ポツリと呟く。
「…そう言えば、こんな話を知ってるか?」
「なんですか?」
玲子が不思議そうに聞き返す。
「ああ、前にとあるイタリア人の吸血鬼から聞いたんだが…」
そこで、エヴァは一旦言葉を切る。怖い話でも始まりそうな雰囲気に玲子は思わずごくりと唾を飲み込み、エヴァの次の言葉を待つ。
「イタリアのマフィアはな…本当に殺したい相手に会ったとき、その殺意を隠し、贈り物をするそうだ…しかも、高価なものをな」
茶室になんとも言えない沈黙が降りる。
「あ、あのそれって…」
「い、いやでもほらエレンちゃんって別にそう言う関係の人じゃあ…」
冷汗を流しながらフォローしようとしたさつきを遮るようにエヴァが言う。
「…魔法の存在しない平和な現代社会系の世界出身のくせに、あれだけの戦闘技術を身に付け、それを他の生徒に悟られぬよう隠している。
軍人、では無いな。奴らのスタイルは"少人数戦"に特化しすぎている…となると、その正体もおのずと限られてくるように思うのだがな?」
更に空気が重くなる。ちなみに、玲子の顔は真っ青だ。そして、無言。…膝だけはガタガタと笑っているけど。
「…玲子~」
「…ひゃ!?な、なんでしょうか。桜花さん」
ポンと肩をたたかれ、玲子はうわずった声で聞き返す。
「…その…学校も~、試験も何にも無い分、幽霊って意外に楽しいですよ~?」
「洒落になってませんからそれ!?」
言いにくそうに囁かれた桜花の言葉に、玲子が悲鳴を上げる。
その後、玲子が必死な表情で
「ま、マスター!もっと私に魔法を教えてください!自分の身を守れるように!具体的には銃とかナイフとかから!」
と言いだして晴れて訓練続行が決定するのだが、それはまた、別の話。
「ま、マスター!もっと私に魔法を教えてください!自分の身を守れるように!具体的には銃とかナイフとかから!」
と言いだして晴れて訓練続行が決定するのだが、それはまた、別の話。
―――軽子坂学園高校
「…ふむ」
学園の最上階に設けられた魔神皇の部屋…その部屋に備え付けられた"邪教の館"の装置の前で、挟間は新たに生み出した"それ"を見て、言う。
「やはりこの魔界に住まう悪魔だけでは"異世界の神"は作れないか」
ハザマが"作ろう"としているのは学園世界で信仰される無数の"異世界の神"の一柱。
それをこの世界に“降ろす”ために無数の悪魔との合体の果てに出来上がった、材料。"それ"はそう言う存在だった。
「…まあいい、後は残りの"材料"を揃えるだけだ」
挟間は知っている。この"邪神"を完成させるためには、"神の遺産"が必要だ。
「…それで、材料の探索はどうなっている?」
挟間のその後ろに立つ、白衣を着た男に尋ねる。
「…はい。現在探索に従事している人間はおよそ…3,5000。現在も増加中です。お探しのものを見つけ出すのは時間の問題かと」
その男はにやついた笑みで答える。
「そうか」
それっきり、その男に興味を失い、挟間は男に背を向ける。
「ならば、次の報告は、発見したときにしろ」
「…分りました」
そして、男がいなくなった部屋で、挟間はそれを眺め、言う。
「まどろむがいい。名も知らぬ異界の神よ…」
その"挟間が望む力"を秘めた神の器を。愛でるように撫ぜながら。
「この僕に支配され、その力を存分に振うその時までな…」
その、挟間の嗤みに応えるように。
学園の最上階に設けられた魔神皇の部屋…その部屋に備え付けられた"邪教の館"の装置の前で、挟間は新たに生み出した"それ"を見て、言う。
「やはりこの魔界に住まう悪魔だけでは"異世界の神"は作れないか」
ハザマが"作ろう"としているのは学園世界で信仰される無数の"異世界の神"の一柱。
それをこの世界に“降ろす”ために無数の悪魔との合体の果てに出来上がった、材料。"それ"はそう言う存在だった。
「…まあいい、後は残りの"材料"を揃えるだけだ」
挟間は知っている。この"邪神"を完成させるためには、"神の遺産"が必要だ。
「…それで、材料の探索はどうなっている?」
挟間のその後ろに立つ、白衣を着た男に尋ねる。
「…はい。現在探索に従事している人間はおよそ…3,5000。現在も増加中です。お探しのものを見つけ出すのは時間の問題かと」
その男はにやついた笑みで答える。
「そうか」
それっきり、その男に興味を失い、挟間は男に背を向ける。
「ならば、次の報告は、発見したときにしろ」
「…分りました」
そして、男がいなくなった部屋で、挟間はそれを眺め、言う。
「まどろむがいい。名も知らぬ異界の神よ…」
その"挟間が望む力"を秘めた神の器を。愛でるように撫ぜながら。
「この僕に支配され、その力を存分に振うその時までな…」
その、挟間の嗤みに応えるように。
ドグンッ
それは一つ、胎動して見せた…